軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百七十七話 後始末を考えよう

ズデンッと領主の館の中庭の真ん中に、そのモニュメントは立っていた。

それは全体が鏡張りの巨大な建造物であった。その正体は風音が最後の力を振り絞って呼び出した風音コテージである。風音は「もう寝るー」とスタコラとコテージ内に入って現在は寝室で爆睡中であった。

そうしてヒルコの水晶化が完了した時点から、現在はさらにもう一日経過している。限界まで働き続けたこともそうだが、魔力の消費と吸収を繰り返した風音の疲労は大きく、まだ眠りから覚めることができないでいるようだった。

その眠り続けている風音の横では今もタツオとユッコネエがその場で風音を見守っている。

また、当然のことではあるが風音コテージは目立っていた。そのキラキラと周囲を反射して輝く様子が人々には神聖なものとして映り、主である風音の姿から取って人々は風音コテージを天使宮殿と呼んでいた。

なお、天使カザネと天使フーネについては街の中でも同一人物として認識されていた。

天使カザネは街中を回って人々をヒルコから救った後、すぐさま街の外に出てオドイートリーチの群れに向かって浄化の光を放って壊滅させ、ボスであるジャイアントマナイートリーチを素手で倒した後、また街に戻ってヒルコを光り輝くものへと変えて封印した……ということになっていた。そして魔力タンク=胸は暗黙の了解となっていた。

実際には時系列がかなりメチャクチャではあるのだが、残念なことにどちらの状況も正しく把握している者など白き一団くらいしかいない。そして当の本人たちも英霊を表に広めるよりはということで、そのまま特に反論することもなかったのである。

そして破壊と再生、巨乳と貧乳、相反する矛盾を抱えた天使の伝説がここに生まれた。

また街の状況だが、まず外のオドイートリーチの群れの討伐については、すでに完了している。ジンライの 雷神砲(レールガン) によって地面が抉られまくってはいるが、そこはただの草原で、見た目が酷いという以外は特に被害という被害はなかった。もっとも放っておいても魔物の死骸は消えたりはしない。なのでその始末についてはリンドー王国軍が現在も昼夜を問わずに対応中である。

今も外を見れば草原から煙が上がっている。放置していればゾンビになることもあるし、他の魔物が死骸を食いにやってくるし、なにより腐ってきて、現時点でも街に生臭い臭いが漂ってきていた。

群れの数は恐らくは3000体程度で、白き一団の退治したのはそのうち700体ほどだろうと見られていた。その多くはジンライの 雷神砲(レールガン) によるものと思われたが、ほとんど目で見てこうじゃないかと判断されたものではあるので、実際には総数も退治した数も含めて憶測の域は出なかったりする。

街の住人の被害についてだが、ヒルコによる被害は、スラム街や歓楽街に集中していた。重中毒者が多かったためか『 天よりの光(ヤコブズラダー) 』でも元に戻らぬ者も多かったようである。この街の冒険者も数十名がヒルコ化し、半数はやはり『 天よりの光(ヤコブズラダー) 』でも治らなかったようである。

一般の住人でもヒルコ化の被害は出ていたのだが、全体数に比べれば微々たるもののようであった。ブラックポーションは主に荒事に従事する者が強くなるために求めていたモノなので街の住人にはそれほど、浸透してなかったようである。しかしブラックポーションを飲んだ覚えのない者が部分的にヒルコ化しており、現在もどこから摂取したのかのルートの割り出しが行われている。

水晶化封印したヒルコは今も保管されて直樹の英霊復活待ちとなっている。だが、水晶化したヒルコはかなり時間が経過しているものがほとんどで、当初からあまり期待は出来ないと思われた。

そして街の被害でもっとも大きかったのは実はヒルコではなく火災であった。夕食前の頃合いということもあり、逃げ出した住人の家々から火が上がっていたのだ。住人のほとんどは逃げ出したが、家は燃え広がり、かなりの家屋がダメになっていたのである。スラム地区はほぼ全焼、歓楽街も半数近くが燃えてなくなった。

そうした状況に対する対応もあり、事件翌日も街は忙しく動き回り、そして風音が目を覚ました事件から二日後でも、まだ事後の対応が終わることはなかった。

そして現在、今や天使宮殿の愛称で呼ばれている風音コテージの屋上で、各責任者たちが集まり、会合が開かれていた。

◎公益都市ウーミン 領主の館中庭 風音コテージ屋上

「これはまた、幻想的な場所ですな」

この街の領主であるモーラントが一言そう口にした。

風音コテージの屋上は水晶竜の像が口から水を出している噴水を中心とした、白を基調とした内装となっている。今まではそこに軽くくつろげるようにテーブルや椅子が設置されていたのだが、現在はその中心にとても高価そうなイスや装飾性の高いテーブルが置かれていた。

これは直樹が持ち帰った不滅シリーズの『不滅のイス』と『不滅のテーブル』である。さらには永遠の美しさを誇る不滅シリーズの調度品がそこら中に並び立っている。

領主のモーラントや、リンドー王国軍のルガーは表面的な美しさに捕らわれて嘆息していたが、その場に一緒にいたアングレーは、鑑定眼がギンギンに発揮された結果、今や卒倒しそうな気持ちになっているのをぎりぎり踏ん張っていた。

実はオウギのスキル『心眼の極み』によって、このコテージの一階倉庫の中身のことをアングレーはすでに把握していた。

各種ドラゴンの骨や、水晶化された肉らしきもの、オダノブナガ装備や、さらにはアダマンチウム製の武器が数百置いてあるとオウギから聞いたときには、その場で崩れ落ちた。だが風音たちの倉庫の中身の詳細はオウギの能力に依るものであり、自分たちが知っていることは当然のごとく秘密である。

故に倉庫の中のものの値段交渉に入りたい気持ちをアングレーは必死で抑えていたのだが、それがここにきて限界に近くなっていた。食い入るように、屋上を見回しているアングレーをよそに、風音たちはすでに座って話し始めていた。

「この前の感覚を思い出したくて外でぶっ放してたらすごい怒られたのだが」

「当たり前だ馬鹿者。あの音が響くだけで泣き出す兵士までいるんだぞ」

「自重してジンライさん」

ジンライの問いかけに、声を荒げるルガーと風音。

『力に溺れる者』とは誰が言った言葉だろうか。

「まったくカザネちゃんはこんなオッサンと組まずに俺らのところにこんか? リンドー王国軍に入ればいろいろと優遇するぞ」

「うーん。でも私もいろいろと立場があるからなあ」

そして風音は風音で相変わらずの老人キラーである。ルガーは風音の横に座って親しそうに話している。ちなみに風音の現在の立場とは、ミンシアナの街の領主と竜の里の皇后様である。さすがにさらに別の国の軍籍まで手に入れるのは気が引ける。

「ところでわたくしたちもいるのは何故でしょう?」

『ちとツヴァーラが不穏でな。とりあえず余たちがいた足跡作りといったところかの』

「だから一応、今回はツヴァーラの王女として名前が残るわよ」

ティアラの問いに、メフィルスとルイーズが答える。戴冠式までは後14日。日程的にいよいよ、ギリギリとなっていた。そしてツヴァーラのアウディーンからも良くない話を聞かされていた。

どうにもシェルキン王子の派閥の貴族たちがアウディーンがティアラを暗殺したという噂を現実にするために暗殺を計画しているという情報が入ってきているようだった。そしてシェルキンの派閥と言うよりは悪魔ディアボに形成された派閥であるために、手を出すにも尻尾がつかめないようである。

メフィルスは息子たちの不手際にすこぶる機嫌が悪いが、それで孫に心配させるわけにもいかず、現在はポーカーフェイスを貫いている。グリフォンの幼体の身なのでよくは分からないが。

そして現在、この場にいるのは風音、ジンライ、ルイーズ(+メフィルス)、ティアラに、アングレーと領主のモータント、ウーミンの軍の責任者であるルガーとその副官というメンツである。

「それでは全員が揃いましたので今後の対応についての協議を行いたいと思います。それではよろしくお願いします」

その領主モーラントの言葉で全員が口を閉じ、そして会合が始まったのである。