軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百七十八話 後始末をブン投げよう

「それでは、ルガー軍団長。まずは現在の街の状況を説明していただけますか?」

「承知した。まず街の外の魔物の死骸だが、魔術師の隊を作って現在焼却処分中だ。どこぞのバカがいきなりブッ放したせいで、一時中止になったがな」

ルガーの睨みつける視線にジンライがあらぬ方向を向いている。駄目な男だった。

「ともかく数が多いから、順繰りでやっていくしかない。燃やし尽くすのに後4日程度。それだけに総出で動くワケにもいかないし、その後の掃除を加えると二週間といったところだな」

「うちのユッコネエを貸してもいいんだけど」

ユッコネエの水晶竜化はすでに見られている。短時間でもあのブレスを使えば作業は大きく進行するはずだった。

「ま、それが早いのは承知してるが、正直なところカザネちゃんらにこれ以上借りを作れんというツマらん事情もあってな。悪いな、カザネちゃん」

「いやルガーさんが謝る必要はないよ」

ジンライ相手とは違って、ルガーの風音を見る目は優しい。

「それにあの水晶化……でしたっけか。ヒルコ化した人の治療もこれから行ってもらうとなると、正直出せるお金がありません」

それは領主のモーラントの偽らざる気持ちでもあった。ヒルコ化からの回復。それは神の奇跡にも等しい所業だ。故にそこに相場というものがそもそも存在しないが、解除方法の存在する水晶化ですら治すには本来大金をつまなければならない。街の財政でどうにかなる話ではないだろう。

「まあ、金額とかそこらへんは、ミンシアナのカザネ温泉街とでやってもらう方向でお願いしたいかな」

個人としてどうこうという状況ではないため、いっそカザネ温泉街にいる実質的な領主代行のマッカに全部投げてしまおうと風音は考えていた。鬼の所業である。

「まあカザネさんは冒険者としても領主としても日が浅いそうですし、それがよろしいですかね。私もマッカさんとは元々話し合う予定でしたし」

ようやく屋上の品の鑑定も終えてたアングレーがそう口にする。交渉は自分に任せて欲しいということだろうとモーラントは理解し、頷いた。

モーラントは領主ではあるが、それは親から受け継いだだけで特に優れた能力を持っているわけではなかった。そして正直に言って今回のケースはモーラントの処理限界を遙かに超えていた。

「ま、金のことは知らんが、後は街の中だな。住宅街はそこまでではないんだがスラム地区はもう駄目だ。歓楽街もかなり焼け落ちてる。そもそも歓楽街はブラックポーションにやられすぎてアウターの上の連中もほとんどいなくなってるがね。それでだな」

そしてルガーが風音を見た。

「なんでも生き残った連中、カザネちゃんの傘下に入りたいって言ってるんだが」

風音とジンライとルイーズが茶を吹いた。ティアラは首を傾げている。メフィルスは何か納得いったという顔をしている。

「意味が分からないよ」

風音が叫んだ。まあ、そりゃ当然であろう。

「実は連中が渡されたブラックポーションはアウターファミリーの『クロウネル』ってところから流れたものらしいんだな。で、まあ、あんな目にあったんだ。不信感があるんだろう。かといって連中と切れるのは怖い。であればもっと大きい後ろ盾が欲しいってことらしくてな」

「それだけじゃありません。カザネさんに救われて彼らも心酔してるんですよ」

ルガーの言葉にアングレーが付け加える。実際に助けたのは英霊フーネだが、すべては風音の功績となっている。そしてどうであれ、白き一団の功績には違いなかった。

「そう言われてもね」

だからといって風音も急に言われて自分の傘下に加えるというわけにはいかない。そして唸る風音にアングレーがさらに付け加える。

「まあ、カザネさんには何もアウターファミリーを作って欲しいわけじゃあないんですよ」

「じゃあ、どういうこと?」

「カザネ魔法温泉街を作るのに彼らを雇い入れて欲しいんです」

アングレーの言葉に風音がさらに唸った。簡単に言ってチョイ前までただの女子高生だった風音の頭がついていけてない展開である。精神年齢的には平均よりも下な風音的には大人の話は難しい。ゼクシアハーツも街育成要素はオマケ程度にしかなかった。その風音の様子にアングレーが「なるほど。アウターだった者では確かに不安もあるかも知れません」と返してきた。

「ですが、街を最初に起こす際には、奴隷などを使って建設を進めて行くものです。元アウターの方々は奴隷ではありませんが、荒事に長けていた分、腕に自信はありますし」

「はぁ」

風音、生返事である。そしてどうしようと頼れる大人ジンライを見たがジンライは若干ウトウトしてきており風音の視線に気付かない。興味のないことはとことんどうでもよいジンライはこういう面では頼れなかった。そこでルイーズが肩をすくめながら助け船を出す。

「基本的な話としては問題はないと思うわ。街の最初期には確かに必要な話だし。ただ、それは温泉街にいるマッカと詰めてもらったほうが良いわね」

「ですか。では、そのように」

アングレーもその言葉が聞ければ問題はないようで、その話についてはそこで終わり、風音の顔にも笑顔が戻った。

「それと家が燃えてしまった民への対応ですが、こちらは正直追いつきません。治安の問題もありますが、雨をしのぐ宿もないのが現状でして」

モーラントの言葉通り、住む家をなくした人々は今この風音コテージの周囲、つまりは領主の館の中庭や、外の広場などで暮らしている。食料の備蓄はあるがテントの数などは足りないようだった。

「このまま行けば、いずれは……いえ、早いうちに民を手放すことを考えて動かなければなりません」

「というと?」

その風音の質問にモーラントは難しい顔をしながら答える。

「他の街に行ってもらうか、奴隷に落ちるか、村を開拓してもらうか……いずれにせよ、難しい話ではありますが」

問題なのは家がないだけではなく、燃えた家の住人の私財はすでに燃え尽きているという事だった。

他の街への移住は伝手や金がなければ難しい。その日の食事を手に入れるだけならば奴隷となればひとまずは凌げるが、自由は失われる。もっとも一般的な労働奴隷としてであれば、犯罪奴隷とは違い財産の所持は許可はされているため、自分を買い戻すことは可能だ。

一方で村の開拓は自分たちの意志で行われるが魔物の問題もある。場合によっては魔物の集団に襲われ全滅と言うことも珍しい話ではなく、求められてはいるが危険度が高く容易ではない。

しかし風音にはその事態をどうにかする力があった。具体的に言えば『ゴーレムメーカー』であり、『魔力吸収』があれば、建設出来る家の数の問題もクリアできる。広めたくはないのは山々だが事態が事態なので風音は提案することにした。

「うーん……おうちを造る案ならあるけど」

「それはどういうことです?」

当然、ゴーレムメーカーを知らないモーラントたちは、その風音の言葉に首を傾げている。

「まあ、この私のコテージも私が作ったもんなんだよ。要はゴーレム使いの力で家を作ることは出来るんだけど、問題なのは……」

『ふむ。値段交渉は必要であろうな。便利屋に落とされるのは上手くはないしの』

メフィルスが風音の言葉に付け加えるが、しかしモーラントは微妙な顔をする。

「お金、ありません」

両手をあげての降参のポーズである。今回の件でモーラントはもう破産寸前であった。軍に関しては国から金が出るが、その他の部分は難しい。

「いっそ、カザネ魔法温泉街に移住する方向で考えてもらった方が良さそうですな」

モーラントにアングレーがそう告げる。それにはモーラントは渋い顔をする。

「しかし、それでは厄介払いを任せるだけに……」

それは恩を仇で返すようなものだった。そしてモーラントが反対の声を続ける前にアングレーがさらに言葉を付け加える。

「まあ、あれはまだ住民も集まっていない仮初めの街ですから移民自体は悪い話ではないはずです。それにもちろんカザネ魔法温泉街にも旨みは与えるべきでしょう。交易都市としての機能を、あちらにも分散させる……とかね」

「それは……」

モーラントは考える。確かに、現状の街の被害を考えればその方向で動く方が問題はない。しかし、将来的にそれで大丈夫かと……そうモーラントが考えていると、アングレーがニッコリと笑って口にする。

「今動かなければ、どこぞから横やりが入ってこの街は取って食われるかもしれませんな。ミンシアナとの流通はここが頼り、欲しがる者は多い。そして正直に言って、そうした事態になりそうなら私たちは逃げますよ」

アングレーの言葉はもはや通告だった。モーラントはうなるが、だが自分の管理能力を超えているものにしがみついては事を仕損じるのも分かる。

「……分かりました。ですが、カザネさんたちにとっては、どうなのでしょうか?」

結局は相手側の意志の問題もある……と、モーラントが風音を見ると、風音はニッコリ笑って、

「じゃあマッカさんに相談で」

結局すべてマッカにブン投げた。

ゼニス商会の宿泊施設及び街発展振興部代表にして、実質的なカザネ魔法温泉街領主代行マッカ・トーマック。年の割にエロボディなおばちゃんは今、成り上がりロードを爆進中であった。

本人の知らぬ間に……