軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百三十二話 様子を見よう

風音が目を覚まして、自分の身体を見たとき、思わず「なんじゃこりゃ」と叫んだという。

なんというか某ヒーローモノの怪人みたいな、堅そうだけど有機的なデザインの鎧を自分が纏っていたのである。顔は特にそのままなので、戦隊モノの女幹部っぽくも見える。中身はツンツルテンのチンチクリンだが。

「うむ。目を覚ましたようだな」

「うーん。着てるのが変わってる」

ジンライの言葉に風音が苦笑しながら立ち上がる。

『母上、大丈夫ですか?』

「うん。問題はないよ。なんだか、体が軽いような」

「あのオーガたちがその鎧に宿って力を貸しておるのだろう」

「にゃにゃにゃー」

ユッコネエがにゃーと言って風音に鳴いた。

「ん、ユッコネエもありがと。今はもう大丈夫だからね」

風音の言葉に「うにゃっ」と返すユッコネエである。

「で、結局なんだったんだよ、さっきの?」

ライルの言葉に風音はうーんとうなりながら答える。

「多分だけど、狂い鬼が仲間を誘ってこの鎧に引っ越させたっぽいかな」

ライルが「マジかよ」と声を上げるが、マジっぽいようである。鎧の中には無数の、正確には狂い鬼を入れて24体分の気配を感じる。

(これは……狂い鬼の力がたまった状態なら呼び出せる感じかなあ)

先ほどのオーガたちも狂い鬼同様に召喚可能のようだが、常時使えるものでもないようである。それも狂い鬼の意志によって召喚できるようだと風音は感じた。恐らく自分が暴れられないと子分を呼んでくれない。そんな予感がヒシヒシとあった。

「それで、私、どれくらい気を失ってたの?」

「大して時間は経っていない。5分というところであろうな」

「そっか。うーん」

風音がチャットウィンドウを開くと弓花からの書き込みがあった。

「不味いなあ。連絡来てるや。返信しないと」

その弓花がチャットに書き込んだ内容によると、マッドスパイダーが集合している地点を発見したとのことであった。そして風音は慌ててチャットへの書き込みを行う。

風音「寝オチしてた」

弓花「は?」

風音「いや、マッドスパイダーが集まってるって書いてあるけど、どんな状況?」

弓花「集合しているっぽい。直樹の遠隔視で状況見ながら大気中。こっちの位置はマップに書いておいたから、ルートに従ってこっち来て」

弓花「大気× 待機○」

風音「らじゃー」

風音は弓花への返事を書き込んでウィンドウを閉じる。

「ちゃっととかいうのを見ていたのか?」

風音がチャットを終えるとジンライが横から声をかけてきた。

「うん。どうもマッドスパイダーが集合しているらしいんだよね」

風音の言葉にジンライとライルの目が細まる。タツオもくわーと気合いを込めて鳴いた。

「今は直樹たちが監視しているみたいだから、一度そっちに合流しよう」

風音はマップを開いてそう指示する。

ウィンドウのマップはパーティ登録をした弓花、直樹とも連動している。そして風音は仲間を連れて、弓花の文字で「ここ!」と書かれている場所まで進むことにした。

◎黒い石の森 闇の森付近

「寝オチってどういう……ってチャットで書いてたのは見たけどその格好……すごいわね?」

風音たちが指定された場所までやってくると、待機していた弓花たちが風音の格好を見て目を丸くしていた。

「あー本格的に魔王目指すんだ?」

エミリィの言葉に風音が「いや目指さないし」と返すが、風音の『竜喰らいし鬼軍の鎧』はまさしく邪悪といった造形であり、見た感じはチンチクリンな魔王様だ。外堀がどんどん埋められている感じである。

「とりあえず街中では不滅のマントで隠しておいた方が良さそうですわね」

ティアラのその言葉には風音も頷かざるを得なかった。確かに動きやすく、防御力も高いだろう。竜鱗の胸当てや竜骨で出来た手甲も取り込んだ非常に強力な装備であることも間違いない。だがその格好はあまりにも凶悪すぎた。

「もう、そんなことよりも報告。報告だよ直樹」

「あいよ」

直樹は姉の言葉に従い、遠隔視で見た状況を伝える。

「姉貴の予想通り、マッドスパイダーのボスがいてこの先で陣取ってる。名前まではわからないけど」

「んーなるほど。ありゃ、アラクネワイヤードだわ」

直樹の説明を聞きながら、風音も遠隔視でマッドスパイダーの集合している様子を確認してみた。アラクネワイヤード。その名には直樹にも覚えがあった。

「ああ、あれかぁ。確か蜘蛛の糸がかなり切れる奴だったっけ?」

「そうだね。下手に近付くと首がチョン切れるかも」

風音の言葉に前衛組のライルが嫌そうな顔をした。

「んーあれは私が引き受けるよ」

「やれるのか?」

ジンライの言葉に風音が頷く。

「ま、そろそろアレの真価も試しておきたいしね」

風音の視線がロクテンくんに集中する。

「あれを倒すのは良いとして、他の問題は周辺のマッドスパイダーたちと上位種のマドネススパイダーに」

アラクネワイヤードの周囲には500体程度の巨大蜘蛛がいるようであった。緊急で集められたのであろうことは風音たちがここまで蜘蛛たちと接触していないことから推測は出来ている。あれが恐らく森の蜘蛛たちの全勢力なのだろう。

「後はあの捕まってる人たちか」

「そうだな。どうもあのアラクネワイヤードの餌として捕まってるっぽくてさ」

魔物にとって能力の高い冒険者等の人間というのはご馳走に当たる。なので群れのボスなどが存在する場合、捕まえられた人間がそのままボスに捧げられることがある。今回はそのケースに該当するようだ。

「生きているのは12人。他はみんな……死んでるんだけどさ」

そう口にする直樹の声が小さく、その声に怒りが宿っているのが風音には感じられた。

「……亡くなった人、知り合いだったの?」

「まーな。何度かパーティを組んだことがある」

直樹が顔を風音から背けて答える。あまり見せたくはない顔をしていたのだろう。風音はそんな直樹の頭をクシャクシャとなでる。

「そんじゃ……残ってる人は救ってあげよう。私たちなら出来るよ」

「ああ、そうだな。分かってるさ姉貴」

直樹は変わらず風音には顔を見せずにそう言った。風音はそんな直樹の肩をパンッと叩いて、仲間たちに向き合う。

「よし、そんじゃあ直樹たちには冒険者の救出部隊を担ってもらうとして私たちは陽動と迎撃に出て、そのまま壊滅させるよ」

「部隊ってそんなに分けられる数かよ」

ライルがそう口にするが風音は笑って返す。

「見た感じ3~500体でしょ。弓花二人いればお釣りがでるんだから」

「私が戦ったのはもっと弱い魔物だけどねー」

そう弓花は口にしながらもその表情から余裕は崩れていない。負ける気はない。そんな顔であった。エミリィやライルも不安そうな顔こそしているが、だが弓花と同じようにやる気の表情であった。他の面々に関しては言うまでもないだろう。

「今回は力を隠したり我慢したりするのはナシ。ボスをサクッと倒して、冒険者さんらをさっさと助けて、蜘蛛どもを一気に殲滅するよ」

そういって拳を振り上げる風音に仲間たちも頷き、そして白き一団の行動が開始されたのであった。