軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百十三話 何かに気付こう

◎リザレクトの街 竜船甲板

「よーし、ここに繋いでー」

風音の指示の元、ガシャンガシャンと3メートルはあるロクテンくんが器用にサンダーチャリオットを甲板床のアタッチメントにロープで固定していく。量産型タツヨシくんズもそれにはいっしょに作業に当たっている。

風音たちは来たときと同様に竜船での移動中には馬車を部屋代わりに使うつもりなので、甲板にサンダーチャリオットを固定しているのであった。

ちなみに量産型タツヨシくんは普段はヒポ丸くんの背中に丸い形に変形して固定されてるが、今では浮遊島で手に入れて余っている竜の心臓を動力源として与えてあるので自立稼働も可能のようである。

さて、ここまでの話の流れを見ればお察しであろうが風音たちは今、竜船の甲板上にいる。弓花とバロックの試合後の翌日に風音達は再びやってきた竜船に乗り込み、旅の準備に入っていたのだ。

「うぉー、緊張するなあ」

「お前は飛ぶ竜船は初めてだったか。でも一昨日までずっと小型のには乗ってたよな」

「うるせえ。こんなデケーもんが浮くって時点でスゲーんだよ」

風音とお出かけしていた件で若干ギクシャクしていたライルと直樹のふたりだが、今は特に剣呑な雰囲気はないようである。そのふたりを安心した様子でみているエミリィがいる。二人の仲裁を行ったのは彼女であった。原因はよく分かっていないようだったが。

「コースが行きと同じなら、浮遊島も見れそうかな」

弓花が遠い山脈の先を見ている。風音はそっちは浮遊島とは方角逆……と言おうと思ったが、とりあえずツッコミは控えた。今は弓花のガラスハートに余計な刺激を与えたくなかったのだ。

「あの島を出てもう半月は発ってるんですわね。時が経つのは早いですわ」

「だねえ」

ティアラの言葉に風音が続く。ハイヴァーンに滞在していたのは約三ヶ月。思った以上に長くいたなと風音は思う。

「旦那様とも結構離れちゃうなあ」

風音の言葉にタツオも残念そうにくわーと鳴いた。

もっともアオがいるのでメールでのやりとりは毎日続いている。

「そういや、アンタまた竜船の中に忍び込むの?」

「うん。これ、どうもミンシアナに来たときとは別の船っぽいし」

ミンシアナとハイヴァーンを経由している竜船は実は2隻存在している。それが毎日交代でやってきているのであった。

「マッスルクレイが余ってたら少し回収しておきたいんだよね」

「今でもかなりの量があるはずだけど」

ストーンミノタウロスが1体と少し出来るほどである。

これから蓄魔器などの需要が高まれば、異常に高値で取り引きされそうだが、今は売りに出すつもりはないようだった。

なおマッスルクレイ製のストーンミノタウロスは黒炎の全身甲冑と併せることにより恐るべき機動力を発揮する黒メタルミノスとなっていた。以前に比べて速くて強い。それはもう昨今のゾンビ映画並であった。

「まあ、バレないように気を付けなさいよ」

「ラジャー」

風音の返事に弓花はため息を吐く。人に知られると厄介なことになりそうな秘密が雪だるま式に増えていっている気がするが、よくよく考えてみると気のせいじゃなくてただの事実だったな……と思いあたったことによるため息である。もはや毒を喰らわばのスピリットであった。

そんな風音達を遠目からみている人たちが多数いた。

それはリザレクトの街の住人や、大闘技会、または昨日のバロックの対戦を見た人たちである。大闘技会によって実力も裏打ちされた風音達に喧嘩を売るものもいないが、だが注目を浴びてしまうことになるのは仕方がない話だろう。もっとも例え風音たちの名が知れてなくとも、3メートルの黒甲冑巨人やら、黒甲冑巨大馬やら、黒重装甲馬車があれば目を引くのは当然ではあるが。

「すっかり有名人……」

「実力が伴ってない俺らにはキツい視線だな」

エミリィとライルはそんな視線から逃れるために早々に馬車の中に入っていた。滅多にないが直樹を含めた3人にはやっかみの声が挙がることもないわけではない。そして、そうしたものを退けるにはやはり力を示すしかない。実力を付けて、それを示す以外にはないのである。

「実力か。そうは言っても俺たちも随分と強くはなってるハズなんだけどな」

そう直樹は口にする。武器に頼っている面も大きいが、本人たちの実力が大きく伸びているのも事実ではある。それは槍術の『雷神槍』や『閃』をある程度安定して出せるようになったライルや、竜気を使って爆発的に矢の威力が上がったエミリィも実感は出来ている。

「そうだけどな。ただ、出てくる敵が強すぎるんだよなぁ」

ライルの言葉には直樹もエミリィも苦笑いをした。

ライル達が白き一団に入ってからというもの地核竜に始まり、ストーンミノタウロス、キュクロープス、ベアードドラゴン、最上位悪魔に、ドラゴンイーター、魔狼、オダノブナガ種と極めつけは魔王と、何故未だに自分たちが生きてるのかが分からないような目に遭っている。

「ま、さすがにこれからもあんなヤバいのばかりってことはないだろうさ」

直樹の言葉にライルとエミリィも深く頷いた。そうであって欲しいという祈りを込めて。

そして、時間とともに竜船は動きだし、竜を模した翼を広げてリザレクトの街を飛び立つこととなる。

基本的にはここの竜船は定期便であり、一定時間街に止まってからウォンバードとリザレクトの街を行き交っている。すべて自動で、制御できる者もいないので遅刻だからといって待ってもらえるものではないが時間には正確だった。

「うん?」

そして飛び立つ直前、風音はふと自分の足元を見た。

「?」

一瞬、何かを感じた気がしたのだが……と、思いながら風音は首をひねった。

◎ハイヴァーン公国上空 竜船甲板 夕方

「うーん」

先ほどから竜船甲板の床を見ながら唸っているのは風音である。

「トイレ?」

「ちがーーーう」

横からルイーズのデリカシーのない問いを風音はすぐさま否定する。

『母上、我慢はいけません』

「違うってば。なんか妙なんだよ」

そうタツオにも抗議する風音の目線の先はやはり竜船の甲板であった。

「竜船が何かおかしいの?」

「いや、竜船じゃなくて、なんか臭うっぽいんだけど」

自分でもはっきりしないので唸っていたわけだ。

「船そのもの……じゃなくて、もしかして貨物室かしら?」

竜船の中の解放されている箇所、基本的には竜船管理局によって警備されているエリアがこの甲板の下にあるはずである。

「微妙に黒い感じの何か……かな? 今でも勘違いかなって気もしてるんだけど」

その風音の言葉にルイーズは考え込む。

(下には色々な荷物もあるし、呪具とかそうしたものに反応したって可能性もあるけど)

風音のスキル『犬の嗅覚』の性能は極めて高い。それに気にかかってるという事は『直感』が働いている可能性もある。

「うーん、それじゃあちょっと調べてみましょうか?」

「でも貨物室には入れないよね?」

風音の言葉にルイーズがフフンと笑う。実のところ、風音のコネがあればその程度はどうとでもなるのだが、ここは自分が頼れるお姉さんであるところを見せようとルイーズが立ち上がった。

「このお姉さんに任せなさい」

そう言って胸を叩いたルイーズのボインボイーンがボインボイーンとなった。ここまでスゴければさすがの風音もぐぬぬ顔にもなれない。

貧乳はステータスだ……などという戯言はこの圧倒的な破壊力の前ではまったく意味をなさなかった。風音はただただ戦慄するだけであったのだ。