軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百九十話 解決策を話そう

ライルの絶望的な顔がそこにはあった。

それは無事、動力球を手に入れてエンジェリートの街に風音たちが戻ったその翌朝。いつも通りの早朝特訓ではあるが、そこにはメンバーが増えていた。

『振れ。もっと、もっと早く。我がバハル流の流れを汲む者が『閃』すら出来ぬとあっては情けなくて、この髑髏の目からすら涙が出てきてしまうわ』

「はい、団長殿。振ります!!」

そうしていつも以上に厳しい指導をマンツーマンで受けているライルであるが、その相手は竜騎士の鎧をまとい、グングニルを持った骸骨のジン・バハルであった。

ジンライは白の竜牙槍『神喰』と黒の竜牙槍『悪食』、その双方の槍を媒介として召喚騎士としてグングニルとジン・バハルが召喚出来るようになったのである。

実のところ、ジンライとしては孫を鍛えることに不安を覚えていた。確かにライルを鍛え上げることはジンライにも出来る。しかしバーンズ流槍術の正当後継者であるライルに果たして自分の正道ではない槍を教えてしまって良いものかとずっと考えていたのだ。

しかし、造船所で相対したジン・バハルはバーンズ流槍術の前身であるバハル流の正当なる使い手。ましてや、昨日にジンライが見た『森羅万象』など現在のバーンズには伝わっていない奥義すらも教えられる存在なのだ。

そして新たに召喚騎士と生まれ変わったジン・バハルも、自らの流派を受け継ぐバーンズ流の槍術使いを鍛えることにたいそう意欲的であった。自分が今日まで生きながらえた(?)のはもはやこのためであると豪語したほどである。

『なに、死ぬ気でやればいくらでも鍛えられる。死んでも鍛えることは出来る。このように』

そう手を広げて口にするジン・バハルにはさすがのジンライも「孫を殺すのは止めてくれ」と注意していた。ちなみにジン・バハルの姿は骸骨のままなのは、存在がもうそのように固定されているかららしい。

とまあ、そんなひとりの少年が半死半生となったこと以外は平和な朝だった。

風音たちは造船所の最後の区画で、動力球と古代文明の最上位権限カードキーを入手した。竜騎士たちの骸や装備なども纏めて不思議な倉庫に保管しておいたが、さすがに長期間持ち歩いてるのも薄気味悪い。

あの造船所にたどり着くまでに結構な人数がなくなっていたようで、あの場で回収できたのは40人分の亡骸であったが、それをすべて持って歩いているというのはどう考えても怖い。このままでは移動墓地風音ちゃんと呼ばれてしまうかもしれない。凄く怖い。早いところハイヴァーン公国に引き渡したいというのが風音の本音であった。

その後はと言えば、何故かエンジェリートの街には温泉が湧いていて浴場があり、そこで汗を流してから朝食を食べ、昼にモーフィアとエミリィが合流した。そして白き一団もまた全員揃うこととなったのだ。

エミリィの修行も10日ほどではあったが、元々下地は出来ていたこともあり『牙竜』『滅竜』という竜気を纏わせた弓術を覚えることが出来たようだった。

そして風音たちは昼食の後にモーフィアを呼び出す。それは浮遊島落下の説明のためであった。

◎エンジェリートの街 風音コテージ

「この島が落ちる? あと10年で、だと?」

風音の説明にモーフィアの目が見開かれる。モーフィアと一緒に街に来たエミリィも驚きの顔だが、当然鳥人族の 村長(むらおさ) であるモーフィアにはそれは受け入れがたい事実であるようだった。

「まさか。そんなことがあるというのか」

「ま、そんな怖い顔しないでよ。一応、対策にこれを持ってきたんだからさ」

会談の場となった風音コテージのリビングの上には大小の動力球がある。

「これがあれば10年が100年に……か。感謝の気持ちはある。いや、してもしきれないのだろうな。が、我が孫の代の生きている内に故郷が失われるというのは……すまん。今は冷静になれそうもない」

モーフィアの率直な言葉を発してイスに居座り込んだ。その様子も仕方なしと風音も頷く。その場に一緒にいたのはジンライ、ルイーズにメフィルスの大人組と事情を聞いていなかったエミリィだけだが、モーフィアの心中は察してあまりあるようで、誰も声をかけられなかった。

「問題はこれでどれほど延びるかということだろうな」

少し間をおいた後に発せられたジンライの言葉にルイーズも頷く。

「想定してたよりも多いし、この小さい動力球もあれば、細かいところも交換できるわけだし、100年以上はいけると思うけど。まあ、実際にバットラー13号さんに聞いてみないと分かんないわねえ」

『であるな。モーフィア殿、そなたもバットラー13号と会うてみると良いだろう。余らはあの遺跡の正しい道筋を聞いておる。あの 守護者(ガーディアン) に邪魔もされずにたどり着けるはずであるぞ』

「それは是非にお願いしたい」

そういってモーフィアは頭を上げる。

「けど、まあ、結局この島が危ない原因って天帝の塔がないからなんだよね?」

「ええ、そのせいで島を流れる魔力バランスが崩れて負荷がかかってるという話だったわね」

風音の言葉にルイーズが頷く。

「ようは天帝の塔を取り返せばいいってことなんだよね」

「でもその場所がわからないわ」

「それは何とかなると思うよ。元の場所から動いてなければだけど」

風音はゲーム中に存在していた場所を知っている。本来であれば北のドーマ地方のシュミ山と呼ばれる、いつも雲に覆われている山の頂上にこの浮遊島は止まっていた。常に雲があり、登頂も困難な山だったので誰も浮遊島の存在を知らなかったという設定だったはずだ。

「ま、そこになくても大きいモノだからね。探して見つからないということはないと思うよ。探すのは私たちじゃなくて旦那様やハイヴァーンの大公様にお任せすることにはなるだろうけどさ」

なにもかも風音達が請け負う必要はないのだ。広域探索ならば人海戦術で挑むべきだろうと風音は言う。

「そんで見つかったんなら、これ使えばなんとかなる気がするしね」

そう言って風音が最上位カードキーを取り出す。

「竜船の鍵……よね?」

ルイーズの問いに風音が頷く。

「ただ、それだけじゃなくてね。ようするにイシュタリアの古代文明の全般のものの操作の優先権を持ってるものっぽいんだよね、これ」

久方ぶりに取り出した鑑定メガネで確認した風音がそう言う。

「この浮遊島はもう動かせないらしいけど、これがあれば見つけた天帝の塔を運んでこれるかもしれない」

「それでは!?」

モーフィアが風音をみる。

「うん。まずはバットラー13号に会いに行こう。それで今の話を確認して、後は旦那様に会って聞いてみようと思う」

その後、風音たちはその日の内にヴォード遺跡へと向かった。そして夕方にはヴォード遺跡へとたどり着き、今回は白き一団全員にモーフィアを加えた人数で遺跡へと入ることとなる。これは風音たちがバットラー13号から正しいルートの地図をもらったためにアダマンスカルアシュラの襲撃を気にせずに済むようになったためである。

◎ヴォード遺跡 待機部屋

『オヤオヤ、随分ト大勢デノオ越シデスネ』

ボス部屋に隣接している待機部屋に突然入ってきた風音たちに対しバットラー13号は抑揚のない声で口にした。

そして風音は小型竜船用のもの以外の動力球を手渡した。どうやらバットラー13号達が造船所と連絡が付かなくなってからも何隻もの竜船が造船所に入り放置されたようで、動力球の数はバットラー13号の想定よりも多かったようである。時間にして200年の保証がバットラー13号の口から出たときにはモーフィアも安堵のあまり肩から崩れ落ちた。先延ばしとは言え、200年の猶予は大きい。

そして風音は続けて昼にモーフィアに話したことをそのままバットラー13号に伝えることにした。

天帝の塔の奪還と浮遊島への帰還。

天帝の塔が別れても、その塔の周辺部分は浮き続けていたということを風音はバットラー13号から聞いていた。そもそもそうでなければ、切り離した時点で天帝の塔は落下していたはずではあるので当然ではあるが、要するに分断された天帝の塔は浮遊島と同じ浮遊能力を有しているのだ。

元々重要施設である天帝の塔はスタンドアローンで活動が可能であったらしい。そして風音の読み通り、カードキーがあれば天帝の塔の操作は可能であろうと言うことだった。

天帝の塔については風音の知るシュミ山を第一に捜索し、そこになくとも探索し続ける。それにはハイヴァーン公国と東の竜の里によって行うことを既に風音はアオとメールでやりとりをして取り付けている。

天帝の塔と浮遊島の再合体については人手がいるとバットラー13号が口にしたが、モーフィアが鳥人族で請け負うと声を挙げた。一番の当事者であるのだ。ただ人任せにするつもりもないのだろう。そしてハイヴァーン公国や竜の里の人手も当然使えるわけでひとまずの算段はここに整った。

なお、話し合いの後、バットラー13号からの動力球回収依頼の報酬が風音達に手渡された。それは『天使の腕輪』というもの。

ゼクシアハーツのメインシナリオ終盤で手に入る使用者を天使化させるというイベントアイテムであった。