軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十五話 鬼退治をしよう

◎ウィンラードの街 正面門前

風音たちが目標に向けて走り出した頃、冒険者とミンシアナ兵の混成部隊もオーガたちとの戦闘を開始していた。

「うわぁああああああああああ!!!」

「グロッォォォオオオオオオ!!」

最初に突撃してきた五〇体ほどのオーガが正面の部隊と激突する。

「正面から打ち合わないでください。囲んで倒すんです。背面の足下は連中の死角ですよ」

その中で奇襲部隊には入らず正面で指揮をとるキンバリーが愛剣を持ってオーガたちに対峙していた。

「フゥゥウウウ!!」

キンバリーは周囲に指示を出しつつも素早く走り込み、すれ違いざまにオーガの腱を斬る。

「グラァアアアア」

体勢を崩すオーガに別の冒険者が槍で突いて攻撃をする。

「足止めをしながら後退です。すぐに状況が変わります。それまでがんばってください」

そう口にしながらもキンバリーは周囲の戦況に歯噛みしていた。冒険者はともかくミンシアナ兵の練度が低すぎるのだ。真正面から挑んでは崩されるというのに、バカの一つ覚えで挑んでいく。

4~6人1パーティで臨機応変に挑むのが基本の冒険者と違い、物量で押していく兵たちの戦法は戦力差というアドバンテージがないここでは通じない。

(思った以上にマズい。カザネ、早く狂い鬼をお願いします。このままでは持たない)

◎ウィンラードの街近辺

「トォツゲキッィイイイイイイイ!!!!!」

ガーラのまるでオーガのような掛け声とともに風音たちは狂い鬼の群れに接近していた。

オーガの知能の低さによる背後に対する警戒のなさ、自分たちの突撃の足音によって風音たちの接近に気付けなかったこと、その二つが重なった結果、風音たちは想像以上に群れに近づくことができたのである。

「やっぱりいるね」

姿は見えないが明らかに他とは違う臭いがこの先にいる。

「ならここからが私のターン!!」

風音は限界まで近づくとヒッポー君を降り、地面に杖を突き立てる。

「スキル・ゴーレムメーカー・テバサキさん」

その声とともに地面からニョキリとオーガのものと同じくらいのサイズの手が無数に出てくる。

「グアッ?」

突然地面から出てきた腕に足を掴まれたオーガが慌てるが風音の魔術はそれを逃さない。

「スペル・ファイア・ヴォーテックス!!」

にゃんこが回転しラグビーボール型になった炎の玉がオーガの胸に突き刺さる。

「ガァアアアアアアアアア!!」

そして叫び声とともにコアが破壊されオーガは絶命する。

「すごっ」

アンナがそれを見て絶句するが、ガーラは真っ直ぐに突っ込んでいく。

「ヒッポーくんはダメージ一発でアウトだから気をつけて」

「分かってらぁあ」

ガーラが叫びながら近付いてきたオーガの腕を切りとばす。その裏に座るジローの遠い目がこちらを見たが風音は無視する。

(なんでいるんだろう?)

結局強制参加となったジローは結局ガーラたちのパーティに参入を果たしていた。が、その流れで何故かなし崩しに奇襲部隊にも参加となっていた。ガーラたちとパーティだし風音たちと同じ日に昇格したし同類と思われたのかもしれない。哀れな。

しかしそんなジローのことなどキレイサッパリ忘れて風音は正面を見据えて叫ぶ。

「さーて、ドミノ倒しだよぉおお」

ゴーレム・テバサキさんが次々とオーガの足を掴み、動きを封じる。風音はその都度、ヴォーテックスを撃ち込み、弓花とジンライもそれに続いた。

「むう。これほどとは」

と口にするのはジンライ。混乱するオーガがまるでただの的のように易々と貫けることに驚愕する。

瞬く間に風音たちは一〇体ほどのオーガを平らげる。ちなみに風音は若干気まずそうな顔をしていた。思ったよりもオーガが踏ん張ったので別にドミノ倒しにならなかったからだ。

そしてギャオや他のメンバーも周りのオーガを蹴散らし、

「ヤツだッ!!」

ガーラは遂に宿敵を見つけた。

「グルゥゥウウオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

狂い鬼は風音たちを、いや『ガーラ』を見つけると狂ったように叫び声を上げた。彼を傷付けた『獲物』がやってきたのだ。それは当然の狂喜の声だろう。

スキルでいうならば『フィアボイス』。相手を恐慌状態にして動けなくする声だが、しかし、それに当てられるような冒険者はここには一人しかいない。

失神し紙のようにヒッポーくんからジローは流れ落ちた。

「あっぶな」

風音がテバサキさんに頼んで掴んでもらわなかったら大惨事だったろう。まあどうでもいいので以下略である。

「しかし、あれが狂い鬼か」

「トンでもないわね。今の声」

弓花が顔を青ざめながら口にする。槍使いとして特化しレベル以上の戦闘力のある弓花だが本来オーガを相手にするレベルではない。ジローほどではないが弓花も今の声に恐怖を植え付けられた。

「あれはガーラさんたちに任せて私らは周りを片づけるよ」

「承知ッ」

「う、うん」

テバサキさんも体力半分ほどダメージを受けて掴める数も限られてきている。やれるうちにやっておかなければ後に響く。

そしてガーラとアンナが狂い鬼の前に来ていた。

「よお、クソヤロウ。よくものこのこと戻ってきてくれたな」

そう言ってガーラがハルバードを構え、そして叫ぶ。

「俺に殺されるためによぉ!!!」

「グォォオオオオオオオオ!」

ガーラと狂い鬼の剥き出しの怒りの叫びが重なり合う。

「アンナ、頼んだッ」

「ええ。我求む・我が友を疾風と化すことを」

アンナの魔術がガーラを覆う。

同時に狂い鬼の持つ大木の棍棒がガーラを襲う。

「オセエッ」

ガーラは狂い鬼の真下にまで入り込み、ハルバードを横に振った。

「グアアアッ」

「浅いか!?」

ダメージは当てられたが皮一枚と言ったところだ。

「相変わらず硬いな」

そう口にしている間もアンナはガーラに筋力上昇と器用さ上昇の魔術を掛ける。

「グロォォオ!!!」

それに気付いた周囲の別のオーガがアンナに向かうが

「あぶねえッ」

ギャオがそのオーガを横から殴りつけ、

「よいしょっとぉ」

相方のメロウがオーガの顔を矢で打ち抜いた。

「ガァアアアアアアアアア!!!」

それでも死なないオーガにメロウは顔を驚愕する。

「刺さってるんだけど」

「鈍いんだろッ」

「スペル・ファイア・ヴォーテックス!!」

焦るギャオとメロウの前でオーガが崩れ落ちた。風音が背後からコアを撃ち抜いたのだ。

「やるじゃねえかカザネ」

「ギャオさん、アンナさんを護ってて。私はガーラさんをフォローする」

テバサキさんに魔力を与え回復させた後、周辺のオーガはユミカたちに任せてきた。

「けどあなた、もう魔力が」

アンナは魔術師だけに風音から魔力が尽きているのを見抜いていた。だが風音はジャーンと懐からアイテムを取り出し

「グビーっとね」

一気に飲んだ。

「マナポーション、そんな貴重品よく持ってたわね」

「もらったんだ」

そう言って風音は空の瓶を投げ捨てると狂い鬼に向けて走り出した。

「ガーラさん、お疲れみたいだけど交代しよっか?」

「抜かせ。これからがお楽しみだってんだ」

ガーラはそう言って、さらにもう一撃を狂い鬼の足に加えた。

「じゃあお手伝い程度で我慢しとくよ。スキル・空中跳び」

風音はタンッタンッとまるでステップをするかのように空中を駆けた。

「なっ!?」

驚きの声を上げたのはガーラだけではないだろう。

風音の使った『空中跳び』はホーンドラビットが時折奇襲のために使う技だ。僅かばかりの魔力で空中に不可視の壁を作り空中で跳ぶ。そして上空から『突進』を使い角で敵を串刺しにする。

だが風音はオーガとの戦闘で新たなスキルを身につけている。

「スキル・キリングレッグ」

これにもっとも驚愕したのは恐らく狂い鬼自身だっただろう。まさか思えるはずもない。豆粒ほどの人間の子供が自分を『蹴り倒す』とは。

「アーンド、スキル・突進!!」

肉体的というよりもその意外性に衝撃を受けた狂い鬼はさらに正面から飛びかかる風音の剣への防御ができなかった。

「グギャアアアアア」

風音の剣が狂い鬼の目に突き刺さる。

「スキル・キリングレッグ」

振り払おうとする狂い鬼の手を確認した風音は再度スキルを発動。迫り来る手を蹴り飛ばし、狂い鬼から離れた。

「っと」

トンと地面に降り立つ風音。

(オー怖かったぁあ)

唖然とする周囲とは裏腹に風音の心臓は破裂しそうなほどドキドキしていた。さすがにはじめて使うスキルでピンチを切り抜けるのは心臓に悪い。

『キリングレッグ』。

それはオーガから先ほど手に入れたスキルで、殺人的な蹴りを放てるアクティブスキルだ。その蹴りの威力は見ての通り狂い鬼にすらも通じる。

(くっそぉお。なんてえ嬢ちゃんだ)

ガーラはあまりの出来事に笑いが止まらない。

「ははははは、カザネは腕っぷしはねえと思ってたんだがよぉ」

「人間、成せばなるってね」

風音は突進を駆使して回り込み、杖を向けて足にヴォーテックスを撃ち込む。

(貫けない!?)

しかしダメージは通るが貫通には至らない。

「チィ」

駄目押しにそのまま剣で斬り付け、突進を使って離れる。

「かったいなぁあ」

「だろぉ?」

ボヤく風音にガーラが相づちを打つ。

(しかし、これ以上延ばし延ばしはまずいよね)

街に進撃しているオーガが何体か戻ってきている。時間をかけては囲まれて終わりだ。

「ガーラさん、ともかく足を崩すべきかな」

「ああ、もうチョイでいけそうなんだが」

「ならこっちもちょっと頑張ってみる!」

風音はそう言うと地面に杖を突き立てスキルを使った。

「スキル・ゴーレムメーカー・ゴレムくんマッシヴ」

風音の声とともに地面から巨大な人型が生まれてくる。そしてそれは狂い鬼に掴み掛かりガッチリと組み合った。

「よし、弓花かジンライさん」

「私ならいけるよっ」

弓花が叫ぶ。

「『閃』を足にッ、早く!!」

風音の呼んだゴレムくんは狂い鬼と対等の力を出すために筋力に全振りしているピーキー仕様。持続力一〇秒と持たないシロモノだ。

「分かった!!」

そして風音の意図を察した弓花は全速力で狂い鬼まで走り

「イイイイィイイケェエエエエエエエ!!!!」

スキルウィンドウを出さずに自力で『閃』を突き出した。

スキル『閃』。

それは槍術において始まりの一にして終わりの一と呼ばれる極意。肉体と精神の合一、あらゆる全てが合致した結果として生み出される究極の『ただの突き』である。

「グガアアアアアアアアア」

弓花の一撃はガーラと風音によって蓄積されたダメージと合わさり、狂い鬼の右足を完全に破壊する。

(行けるッ!)

そして崩れ落ちる狂い鬼に勝機を見いだした風音とガーラは走り出し、

「うぉぉおおおおおおおお!!!」

「スペル・ファイア・ヴォーテックス!!」

同時に頭部に一撃をたたき込んだ。