軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百三十二話 鉄球を撃とう

「ふぅ」

ジンライが息を吐いた。

悪魔との戦いにより開眼したジンライは風音の『犬の嗅覚』に近いレベルで、気配で敵の察知が出来るようになっていた。そして情報連携により風音の『犬の嗅覚』と叡智のサークレットによる遠隔視と連動することで、その鋭敏な感覚がさらなる精度が増していくのがジンライには分かった。

「 雷神砲(レールガン) 解放!」

そう言ってジンライは見晴らしの良い丘に立ちながら、黒い右の義手を突きだした。そして腕はジンライの意志に従い、その形を変形させていく。外骨格である部分は黒岩竜の鱗とベアードドラゴンの毛で編まれたもの。それがマッスルクレイの変形と膨張に対応して、まるで生き物のように動いていく。

併せて肩部から接続されてる5本の足がガチガチと動きだし、周辺に突き刺さってジンライの身体を固定していった。そして残りの6本目の足は弾頭を詰め込むために動き出していく。

なお、今回の弾頭は昨日の石ではなく武具店で購入した鉄球である。

用意したのは初撃の奇襲用の拳大5発と、通常移動時でも使用できるようにとアメ玉サイズ3発。

前回の戦闘で分かったことだが、ジンライのレールガン使用では初撃の攻撃こそ直撃だったものの、次弾以降の命中精度は低かった。なので、それを見越してジンライはやや下方の地面に狙いを付けて、地面をえぐり、様々なものを巻き込んだ撃ち方をしていたのだ。それはジンライの戦闘センスの高さを窺わせるもので、地形を変えるほどの惨状とともに、まるで即席の散弾銃に巻き込まれたような形になった魔物たちは次々と倒されてゆき、結果は大戦果と呼べるものであった。だが、ドラゴンクラスの防御力を相手にした場合はその手の巻き込み攻撃はあまり効果はないだろう。

故に連射による命中精度の弱さを補うべく、今回は単発ずつ、狙いを定めて撃つということに決めていた。そして命中出来るであろう距離と敵が接近した場合の固定化解除、通常戦闘形態への移行を考えて5発が限度だろうと風音とジンライは判断していた。

「取り込まれた竜さんはまだ息があるみたいけど……始めるよ?」

そしてジンライの準備が整ってから風音がアオにそう告げる。それは最終通告。朝方にドラゴンイーターに取り込まれたドラゴンはまだ完全には身体を奪われてはいない。可能性はゼロではない。だがアオは風音の言葉に頷いた。これを逃せば悲劇は拡大するのだ。

「彼も理解はしているでしょう。お願いします」

アオの視線に風音も頷く。風音としても救えるならば救いたい。だが初撃は完全にその配慮はしないと決めていた。さすがにドラゴン3体相手に加減して戦うような馬鹿は出来ない。そしてあれが里に入れば犠牲は恐ろしい速度で増殖してしまう。それはドラゴンにとっての天敵。特にコミュニティを作り集まったドラゴンにとっては最悪の敵なのだ。そしてそれだけにドラゴンイーターにとっては、この里は非常に美味しい狩り場でもあった。

(正直、一体だけ外すように狙うなど不可能だがな)

風音とアオのやりとりを聞きながらジンライはひとり、そう心の中で呟いた。すでに 雷神砲(レールガン) の準備は完了。いつでも撃てる状態にある。

そのジンライの横ではルイーズも構えていた。対悪魔用最終魔術のジャッジメントボルトは単純な火力としても非常に強力なものである。実際に北黒候ゲンもその魔術で撃ち倒されている。それを今回ルイーズはレールガンと併せて放つことになっていた。

「ルイーズ姉さん、ワシは先に行かせてもらいます」

「分かってるわ。あたしのはそこまでノーコンじゃあないしね。ジンライくんの終わった後にのんびり撃たせてもらうわよ」

緊張の顔でルイーズが返す。さすがに寄生されてるとはいえ、ドラゴン3体は厳しい話だ。特にあの群れを率いているドラゴンイーターはどうやら成竜クラスのようだった。

「来ましたよ」

アオの言葉で一同前を向く。

風音の遠隔視を全員が共有し、その姿を確認する。

「ドラゴンに木の鎧を纏わせてるみたいだな」

「動きはそこそこ、空を飛べないのはありがたいね」

直樹の言葉に風音がそう返す。どうやらドラゴンイーターには風の加護はないようである。なので空も飛べないし矢除けの能力もない。それを横で聞きながらジンライは義手『シンディ』の魔力を解放する。

そしてその腕の内部がうなり始め、放電し始める。

「さて、ブチかますぞ」

ジンライはそう言って、その義手を目の前で土煙を上げて迫ってくるドラゴンイーターたちに向け、

轟音と共に弾丸を射出した。そして、

一発目は命中した。最初の一体の胸部を打ち抜いた。

二発目は二体目、今朝に乗っ取られたドラゴンの右腕を吹き飛ばした。

三発目は外れて、遠く後ろへと飛んでいってしまう。ジンライは舌打ちをした。

四発目は下方に向けすぎたのだろう。地面を抉ってドリアドリザードを数匹吹き飛ばした。

そして五発目は成竜クラスのドラゴンイーターへと命中。頭部を吹き飛ばすことに成功する。

「ぬう、やったか」

ジンライは迫るドラゴンイーターを見ながら、急いで身体を固定していた足をしまいながら、その腕も通常形態へと戻していく。時間的には少し余裕があるように思えたが、だが敵も既に動き出している。それも驚くべきことに三体ともだった。

「いえ、ダメージはありますが、三体とも活動可能状態です」

アオの言葉に一同が目を丸くするが、しかしそれは事実である。

一体目は胸部を打ち抜かれ竜の心臓が破壊されたようだが、本体は周囲にまとわりついている植物なのだ。

二体目はドラゴンの腕が吹き飛んだだけ。

三体目の成竜タイプは頭部を破壊したがやはり本体は植物であり健在だった。もっともブレスの心配はなくなったのだから効果はあったと言えるだろうが。

「いや、二体よ」

だがアオの言葉の直後に、ルイーズのジャッジメントボルトが放たれる。

そして胸を打ち抜かれたドラゴンイーターへと直撃し、その身を覆う植物を一気に燃え広がらせ、そのドラゴンを貫いて背後にいた成竜タイプの右肩部分をも吹き飛ばした。

「さっすが、ルイーズさん」

出来る女である。弓花の賞賛にルイーズはフフンと笑うが、ジャッジメントボルトの使用は消耗が激しい。ルイーズは戦力としてはここで打ち止めだ。

「よっし、残り二体だ。ジンライさんと弓花、アオさんは成竜タイプ、ドラグーンと召喚部隊はあのドラゴンさんをどうにかするということで。直樹たちはドリアドリザードを頼んだよ」

風音の指示によって全員が返事をして散らばっていく。

といっても風音とルイーズ、ティアラはヒッポーくんハイに乗って敵とは逆走である。これ以上の接近は風音の身が危ういのだ。そして敵に背を向けながらティアラが召喚を開始する。

「では、いきますわよ。お出でませ炎の騎士たち!そして紅蓮の鳥纏いし有翼騎士よ!!」

ティアラは召喚器であるレイピアと指輪を使って召喚騎士フレイムパワーと10体のフレイムナイトをその場で呼び出す。

敵はすでに目の前。フレイムナイツは一列に並んで大盾を立ち並ばせ、正面から突進してきたドリアドリザードを受け止める。このドリアドリザードは地竜への寄生タイプのようで、その威力の高さから何体かのフレイムナイトが弾き飛ばされる。

「さすがにあれを正面からと言うのはキツいですわね」

「足止めしてくれたなら、十分」

ヒッポーくんハイにティアラとともに乗っている風音がそう言って『狂い鬼』を召喚する。

そしてドリアドリザードの群れとフレイムナイトの軍団の中心で黒い鬼が突如出現し、暴れ出したことで状況は動き出した。

「その召喚スピードヤバいわねえ」

ルイーズがそれを見ながら呆れたように呟いた。風音の召喚により一瞬で戦いの中心に狂い鬼が呼び出されたのだ。通常であればあんな魔物の集まった、魔力の乱れた中で召喚など出来ようハズがないが、狂い鬼はそれを可能とする特殊なタイプの召喚鬼だった。

「けど、あのオーガは竜の力も持っているのではありませんの?」

ティアラが心配そうに風音に尋ねる。竜気を放つ生物にとってドラゴンイーターは天敵そのものだ。そのティアラの心配ももっともだが、しかし本人がやる気らしいので風音も諦めてる。

「最悪、接近時にアイムの腕輪でミノくんを呼んでくれればそれでいいしね」

風音はそう言って「GO!」っと声をかけた。