軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十三話 武器をもらおう

親方の部屋に先に戻ってきたのはキンバリーだった。

「お持ちしました」

そして手に持つ杖を机の上に置く。

「王都シュバイン マジリア魔具工房製のものです。銘は『白炎』、魔力変換率が高く炎の魔術との相性が良いと聞いています」

風音はそれを手に取ってみる。小振りで風音の体格にはあっている。装飾も白に統一されたシンプルで洗練されたものだ。あまりファッションに拘りのない風音だがひとめで見た目は気にいった。

(む、接続される感じがする)

魔力を通すことはグリモアを使用する際に行なったが、この杖は体内と同じように魔力を循環する。風音は杖が体の一部にでもなったかのような感覚を感じていた。

「親方、ちょっと使ってもいい」

「危ないヤツじゃなければな」

風音は頷き、

「スペル・トーチ」

と唱えた。

目の前に炎の玉が浮かび上がる。

「強化補正1.2倍。消費量は85%まで落とせてるか」

装備アイテムの使用によりウィンドウに情報が開示される。ゲーム終盤では強化2倍、消費量半分などのものもあったが中盤で装備するには充分過ぎるクォリティの杖だ。

「んなことまですぐ分かるのか」

親方が驚きの顔だが、風音はハハハと笑ってごまかす。

「これをくれるの?」

「ま、正式にはオーガどもを倒したらだがな」

風音は「やったー」と言いながら杖を抱き締めて頬ずりしている。それを見ていた親方とキンバリーが和む。

「親方、持ってきました!」

ちょうどそのときモンドリーが戻ってきた。

「チッ」

癒し空間を壊された親方が舌打ちをする。キンバリーも若干ご機嫌斜めだ。モンドリーが「えええ?」という顔をしたが原因は分からない。

「いやご苦労だったモンドリー。それでカザネにそいつを見せてやれ」

親方は気を取り直し、モンドリーを風音のもとに促す。

「はい。カザネ、これを」

モンドリーは鞘に納まった黒い剣を風音に渡す。両手持ち用に柄は長いが、刃は片手剣と同じ程度だ。

「これは?」

「うちではまだ12番としか呼んでねえ試作品だ。まあ耐久度テストは済んでるし実戦にも使えるんだが」

風音はその剣を握りながら「?」という顔になる。

「杖と同じような、でもこちらからは送ってないのに魔力が流れ込んでいるような」

「大気中の魔力を吸収してるんだろうな、そりゃ。もっとも微々たるもんのはずだが」

親方のその言葉に、風音はこの剣の性能を理解する。

「魔力食いだね。これ」

魔力食い、敵を倒すことで魔力を吸収する武器。

「そういうことだ。普通は既存の武器に吸収魔術をエンチャントするんだがこいつはそれを武器の構造だけでどうにかしようってシロモノでな。そこのモンドリーが造ったもんだ」

風音は驚きの顔でモンドリーを見る。

(おめえの研究所って親方、言ってたよね)

鍛冶の技術の解析と研究。風音は親方がモンドリーをそばに置く理由が理解できた。

(キンバリーさんと同じような、そっちの方面でのお気に入りなんだね。親方の)

「すごいねえ、モンドリーさん」

「いやいや。まだまだ市場に卸せるものではないんだよ」

主にコスト面で、だ。能力だけで考えるならなんの問題もないのだ。

「それに魔術師が直接戦うってコンセプトが難点でな。一応力のないヤツでも扱えるように両手でも持てるようにはしてみたんだがよ。使い手がいなくて困ってたところだったんだわ」

なんで作ったんだろう…と風音は思うが、まあ良い。

「うん。これとの交換なら応じるよ」

その言葉にモンドリーがホッとする。

「それとな。そいつについて頼みてぇことがあってな」

「何かな?」

「時々でいいんで使い勝手を報告に来てくれねえか。報酬は出すぜ?」

「それぐらいなら了解だよ」

ゼクシアハーツでは武器そのもののベータテストも存在していた。高レベル者限定のそれを風音も何度か請け負ったことがあるし、そのノリでいいだろうと風音は考える。また、それとは別にそれと気になることがあった。

「それでこれって12番って名前なの?」

ユニークウェポンならば是非銘は欲しいところだと風音は思う。

(12番てのも如何にも試作品的な感じで嫌いじゃないけどさ)

「いや、そいつの名前は決まってなくてなあ」

風音の言葉に親方は少し考えてからこう口にした。

「そうだな、『 白炎(びゃくえん) 』に対と言うことで『 黒牙(くろきば) 』ってのはどうだろう?」

「白炎に黒牙か。悪くはないね。うん、それじゃあこれは黒牙だ。白炎もよろしくねっと」

そういって風音は腰に黒牙と白炎を差した。

*****************

◎ウィンラードの街 ジンライ道場

「いやぁああああああ!!!」

弓花の気合いの声が木霊する。そして手に持つ槍を目の前の老人へと躊躇なく突き出した。

「ふむ」

対峙する老人はわずかばかりの動作でその槍を払い、柄の部分で弓花の足を払う。

「わっ、ととと」

弓花は体勢を崩すが、踏みとどまり、老人に対して再度構える。

「今の通り、槍は別に何も刃先だけでやるものではない。近づいた状態でも槍全体を使えば相手を打ち破ることも容易だ。もっともそうした状況に追い込まれるのはなるべく避けたいところだがな」

そう言って老人はゆっくりと弓花に向けて歩き出す。

「やあっ」

弓花がさらに槍を突き出すが

「ふんっ」

老人は突き出された槍の先を寸分違わず自らの槍の先で受け止める。

「まあ、出すタイミングが分かっていればこういうこともできる」

(くっ!?)

弓花は素早く槍を引き戻すと

「たぁあっ」

接近し短く持った柄の部分で老人に打ち付けようとする。

「なるほど、確かに覚えが早い」

老人は槍の柄を避けるが、

「むっ」

その勢いで回転した槍が再度老人を襲う。

老人はそれも避け、弓花の間合いから逃れる。

「ハッ、ハァ」

そして弓花もわずかばかり後退し構え直す。

「ふむ、今のは見事。では今度はアレで打ってみろ」

「はいっ」

弓花は開いていたスキルウィンドウから『閃』というスキルを選択し再度構える。

「行きます!」

そのまま一気に突き出した。その速度はまるで閃光そのもの。

「フンッ」

対する老人も自らの槍を突き出し、そして

ギィィイインッ

凄まじい金属音が鳴り響き、ガンッと何かが破壊された音がした。

「うわっと」

と同時に弓花でも老人でもない少女の声がした。

「風音ッ!?」

「や、やあ」

若干青ざめた顔で風音は弓花に挨拶をする。その顔の横には壁に突き刺さった槍がある。練習用の刃を潰してあるものとはいえ十分に殺傷能力はある。

(当たってたら即死だったよぉ)

風音はこの世界に来てもっとも死に近い状況に直面して驚愕していた。

「ふむ。それがユミカの相棒か。小さいな」

「よく言われます」

本当に会う人全員に言われている。

「よお、ジンライ。ユミカはどうよ?」

風音の横には親方がいた。

「ジョーンズか。どうも何も見ての通りだよ」

息も絶え絶えに槍を支えにどうにか立っている弓花と、まだそれほどでもないが汗を流しているジンライ老人。しかしジンライの手には槍はなかった。つまりは風音の横に突き刺さってるのはジンライのものだということだ。

「なかなかやるお嬢さんだ。実戦ならワシが死んでいた」

「そんな…今のはたまたまです」

弓花は首を振る。打たせてもらって実戦も何もないだろうと。

「ふん。そう思うんなら『閃』をその妙な動作をせずに出せるようにしておくんだな。偶然を必然と言えるぐらいにまでしてみせろ。お前なら出来る」

「は、はい」

ジンライはそう言って風音の下に寄り「失礼」と言いながら突き刺さった槍を抜く。

「『閃』だと? まさか教えたのか?」

驚く親方にジンライは笑う。

「いや見せただけだ…が、一度偶然できてしまったらしいな。後は何かしらの業を使えば使えるらしい」

(ああ、スキルウィンドウか)

あれは使用できたスキルを登録する。以降はコマンドを押すだけで使えるようになるはずだ。

「まあ、その間の隙は看過できぬから自分自身の力で出すようにとは言ってあるが、そう時間はかからないだろうよ。ワシも久方ぶりに血が騒いできている」

親方はジンライの言葉に頷く

「なら明日の仕事も期待して良さそうだな」

「ああ」

ジンライが頷いたところで、親方が風音に向き合う。

「カザネ、このじいさんが話していた牙の槍兵ジンライ・バーンズだ」

「ども、風音です。そっちの相方です」

と弓花を指差す。

「ふむ、よろしくなカザネ。明日は期待している」

ジンライは風音の頭をなで、そのまま道場の外に出ていった。

「で、あんた何しにこっち来たのよ?」

ジト目で見る弓花の視線を避け風音は親方を見る。

「んー私というか親方がね。弓花の練習を見たいって言うからさあ」

「そういうことだ。この短期間でもずいぶんと成長はしてるみてえじゃねえか」

ガハハハと親方が笑う。

「そうですね。自分でも驚くほどに」

そう返事にする弓花の目には迷いがなかった。

それを見て親方はへっと笑う。

「どうやらジンライ爺さんに引き合わせたのは正解だったみてえだな」

その言葉に弓花は頷く。その顔は確かに一つ上を知った戦士のソレだと風音は思った。

(まあ知らないけどね、戦士の顔なんて)