軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話 試験官を倒そう

「ま、参ったぁああ!!」

試験開始から約5分。それがジローが敗北を宣言するまでに要した時間である。

「まあこんなものですか」

終始息を切らしてゼーゼー言っているジローに対してキンバリーはまるで何事もなかったようにその場にたたずんでいた。

ユミカとの試験試合に続いた第二戦。こちらは試験試合にふさわしい非常に一方的な戦いだった。2振りのダガーで果敢に攻めるジローだが、攻撃はまるでかすりもせず、キンバリーの攻撃が一方的に決まるだけの展開。

攻撃の一つ一つを打ち込みながら解説し、ダメ出しをしながら続く戦いは拷問のようでもあり、また唯一の回避の手段は敗北宣言のみだが、早すぎる宣言は不合格と見なすと言われれば出来うる限り戦うしかない。

ここまでやれば…ここまでなら…と言いながらジローが遂に自身の体力の限界を感じ敗北を告げたのが今である。

キンバリーも元からCランク昇格申請を出していたジローの情報は事前に調べていた。

偵察などが主な役割の斥候であるジローの戦闘力はそこまで期待されていない。せいぜいがどの程度出来るのか、そしてどこまでやれば良いのか見極められる目を持っているのか、という点でのみの評価で、実際の合否は合同のCランククエストで計られることになっていた。つまるところ

「とりあえず合格です。後は実地試験が問題なければランクC昇格となります」

キンバリーは事務的にそう告げる。

「うぃっ…す」

大の字に倒れ込みながらジローはひとまず返事だけは返す。

そして三戦目。続いては風音の登場だ。

「ふう、ようやく出番だねえ」

ストレッチをしながら風音が言う。

「あんた、まじめにやらないとキンバリーさんにぶっ飛ばされるわよ」

横から弓花がそう注意する。戦いを経て通ずるものがあったのか、キンバリーの評価が鰻登りの弓花である。

「まあ、ぶっ飛ばされないようにやるよ」

そう口にする風音をキッとした顔でキンバリーが見ている。

さすがに弓花との試験試合を経て、ただの相手じゃないだろうというのは実感しているキンバリーだが、自分がおちょくられたことに関しては根に持つタイプだ。故に風音に対して打ち解けるという雰囲気は全くなかった。

「それじゃあ最後だ。カザネ、前に出ろ」

「はいはーい、と」

キンバリーの言葉に従い、風音が闘技場の中央に進んでいく。

「剣が三つ?」

キンバリーは風音が腰に下げてる剣以外に両手に剣を持っていることに気付いた。

(どういう趣向だ?)

キンバリーは首を傾げる。

すでに風音がただのランクF冒険者とは思っていないが、弓花ほどの実力は想定していない。或いは弓花の能力を笠に着て…などという邪推がまだ心の中であったのかもしれない。だからプランの「はじめっ」という掛け声とともに起こした風音の行動にキンバリーは度肝を抜かれた。

「スキル・ゴーレムメーカー・ナイトーさん及びナイトーさん」

持っていた剣を地面に突き立て風音はスキルを発動させる。

「!!!!!??????」

キンバリーがそれを唖然と見ていると地面からニ体のキンバリーほどのサイズの土人形が出来上がる。そして両者とも地面に突き立てられた剣を取ると、剣の切っ先を上に、剣の腹を前にし正面に掲げ、騎士の誓いの構えをとる。

「なんだと!?」

それにはキンバリーも驚きの目で見ている。

その様子に満足そうに頷く風音。そして風音はキンバリーを指差した。

「目標あれ、やっちゃって」

その声と同時に土の騎士たちがいっせいに走り出した。

(二本の剣は呼び出したゴーレムの武器かッ。だがランクFでやることじゃあないだろ)

ゴーレムを作れるレベルの魔術師ならランクCなど当たり前だろうとキンバリーは考える。魔術師職は稀少であるしそもそもギルド内での評価基準も違う。

だがキンバリーの驚きはそこで終わらない。目の前で振り下ろされる剣は3つ。そう、風音自身がオフェンスに加わることでキンバリーは3対1の戦闘を強いられることになる。

「チィイ」

さすがのキンバリーもこれには焦る。剣を打ち込んで牽制をかけようとするが、強く打ち込めば隙も大きくなる。相手が3人ではその隙をやられるのは目に見えて明らかだ。だから小刻みに手を動かし威力よりも手数で捌くしかないがそこまでしても如何せん分が悪い。故に形勢不利と考えたキンバリーは目を見開き、スキルを発動させる。

『予測眼』と呼ばれるスキル。相手の情報を得ることで行動を予測し攻撃を読むそのスキルはさきほどの弓花との戦いでも使用されている。これがなければ弓花の勝利だったというわけではないが、少なくともラッシュをすべて受けきった神業はこのスキルによるところが大きい。

しかし、そんな強力なスキルが発動したところでキンバリーの勝機は上がるどころか

(バカなッ)

彼の目は予測される敗北を告げるだけだった。

「まっ、参った!!」

その声とともに風音と親方以外の全員が何故?という顔をした。風音の呼び出した騎士型ゴーレムによって状況は3対1。確かに劣勢だが風音の素人剣術相手ならば十分に抗せるだろうと弓花は考えていたし、プランもジローもモンドリーも風音の剣の技量は知らないがキンバリーの剣技はランクAクラスに達していると見ていた。ならば数の論理をどう覆すか…という問題になるだろうと四者は予測していたのだが、親方から見れば最初にゴーレムが完成する前に切りかからなければ詰みである。

風音には魔術があり、2体のゴーレムは守る必要のない捨て駒そのもの。守勢に立たされた時点でただの的にされるのは目に見えている。

親方は風音の魔術の腕を知らないがゴーレムを作れるのならグリモア3章程度の術は確実に使えるだろうと思っていたし、事実キンバリーの予測眼は風音の魔力から炎の魔術の気配を感じていた。実戦ではないので殺傷力のある魔術は使われないにしても、

(試験官である自分が力を加減される立場になった時点でもう負けだろうな)

そうキンバリーは判断した。

「私の負けです」

「……」

風音はキンバリーのその様子を観察した後「ちぇっ」と舌打ちしながら騎士型ゴーレムの術を解く。ズサササと崩れ落ち、二つの砂の山ができた。

「もっと色々見せたかったのにな」

「これはただの試合ではなく試験試合だ。ゴーレムを出した時点で君は合格なんだよカザネ」

キンバリーの言葉に、え、そうなの?…という顔をする風音だが親方も「?」という顔をしていたし、それは弓花もジローもモンドリーも同様だった。ただひとり事情に通じているプランだけが頷き、

「中級召喚術師はランクD資格があればそれだけでランクC免除なのよ」

と未だ驚きを隠しきれていない顔で口にする。