軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

色仕掛けの予定はない

ところ変わって王城の煌びやかな一室。

あの日のルクセンブルク会議は、規定時間を大幅に延ばしてもはや大会議になり(元々規定時間とかないけど……)、今後の展望を延々語ることになった。

そして今日、ここに集まったのは再びその話をするためだ。

いやぁー、サフィアやリリー嬢たちから「貴族やめるかも」発言がダイアやアレクサンドラたちに伝わっちゃったんだよね。んで、それをさらにまた聞きしたマイ親友国王陛下からお呼び出しがかかりました。

体裁は保たれた書面なのに「あ゛?どういうことだ?」ってドスの効いた声が空耳で響く不思議。

文面から感情って読み取れるんだね。

なので、ちょうどいいので一度に説明をするべく集まって貰った。

頼み事と聞きたいことがあったので、リリー嬢たちも呼び、アイリーンにそれからアイーシャのお姉さんコンビも招集。

そしてそれにともない提案のためにダイア、アレクサンドラ、サフィアにも声をかけた。

メラルドがいるのはおまけだ。騎士団に「手合わせしてくださいー!」って突撃した帰りに廊下でバッタリ会った。

騎士団はお前の遊び場じゃねぇからな?

「で?どういうことだ?」

説明しやがれ、とばかりに腕を組んだ国王陛下様が 顎(あご) をしゃくった。

どうでもいいけど、ティハルトどんどんガラ悪くなってない?

若い子たちが 吃驚(びっくり) してんじゃん。

ちゃんと取り繕って!

「今後の身の振り方を考えるにあたって、外野が 鬱陶(うっとう) しいから王都社交界から離れるのもいいかなーって」

「却下」

他人(ひと) に言っといてなんだけど、友人や教え子などある意味身内ばかりの場なので取り繕わず放った発言は一言で却下された。

「そうは言っても利点も認識しているだろう?」

「…………」

痛いところを突かれたのかティハルトがむっと黙り込む。

そう、利点も確かにあるのだ。

最近の俺はちょっとばかり……で済ませていいかはわからないが、目立ち過ぎた。

公爵家として影響力が高いのは悪いことではない。

だが俺は公爵家の血筋でありながら当主を弟に譲った嫡男。

元々ガーネストに正式に家督を譲る前も、俺にも擦り寄る奴らとガーネストに擦り寄る奴らの派閥があった。一度は落ち着いたそれが近頃また盛り返してきつつある。

「外野が勝手にやってるだけだし、ガーネストならすぐに実力で認めさせられると確信しているけどね。それでも 鬱陶(うっとう) しいものは 鬱陶(うっとう) しい。私のくだらない噂も含めて落ち着くまで雲隠れするのも手かなと」

「だから爵位をやろうとしてるんだろうが」

「それは嫌だってば」

最近よくする平行線の会話にアイリーンが苦笑いしている。

またやってる、って思ってるんだろうな。

様々な思惑から再び俺を当主に推す声も上がっていたりする。

くっだらねぇ。

公爵家(ウチ) で話がついてんのに外野がごちゃごちゃほざいてんじゃねぇよ。

当事者たちの間ではわだかまりなんてないのに、主役を他所にドンパチやるのが派閥だったりする。

ティハルトはルクセンブルク公爵家とは別の立場を与えようとするが、それはそれで断固御免だ。

責任だの立場だのは欲しくない!

「俺のことなら気になさらないでください。カイザー兄上がそのことで不利益を被ることなどありません」

「不利益じゃないよ、私自身が望んでるだけで」

散々話し合ったのに、新事業は賛成してくれたが田舎暮らしは相変わらず反対のようだ。

「貴族籍を抜けるのは半分冗談というか、最終手段?」

皆から最終手段では考えてるのか……って目で見られた。

「貴族を辞めるって…………」

困惑と驚きは貴族として生まれ、貴族として生きてきた彼ら(リリー嬢たち除く)からしたら当然の反応なのだろう。俺だって前世の記憶がなければそっち側だったかも知れない。

「まぁ、なんとかなります」

「なんとかって……」

「実際、生きる分には困らないと思いますよ?仕事だって店舗のオーナーもやってて収入はありますし。教師だってやってる、冒険者だの護衛だの肉体労働だって出来るだけの実力はあるつもりです。自炊も可能だし、簡単な家事なら下手な庶民より出来ますよ」

こうして考えると俺って貴族としては生活力異様に高いな。

そんな自画自賛をしていると「そうだった……」と絶句する皆さん。

「あっ!じゃあオレと一緒に騎士団入りましょう!」

グッドアイデア!!とばかりに目をキラキラさせるメラルドの発言は大却下。

だからさぁー王都から離れよっかなーって言ってんじゃん。聞いてた?

「オーナーってなんですの?それに自炊と家事……?」

「そうよ、リリアーナのオーナーなのよあの人。料理もプロ級だから」

「え……。意味がわからないのですけど……」

「そう、意味わかんない人なのよ」

こそこそ話すアイーシャとアイリーン。

アイリーン……意味わかんない人とか失礼すぎない?

「確実に私より女子力高いっ!……っていうか能力が不公平すぎるっ」

『ズルい!』と心の叫び全開で頭を抱えるリリー嬢は、どうやらバレンタインを手作りしようとして失敗したことを引きずっているようだ。

そしてベアトリクス……「じょ、女子力はお兄様と比べたらダメです!」って発言もどうかと思う。お兄ちゃん複雑ー。

「お前……まさかこれ見越して店開いたのか?」

「まさか」

誰が見越してたかっつーの!

魔王だの皇子だのに間違われて、『無能』のどん底評価が急上昇とか予想もしてなかったわっ!

「まぁ、爵位は元々手放す気だったから将来の為っていうのはあったけど。それに何があっても生きていけるだけの知識や技術は身につけようと思ってたけどね」

何気ない言葉だったのだが、室内がシンとした。

聴こえる心の声から察するに、また色々と勘違いを生んだようだ。

俺的にはゲームの不遇の兄の立場と万が一ベアトリクスが悪役令嬢ルートを迎えた時の為だったんだけど。

アンジェスの皇子絡みのアレコレだと思われたっぽい。だからそもそも無関係だというに。

もうやだこの勘違い!と思うも悪役令嬢 云々(うんぬん) も説明できないからもどかしい。

「とりあえず話を戻しますね」

空気を変えるように話を戻した。

「あまりにも持ち上げられたり、危険視されたり、今後も周囲が面倒そうなら貴族社会から縁を切ることも一案なんですけど、あくまでそれは最終手段です。それだと他の交流も難しくなりそうですし」

面倒な社交界からは離れたいが、家族だの友人だのと縁を切る気は毛頭ない。

……が、立場をなくせば関わりにくくなるのもまた事実。

「なので、ひとまず女性を味方につけてみようかと思って」

にっこりと笑顔を作ってそう告げた。

「社交界を仕切るご婦人方でも落とすつもりなの?」

「色仕掛け……。それこそ最終手段ですわよ」

「しませんけどっ?!」

真顔なお色気コンビの発言に、笑みは消え失せ思ず叫ぶ。

言い方も悪かったかも知れないけど、めっちゃ真剣な顔でなに言ってんの?

彼女らの中で俺の認識どうなってんのさ?

聞きたいけど、怖いから聞かない。

「なぁーんだ、色仕掛けじゃないのね」

なんでちょっと残念そうなの?

不満気に唇を尖らすお姉さん方は無視し、額を押さえた。

精神的にどっと疲れた。