軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

手間のわりに豪華っぽくみえるのがいいよね

はーい、今年もやってきました。

ルクセンブルク・クッキング教室のお時間です!

乙女の決戦。バレンタインの今年のメニューは『ガトーショコラとクッキー』となっております。

ちなみに会場はルクセンブルク公爵邸ではありません!

なんとっ!今回は出張クッキングとなっております!!

脳内でそんな無理くりテンションあげたナレーションをしつつ、エプロンの紐を結ぼうと後ろ手に手をまわす。

エプロン姿が似合わない?

知るか、ほっとけ。

誰に言われたわけでもないのに、心の中でそうノリ突っ込みをする俺の瞳は 若干(じゃっかん) 死んでる。

今年も間近に迫った乙女の決戦の日。そして昨年同様、可愛い妹たちにお菓子作りの講師を頼まれた。

………これ、毎年恒例になるの??

そして今年はなんとメンバーが増えております。

我が国のプリンセスこと、シェリルちゃん!そしてリフとマオも参加です。

ベアトリクスからお菓子作りの話を聞いたシェリルちゃんが、仲間に入れて欲しいって頼んできたんだよね。それは別にいいんだよ。

去年のことでベアトリクスもカトリーナ嬢も、姉さんやリリアみたいな壊滅的センスの持ち主じゃないってわかったし。シェリルちゃんは手先器用なこと知ってるから不安もないし。それは別にいいんだ。

「ルクセンブルク様、こちら用意が整いました」

「有難う御座います」

ぎこちなさを隠しつつ、声を掛けてくれた壮年の男性へと心からの礼を述べた。なんなら礼だけじゃなくて謝罪もしたい気持ちだ。俺、悪くないけど……。

テキパキと用意されたボールや材料。

広いキッチンを動き回るシェフ達の心の声がこう言っている。

『なんで??』

『公爵家……だよな?』

『この人達……なんで 城のキッチン(こんなとこ) 居んの??』

それな!!

疑問しかない彼らの心からの問い。それに全力で同意する。

けど一言だけ、言わせて。

それ、俺も聞きたい。

……と、いうことで(?)、バレンタインのお菓子教室in城の厨房。

まずは手を綺麗に洗いましょう。

エプロン姿が可愛らしい美少女たちはきゃっきゃ、きゃっきゃとお菓子のデザインなどを話しあってる。その脇ではリフがマオの手洗いを手伝ってあげていて、さらにその隣……。

俺以上に死んだ瞳をしてるのがリアンだ。

『……』

もはや心の声すら無言なリアン。

そんな彼は「お菓子作り=リアンの異能」な認識のベアトリクスによって引っ張りだされた。そして同じ認識のガーネストによって快く送り出された。

本人の意思は 無視(スルー) 。哀れ……。

「じゃあ、私とリフがチョコレートを担当するから、ベアトリクスたちはメレンゲのお手伝いをしてくれるかい?」

「「「はい」」」

チョコの 湯煎(ゆせん) は俺がやる!

もしかしたら前世の姉に、チョコに直お湯ぶっかけられたのがトラウマなのかも知れない……。

チョコレートとバターを 湯煎(ゆせん) で溶かしつつ生クリームを合わせる。隣ではリフが卵黄とグラニュー糖を、白っぽくもったりとするまで混ぜ合わせている。

メレンゲは非力な女の子たちには大変だろうと、城のシェフたちが協力してくれてます。女の子たちはそこに砂糖を三回程に分けて加えていく係。

そしてリアンの『冷却』の異能は、本当に料理人に大人気の異能だね。

生クリーム泡立ててるシェフたちに引き抜きかけられてるけど、あげないよ?ウチの子だから。

俺とリフのボウルの中身を数度に分けて合わせ、さらにメレンゲを1/3ほど加えて混ぜる。薄力粉とココアを振るい入れたら、残りのメレンゲも二回に分けて加える。

メレンゲは潰さないようにふんわり混ぜる!!

ここ重要なポイント!!テストに出るよ!!!

それをクッキングシート的なものを敷いた型に流し込みます。

女の子たちは小振りのハート型の型を選択。俺は無難に丸いホール型にした。どうせなら味見もしたいだろうし、このあとで皆で食べる分ね。

「あとはお願いしますね」

「お任せ下さい」

お願いすれば、壮年のシェフは快く請け負ってくれた。

焼きの作業はシェフ任せ。だって高性能なオーブンなんてないし、焼き加減の調整とか難しいから。前世みたいに余熱や温度調整とかピピッってできないしね。

……っていうかさ?俺、必要だった???

城なんてシェフいっぱいいるんだし、プロにお任せすればいいんじゃねぇ?

解せぬ…………。

「じゃあ次はクッキーを作ろうか。生地は用意してくれてるので、じゃんじゃん型を抜いて下さいね。特にシェリル様」

「……すみません」

申し訳なさそうに頭を下げるシェリルちゃんに緩く首を振る。彼女は悪くない。

では、誰が悪いかというと…………彼女の兄上たち&義姉ですね。

そもそも 何故(なぜ) 、城でお菓子教室が開催されたのか。

そして何故、今年もクッキーがあるのか。

それは 偏(ひとえ) に、シスコン共の張り切りによる。シェリルちゃんの兄たち・つまりはティハルト、ダイアをはじめとしたシスコン王子たちが、可愛い妹が手料理をすると聞きつけたからだ。

すぐさま城のキッチンが手配された。(第三王子による)

無駄に大量の材料が手配された。(第二王子による)

「シェリルも料理をするそうだな(そうですね)?」とやたらと話を振ってくる王子たち。(ティハルト、ダイア含むほぼ全員)

「誰にあげるか聞き出してください!」と泣きつかれ。(第六王子)

味見と見学の為に潜入しようとして追い出された王子たち。(第三王子と第五王子)

つまり俺がシェフたちに 胡乱(うろん) な目で見られているのも、ここでお菓子教室が開催されているのも、 偏(ひとえ) にシスコン共の 所為(せい) である。

まぁ、同じ 同志(シスコン) として気持ちはわからんでもないがな。

クッキーは 兄(シスコン) 対策です。

手間のかかるお菓子を幾つも作ってはいられないし、クッキーなら最悪トッピングなしで型抜きだけでもOKだしね!

大量生産可能だし、ベアトリクスたちも皆に配ったりするだろうからもってこいだね。焼きは 勿論(もちろん) 、シェフ任せ。

「さて、と。私は調理にかかるかな」

「なにを作りますの?」

「秘密」

「楽しみですわ!」

「本当、私も楽しみです」

そう言われたら頑張らなきゃな!

美少女たちの声を受けながら、下がってきた袖を再び捲った。

「リアン、悪いけど手伝って」

作るのはアイスクリーム。

リアンの異能の本領発揮だ。

牛乳や上白糖を鍋に入れ、沸騰させないように気をつけながら上白糖を溶かす。

ボウルに卵黄を溶きほぐして、先程温めた牛乳と上白糖を加えて混ぜ合わせたものをこして再び鍋に入れたら中火にかける。

木べらで混ぜながら5分ほど煮て、とろみがついてきたらボウルに移して氷水で冷やす。

別のボウルで生クリームを6分立てぐらいに泡立ててー、冷やしてるボウルに加える。バニラビーンズやリキュールを加えたらバットに移して冷やします。途中スプーンで混ぜたりしながらまた冷やしたりの繰り返し。

本来なら冷やす工程は1時間30分程度~2時間以上はかかるのだが、リアンの異能のお蔭で大幅に時間短縮。素晴らしい。

冷やしている間に別に生クリームを泡立てたり、王子たちによって用意された苺だののフルーツをカットしたり。(フルーツとか特に使う予定なかったのに準備されてた)

チョコを 湯煎(ゆせん) してソースを作ったり、焼きあがったガトーショコラを少しだけ先に切り分けて細かく 賽(さい) の目にカットしたり……。

さて、何故こんなことをしてるかといいますとね。

覚えておいでだろうか?

先程、元凶はシェリルちゃんの兄上たち&義姉と言ったことを。

そう、 義(・) 姉(・) 。

あの 女王様(アイリーン) の「まぁ、素敵!私もカイザー様のお菓子を食べてみたかったの!!楽しみだわー!!」というお言葉によりこの後、ティータイム開催決定。

王子たち?不参加ですよ?

妹の手作りを一刻も早く食べたくて便乗しようとしたものの「駄目よ、 折角(せっかく) のイベントなんだから。 当日(バレンタインデー) を楽しみにしてなさいな」という言葉で追っ払われてた。

……自分はいいのかよ?!とか、バレンタインなのに俺が作るの?!とか、言いたいことは沢山あったけど……言ったところで勝てる気が皆無だからすごすご従う俺。

すげぇ昔を思い出すぜ……。姉さんたちにこき使われてた頃を。

でも姉さんたちは自分が作れないから、母さんや俺に代わりに「作って!」ってねだってたのはまだわかる。

でも城ならシェフ居んじゃん!頼めばプロが超絶美味しいの、いくらでも作ってくれんじゃん!!

そもそも俺、別段お菓子作り趣味でもなければ得意でもないからね?

いや、一般男性としては得意な方かも知れないけど、プロとは比べものになりませんよ。レパートリーだって別に豊富なわけでもない。なのでそんな俺が苦肉の策で思いついたメニューがこちら……!

細長いグラスに生クリームにアイスクリーム、チョコレートソースや美味しさ折り紙付きの高級フルーツ、ガトーショコラやナッツなんかをお 洒落(シャレ) な感じにトッピングして。

チョコレートパフェ、完成です!!