軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第748話 神界闘技場強襲⑥※他者視点

第一天使ルプトが数千の天使を引き連れて道場に転移してきた。

8000体ほどだろうか、元居た天使たちと合わせて1万体弱となり、700体の魔王軍に比べて十数倍の数となった。

槍、爪、ブーメラン、弓を持ったそれぞれの天使が一様に、切り刻まれ遺体となったムライや他の天使たちに視線を移した後、魔王軍の陣形を見る。

『な!? 本当に魔王軍ではないか!!』

『我らが神聖な道場を汚すとは!!』

『奴らを生きて返すな!! この神域を荒らしたことを後悔させるのだ!!』

道場を破壊され、多くの天使を殺された様を見て、やったるぞと天使たちが殺気立ち意気込んでいる。

『今はそのようなことをしている場合ではありませんとご説明したはずです! 武具神様はもちろんのこと、師範、師範代の指示を聞いて速やかに陣形を固めてなさい!!』

第一天使ルプトがさっきも話しただろうと言わんばかりに天使たちの先頭にたつ武具神たちを見ながら天使に落ち着くように声を上げた。

『そうだ静まれ! 我の指示に従い、剣隊の背後に我の修行者どもは並べ!!』

半裸で無精ひげの槍神ガイダルクが槍を担ぎ、剣を持つ部隊の背後に並べと言う。

『最後尾に弓隊を据えよ。遊軍隊を200体ほど槍隊に混じり……』

両側に結んだおさげが可愛い弓神コロネは、メルル並みの身長なのに2メートルにはなろう巨大な長弓の下部を握り、自らの部隊に淡々と指示を出す。

他にも爪神クワルコムと投擲神カイリが自らの下で修業する天使たちに指示を出し始める。

『へえ、ルプト。頭使うじゃん。声かけは他の天使共にさせて準備できた武具神たちをこっちに引き寄せたのか。頭でっかちのケルビンにも聞かせてやりたいぜ』

剣神セスタヴィヌスが自らの剣を担ぎながら感心する。

槍、弓、投擲、爪の4つの武具神の神域にルプト、ケルビン師範、2体の師範代がそれぞれ向かった。

ルプトはケルビンと2体の師範代に対して、個人を対象とした転移ができるので説明したら神域に待機するように指示した。

準備が整い次第、ルプトが3柱の武具神とその下へ修行する天使たちを回収し、剣神の道場に転移する算段を、方々に散る前に済ませていた。

これは少しでも早く、7柱の武具神とその下で修業する天使たちを剣神の道場に応援に駆け付けるためだ。

第一天使ルプトは100体を制限に情報伝達、100カ所または個人を対象に転移する能力がある。

だが、状況の把握に努めているのは天使側だけではない。

『援軍か。まだ3柱はこの場にいないか……。ケルビン共がさらなる援軍を要請しているのだろう。敵の天使共は集まりつつある! 陣を固めよ!!』

この場に残り3柱の武具神やケルビンがいないことに速やかに気付いた総司令オルドーが、配下の魔神たちに指示を出す。

『は!!』

魔神たちは十分に訓練を受けているのか、速やかに守りを優先した陣形を取る。

勇者ヘルミオスと一緒に、アレンのパーティー、勇者ヘルミオスのパーティー、ガララ提督、ゼウ獣王子とテミを除く十英獣がこの場にいる。

「いきなりなんだよ。ひでえ状況だな。アレンところに合流した方が……」

魔王軍と神界の神々や天使たちが戦いに向けて動き出す中、キールも自分らも何かすべきだとアレンのいないこの状況で指示を出そうと口を開く。

だが、ルプトがキールの下へ翼を広げて側へやってくる。

『キールよ。シャンダール天空国より救難信号があるとアウラより聞いています』

ルプトは、神界闘技場を移動しながらも、情報収集に努めていた。

この場にいない第一天使の配下のアウラたち3体は別行動をとって、他の神々への連絡や応援要請を行っている。

ルプトにはその3体の大天使とも常に連絡を取り合うスキルがある。

「え!? 神界人や竜人たちがあぶないじゃないですか!!」

『そのとおりです。いまアウラたちが大地の神ガイア様など属性神様に声かけを行い、まもなく、大地の迷宮にいるゴーレム隊10人と共に急行する予定です』

天空大王の救難の呼びかけを聞いたアウラがルプトに対してスキルを使って情報を共有し、キールたちに戦力を分けるように言う。

「じゃあ、キール君たちは天空国に行ってあげて。僕の戦いでもあるからね」

勇者ヘルミオスは総司令オルドーを一旦見た後、キールに話しかけているルプトの要請に答える。

「シアがそちらに行くのであれば、余はこちらに残ろう。ガララ提督はシアたちと共に向かってくれ」

「おいおい、まじかよ……」

ゼウ獣王子の決断にレペの絶句がかき消されていく。

「ああ、2パーティーずつで分けるって話だな。俺たちはメルルと一緒に居た方が良いだろ」

ガララ提督も納得し、仲間もゴーレム使いに意気込んで賛同する。

クレナは肉片となったムライの遺体を見て、怒りが込み上げてくる。

「私もここに残って戦うよ!! ムライさんの仇討たなきゃ!!」

『グオオオオオオオオオオオオオオォ!!』

クレナの思いに答える100メートルに達するハクが、殺意をむき出しにして魔王軍が轟く。

クレナも残ると言うとハクがクレナの感情に感化されたのか、魔神たちが目を見開き、巨大な道場の端の壁がガタガタと揺れる。

『……どの程度の戦力が天空国で必要か分かりませんが、皆様の意志を尊重しましょう。では今の話のとおり天空国へ移動させます』

一刻を争う状況で細かい調整はしないとルプトは言う。

天空大王からの説明についても不明瞭な点が多く、優先すべき箇所が現状分からない。

シャンダール天空国へと速やかに転移するとルプトは言う。

「ザウレレ将軍と部下のゴーレム使いが来ているんだ。それはちょうど良いかも! タムタムも出ておいて!」

会話に参加しなかったメルルが転移する前に自らのゴーレムであるタムタムを出すようだ。

「おう、そうだな。おめえたちもゴーレムだしとけ」

「おう!!」

キールが答える横で状況を説明したメルルにも戦いの策があるようだ。

ガララ提督が配下で同じパーティーの13人のドワーフたちがゴーレムを降臨し、戦闘態勢に入っていく。

『では、転移させますよ。場所はアウラが設置した王都ラブール近隣の都市シャウパ上空です!!』

巨大な魔法陣を構築し、ルプトが霊力を行使すると、クレナ、ハク、ヘルミオスとそのパーティーを残して全員をシャンダール天空国へと転移した。

【アレンたちの配置戦力状況:戦闘開始30分後】

①時空神・魔法神イシリスの神域

・アレン、ソフィー、フォルマール、ルーク

・クワトロ、グラハン、リオン、他召喚獣40体

・マクリス(①③共有)、ペクタン(①③共有)、他召喚獣45体

・8体の大精霊、8体の精霊、8体の幼精霊

・セシル(修行中)

・ララッパ団長(避難中)

②神界闘技場編

・クレナ、ハク

・ヘルミオスパーティー、

・ゼウ獣王子と十英獣(テミ除く)

・剣神、弓神、爪神、斧神とそれぞれの下で修業する天使軍1万体弱

③シャンダール天空国王都ラブール

・アレン残りパーティー(クレナ、ペロムス、ハク除く)

・ガララ提督パーティー

・竜王マティルドーラ

・メルス、ルバンカ、マグラ

・マクリス(①③共有)、ペクタン(①③共有)、他召喚獣45体

・守主アビゲイル率いる竜人軍およそ1万(王都待機分)、獣人100人

※残り3柱の武具神、ケルビンたちと1万体の天使軍が②に駆け付ける予定

※属性神とザウレレ将軍たち10人も③に参加予定

※ルプトおよびアウラたち3体の大天使は後方調整のため3つの戦線どれにもカウントしない

『ほう、余裕だな。我らを相手に隊を分けるとはな。どうせ、天空国から泣きつかれて加勢にでも行ったのだろう』

総司令オルドーは様子を見ながらも陣形を組むことを優先し、攻撃を仕掛けてこなかった。

『へ~分かって行かせたのか。その余裕、後悔させなきゃね』

『どうやら、何やら策があるようだな。ヘルミオスよ、油断するな。私はお父様とルミネアお姉さまに状況を報告中よ』

「はい、武神様」

神器オハバリ越しに武神オフォーリアがヘルミオスが語り掛ける。

『ほう、武神もこの戦いに興味があると見える。戦神と共に戦いに参加するつもりか』

オルドーが武神の発言に注視しており、自らも神器オハバリに話しかける。

この場には上位神である闘神3姉妹のうち、剣神しかいない。

『……自らが何者か忘れた馬鹿に語る必要があるのか?』

『なんだと? 何者か?』

神器オハバリ越しに武神が振り払うように一蹴すると、角に何か痛みがあるのか、顔をしかけながら、オルドーは自らの巨大な角に触れる。

『おや! いけない、いけない。武神もこのままじゃやってきそうだ。総司令オルドー殿もよろしいですね!!』

オルドーと武神の会話を断ち切るようにキュベルが胸元をごそごそしながら黒い玉を取り出した。

『そうだな。戦況は厳しいが、魔王様のため失敗は許されん。参謀キュベルよ。始めよ』

魔王軍が何かを始めるようだ。

まだまだ陣形を組んでいる途中であるし、魔王軍がこちらの様子を伺ったように何らかの罠であるとも考えられる。

最善の策としてヘルミオスや武具神たちが様子を見る中、キュベルが陣形に話しかける。

「もっとだよ。もっと固まるんだ!!』

『は!? もっとでございますか』

元々、神界側が応援が来た段階で作戦通り陣形を固めたと思っていた上位魔神の1体がいぶかし気に声を上げた。

『そうだよ。これはシノロム所長に頼んで作らせた強力な補助効果があるアイテムを使うんだ。押され気味の状況だからね! みんなを強化してくれるんだ。ささ、寄った寄った!』

魔神たちが十分に寄ったところで、キュベルがオルドーを見る。

『大魔王様の悲願こそが最優先よ』

オルドーが構わずにやれと言う。

『ほい、皆強くなーれ! 化身石~!!』

玉をキュベルが放り投げると空中でパリンと割れて、漆黒の闇が団子状態に固められた上位魔神や魔神たちに降り注ぐ。

『な、なんだ。ぎゅへああああああああ!?』

『体が。我の体ぎゅれれれれれれれれれ!?』

怒号とも奇声とも聞こえそうな声を口々に叫び、魔神たちが邪神の化身に姿を変えていく。

やられた魔神も化身石から出る光を浴びてメキメキと肉をうごめかし復活するようだ。

『ふん、生きて帰った者がいれば、取り立ててやっても良いと魔王様は仰せだ。しっかり働け』

「も、もう、なんなのよ。私も天空国へ行きたかったわ……」

ロゼッタが絶句する。

「邪神の化身だ。何で魔神が邪神の化身に?」

クレナはエルマール教国で起きた邪神の化身騒動を覚えている。

あの時、人間たちがなった邪神の化身とは見た目は異なるが、変貌ぶりに近い何かを感じとった。

「魔王の強化のため、その後も研究していたってことかな」

ヘルミオスがクレナの言葉に答え、真意を読み取るようだ。

単眼のドベルグが魔王軍の魔神たちを睨みつける。

「皆殺しだ。こいつらを倒さねば、クラシスは助からぬ」

いよいよ戦い始める開始の合図はこの道場の主だ。

『そのとおりだ。一気に畳みかけんぞ!!』

天使軍はロザリナのバフによってさらに強化されたが、魔王軍は邪神の化身となってなりふり構わず攻めてくる。

剣神セスタヴィヌスの言葉に、お互い攻撃の手が止まっていた両軍の熾烈な戦いが始まった。