軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第697話 霊獣ネスティラド戦⑤

ネスティラドの左腕の拳によって繰り出すスキル「吸引爆拳」に合わせるようにアレンは距離を詰めていた。

ドゴラがこの攻撃を受けたら即死しかねない。

「お、おい!! 陣形どうすんだよ!!」

思わず声を上げたのは回復役のキールだ。

ルークに続き、アレンまでもが中衛から前衛に変わり、残るはフォルマールしかいない。

前衛と言う後衛を守るための防壁を失えば、パーティーは瓦解する状況だ。

攻撃を受ける前衛が増えれば、回復の手が足りなくなる可能性もある。

(確かに陣形は大事だ。だが、ネスティラドが体力を回復させるスキルを持っているなら別だ。圧倒的な火力で叩かなくてはいけない!!)

キールへの返事よりもネスティラドへの攻撃を優先する。

「霊呪爆炎撃!!」

振り下ろした斬撃によって、高熱と共にアレンの剣がネスティラドの左腕の軌道を僅かにずらした。

おかげで、ドゴラは躱し、攻撃に移ることができた。

(流石の速さだ。だが、これくらいなら!!)

『よし、俺も前線を維持する。回復を怠るなよ!!』

このまま前線に配置を変えるとアレンは判断する。

「ああ、もう! 分かったよ!!」

キールの声が後方から響く。

「よっし。もっとデバフをかけて、皆でさっさと倒そうぜ!!」

アレンが前衛に加わり、一撃、さらに一撃とデバフを込めた斬撃をお見舞いする。

ミスやデバフ無効になりながらも、ゆっくりとデバフが発動し、ネスティラドのステータスが削られる。

後方のハク、マグラ、前衛のクレナ、ドゴラ、シア、メルス、イグノマスがさらに攻撃を過激化する。

アレンやメルスだけではなくほかの仲間たちも幾度とないルークのデバフによって、攻撃は随分通じるようになってきた。

『いい加減にせよ!!』

「むぐ!?」

(いきなり狙ってくるなんて。鳥Fで偽装してたのに。だが、これはこれでちょうどよいか!!)

リーチの長い右腕の横殴りの攻撃がアレンに迫った。

仲間たちの返事や視線の動きをよく見ていたようだ。

アレンが指揮役でパーティーを動かしていることが、鳥Fの伝達を使い、ネスティラドには聞こえないよう指揮していたが分かっていたようだ。

狙いを定めたアレンへの攻撃はネスティラドからの手刀を躱せそうにない。

だが、アレンの胴体を切断するのではという攻撃を受けながらも、避けることもなくネスティラドへと斬撃をお見舞いした。

『ぐ!? くそ!! おい!!』

「メルス! 不満はよせ! 攻撃に集中しろ!!」

隣で攻撃を受けていないメルスが不満の声を上げるが、アレンが一喝する。

「マジかよ。痛みを分散できるって本当かよ」

『そういうことだ。敵は思った以上に知恵があるようだ。これ以上の状況説明は不要だ。ルークはすまないが「呪詛禁刃」をデバフの1つに織り込みつつ、弱体化させ続けてくれ』

「アレン、分かったぜ!!」

メルスが天使Cの召喚獣を防具として着こなせるようになったため、攻撃の幅が増えた。

防具の効果には、デバフに対して強い耐性があるものや、耐久力や素早さのステータスがかなり上昇するものがある。

そんな中、ネスティラド戦に向けて優れているのは、成長レベル9まで上げオリハルコンの見た目をした「硬天の鎧」だった。

【硬天の鎧の効果】

・一心同体:発動中、召喚士の受けたダメージの半分を肩代わりする。天使の召喚獣の受けたダメージを召喚士に半分肩代わりさせる

・絶対防御:発動中、体力および耐久力を10万上げて防御する。回避率100%上昇。物理、魔法、ブレス耐性大。耐久属性を神聖属性。発動時は他の特技、覚醒スキルは発動できない。クールタイムは1日

アレン目掛けて、ネスティラドの攻撃が苛烈さを増していく。

攻撃を避けることは最小限に抑え、アレンも剣を振るう。

だが、この戦況はいつまでも続かなかった。

『そろそろ1体目の「呪詛禁刃」の効果が切れるぞおおおお!!』

ネスティラドの背後で覆いかぶさるように絡みつく2体の骸骨のうち1体が、喉元を両手でそれぞれひっかくように、息ができず苦しそうに悶え始めている。

これはスキル「呪詛禁刃」の効果が切れ始めた証だ。

効果が切れると、デバフの発生確率がかなり低くなってしまう。

仲間たちの雨あられの攻撃の中、ルバンカを瞬殺し、メルスに重症を負わせた右腕のスキルをネスティラドは発動する。

『消え失せよ! 駿円斬界!!』

ネスティラドは体幹を軸に右腕を手刀にしながら回転する。

メルス、アレンの順に凶悪な一撃が襲い掛かる。

『ぐふ!!』

「むん!!」

(痛いやん。だが、攻撃力を下げてくれたおかげで、致命傷で済んだぜ)

あまりの衝撃にメルスもアレンも防具が損傷し、骨が砕け、大いにダメージを受けるが、メルスが消えることも、アレンが倒されることもなかった。

『キール回復だ!!』

『早急に頼む!!』

ネスティラドの強力なスキルであっても、体力を共有したアレンとメルスには、一度に2人の体力を削り切られるほどではなかった。

吹き飛ばされることもなくその場にとどまり、大技を使い隙のできたネスティラドに剣戟を浴びせる。

「ああ、もう。回復が間に合わん!!」

「はわわわわ、あまり動かないでください」

『全くじゃ。目が回るの~』

『いひひ。私もです』

回復役はキールを筆頭に、ソフィーの水の大精霊、天の恵みを持つ霊Aの召喚獣だ。

アレンもメルスも、そしてそのほかの仲間も重なりかかったバフによって10万~30万ほどのステータスを有する。

そんなアレンたちと対峙するネスティラドは倍近いステータスを持っていそうだ。

この戦いの中で、つつがなくアレン、メルスはもちろんのこと、ダメージを受けた仲間たち全員を回復させないといけない。

リーチの長い腕を持つネスティラドの攻撃を受けるのはアレンやメルスだけではない。

秒間に数発の攻撃が交わされる中、魔力や霊力を溜め、回復魔法を発動し、次のスキル使用に備える一連の行動をするのに、ネスティラドの攻撃は速すぎる。

薬神ポーションの試練を超えたキールは回復魔法のレベルが8に達しており、エクストラモードに達したが、あまりにも相手が強すぎる。

【キールの回復魔法のレベルによる名前と効果簡易版】

・スキルレベル1:ヒール、体力回復小。対象は単体

・スキルレベル2:ハイヒール、体力回復中。対象は単体

・スキルレベル3:ヒーリングレイン、体力回復小。対象は範囲中

・スキルレベル4:グレイトヒール、体力回復大。対象は単体

・スキルエベル5:ヒーリングウインドウ、体力回復中。対象は範囲大

・スキルレベル6:オールヒール、体力回復極大。対象は範囲小

・スキルレベル7:リカバリ、体力回復極大。攻撃ダメージ軽減。対象は単体

・スキルレベル8:リカバリサンシャイン、体力回復極大。攻撃ダメージ軽減。対象は範囲中

装備品である神秘の首飾りの効果がのって、仲間全員に強力な回復魔法がかかり、さらに複数の回復魔法を使い分けることによって、クールタイムによる回復不能を避ける。

だが、それでも人手が足りないと判断したキールには、解消する術があった。

「よし、 神技発動(アルティメット・ヒーラー) !! 神薬草園(エリクサーガーデン) !!」

キールは、神技「神薬草園」を発動した。

神聖な光がキールを中心に地面を波紋のように広がっていく。

ポコッ

雲で出来た地面から新芽が誕生する。

一気に成長すると、ムクムクと成長していき、茎の先端に赤い花が咲く。

「ぐは!?」

ドゴラがネスティラドの一撃を受け、大きく後退した先で赤い花を踏みつけた。

ポンッ

花は弾け、中からキールの込めた霊力が溢れた。

瞬く間に傷が治った

「うっし。回復したぜ」

【神技「神薬草園」の効果簡易版】

・発動中、半径1キロメートルの範囲に回復効果のある神薬の芽が息吹き続ける

・30センチメートルほどに成長すると色とりどりの咲かせる

・踏むか10メートル以内に接近、花が成長して1分経過すると花びらが散る

・花びらが散ると花の色により一定の効果をもたらす

・赤の花は半径100メートルの仲間の体力を全回復する

・青の花は半径100メートルの仲間の魔力※を全回復する

・黄の花は半径100メートルの仲間のデバフを解除する

・緑の花は半径100メートルの仲間の疲労を回復する

・銀の花は半径100メートルの仲間のバフ持続時間を2倍にする

・金の花は半径100メートルの仲間のクールタイムを半減する

・虹色の花は半径200メートルの仲間に全ての色の花の効果をもたらす

・レベルアップ事に効果範囲が100メートル増加する

・効果は1時間

・クールタイムは1日

※魔力は神界では霊力に変換

前衛、中衛、後衛、そしてネスティラドの背後にいる仲間たちの足元に色とりどりの花をもたらす。

(ガチャ要素が高いのはキールの性格を反映したものか)

キールの神技「神薬草園」の効果によって、前衛の体力がガンガン回復するようになる。

また、後衛や中衛も魔力や霊力の残量を気にせず魔法やスキルを使えるようになった。

『ふう、助かったのじゃ~』

回復役の水の大精霊が安堵の声を漏らす。

「2体目のやつも解除されそうだぞ。畜生!!」

口の悪いルークはキールの神技の恩恵に喜ぶ余裕がなかった。

ネスティラドはデバフの効果によって、耐久力と耐性が下がり、仲間たちの攻撃に体力は削られ始めたが、まだまだ、やられそうにない。

だが、スキル「呪詛禁刃」の効果が全て切れてしまいそうだ。

そうなるとデバフの効果が効きづらくなる。

ルークのスキル「呪詛禁刃」によって掛かりやすくなったデバフの効果は、何度も解除されながらも、掛け直しを続けてきた。

ここにきてデバフが効かなくなると、せっかくの攻勢に水を差してしまう。

アレンは側で必死にデバフをかけるルークの心情を汲み取った。

今こそ、大技でネスティラドの体力を大いに削り取る状況であると判断する。

(押し込むぞ!! グラハン! メルス!!)

『うむ!』

覚醒スキル「憑依合体」でアレンの中に宿るグラハンも、アレンの思いに答えた。

アレンとメルスが同時にとびかかり、2人ともネスティラドの首元目掛けて交差するように襲い掛かる。

「ソウルセイバアアアアア!!」

『スパークリングスラッシュ!!』

メルスと2人で息を合わせてアレンは斬りかかるのであった。