軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第696話 霊獣ネスティラド戦④

ルークがデバフを与え、アレンの表情に歓喜が溢れる。

(うおおおおおお! 一番いいデバフが通ったぞ!! 流石ルーク! ルークは俺が育てた!!)

『よし、効果が通ったぞ! ルークは再度『呪詛禁刃』の重ねがけを!!』

「ん? もう一発当てるのか?」

『そうだ。1回効いて2回目は効きやすくなったはずだ。メルルにハク、マグラも攻撃参加の準備を! 勝利は目前だぞ!!』

鳥Fの召喚獣を通じて、アレンの力強い指示が戦場を駆け抜ける。

「分かった。ディグラグニオンだ!!」

『おう! 俺の出番だな』

タムタムの中で操作するメルルの言葉に、ダンジョンマスターディグラグニが魔導キューブ越しに力強く返事する。

メルルの掛け声にディグラグニが上空に生じた魔法陣から出てくる。

変形してパーツに分かれたディグラグニが、タムタムのボディを覆っていく。

『僕も戦える!!』

『やれやれ、召喚獣とは面倒なものよ……』

ハクはようやく戦闘に参加することを喜び、竜Sの召喚獣となったマグラはため息をついた。

(よしよし、急いでくれよ。1回目の効果がどれだけ持つか分からないからな)

ルークが1発目のスキル「呪詛禁刃」をかけて、5分も経たない時だ。

『うああああああああ!!』

スキル「呪詛禁刃」が再度発動し、2体目の骸骨がネスティラドの背に覆いかぶさる。

『ええい! 煩わしいわ!!』

(ぐふふ。ルークの呪いを受けるが良い。これで勝てるぜ)

ネスティラドが思わず、背中に手を伸ばし、両肩を大きく動かしふるい落とそうとするが、実体がないためか、触ることもできない。

【ルークのスキル一覧(簡易版)】

・神技発動:神技を発動できるようになる。

・精霊神の障壁:足元広範囲に漆黒の闇が現れる。全ステータス低下。全耐性低下。効果は大。設置型。持続型。範囲攻撃

・太極図:陰陽の太極図が足元に現れる。ステータス低下。仲間のステータス増。効果は中。設置型。持続型。範囲攻撃

・酸の渦:酸を飛ばす。耐久力低下。効果は中。単体攻撃。クールタイム3分

・毒沼津波:毒の津波を広げる。毒効果。耐久力低下。効果は中。範囲攻撃。クールタイム60分

・呪詛禁刃:呪いの刃を突き付ける。骸骨の怨霊を背負う。デバフが効きやすくなる。効果は大。単体攻撃。クールタイム1時間

※発生確率および持続時間は、術者の知力に依存。対象の知力や耐性に依存

※神技のクールタイムは1日

※スキルの重ねがけは可能

「よっし、総攻撃だ。ルークは神技発動後、敵の耐久力低下デバフのスキルを優先してかけろ! ハクとマグラはネスティラドの前後からブレス。タムタムの遠距離攻撃で叩き込め。伝令で情報を伝えるから、ブレスのタイミングでドゴラ以外はネスティラドを壁にしろ!!」

2回目の「呪詛禁刃」によって条件は揃いつつある。

「いっくぞ!! 神技発動(アルティメット・スピリット・マスター) ! 精霊神の障壁! 太極図だ!!」

ハクが翼を広げ、中衛、後衛を潰さないよう上空からネスティラドに接近する。

口元に炎が溢れたかと思ったら、一気に炎を吹きつけはじめた。

『ぐおおおおお!!』

ルークの背後から炎が迫った。

「うおっと! 危ない!!」

距離を詰めたかと思ったらネスティラドに向けてハクは迷いなく、特技「終焉の炎」を浴びせる。

シアとクレナはネスティラドの股から滑るように背後に回り込む。

イグノマスはデバフを続けるルークの首根っこを掴むとそのまま自らを壁にして、少し遅れて、ネスティラドの背後に回り込んだ。

共有しているマグラと違い、ハクには攻撃のタイミングを任せている。

仲間たちの攻撃は受けないという都合の良い世界ではないため、広範囲魔法やブレスを使う仲間は避けるか使用を禁止しなくてはいけない。

だが、攻撃力に威力が乗るブレスを禁止しては、ネスティラドの体力を削り切るのは不可能だ。

前衛に張り付く仲間たちが避けるなり、耐えるなりしないといけない。

「ぬぐぐ!!」

スキルに集中するルークに対してイグノマスは咄嗟に、首根っこを掴んで自らの体を壁にすべく手繰り寄せる。

「大丈夫か!!」

「いいからスキルに集中しろ。これほどのブレスが効いていないとは……」

少し遅れたためか、自らの体を神器ワダツミを手にした際獲得した神技「行雲流水」で水の障壁を作っていたのだが、沸騰する程の威力に少々ダメージを受けてしまった。

だがそれ以上にこれほどの威力をもってしても、ネスティラドは平然と中空を浮くハクを何もなかったかのように睨みつけている。

『煩わしいの……』

前後からの遠距離のブレスと近距離攻撃により、ネスティラドは不快そうに右腕を振り上げ、霊力をメリメリと込め始める。

一歩前に前進し、火攻撃吸収でブレスを避けずに攻撃を続けるドゴラに向かって、腕を振り下ろそうとする。

その瞬間をタムタムの中に乗るメルルが望遠画面を使い、視認していた。

「よっし。このタイミングだ! タムタム!!」

『はい! 後退弾!!』

ミサイルが砲門から発射され、右腕に向かって当たり爆散する。

『ぐぬ!?』

(む? 後退しなかったがナイスタイミングだ!!)

タムタムの特技「後退弾」は、単体ダメージと共に敵を後方に吹き飛ばす効果がある。

敵の耐久力が高くても多少下げることができる。

特技の効果は敵の攻撃をキャンセルすることにある。

敵が放とうとした攻撃をキャンセルし、後退させることが出来たら、敵の姿勢が無防備な状態にすることもできる有用スキルだ。

ディグラグニオンしてステータスが10万も増えたタムタムによってネスティラドの攻撃がキャンセルされたことを見逃さなかった前衛がいる。

「おら!! 俺1人になっても前には行かせないぜ! 全身全霊(フルブレイズ) だ!!」

中衛、後衛の陣を組む側をネスティラドの前方として陣形を組んでいる。

その結果、前衛たちは前面に人を多く配置したのだが、背面に移動すると中衛と後衛たちのいる前面ががら空きとなる。

『あまり攻め込み過ぎるな。また吹き飛ばされるぞ。一度攻撃すれば、すぐに退避できる距離まで下がれ』

ネスティラドに斬撃を与えることができる1メートル程度の場所にいるのと、5メートルの場所にいるのでは攻撃を受ける確率は大きく違う。

前衛だからと言って、攻めだけに気を取られるなとメルスは言う。

「分かってらあああああ!!」

『メルルとフォルマールは作戦通り、引き続き、ネスティラドの頭部を狙え!!』

ブレスのような広範囲攻撃と違い的を絞ることができるなら、前衛に当たらないようにするに限る。

「いくよタムタム! 光弾発射!!」

『光弾!!』

後衛のさらに背後にいるメルルが乗り込むタムタムが圧倒的速度の光の弾を肩の砲台から発射する。

砲台が光ったかと思ったら超加速でネスティラドの頭部で爆散する。

「真・強打!! むん!!」

発動のタイミングに合わせて、眼球目掛けて神技「無限の矢筒」によって矢に変えたSランクの威力を込めていた。

フォルマールも負けじとネスティラドの額目掛けて矢を射る。

だが、特技「光弾」の弾は額に当たるなりはじけ飛び、スキル「強打」の矢は眼球を射抜くことはできず、無情にも四散する。

「まだ全然固いぞ! お!? この感じは!! 少し柔くなったぞ!!」

(ん? ステータスが少し増えた!!)

ドゴラは神器カグツチの切れ味のわずかな変化を感じた。

アレンは魔導書で自らの各ステータスが2000ほど上昇したことが分かる。

神技「太極図」は相手のステータスを自らのものに変えるものだ。

持続効果で太極図の中にいる者は常にステータスを吸われ続ける。

それは、神技「精霊神の障壁」も同じだ。

「よっし、神技が両方効いてきたぜ!!」

『今度は背後から行くぞ!! 炎極殺!!』

召喚獣になる前から使えた特技「炎極殺」を駆使する。

『総攻撃を続けろ!! クレナたちは前面に戻れ!!』

アレンは鳥Fの召喚獣で叫ぶ。

『むぐあ!!』

ネスティラドの叫びに仲間たちは着実に勝利が見え始める。

設置型のルークの2つの神技「精霊神の障壁」「太極図」がネスティラドのステータスを削り、近距離からのデバフを込めたスキルも何度も発動している。

結果、ようやくであるものの着実に効いてきており、シアの拳のめり込み具合、クレナの大剣の切れ味にも明らかにダメージが乗り始めた。

待っていましたと言わんばかりにハクやマグラ、それに前衛たちがブレスや刃を浴びせる。

それでもネスティラドの耐久力も耐性もまだまだ高いためか、ミスや攻撃無効が発動するものの、ダメージは蓄積しだした。

メルスが素早さおよびスキル発動短縮のバフをかけているため、次の攻撃への連携も早い。

(よしよし! 削れ削れ。ボスの体力は削るもの!!)

『クソガキどもが!!』

雨あられの攻撃を受けてもネスティラドは倒れない。

この戦果をもたらしている者がルークなのは分かっているようだ。

よく分からない呟きを言い、行動原理も分からないが、頭は回っているようだ。

霊力を込めた左腕を大きく振り上げた。

(ん? 左腕?)

アレンは一瞬、ネスティラドの攻撃に違和感を覚える。

右腕は攻撃主体であるが、左腕は防御やバフ、デバフ系のスキルを有する。

さらに、ルークは3メートルほどの位置まで離れており、5メートルのリーチしかない左腕では後方に下がれば、攻撃を避けることもできる。

だが、ルークのように体力も耐久力も低いステータスだと、ネスティラドの一撃は即死に繋がる。

ルークの守り役もこなすイグノマスも、警戒しながらルークの背後につく。

さらに、ネスティラドの背後から横殴りの一撃を繰り出す者もいる。

『いかせぬ! 地獄突き!!』

3本の腕を使い、攻撃を浴びせてきた。

だが、ネスティラドはその攻撃をまっていたようだ。

『吸引爆拳!!』

『がは!?』

左腕が無数の拳になってルバンカを襲う。

拳の一撃一撃がルバンカにとってひん死となる威力が込められていたようだ。

光る泡となって消えていくのだが、その泡はネスティラドが吸収していく。

ミチミチ

ネスティラドの体力が全快していく。

これまで受けたダメージが回復していく。

仲間たちが再度、心が折れそうになる。

ルークのデバフはいつ切れるか分からない中、ネスティラドの傷は全て完治しており体力が回復してしまったようだ。

その一瞬の迷いとも言える隙をネスティラドは見逃さない。

『次は貴様だ。吸引爆拳!!』

「うわあああああ!?」

ドゴラに向かって絶望が襲い掛かってくるのであった。