軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第608話 霊石狩り②

先日は、原獣の園にアビゲイルを連れてやってきたのが、それなりに刻が経ってのことだ。

メルルたちのダンジョン攻略の休みだと召喚獣を自由に使える。

次の行動を、日をまたぐことにした。

ソフィーがアルバハル村の隣村から100キロメートルほど離れたところに要塞を作り、セシルとアレンが周辺の霊獣を狩って、安全面に配慮する。

これから死者0の霊石の狩場を準備しなくてはいけない。

(メルス、そっちの準備はいいか?)

『……問題ない。いつでも良いぞ』

(どうかしたのか?)

『ノルマの1日1万個がこれで厳しいと思っただけだ』

共有したメルスから僅かだが、イラつきのようなものが感じ取れる。

睡眠も食事も必要とせず、疲労もしないメルスには、休みの日には主に天の恵みを作って貰っている。

金の卵もそうだが、1日の作業で召喚獣からできるアイテムや回復薬は1万個程度が限界だ。

霊ABCの召喚獣たちや、睡眠から目覚めたメルルたちも手伝ってもらっての数値だ。

なお、今回の霊石狩りにはメルルたちに協力は求めない。

丸24時間の大地の迷宮RTAの翌日は24時間、十分な食事と睡眠をとって休んでもらう。

(今日は忙しいからな。そっちのノルマは良いから、こっちを優先だ。準備できたなら、目の前の広場に一気に転移させてくれ)

『分かった』

メルスの不満は、今度聞くことにしよう。

ノルマと決めたなら、達成しないとむず痒いものになるのは分からないでもない。

神界の霊障の吹き溜まり側の要塞に待機させていた竜人の守人のうち、4万人をメルスは覚醒スキル「帰巣本能」を鳥Aの召喚獣に使わせ転移させた。

「こ、ここが新たな狩場なのか」

「巨大な要塞の内側という話だが……」

「壁と階段以外何もないではないか」

(何もないとは失礼ね。確かに否定しないが)

既にアビゲイルの指示で選定が済んだ4万人の竜人が、困惑しながら口にする。

彼らが見たのは一片が10キロメートルにもなる正方形の要塞の外壁だ。

高さ50メートルについては、人間世界の要塞の規模からしたらそこまで大きいわけではない。

人員をたくさん配置できることに重点を置いたため、かなり広くしたのだが、それだけに外壁だけが視界の先まで続いている。

「アビゲイルさん、選定の方は大丈夫でしょうか?」

「うむ、魔法や弓、あとは遠距離や範囲攻撃のエクストラスキルを持った槍使いであろう。そんな者たちを優先して選定をしたぞ。だが、神の試練が終わっていない者も多いぞ」

「そちらについては構わないです。彼らへの指揮をお願いします」

(スキルのカンストなんて待ってたら霊石狩りが始まらないからな。ここがお前たちのスキルカンストの場になることだろう)

「うむ」

アビゲイルはアレンの言葉に返事すると、4万人の竜人たちの集団に向かう。

100人単位の兵長や1000人単位の将軍級の守人を集団の前に出し、指揮系統を発揮してアビゲイルが指示を出し始めた。

この場が新しい霊獣狩りであることを話し、ざわめきはすぐに落ち着いていく。

さらに小一時間ほどの説明の後、竜人たちは外壁に上がるための階段を4つの集団に分かれて上がり始めた。

「アレン様、外壁と主要な詰所、集会所しかまだ作ることができていません」

「十分な出来だ。詰所の横にそれぞれ、入浴場や食堂なども作って……」

ソフィーは10キロメートル四方の要塞の中に、中央には広場、その近くには大きな集会場、さらに東西南北の四方には大き目の兵たちが休むための詰所を土の精霊の力を借りて作成した。

さらに、優先して竜人たちが暮らせるために必要な施設をいくつか作ることにする。

「分かりましたわ」

1回の説明でソフィーが理解してくれて、アレンは助かると思う。

「すまないが、要塞を作りつつ、兵たちのサポートもしてくれ。その後、話していた通り、もう1つ同じ要塞を作るからな」

要塞は2つ用意する予定だ。

アレンのこれからすることを考えると、ある程度距離が離れたところに、もう1つ要塞があった方が霊石の回収量は増える計算だ。

「私はどうするのよ」

朝から、アレンたちの動きを静観しているセシルが口を開く。

「セシルは俺が霊獣を引き連れてくるから、この要塞で竜人たちと一緒に霊獣を狩ってくれ」

「あら、私も倒していいの? 竜人たちの仕事奪っちゃうわよ」

「まずはどんなことをするのか知ることが大事だからな。レベルもさっさとカンストさせたいし。召喚獣たちも協力して一掃するぞ」

圧倒的な殲滅力のあるセシルがかなりの霊獣を狩ることになるだろうが、それは構わないとアレンは言う。

昨日から、頭上には虫Aの召喚獣たちが、外壁の下には虫Bの召喚獣たちが、産卵をして数を増やしながら、外壁の周囲を竜人たちがやられないよう守りを固める。

セシルを外壁の上で攻撃のために待機させ、ソフィーに要塞の完成を目指している間、アレンは外壁の上空で1体の虫Aの召喚獣を側に呼ぶ。

『ギチギチ!』

王化はしていないものの、全長30メートルにもなる巨大な蜂の姿をした召喚獣だ。

大顎を鳴らし、上空に浮くアレンの近くでホバリングする。

アレンは虫Aの召喚獣の頭の上に手をかざし、1体の召喚獣を召喚した。

「今日の出番はお前だ! ピョンタ!!」

『ゲコゲコ!!』

虫Gの召喚獣は虫Aの召喚獣の頭の上で嬉しそうだ。

「最初は俺も一緒に行くぞ。慣れたらお前たち2体でやってくれな」

『ゲコ!!』

この2体が霊石1億のための要と言ってもよい。

(ピョンタよ、家族のためにアルバヘロンを一緒に狩ったのはお前だったな)

アレンのために最初に、魔獣アルバヘロンを呼び寄せて、レベルアップに導いたのが虫Gの召喚獣だ。

懐かしい気持ちを抱くアレンは、頭の上に虫Gの召喚獣を乗せた、虫Aの召喚獣と共に、要塞から距離を取り始める。

巨大な要塞の外壁の上からも、巨大な虫Aの召喚獣が見えないほど移動した。

「ふむ、やはりここもわんさか霊獣がいるな。守人みたいな制度が原獣の園にはないみたいだから仕方ないか。よし、ピョンタ始めるんだ」

100メートル以上の上空を飛翔するアレンの眼下には数十、数百の霊獣がいる。

虫Aの召喚獣の羽音が結構響くので、気付いている霊獣もいれば、そうでないのもいる。

アレンが虫Gの召喚獣に視線を送ると、待っていましたと虫Aの召喚獣の頭の上で一言鳴いた。

『ゲコ!!』

成長レベル9まで上げ、ステータスが最大3万に達する虫Gの召喚獣は覚醒スキル「扇動」を使う。

キラキラと7色の虹色に交互に輝きだした虫Gの召喚獣はまるで挑発するように、上下に大きく飛び跳ねる。

『ギュルオオオ』

『ギャギャヂャ』

『ゴルオウ!!』

半径10キロメートルほどの広大な範囲で霊獣たちが、様々な声を上げ、殺気立ち全力で追いかけてくる。

「よし、ハッチ。絶対に追いつかれるなよ。もう少し霊獣たちを釣って、要塞に戻ろう」

『ギチギチ!!』

覚醒スキル「扇動」によって虹色に発色する虫Gの召喚獣をめがけてやってくる霊獣を避け、移動した先では、新たに霊獣たちを挑発する。

(うしうし、順調に増えてきたな。釣狩りのケンピーとは俺のことよ。ふむ、一度に連れてこれる霊獣は10万が限界かな)

前世でタンク職である聖騎士をしていたころ、その圧倒的な体力と耐久力を活かして、陣地で守る仲間にモンスターを届ける釣役を、進んでやっていたころを思い出す。

1万、3万、5万と殺到する霊獣の数が増える。

ただ、霊獣の集団があまり大きくなると、後方の多くがアレンたちに向かうのを止めてしまう。

釣狩りの極意は、どれだけ短期間に、どれだけ多くの対象を陣地に連れて帰るかが肝要だ。

10万体の霊獣を左右にくねりながら虫Aの召喚獣を移動させ、アレンたちへの攻撃の 認識(ヘイト) を切らさないようにする。

『……やってきたようだ。聞いていた通りかなりの数だな。皆構えよ』

メルスがアビゲイルやセシルたちのいる外壁の上で声を上げる。

1キロメートル以上離れているのだが、外壁の上ならそろそろ視界に入るころだ。

「何よ。どれだけ、連れてきてんのよ」

『アレン殿がプチメテオは使うなといっている。霊石が壊れるからな』

「分かってるわ」

メルスからセシルに改めてくぎを刺す。

セシルのエクストラスキル「小隕石」や、メルスの覚醒スキル「裁きの雷」は威力がでかすぎるため、ステータスが1万もない霊獣たちは、消し炭になってしまう。

今回の目的はあくまでも霊石狩りだ。

この狩りだけで20万個の霊石を回収できると思うと涎が止まらない。

虫Gの召喚獣を頭に載せた虫Aの召喚獣と共に、ソフィーが作ってくれた外壁の周りをアレンは旋回する。

霊獣たちが均等に要塞の外壁を覆ったところで、アビゲイルは大きな声で合図をする。

「全員、目の前の霊獣たちを攻撃せよ!!」

「おおおおおおおおおおおおおおお!!」

守主のアビゲイルが掛け声を上げると、竜人たちは魔法や弓矢を霊獣たちに向けて放った。

槍使いなどの物理系統の才能についても、スキル「飛剣」のように、遠距離攻撃は存在する。

虫Gの召喚獣をしまわないため、霊獣たちの意識が竜人たちへ向かうタイミングが遅れ、もろに攻撃を受けているようだ。

セシルたちや召喚獣たちの協力もあって、1時間もしないうちに一掃した。

「ふう、結構倒したわね」

セシルが外壁の下を覗き込むと霊獣たちが泡を立てて消え始めている。

霊獣たちは主に3種類の系統に分かれる。

元魔獣系、植物系、鉱物系だ。

【霊獣の系統】

・元魔獣系は、青白い炎でかたどられた魔獣や大型の人の姿をしている

・植物系は、様々な種類の移動可能な植物の姿をしている

・鉱物系は、鉄や石、時には貴重な鉱石や貴金属で象られた魔獣の姿をしている

元魔獣系は倒されると、霊石を落とし、残りは燃え尽きた炎のように消えてしまう。

植物系と鉱物系はその体は素材となり、体内には霊石が埋まっている。

「おお、こんなにたくさんの素材があるぞ」

「おお、あの輝きはなんだ!!」

竜人たちは膨大な数の霊獣を倒した興奮そのままに眼下の貴重な素材に、欲望を露わにする。

神界では、雲の上のため、あらゆる資源に乏しいため、眼下の景色は宝の山のように見えたようだ。

「次は霊石の回収かしら」

竜人の様子には目もくれず、セシルはメルス越しにアレンに次の予定を確認する。

『いや、まだだ。次が来るぞ』

ドドドドドッ!!

セシルが見たのは、遥か視界の先の大地が土煙を上げている光景だった。

乾燥した原獣の園の大地を霊獣たちが群れとなってやってくる。

アレンは狩りには参加せず、次の霊獣を釣りに要塞から離れていっていた。

その先頭にはおかわりと言わんばかりのアレンと虫Aと虫Gの召喚獣がいたのであった。