軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第570話 大地の迷宮RTA③

アレンは何とか出来ると自信満々に言う。

「レアな魔導盤拡張端子が低階層で出たからな。金塊じゃどうせ買えなかったし」

店で買うには、金塊が20個必要だ。

魔導盤拡張端子という言葉を聞き、ゴーレムからメルルやガララ提督たちが降りてくる。

「たしか、ガララ提督はこれで裏面も穴が10個になるはずですよね」

「お、おう。だが、メルルにも言っていたんだが、ザウレレ殿に1つも付けなくていいのかよ」

ここにきてずっと思っていたことを口にするようだ。

「次はザウレレ将軍ですね」

アレン軍のゴーレム隊のザウレレ将軍に先に渡すべきだと言う。

「そうですよ! 提督が先に付けちゃってくださいよ!」

ガララ提督のパーティーの仲間たちも喜んで賛同する。

「ガララ提督、ほら、魔導盤借りますね」

「お、おい。金塊が……」

ガララ提督の話を聞くこともなく、首に下げた魔導盤を手に取り、裏面を向けると石板をはめるための穴が9個ある。

大きなネジのような形をした魔導盤拡張端子は、元々表面に石板をはめる穴が10個しかないのだが、更に裏面に石板の穴を開けることができる。

パアッ

魔導盤拡張端子を近づけると、拡張端子は光る泡となって消え、ガララ提督の魔導盤の裏面に穴が9個から10個になった。

魔導盤の穴に、それぞれの効果を発揮する石板をはめなくてはならない。

石板には3個の穴や5個の穴など、複数の穴を必要とするものも多くある。

強力な力をゴーレムに宿らせるには、魔導盤に相応の個数の穴を消費するという形で代償が必要だ。

(さて、こんないいアイテムなら、S級ダンジョンでも出してくれたらいいんだが、神界の試練を超えないといけないということか……、さてと)

アレンが仲間たちやガララ提督たちを見ると、神妙な顔をしている。

買うための金塊はない。

大地の神の用意したアイテムを、無断で消費したことになる。

「よし、ここだとあれだな。もう少しこっちに寄ってきてくれ」

人間ほどの大きさの土偶が入り口の中央に立っているのだが、入り口自体の幅が100メートル以上ある。

「これって、まさかのまさかよね……」

「ここが大事なところだ。皆集中するように。メルルたちドワーフは外に出たらゴーレムを降臨させて乗り込むんだぞ」

「え? う、うん」

メルルたちドワーフが首に下げた魔導盤を握りしめ、入り口の端、店と通路の境ギリギリに集まる。

ピュ~ピュピュ~

アレンがちらっと土偶を見て、ワザとらしく口笛を吹いている。

『お代の金塊をまだ頂いておりません』

「今だ! 行くぞ!!」

「や、やっぱりって! 何が今なのよ!!」

アレンが行動に移した。

メルルたちドワーフは速やかにゴーレムを降臨させ、すごい勢いで乗り込んでいく。

カッ

店番をしていた土偶の目が光った。

『泥棒発生。ハニワ部隊、コマイヌ部隊は泥棒を退治してください!!』

土偶が大きな声を発したと思うと、床石が振動を始める。

モコモコ

地面の頑丈な床石が粘土のように動き出したかと思うと、古墳の中に入っていそうな盾と剣を持ったハニワの兵と、神社で守り神をやっていそうなコマイヌがあふれ出した。

アレンは速やかにクワトロに特技「鑑定眼」を発動させる。

【名 前】 ハニワ

【年 齢】 1025

【種 族】 大地の番人

【体 力】 38000

【霊 力】 33000

【攻撃力】 42000

【耐久力】 34000

【素早さ】 30000

【知 力】 34000

【幸 運】 0

【攻撃属性】 土

【耐久属性】 土、物理耐性(中)

【名 前】 コマイヌ

【年 齢】 1025

【種 族】 大地の番犬

【体 力】 27000

【霊 力】 30000

【攻撃力】 28000

【耐久力】 17000

【素早さ】 48000

【知 力】 23000

【幸 運】 0

【攻撃属性】 土

【耐久属性】 土、魔法耐性(小)

『バウバウ!!』

『お代を頂きます!!』

(金払えって感じじゃねえぞ!)

体長5メートルほどのハニワと体高3メートルほどのコマイヌがワラワラとアレンたち目掛けてやってくる。

土人形のハニワは土で出来た剣を握りしめており、コマイヌの牙も凶悪そうだ。

殺意高めでお金を払っても許してくれそうにない。

「セシル。犬っころのほうは魔法で何とかできそうだ。火魔法でいけ!」

セシルの持っている魔法属性の中から、有利な属性を選ぶ。

「もう、知らないわよ! メガファイア!!」

『キャン!?』

セシルの放った巨大な火球にコマイヌは飲み込まれ、泣き叫びながら吹き飛ばされる。

しかし、

モコモコ

床という床、部屋という部屋から、ハニワと番犬が何十、何百と沸いてくる。

「何よどんどん出てくるわよ。て、キャア!?」

「むん!!」

叫ぶセシルにハニワが飛び上がってすぐそこまで迫ってきた。

アレンはセシルが襲われる直前で、おもいっきり切りつける。

さらに立ち上がろうとするハニワの胸の部分にオリハルコンの剣を深々と差し込んだ。

『お、お代を……』

ハニワはボロボロと崩れていく。

(倒したのに魔導書が出てこないだと!? こいつら経験値にもならないってことか)

「逃げます! 道順は覚えていますので、撃退は最小限でお願いします」

得るものが無いなら態々倒す理由はない。

「おう! お前らも続け!」

「へい!!」

「うん、分かった」

メルルやガララ提督たちを先導するようにアレンが先頭を、セシルとソフィーが遠距離の魔法や精霊の力で撃退しながら、階段目指して進んでいく。

「これじゃあ完全に強盗じゃない!? か、階段見つけてるんでしょ。転移しなさいよ!!」

セシルが思わず皆が思っていることを代弁する。

「転移の数に限りがある。そこまで離れた距離じゃないし、死ぬほどの一撃でもない。ここは一気に突っ切るぞ」

(なるほど。盗まれることも前提のハニワとコマイヌか。よく考えられている。階段が見つかっておらず、スコップもないなら、あきらめざるを得ないかな。選択を与えているあたりも面白いな)

流石に階段の位置が分かっていないなら、同じ階層で転移して逃げてもハニワやコマイヌが待ち伏せしているだろうから逃げられない。

商品を、盗むのか、買い物するのか、諦めるのか、どれを選択するのか判断するのも、このダンジョンの攻略の鍵のような気がする。

「もう、何、ニヤニヤして!!」

あまりのやり込み要素にアレンが喜びを表情に出していることも、セシルは怒りを覚える。

これが終わったらしっかり締めることを心に刻んでいるようだ。

「お! 階段です! 皆迅速に下りてください!!」

ガララ提督がいるので、丁寧な口調を心掛けるアレンが最後に残り、敵を吹き飛ばしながら仲間たちを階段の下に逃がす。

最後にアレンが下りると、待機して待っている。

「追ってこないわ。な、何とかなったわね」

「え、ええ、ここまで追ってこないのは優しさでしょうか……」

息を切らすセシルと、困惑気味のソフィーが辺りを見回している。

逃げ込んだ先の8階層の階段のある部屋は落ち着いたもので、霊獣もいない。

「ほらな。下の階層まで襲ってこないのは、霊獣だけでなくハニワたちも一緒だったと」

「そういうのは先に言っておいてよね」

「まあ、メルルたちが大人しいやり方で攻略していたからな。検証が足りないと99階層まで行けないからな」

霊獣が下の階層には降りてこないことに気付いたアレンが、今回のお店の商品を盗むという考えに至った理由の1つだ。

(俺たちは魔法神イシリスの神域を目指すし、ずっとここにいるわけにもいかないからな)

アレンは攻略のコツを伝えるためにも、無茶なやり方もできるとメルルたちに伝えている。

アレンと同じ召喚スキルが使えるメルスに対しても、今回のやり方を経験させる意味もあった。

「さてと、店があったら基本的に盗むぞ」

そう言いながら、店で盗んだ魔力回復薬(大)を消費し、盗んで逃げきるために消耗した仲間たちの魔力を全回復させる。

「え? 金塊があっても盗むの?」

「もちろんだ。盗めるのに買ったら、本当に必要な時に金塊がないだろ」

『まだ学習不足なのでしょうか、私には理解できません……』

アレンの悪い顔に、メルルもタムタムも理解できないと困惑する。

少し落ち着いたところで、階段のある部屋を出て、直進の通路を進んでいく。

(さて、逃げるのに夢中だったが、召喚獣たちも下の階層に降ろさないと)

目下、鳥Aと鳥Eの召喚獣たちは上の階層で、ハニワやコマイヌを通り避けながら、アレンたちのいる8階層目指して移動中だ。

(む? 一方通行が続くな。というか、この階層に来てから、通路が分かれていないぞ)

「もう、そんなこと言ってバチが当たっても」

「ちょっと待てセシル。この階層はあまり良くない。このまま……」

大地の迷宮のダンジョンの構造は入る度にランダムなのだが、ある一定のルールがあるようだ。

この逃げ場のない構造にアレンはすぐに、この先に何があるか気付いた。

想定していた良くないことが待ち伏せている。

『グルルルル!!』

『シャアアア!!』

『アウアアア!!』

「これは『霊獣の 住処(すみか) 』じゃねえか、野郎どもぶっ倒すぜ!!」

「へい!!」

「うん、やってしまおう!!」

ガララ提督の声がゴーレム越しに響き渡る。

メルルもガララ提督の仲間たちもやったるぞ感あふれる返事を返す。

『全員撤収します! 後退します! メルルはしんがりを守ってくれ!!』

「え? ちょっと、アイテム回収しないと」

メルルがそれは惜しいと言う。

霊獣たちが100体を超える部屋の中には、10を超える宝箱が落ちているからだ。

こういった霊獣を殲滅し、アイテムを回収しながら下の階層を目指していたメルルにとって、アレンの行動は理解できないでいる。

(召喚獣たちはまだか。やむをえんな)

『そんなことをしていたら、魔力も時間も消費してしまう。逃げるのに魔力を使ったのに、これ以上の魔力の消費はありえない。スコップを使うから、皆、下の階層へ移動するぞ』

アレンはそう言うと握っていたスコップを床石にぶつけた。

スコップが当たった数百メートル四方の床石が光る泡となって消え、とても深い穴ができた。

どうやら下の階層と繋がったようだ。

パァ!!

しかし、アレンの持っている銅のスコップも光る泡となって消える。

「おい、1回で消えるとはどういうことだ!!」

「さっきの泥棒のせいでしょ。やっぱりアレンは運がないわね」

至極まっとうなツッコミを入れるセシルに仲間たちは皆、力強く同意するのであった。