軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第571話 大地の迷宮RTA④

霊獣の住処を脱出するため、銅のスコップを使って降りたアレンは、さらに下の階層へと進んでいた。

入り口から10時間ほど経過したアレンたちは、10階層に存在する扉の前にいる。

扉は漆黒のアダマンタイト製で厳つく、扉の中央に封と表示されてある。

(1階1時間ペースか。初回にしてはまあまあだな。99階層攻略は無理そうだが、ここからスピードアップしていきたいな。さてと)

ミニ土偶の腹にある時計から、正面の扉の取っ手部分に取り付けられている鍵穴に、アレンは視線を移す。

『いわゆる「鍵部屋」だな』

「そうなんだよ。すぐには襲ってこないと思うけど。すごい強敵だよ」

『皆、注意を。中にボスがいます。恐らく、亜神級の霊獣かと』

「ああ、いつでもいいぜ」

メルルやガララ提督が、特技「伝達」越しに話すアレンの言葉に返事をする。

「ここがボスの間ね。10階ごとに出るって話ね」

「そういうことだ、セシル。中に入るには鍵が必要だけどな」

(随分凝った設定だな。ワクワクさせてくれるじゃねえか)

この大地の迷宮というダンジョンは、大地の神ガイアが神界で悪さをする者のために造ったものらしいのだが、設定のあちらこちらにアレンの興味を持たせる仕様となっている。

【大地の迷宮攻略メモ③】

・10階毎に鍵付きの部屋が出る

・部屋に入るためには鍵が必要

・鍵は店(確率高)や宝箱(確率低)で手に入れることができる

・鍵は素材の強度によって耐久性が異なる

・銅の鍵だと使用すると1~3回で壊れる

・スコップで壁を掘ると通路ができ、複数回掘ると、隣の通路や部屋を繋ぐことができる

・スコップで床を掘ると下の階層へ繋ぐ入り口ができる

・スコップで床や壁を複数回掘ると、壊れてしまう

・スコップは素材の強度によって耐久性が異なる

・スコップで扉は破壊できない

・スコップで鍵部屋を覆う漆黒の壁は破壊できない

・壁よりも床を掘る方が壊れやすい

・銅のスコップで壁だと1~9回で壊れる

・銅のスコップで床だと1~3回で壊れる

パタン

魔導書を閉じたアレンは、店で強奪した銅の鍵を、同じく強奪した魔導袋から取り出した。

「……時間がないって言っていたけど、このボスは挑戦するのね。確か鍵があるなら、奇数階は挑戦しなくても良いって聞いたわよ」

大地の神の報酬は偶数回に存在する。

「そうだな。だが、この部屋は霊獣が一体で霊晶石もゲットできるからな。鍵もあるし」

霊獣の住処は殲滅するのに時間が掛かるが、ここの霊獣は霊晶石を落とす上に、落ちている宝箱が良い。

鍵があるなら立ち寄った方が良いとアレンは言う。

「確かにそうだね」

(メルルたちが集めてくれた3つの霊晶石はここでゲットしたのかな)

「……ちょっと、私が鍵を使いたいわ」

アレンがカギを握りしめて扉の前に向かう中、セシルが口を開く。

「何を言っている! これはパーティーリーダーの仕事なんだぞ!!」

(これだから素人は。俺ならできる。この鍵1本で3つの鍵を開けるんや)

「え!? そ、そうなの。じゃあ、アレンに任せるわね」

思いのほか大きな声で断言されたので、セシルはすぐに引く。

アレンは鍵穴に銅の鍵を差し込んだ。

巨大で厳つい扉に丸枠で表示された扉は「封」から「開」に変わったかと思うと、ふっと消えてしまう。

しかし、

パァ

「な、何だ。ハズレか!?」

銅の鍵もアレンの手元から崩れるように光る泡となって消えていった。

「やっぱり、アレンじゃダメなのね……」

セシルは何かを確信したかのように小さくつぶやいた。

「よし、お出ましだな。宝の番人だぜ」

両手で斧を握りしめる巨大な牛の霊獣が、ゆっさゆさと斧を揺らしながら立っている。

その後ろには4つの宝箱が鎮座しており、まるで宝箱を守っているようだ。

【名 前】ケンタロス

【年 齢】3280

【種 族】宝の番人

【体 力】90000

【霊 力】110000

【攻撃力】120000

【耐久力】80000

【素早さ】130000

【知 力】78000

【幸 運】0

【攻撃属性】風

【耐久属性】風

(ギリギリ亜神級の霊獣と見た。そこまで強くないが、態々、近距離で戦う必要はないか。敵は素早さ特化みたいだし。ここは距離をとって一気に……)

セシルやソフィーはそこまで耐久力が高くない。

メルルを除くガララ提督たちゴーレムは、目の前の霊獣の数分の1のステータスだ。

一撃で、乗組員のドワーフごと致命傷になりかねない。

ガララ提督の乗るゴーレムの目がカッと光る。

「よし、お前ら今回は順調に10階まで降りることができたぞ。いいか。合体は温存だ!! 一気に倒すぞ!!」

「へい!」「へい!」「へい!」

「僕も行くよ。タムタム、超電子砲だ!!」

(メルルのスキルって超が付くのいいね。浪漫を感じるぜ)

メルルは、エクストラモードになって初めて体得した超電子砲を使うことにした。

『畏まりました』

タムタムの両腕が変形し、1つの砲台に変わる。

『グモ!?』

早々に遠距離攻撃を決めにかかるメルルたちゴーレムの行動が、霊獣を動かすスイッチになっていた。

全長100メートルはある自らの体と同じくらいの巨大な斧を握りしめ、霊獣がメルルたち目指して突っ込んでいく。

床石を振動させ、突っ込んでくる霊獣に対して、ソフィーが動く。

「ライト様! 敵の視界を奪ってください!!」

『問題ありません』

光の大精霊ライトが、霊獣の周りにまばゆいばかりの光線を浴びせる。

牛の霊獣は視界を奪われ、全身が焼けただれながらも、まっすぐメルルの元に突っ込んでいく。

「 超電子砲(スーパーエレクトリックキャノン) !!」

メルルの発射を合図に、ガララ提督たちの集中砲火が始まった。

『グモオオオオオ!!』

それでも霊獣を殺しきるには、力が足りなかったようだ。

致命傷に近い攻撃を受け、体力を半分以上減らしながらも、最後の力を振り絞るように跳躍したと思うと、タムタムを両手で握りしめる大斧が迫る。

「あぶないわ! インフェルノ!!」

セシルが放つ巨大な炎の嵐が、霊獣を包み込み燃やし尽くそうとする。

しかし、炎の嵐から飛び出てきた霊獣はまだ体力が残っている。

「引いてください! 危ないですわ!!」

霊獣の捨て身の行動と、自らの体を砲撃に変えているゴーレムたちがすぐに退避に移せない状況にソフィーが声を上げた。

「霊呪爆炎撃!!」

(飛んでくれたおかげで倒しやすいと)

アレンはグラハンの覚醒スキル「憑依合体」を使い、さらに特技「霊呪爆炎撃」を発動させる。

霊獣の頭をアレンの一撃が真っ二つに切り裂き、霊獣は光る泡となり消え、地面に霊晶石を1つ落とす。

『霊獣を1体倒しました。信仰値10億を取得しました。霊力1億を取得しました。神力1億を取得しました。転職ポイント10ポイントを取得しました。レベルが223になりました。体力が250上がりました。魔力が400上がりました。攻撃力が140上がりました。耐久力が140上がりました。素早さが260上がりました。知力が400上がりました。幸運が260上がりました』

「うしうし。信仰値が10億ポイントも貯まったし、霊晶石もこれで6個目だ。くじを引く霊晶石が随分貯まってきたな」

(くじが楽しみだ。くじの事しか頭にない)

アレンは、くじは引く前が一番楽しいと思う。

「やったね。アレン!! 助かったよ!!」

タムタムから降りたメルルが喜びを爆発させる。

「やったぜ。アレン殿はやっぱりつええな」

(なんかガララ提督に褒められたのは初めてな気がする。そんなこともないか)

「でも、憑依合体使ったわね。残しておかなくて良かったの?」

「そうだな。ソフィーのスキルでもあと1回しか使えなくなったな。とりあえず、宝箱の中身の確認だ」

早速、4個の宝箱を開ける。

【4個の宝箱の中身】

・魔力回復薬(大)1個

・銅の鍵

・鉄のハンマー

・鉄鉱石

「めっちゃいいの出た! 鉱石とハンマーもある。これでスコップが強化できるよ!!」

メルルの目が輝く。

(このためにハバラクさんを連れてきたって話だからな。スコップがこのダンジョン攻略に必要だからな)

その後、出発から15時間かけて、18階層まで難なくたどり着いた。

10階を降りたあたりから、階段を見つけたら床落ちの宝箱を探すこともなく、下の階層を目指している。

アレンたちがたどり着いたのは、真四角の部屋だ。

壁側には炉が取り付けられており、火打ちをするための台も置かれている。

鍛冶場がアレンたちの前に姿を現した。

「あった。鍛冶場だ。ハバラクさん、スコップを鍛えて!」

「お、おう……。そういう話だったよな」

アレンが銅のスコップ、鉄鉱石、鉄のハンマーを魔導袋から取り出して準備する。

名工ハバラクが戸惑いながらも 茣蓙(ござ) に座り、貰ったハンマーでスコップを鍛える。

カンカンカン

銅のスコップと鉄鉱石が融合し、鉄のスコップに変わる。

「よっし。これで深い階層まで降りられるぞ!!」

メルルがかつてないほど両手を握りしめ、感情を爆発させる。

(銅のスコップばかりだからな。鉄のスコップはかなりレアらしいし。材料があればスコップを強化できるのはうまいぜ)

その後も、アレンたちは降りることを優先し、下の階層へ到着した。

20階層に到着し、下に降りる階段を探す。

下の階層へ降りる階段のある部屋の横には、大きな扉がある。

「なるほど、そのまま階段を降りてもいいけど、エクストラモードになりたければ、扉を開けよってことね」

「そういうことらしいな。ここの神々は、扉を開け、神域に入ることができた者を、モード変更の条件にしているみたいだしな」

エクストラモードと表現するより、「開放者」と表現する方が神々にとって一般的らしい。

なお、ヘルモードは「超越者」と呼ばれているらしい。

(20階までに鍵が無ければ、そのまま下に降りろってことか)

「おお、初めての20階層報酬だ!」

「よし! メルルよ、扉を開けるのだ!!」

「うん! ありがと、アレン!!」

10階層で手に入れた新たな鍵をメルルに渡す。

意気揚々と鍵を使うと、重厚な扉はフッと消えて無くなり、中へ入れるようになった。

数百メートルの小部屋になっており、中央には土偶が立っている。

「む? この感じは戦闘はなしか?」

(おいらの霊晶石が……)

近づくと土偶の目が光り語り掛けてきた。

『大地の神の試練を挑戦する方々、20階層への到着おめでとうございます。エクストラモードにしたい方を1人お選びください』

「霊獣との戦闘はないってことでしょうか?」

『そのとおりです。既にここまでの攻略において、試練を超えたと判断させていただきました。なお、次回以降は鍵部屋同様に霊獣が待機しております』

(今回だけってことね。さて)

「これで、ガララ提督、エクストラモードになって……。どうしましたか?」

話しかけようとしたところで、言葉が止まってしまった。

ガララ提督があまりに思いつめた表情をしていたからだ。

見つめ合うアレンとガララ提督にそれぞれの仲間たちの視線が集まる。

「……やっぱり俺か。違えだろ。俺じゃねえ」

ガララ提督はエクストラモードになるのを断り、アレンたちの中で戸惑いが生じるのであった。