軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第558話 試練を越えた者たちの挑戦

商神マーネの露店市場を離れたアレンたちはS級ダンジョンの最下層へ向かった。

既に魔導船は神界を飛行しているのだが、あとから船内に転移して追いつく予定だ。

「倒せたわよ。アレンだけじゃないのね……」

一緒に転移したセシルは目の前で行われた戦いの結果に絶句している。

「ふむ、やはり3人だけでゴルディノを倒せたな」

アレンの前には戦いが終わり肩で息をするソフィー、ルーク、フォルマ―ルがいる。

ソフィーとルークは戦いが終わり、精霊たちの顕現を解除している。

さらにその前で3人にボコボコにやられ、地に伏したゴルディノがいる。

今日は数日間のアイアンゴーレム討伐の結果、3人ともレベルが89まで上がったので、成長確認のため3人のみで最下層ボスのゴルディノに挑戦してもらった。

「アレンの召喚獣なしで倒せたぞ! クレナたちより強くなったかな」

ルークが嬉しそうだ。

「そうだな。だが、戦いは相性だけどな。前衛3人では難しいのかもしれないな」

(ゴルディノはいいな。強さが固定で、仲間たちの成長を測りやすいからな)

同じことをアレンは既にエクストラモードになっているクレナ、ドゴラ、シアの3人にもさせている。

【S級ダンジョン最下層ボスの各段階】

・1段階目:通常のゴルディノ、ミスリルゴーレム、アイアンゴーレム2体、ブロンズゴーレム

・2段階目:超合体ゴルディノ

・3段階目:真なるゴルディノ

強さが固定で、段階ごとに求められる戦い方が異なる最下層ボスのゴルディノは、アレンたちの成長を確認するのにうってつけの練習相手だ。

討伐報酬もあって、毎日挑戦できるのも良い。

先行してエクストラモードになったドゴラ、クレナ、シアの3人でも挑戦させたことがあるのだが、1段階目でも厳しい戦いであった。

アレンの召喚獣やそのほかの味方のバフ系の魔法もなしで、複数のゴーレム達との戦いは難しいようだ。

攻撃力の上がった3人だが、アイアンゴーレム2体の回復に攻撃が間に合わなかった。

回復を止めるべくアイアンゴーレムを引き離すなどの手段も前衛のみの3人はなく攻略はできなかった。

今回、ソフィーたち3人で最初から3段階目の真なるゴルディノまでアレンたちの補助など一切の助力なしで倒しきった。

「だが、アレン殿は1人で倒すのだ。まだまだということだろう」

「フォルマール。そのとおりですわ」

「俺の召喚獣は攻撃の選択肢が広いからな。エクストラモードもまだ成れたばかりだ。今後の成長に期待だな」

「そうだな」

フォルマールが自信を覗かせて答えた。

セシルが自分らの成果をあまりにも驚くので、フォルマールは、アレンはパーティーの中で、アレンのみが最下層ボスを1人で倒せることを付け加える。

アレンは霊Sの召喚獣と契約した時から1人で最下層ボスのゴルディノを倒せるようになった。

召喚獣を使うアレンは攻撃の幅や戦術が他の仲間よりも広い。

最下層ボスのゴルディノを倒したので、報酬も取りに出現ポイントの広間の中央へ移動する。

いつものように4つある宝箱をアレンたちは開けていく。

今回は銀箱2、金箱2の普通の結果だ。

「お! 金箱からオリハルコンが出てきたぞ!!」

「偽物がまた出たか。なんか、最近、増えてきたな」

「もう、いつまで拗ねてんのよ」

喜ぶルークに大人気なく水を差すアレンに、セシルは呆れてため息をつく。

「魔導コアがまた出たか」

「ララッパ団長が魔導コアは十分にあるって言っていたからな。それはフォルマールが持っていてくれ」

「分かった」

「さて、予行演習は終わったか? 6時間後に本番だからな」

戦闘をした3人にクールタイム半減の効果のある腕輪を2つ装備させる。

これで1日クールタイムのスキルを使っても、4分の1で、6時間でまたクールタイム1日のスキルが使えるようになる。

「おう! これで俺たちだけで挑戦してもいいんだよな?」

「もちろんだ。だが、危なくなったら手を出すからな」

S級ダンジョン最下層ボスのゴルディノはただの予行演習だ。

ソフィーたち3人が神界での試練を乗り越えた力の検証をするための相手は別に用意してある。

そこは、広大な神々の神域の中で、ポツンと存在する島だ。

全長10キロメートルほどの大きさの岩盤のように硬い石でできた島に亜神級の霊獣がいる。

商神マーネの神域から神界闘技場への航路の途中で、ようやく1体見つけることができた。

神界はあまりに広大で、目当ての力のある霊獣を探すのは、砂漠に落とした金貨を1枚探すほどの確率なのかもしれない。

(だが、倒し甲斐のあるやつを見つけたな)

天空に浮いた長さ10キロメートルほどの大きさの島の端に天空船をゆっくりと着陸させた。

「ララッパ団長やピヨンさんは私たちを降ろしたら、一旦島から離れてください」

「ええ、巻き添えは御免ね」

戦闘自体にはあまり興味のないララッパ団長が返事をする。

戦闘モードに移行したアレンたちの緊張感が伝わったのか、ピヨンの表情も強張っている。

ゴツゴツとした岩石で出来た島の中央にいる霊獣を、万里眼を発動したクワトロが捕捉する。

霊獣との距離は数キロメートルだが、この程度の距離、鑑定眼で見ると10万を超えており、すぐそばにいるのと変わらない。

アレンたち5人を降ろし、霊獣を刺激しないよう、ゆっくりと魔導船が島から離れていく。

(24万歳ね。これまで鑑定できた中では、最高齢だな。今回の霊獣は蟹の化け物か)

【名 前】 ガニラ

【年 齢】 240280

【種 族】 霊獣

【体 力】 127000

【魔 力】 119000

【霊 力】 125000

【攻撃力】 138000

【耐久力】 195600

【素早さ】 78000

【知 力】 122000

【幸 運】 2000

【攻撃属性】 無

【耐久属性】 無、水、物理耐性(強)

見た目は、蟹が一番近い。

全身は青白い炎で形作られており、全長は15メートル、横幅はその倍の30メートルくらいだろうか。

3組の足で岩盤の上で体を支えており、蟹の甲羅の部分に2つの頭があり、頭と一緒に1組のはさみをアレンたちの方向へ向けている。

どうやら、探知スキルがあるのか、アレンたちに気付いているようだ。

「ソフィーとルークは大精霊たちの加護をかけてくれ」

いつこっちに来てもおかしくない。

「ええ、アレン様。分かりましたわ」

「分かった! 皆頼むぜ!!」

(さて、戦闘が始まったと。素早さと耐久力のバランスを見る限り、機動力よりも守りを優先にするタイプの敵かな。ルークは少し興奮気味か。つうかゴルディノの3倍近いステータスだ。いけるかな?)

悟りの境地かなと思えるほど完全に落ち着いているフォルマールと対象的に、ルークは意気込みがすごい。

落ち着かせようと思ったが、手を出さないという約束だ。

とりあえず、3人に任せることにする。

「生命の泉!」

最初にソフィーが神技「生命の泉」を発動させた。

戦闘を開始するなら、バフ系のスキルは最初に発動させることが大事であることをよく理解しているようだ。

ソフィーとルークが大精霊たちを出して、ステータス強化の補助をかけてもらう。

ソフィーとルークが契約している大精霊はそれぞれ4体ずつで、代わる代わる加護を与え、アレンたちも含めた全員のステータスを増やしていく。

【ソフィーが契約する大精霊の属性や加護】

・水の大精霊トーニス:知力10000、魔力秒間100ずつ回復(神界は効果なし)

・雷の大精霊ジン:素早さ10000、マヒ耐性強

・空間の大精霊ジゲン:幸運10000、被クリティカル率半減

・光の大精霊ライト:体力10000、攻撃力10000、光属性付与

【ルークが契約する大精霊の属性や加護】

・火の大精霊カカ:攻撃力10000、ダメージ10パーセント増

・毒沼の大精霊ムートン:体力10000、毒耐性強、マヒ耐性強

・時の大精霊クイック:素早さ10000、クールタイム半減

・闇の大精霊ダーク:魔力10000、知力10000、闇属性付与

精霊の園に行ったことでアレンたちを含めて皆、ステータスをかなり上昇させることができるのだが、これまでは1体1体しか顕現できず、顕現を止めて、新たな精霊を顕現するにはタイムラグがある。

これがCランクやBランクの魔獣なら、それも気にならないのだが、ここは神界で、これから戦うのは亜神級の霊獣だ。

ステータスが10万を超えると音速に近い速度での移動も可能だ。

精霊はその特性で守りや攻撃、回復など得意な分野が異なる。

戦闘の状況が守りなのか、攻めなのかによっても変わってくるし、戦う相手が単体なのか、複数いるかによっても精霊使いはどの精霊を顕現するのか判断しなくてはいけない。

Sランクの召喚獣であっても、当たり前のように全て召喚できる召喚士と違い、顕現中も魔力を必要とする精霊使いのソフィーやルークはそれぞれ1体しか精霊を出すことしかできなかった。

無理して顕現させても、それだけ複数の精霊に魔力を振り分けるため、魔力の分散により精霊の力が弱くなってしまっていた。

ソフィーの神技「生命の泉」は、その問題を解消するようだ。

ソフィーもルークもそれぞれ同時に2体の大精霊を顕現させている。

『む! せっかちなやつだな。来るぞ!!』

真っ赤な髪をしたビキニアーマーを装備した見た目の、火の大精霊カカが大きな声で叫んだ。

(この辺は召喚獣との違いだな。さて、やはり、戦闘態勢に移行したことが気付かれたか)

召喚獣よりも優れた点が精霊にはある。

精霊は魔力の流れや、細かい風の流れなどの気候の違いを感じ取り、さらに、敵の気配をかなり広範囲で分かるものも多い。

ステータスや鑑定では測れない何か、魔力の流れ、生命の流れのような不確かな存在が分かる何かが精霊たちにはあるようだ。

だが、それは亜神級の霊獣も同じであった。

アレンたちに大精霊たちが加護を与えていることに、敵認定をしたようだ。

頭を2つこちらに向けながらも、蟹歩きで横向きに一気にこちらに向かってくる。

すぐに、轟音がアレンたちの耳にも入り、足元の揺れも感じる。

『アウアアアアア!!』

『アウアアアアア!!』

霊獣ガニラとの戦いが始まったのであった。