軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

古い袋の中には、ロマンが詰まっている

翌朝、馴染みの買取業者に魔力共鳴石を持ち込んだ。

担当者がペアで置かれた2つの石を見て、しばらく動かなかった。

「これ、どちらも同じ石ですか」

「同一個体から割れたものです」

「一緒に持ち込まれるのは初めてです。バラけると価値がないので、たいていどちらか片方しか来ない」

慎重に光に当てながら確認して、155,000円の提示が出た。

「もし今後もペアのものが出たら、ぜひ持ってきてください」

「また見つけたら必ず」

帰り際、修復業者から着信が入っていた。

『封印部屋から見つけてこられた2点、仕上がりました。時間があるときにどうぞ』

留守電メッセージになっており、結構かかったな、と思いつつもそのまま受け取りに向かった。

修復業者で受け取った2点は、どちらも見違えるようだった。

旧式魔力増幅器は外側の破損が補修されて、内部の術式が可視化できるほど安定している。

「現代品より術式の組み方が丁寧です」とのことだった。

修復費用を支払い、俺はその足で魔道具専門の業者を回った。

旧式魔力増幅器が190,000円、魔力蓄積型護符が52,000円の値が付いた。

改めて封印部屋の5点合計を計算してみると、今日までに手元に入った分だけで、合計35万円を超えている。

修復費用を差し引いても、十分に黒字になっていた。

地図に載っていなかった部屋から、これだけのものが出てきたことになる。

「鑑定スキル様々、だな」

昼すぎ、管理局から指定された住所に向かった。

民間登録士としての最初の正式依頼だ。

相手は30代の男性探索者で、個人で活動しているらしい。

事務所代わりに借りているらしい小さなワークスペースで待っていた。

「真壁さんですか。先日登録されたばかりだと聞きましたが」

「そうです」

「大丈夫ですか」

「登録は最近ですが、鑑定そのものは慣れています」

大丈夫ですか、か。

たしかに登録したてだし、その不安は当然だろう。

その分、仕事の結果をもって証明していかないと行けない、そんな立場に俺は望んでなった。

「はぁ。わかりました。本日依頼したい物はこれです」

テーブルに装備が8点並んでいた。

剣2本、護符3枚、魔石2点、腕輪1本。

最近1年で買い集めたものらしい。

1点ずつ鑑定していった。

7点は問題なかった。相場に見合った品質で、汚染も偽造もない。

8点目の腕輪に【鑑定】を向けたとき、少し引っかかった。

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魔力循環腕輪(封印状態)

希少度:B

現在価値:低(封印のため)

封印解除後推定価値:18万〜25万円

備考:外見は劣化した普通の腕輪に見えるが、内部に術式が封じられている

封印は意図的なものであり、専門業者による解除が可能

封印解除前に鑑定できる者がいなければ、そのまま安値で手放される可能性が高い品

推奨:魔道具封印解除の専門業者への持ち込み

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「この腕輪、封印がかかっています」

男が眉を上げた。

「封印、ですか。壊れてるんじゃなくて」

「意図的に術式を封じた状態です。解除すれば、18万〜25万円の価値になります」

しばらく沈黙があった。

「いくらで買いましたか」

「8,000円です。中古品の市場で」

「封印状態だから安値がついていたんだと思います。専門業者に持ち込んでください」

男が腕輪をしばらく見つめた。

それから深く息をついた。

「鑑定士に頼んでよかった。ありがとうございます!」

「他の7点は問題ありませんでした。きちんと見て買われていると思います」

鑑定した詳細を書類に記載して依頼者へと渡す。

この用紙は管理局が定めている書式で、登録した時に浅田さんからもらったものだ。

記載後に、誰が鑑定したかを示す鑑定士番号と名前を署名する欄があり、俺は緊張気味にそこに署名した。

それから報酬を受け取って帰路につく。

最初の正式依頼は、思ったより静かに終わった。

夜、18回目の配信を始めた。

登録者は11,250人になっていた。

「今日はB3Fを回ります。上層は細かいものが残りやすいので、丁寧に見ていきます」

入口で中年スタッフと目が合った。

「今日も来たか」

「はい」

「昨日、見慣れない奴が何人か入口のあたりをうろついてた。配信目当てかもしれん」

「そうですか」

「気をつけろよとは言わないが、まあ、気にしておけ」

それだけ言って立ち去った。

正体特定スレの話が現場にまで届いているのかもしれない。

気持ちを切り替えてB3Fに入った。

今夜はいつも以上に丁寧に動く。

壁際から通路の隅、段差の下など。

普通なら視線が向かない場所を一つずつ確認していく。

コメントがゆっくり流れていた。

『地味に好きなやつ』

『くまなく探してる感じが落ち着く』

『今日はどんなの出るかな』

40分ほど進んだところで、通路の脇に古い革袋が落ちていた。

ひとこぶし大で、くたびれた茶色の皮製だ。口が紐で縛ってある。

汚れていて、見た目はただのゴミだ。

「これ、袋ですね。拾えそうですが」

『それ完全にゴミじゃない』

『何入ってると思う』

『鑑定して』

拾い上げると、思ったより重かった。

袋の大きさに合わない重量がある。

「……重い。見た目のわりに」

【鑑定】を向けた。

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次元収納袋(旧式・内容物あり)

希少度:B(収納機能込み)

現在価値:中(内容物による)

備考:魔力で編まれた旧式の収納具。外見より大きな空間が内部に展開されている

現在、内部に複数の物品が収納された状態

袋自体の素材が劣化しているため、収納機能は間もなく失効する可能性あり

推奨:速やかに内容物を取り出すこと

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コメントが止まった。

「……中に何か入ってます。外見より大きな空間が内側にあって、複数の物品が収納されてる」

『は?』

『袋の中に空間が?』

『開けて開けて』

『なんで誰も気づかなかったの』

「見た目が完全にくたびれていて、誰もがゴミだと思うからですかね。俺だって鑑定スキルが無ければこれは拾わない。どうも劣化してきてるみたいなので、今取り出しましょうか」

紐を解いた。口を広げると、外側の大きさではありえない深さがあった。

手を差し込んだ。

最初に出てきたのは、小さな布包みだった。

開くと、深い赤色の魔石が入っていた。

【鑑定】を向けた。

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紅魔石・上位種

希少度:A

推定価値:22万〜28万円

備考:魔力の密度が高く、触媒・素材として幅広い用途がある

保存状態が良好で、品質の劣化なし

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「……22万〜28万円の魔石です」

コメントが一気に流れた。

『いきなり??』

『袋から22万が出た』

『最初からこれ??』

「まだ中にあります。続けます」

2点目を引き出した。細い金属製の腕輪だ。

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銀魔合金製腕輪

希少度:B

推定価値:5万〜7万円

備考:銀と魔鋼の合金製。軽量で耐久性が高い

装備品として、または素材として価値がある

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「腕輪です。5万〜7万円」

3点目。丸められた紙のようなものだ。

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旧式術式書(一部解読可能)

希少度:C

推定価値:15,000円〜2万円

備考:古い術式の記録書。専門家であれば部分的に解読可能

希少性は高くないが、研究・資料目的での需要がある

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「術式書ですね。2万円前後」

4点目を引き出した。護符だ。3枚まとめて束ねてある。

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封護符・旧式(劣化)×3

希少度:D

現在価値:ほぼなし

備考:術式が経年劣化で失効している。素材としての価値も低い

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「これは価値なしです。護符なんですが、術式が切れてます」

『4点中3点は価値があった』

『22万の魔石が入ってたのが全部持っていった』

『誰が何でここに置いたんだろ』

「分かりません。かなり昔に落とされたのか、誰かが隠したのか。袋自体が劣化してたので、長い時間が経ってると思います」

袋の中をもう一度確認した。空だった。

「以上です。袋自体もいずれ使えなくなるみたいなので、今夜取り出せてよかった」

『完璧なタイミングだった』

『これが回収屋の目か』

『普通に踏んで通り過ぎてたと思う』

「踏んでた人は何人もいると思います」

配信を閉じると視聴者は12,500人を超えていた。

帰り道、久しぶりに正体特定スレを開いた。

『先週の深夜、品川第七ふ頭のダンジョン入り口付近でフードの男を見た。身長は170〜175センチくらい。一人で入口から入っていった。あの人じゃないですか』

目撃談だ。

ネット上の推測ではなく、実際に現地で見た人間の書き込みのようだ。

気味が悪くなり、スマホを閉じる。

中年スタッフが言っていた「見慣れない奴がうろついていた」という話と繋がる。

意識している人間が、現地に来るようになっていた。