軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

回収屋が、公認になった日

配信の翌朝、魔封石の破砕片を精製業者に預けた。

そして3日後、『仕上がりました』と連絡が来た。

受け取りに行くと、8片が1つの石に戻っていた。

濃い紫色で、表面に細かい光の筋が走っている。

拾ったときの散らばったかけらとは別物のように見える。

「融合精製、うまくいきました。純度は少し落ちますが、希少度Bの魔封石として問題ない品質です」

「ありがとうございます。買い取りもお願いできますか」

「精製料を差し引いて、62,000円になります」

排水溝の脇に落ちていたかけらが62,000円になった。

素通りしていった人間の数を考えると、少し不思議な気持ちになる。

昼に管理局へ向かった。

浅田が同じ会議室に通してくれた。

「お返事をいただけますか」

「登録します。ただ、確認させてください」

前回渡された資料を開いた。

「配信は今後も続けられる。断る権利は保持できる。個人情報の管理は管理局内に限定される。この3点は変わりませんか」

「変わりません。書面に明記することもできます」

「わかりました。では、登録お願いします」

「ありがとうございます」

浅田が少し安堵したような顔をした。

手続きは三十分ほどで終わり、書類に署名して、証明書を受け取る。

『民間鑑定士 真壁遼』と印字されていた。

ラミネート加工された薄いカードだ。

そこら中にあるありふれた加工だが、これが何かを変える気がした。

「今後は管理局経由で正式な依頼が入るようになります。最初の依頼はおそらく今週中に届きます」

「内容によっては断ります」

「もちろんです」

会議室を出るとき、浅田が一言付け加えた。

「真壁さんの発見がなければ、この登録制度を活用しようという話にもなっていませんでした。本当にありがとうございます」

「結果的にそうなった、というだけです」と返して、軽く頭を下げた。

外に出て、証明書をポケットにしまう。

ラミネート加工された薄っぺらい、ただの証明書だ。

それでも少し、立っている場所が変わった気がした。

夜、17回目の配信を始めた。

登録者は11,050人になっていた。

「今日はB4Fを一周します。封印部屋の近くをまだ確認できていないので」

『また何かありそう』

『封印部屋のゾーン』

『楽しみ』

封印部屋のあった通路の手前から別のルートに入った。

照明が少し暗い区画だ。最近改修が入っていないのか、壁が古い。

三十分ほど進んだとき、通路の中央に石が転がっていた。

握りこぶし大の、乳白色の石だ。

表面がなめらかで、内側から微かに脈打つような光がある。

「これ、なんだろう」

拾い上げると、思ったより軽い。

【鑑定】を向けた。

――――――――――――――――――――

魔力共鳴石(片割れ)

希少度:B(ペア状態)

現在価値:低(片割れのため)

ペア時推定価値:12万〜16万円

備考:同一個体から割れた2つで対をなす石

片方だけでは価値が低いが、もう片方と合わせることで魔力が共鳴し希少素材となる

もう片方の反応が現在地から50メートル以内に存在する

推奨:周辺探索・ペアの回収

――――――――――――――――――――

「ペアになってる石の片割れです。もう半分が50メートル以内にあると出ました」

コメントが一気に流れた。

『探して』

『50メートル以内ならある』

『宝探しだ』

「やってみます」

石を持ったまま、周辺を確認し始めた。

鑑定を繰り返すと、『反応あり』『近い』『さらに近い』という表示が出てくる。

「反応が強くなってきてる。この方向です」

通路を折れて、別の区画に入った。

壁際に荷物が積んであるというより、放置されたまま忘れられた感じの段ボールが重なっている。

その一番下に、白い石が挟まっていた。

「あった」

段ボールをどかして引き出すと、最初に拾った石と同じ乳白色の石が出てきた。

2つ並べると、光の脈動が合わさるように強くなる。

『きれい』

『つながった感じがする』

『なんか感動する』

「2つで対になってます。鑑定してみます」

2点まとめて【鑑定】を向けた。

――――――――――――――――――――

魔力共鳴石(ペア・完全体)

希少度:A

現在価値:14万〜17万円

備考:2つが揃い、互いの魔力が共鳴している状態

分離すると再び価値が落ちる。ペアのまま保管・売却を推奨

工芸品の素材、または魔術触媒として需要がある

――――――――――――――――――――

「ペアになったら希少度Aになりました。14万〜17万円です」

コメントが止まった。

『片方だけ拾っても意味なかった』

『両方見つけたの回収屋だけだろ』

『鑑定ないと気づかない案件すぎる』

「片方だけだと価値の出ない石なので、残った方も気づかれないまま埋もれていったかもしれない。揃って回収できてよかった」

2つを布で包んで、鞄にしまった。

配信を閉じると視聴者は11,200人を超えていた。

帰り道に管理局からのメッセージが届いていた。

浅田からだ。

『本日付で登録が完了しました。早速ですが、明日以降のご都合でお受けいただける依頼があります。個人の探索者の方から、保有している装備の一括査定を希望するご要望です。報酬は査定点数に応じた正規料金になります。ご検討ください』

最初の正式依頼だし、断る理由はない。

『受けます』と返信した。