軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鑑定結果と悪徳業者

鷹坂からの連絡に返事を出したのは翌日の朝だった。

『都合のいい日を教えてください』

1時間も経たずに返信が来た。

『明後日の午前中はいかがでしょうか』

前回より対応が丁寧で、急いでいる気配もある。

指定されたのは今度も品川のビルだったが、前回の会議室より広い部屋だった。

テーブルの上に、護符が10点以上並んでいた。

「先日の件で、購入元の業者に問い合わせました」

鷹坂は続けて机の護符を示した。

「業者側は最初、製造上の問題ではないと主張したんですが、うちがロットのリストを出したら態度が変わって。一旦、手持ちの在庫を全部引き上げることになりました」

「それが、これですか」

「12点あります。全部、同じ仕入れルートの護符です。1点1点見ていただけますか」

俺は頷いた。

最初の一点を手に取る。

――――――――――――――――――――

封護符・術式刻印型

希少度:B

現在価値:高

状態:良好

備考:特記事項なし

――――――――――――――――――――

「これは問題なし」

2点目。

異常なし。

3点目も。

4点目を手に取った瞬間、表示が変わった。

――――――――――――――――――――

封護符・術式刻印型(術式汚染)

希少度:B

現在価値:低

状態:要注意

備考:前回検出と同系統の術式混入を確認

汚染パターンが類似しており、同一の工程または素材由来の可能性あり

推奨:即時使用停止 / 専門機関への提出

――――――――――――――――――――

「これも出ました」

鷹坂の表情が、わずかに固くなった。

「同じ種類ですか」

「同系統、と出ています。偶然似たというより同じとこで作られた、と言った感じでしょうか」

次々と確認していく。

12点のうち、汚染があったのは4点だった。

「4点」と鷹坂は繰り返した。

「しかも同系統。1点だけなら見落としかもしれないですが、これだけ出ると……」

俺は少し迷ってから、思ったことを言った。

「意図的かどうかまでは鑑定では分かりません。ただ、バラバラに混入したにしては、パターンが揃いすぎている気がします」

鷹坂は黙って、スマホに何かを書き込んでいた。

「分かりました。この結果を文書でいただけますか。業者への対応に使います」

「承知しました。後ほど鑑定結果をまとめて送ります」

「真壁さん、正直にありがとうございます。報酬は前回と同じ5万円で。量が多いので、本来はもっとお支払いすべきなんですが」

「前回と同じで問題ありません」

ビルを出て、少し歩いたところで、スマホに通知が来た。

送信者は『品川第七ふ頭ダンジョン管理局』だった。

『先日ご提出いただいた記録図について、内容を確認しました。一部の区画が未登録のルートに対応しており、資料として保存させていただきます。謝礼として20,000円をお振り込みしました』

さらに一行。

『貴重な資料でした。ありがとうございます』

俺はしばらく立ったまま通知を眺めた。

地図を見つけたのはあの日、配信中に壁の隅に引っかかっていた一枚だ。

「ゴミかな」と言いながら拾ったのを、まだ覚えている。

夜、6回目の配信を始めた。

登録者数は2,180人になっていた。

「今日、配信の外で2つ動きがあったので報告します」

コメントがすぐ反応した。

『おっ』

『何があったの』

『管理局の地図の件?』

「一つは、配信では初めて話すんですが、装備に関する件です。名前は出せないですが、某クランから依頼があって、問題があると疑われていた護符を12点まとめて鑑定してきました。4点に汚染が出ました。しかも同じパターンで」

『え』

『4点も』

『それ偶然じゃないよな』

「偶然かどうかは俺には判断できません。ただ、鑑定結果については正直に伝えました。あとは依頼主が動く話です」

『そういうとこ仕事人っぽい』

『回収屋さんの仕事はそこまでだもんな』

「もう1つは、管理局の件です。地図の謝礼が来ました。2万円」

『おお』

『ちゃんと認められた』

『あのとき拾った判断が正解だったじゃん』

「結果的には。拾った時点では分かってなかったです」

配信しながら、今夜はB3Fを進む。

通常の上層エリアだが、久しぶりに入る区画は見落としが出やすい。

視聴者も『何か出るかな』とコメントで期待している。

1時間ほど進んで、小さな成果がいくつかあった。

魔石の残骸、補修途中で放棄された装備品。まとめれば数千円にはなる。

「今日はこれくらいですかね」

配信を閉じる前に視聴者数を確認した。ピークは2,640人だった。

帰り道、鷹坂から短いメッセージが来た。

『本日の査定結果を踏まえて、クランの上層部が真壁さんに直接お会いしたいと言っています。よろしければ日程を調整させてください』

(……クランの上層部)

鷹坂が窓口になっていた間は、外からの仕事という感覚で収まっていた。

でも上層部が出てくるなら、話が一段階変わる。

悪いことだとは思わない。

ただ、何を求めてくるかは、まだ見えていない。

返信は、明日考えることにした。