軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82話 初めてのダンジョン①塔1階 ドロップドロップ

お昼前には、ホリデの街に着いた。

馬車を走らせているとき、いろんな話をした。主にわたしがどうしてこの大陸に来てしまったかの作り話だったが、会話をしてふたりは気のいい人ということもわかった。

アークが馬車を置いてくるといい、ソウショウと先に宿をとっておくことにした。スノーレイクに行く場合、乗り合い馬車は元々この街に寄り、馬を換えることになっていたそうだ。そしてもう少し馬を走らせ、次の街で一泊。朝早くから動き出し、お昼頃にまた街により馬を換えて、夜前にスノーレイクに着く手筈になっていたらしい。

今日はダンジョンに入る準備をして、明日入るそうだ。

わたしは初めてなので、全てお任せだ。

「部屋はどうしますか?」

「同じ、いい」

ソウショウは何か言いたげだったけれど、ベッドが3つの大きめの部屋を取った。

「ソウショウ、急ぐ言った。ダンジョン、本当、よろしかったでしょうか?」

ソウショウは、くすっとしてから頷く。

「人を捕らえると捕らえた側も長く拘束されるんです。賞金首じゃないとお金にもなりませんからね。そんな無駄な時間を省きたくて急いでいると言ったんです。任を負っていますが、海の中の小石を探すようなものですし。あてがあるわけでもないので、気にかかったことは潰していく方式でやるしかなくて」

ソウショウはふーっと長い息を吐いた。

「あ、意味がわからないですね、すいません。急ぎのことがあるわけではないので、大丈夫ですよ」

ソウショウは美しい笑顔で笑ってくれる。なんか難しい? 途方もない任務についているみたいだ。

「先に買い物に行きましょうか?」

わたしは頷く。

「ダンジョン、何、いる?」

「ポーションなどですね。それから、何日潜るかでそれ用の携帯食などが必要になってきます。それから弓の矢のような補充の必要な武器は、補充品をしっかり持っておかないとです」

ソウショウもダンジョンは初めてだそうだが、いろいろよく知っている。

ソウショウはちらっとわたしを見た。

「話したくなかったらいいのですが、奴隷狩りにあったのですよね。その、持ち物など、よく取り戻せましたね」

ああ、これか。

「バッグ、おばーちゃん、形見。所有者わたし。わたし呼ぶ、来る。無事」

「オーデリア大陸は噂通り、いろいろ進んでいるのですね。さすが聖女様のいらっしゃる大陸だ」

「そんな、噂ある?」

ソウショウが頷く。

オーデリアって進んでるんだ。へー。

「リィヤは武器の補充は要りませんね? ポーションはどれくらい持ってますか?」

「ひと通り」

「はい?」

「エクスポーション、ない」

「持ってたら驚きですよ。あ、全部あるんですね。でも、12歳だから使えるのはポーションのみですね。ポーションはいくつかあった方がいいですよ。それから携帯食ですね。アークと話したのですが、最初は3日にしようかと。なので、携帯食を3日分ですね」

「ダンジョン、安全場所、ある?」

わたしが読んだ物語では、ダンジョンの各階にセーフティスペースがあったんだけど。

「ああ、何階かにひとつは魔物が入ってこれない場所があるはずです。そこで野宿するんです」

「じゃぁ、携帯食だけ、違くて、わたしご飯作る。材料、買う」

「え? ダンジョンで食事を作るんですか?」

「その方が、美味しい。力出る」

それを聞いてケタケタ笑いながら会話に入ってきたのはアークだ。

「お帰りなさい」

そういうと、アークはわたしの頭を撫でた。

「お前、逞しいな。食事は大切だもんな。よし、材料を買おうぜ」

やった。

「馬車や強盗のことはいかがでしたか?」

「賞金ギルドが対応してくれた。自警団ひっつれて、行ったはずだ」

時間がたっているからその場にもういないだろうけど、近隣には通達が行くようだ。

その日は酒場に行って夕ご飯をいただいた。アークが奢ってくれた。ふたりはビールみたいなエール、わたしはジュースで即席パーティに乾杯した。わたしはエールを飲み干す、ふたりの喉が動くのをじっと見ていた。

次の日、ダンジョンに向かう。街外れの奥まったところにあるその塔は円形の石造りの建物だった。

入り口で立っていた警備員さんに止められる。身分証やランク、レベルを申告しなくてはいけないらしい。

アークもソウショウも、賞金稼ぎギルドの身分証を提示。SランクとAランクで難なくクリア。わたしも冒険者カードを水晶に近づける。これでレベルとかランクだけ相手方にわかるらしい。

「Gですか。ご一緒なんですよね。お気をつけて」

わたしもクリアだ。

「ここからダンジョンだ。気を引き締めろよ」

アークに言われて、わたしは重たく頷いた。

中に入ると風が変わる。匂いも変わった。なんか中なのに外、みたいな変な感じがする。動かない風も、湿ったような重たい匂いも慣れないからか、とっても不思議だ。

「へぇ、別空間のようですね」

ソウショウが言うと、アークがシシシと笑う。

「ここはどうかわからないが、外の見かけよりずっと広くて、驚くぞ。隊列はこのままでいいか? 俺、リィヤ、ソウショウだ」

「結構です」

「よろしくってよ」

ふたりがギョッとしたようにわたしを見た。何?

わたしはラケットバットを握りしめて、アークの後ろを歩く。もちろん探索、アラームをかけている。あ、早速。

わたしが体を強張らせると、なぜか前のアークが驚いたように振り返った。

「お前、気づいたのか?」

「何を?」

しらばっくれとく。

「今、緊張したろ?」

気配がわかるって賞金稼ぎSランクすごいな。

「ダンジョン、初めて。緊張、いる」

わたしは認める。

「話はそれくらいに。おいでなさいましたよ」

鑑定をかける。

マッドバット:泥を主食とするコウモリ。音波を出して、敵との距離を測る。集団で敵を襲い、泥を飛ばしてくる。泥の敵型を作るのが好きである。剣、火、氷、風の攻撃が有効。数が多すぎる場合は動かずにやり過ごすのが得策。

「多いな」

アークが舌打ち。

「やり過ごす、いい。動く、やめる。襲う、いない」

わたしは言ってからピタッと動きを止めた。アークとソウショウもやり過ごすことに賛同したようだ。ふたりとも動かずにいると。

「何でぇ、ガキが怖気づいたのか?」

後ろからやってきた団体がわたしたちを追い越していく。

5人のパーティは軽やかにマッドバットに攻撃を仕掛け……後から後から湧いてくるコウモリたちに覆い尽くされ、あっという間に泥人形と成り果てた。

気が済んだのかコウモリたちが行ったあと、ソウショウが声を出した。

「どうします?」

「さすがにこのまま行くのは人道的じゃないよな」

「さて、どうしますか。水魔法は持ってないので」

「わたし、やる」

わたしは生活魔法で消防車のホースをイメージして、泥人形の塊に水魔法をかけた。イメージは立派でも、実際出た水はチョロチョロだけどね。顔と手のところだけ集中的に。あとは自分たちでなんとかできるだろう。

ゴホゴホゴホ。

土と水のダブルパンチで、5人のパーティは座り込んでいる。顔と手のあたりの泥の塊をゆるくすると、あとは自分たちで泥を払っていった。泥って重たいしね、体力を使ったのだろう、座り込んでからなかなか起き上がれないでいる。

「かたじけない」

さっきわたしたちに悪態を着いた人はパーティのリーダーなんだろう。お礼の後に謝ってくる。

「宿に帰って風呂でも入った方がいいんじゃないか? 風邪引くぞ」

それにしょっぱなにあんな洗礼受けたら、戦意も喪失するってものだ。彼らは回れ右をして、そこで別れた。このダンジョンが流行らないわけがわかった気がする。

「リィヤは魔物をよく知っているんですね」

ソウショウに褒められて、わたしは言った。

「たまたま」

1階はマッドバットの後は強い魔物は出てこなかった。ほとんどが植物系のモンスターで、アグレシもいた。わたしたちが捌かなくても、倒れると勝手にドロップ品となってくれるので助かる。アグレシは瓶に入った蜜と、根の部分の粉が出た。

倒せば倒すだけドロップ品が手に入って、わたしはほくほくとバッグの中に入れる。ふたりは気前のいいことに利益はキレイに三等分でいいと言ってくれている。これなら案外早くに目的資金に届くかも!

「おかしい」

「おかしいですね」

「何が?」

「ボス部屋でドロップ品が出てくるならともかく、普通に魔物を倒しただけでドロップするなんて」

「普通、しない?」

「ええ、たまにだと聞きます。1回潜って1回か2回あったら運がいいと言われています」

え?

「今まで、全部、ドロップ」

「ええ、だからおかしいと」

ふぅん。不思議なこともあるもんだ。