軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81話 アークとソウショウ (下)

夕方前までひたすら馬車を走らせた。ホリデには夕方には着くということだったけれど、強盗にあったのでおしたのだろう。よく知らない道で、暗くなってからも進めるのは危険と判断して、魔物が出てきたらわかるような少し見晴らしのいいところで馬車を止めた。

馬を放し、水をやり、草を食ませ、わたしたちも夕食をとることに。銀髪はちょっと肉獲ってくるなと、ふらっと道から外れ森の中に入り、すぐに猪ぐらいの大きさの魔物を肩に担いで帰ってきた。わたしは野菜でスープを作り、金髪の美少年はパンを提供してくれた。3人とも野外料理の腕がそこそこあったので、わりとりっぱな夕食になった。

「じゃまず、俺から自己紹介な。俺はアーク。賞金稼ぎ。聖女様を見にスノーレイクに行くところ」

銀髪は銀髪がしとめてきたノッシーの肉をほおばりながら言った。

賞金稼ぎ、か。冒険者ではないんだ。オーデリア大陸にも賞金稼ぎっていたのかな? こっちでは主流なのかな? 賞金稼ぎっていう職業ができるくらい対象がいるって、治安が悪いってことだよな。治安悪そうとは思っていたけど、合っていたか。

「私はソウショウ。同じく賞金稼ぎです。私も聖女様の顔を拝みに」

アークとソウショウの視線が交錯する。

「それで、大陸違いのあなたは?」

「わたし、リィヤ。ホリデ、ダンジョン行く。冒険者」

「冒険者?」

銀髪のアークが目を大きくした。

わたしはこくこく頷いて、冒険者カードを示してみせた。

「強盗の気配も探れないで、冒険者?」

「馬車の揺れに対応できないで、冒険者?」

「お前、ランクいくつだ?」

「……G」

「魔法が使えるのですか?」

一拍おいて、うんうん頷く。

「ダンジョンがどういう場所だか知ってます?」

美少年のソウショウが凄んでくる。

「知ってる。魔物倒す、ドロップ」

「お前、いくつだ?」

「……12」

「遊びじゃないんだぞ。魔物にやられたら死ぬんだぞ?」

アークに怒られる。

心配してくれてるんだ。それに強盗からも助けてくれた。

「知ってる。武器、強い。大丈夫。ありがとう」

「……仲間がいるんですか?」

わたしは首を横に振る。

「ひとり」

「C以下は、ソロじゃダンジョンに入れませんよ」

ええっ。そ、そうなの? ど、どうしよう。

「知らなかったのか。まぁ、お前、とりあえず飯食え」

と言われても、急に食欲がなくなった。

「なぜ、ダンジョンに?」

「帰る、船賃高い。一攫千金」

「お前、そこは地道に金貯めろよ」

「12歳、地道、ずっと帰る、いない。わたし、帰る。絶対」

決意ついでに声を張ると、ふたりが一瞬動きを止めた。

「……お前のさ強い武器って、見してくんない?」

わたしは頷いて、バッグを膝の上に引き寄せた。そしてラケットバットを取り出す。

ふたりは口をパカンと開けている。

ん?

「マジックバッグか?」

あ。忘れてた。バットはどう見てもリュックより背が高い。

わたしがまずいという顔をしたからだろう

「迂闊だなー」

と笑われた。そうですよね。そうか、武器は携えるものだ。

「変わった形ですが、武器自体にそう何かあるとも思えませんが」

「どう強いんだ?」

「跳ね返す」

「「は?」」

「カウンター。攻撃、跳ね返す」

わからないかな? わたしは身振りで、遠くから攻撃がきた想定で手を振り、それを勢いで返す。

「ばん、バーン」

ますます不可解な顔をするふたり。

なんて説明すればいいんだろう。

「あ、いや、言ってることはわかる。ただ納得できないだけだ」

ああ、なんだそういうことか。

「おばーちゃん、形見。スゴイ武器。わたし、生きる、できる」

偶然の産物だけど、創造力はホントいい仕事をしてくれる。ちなみに創造力で作った物はおばーちゃんの形見で通そうと思っている。変えるのはわたしの生い立ちだ。それも親しくなった人にしか明かさないことにする。あとは言いたくないで通すつもりだ。

「にしても、バン、バーンってなんだよ、それ」

アークが吹き出すと、ソウショウも何かを堪えているような表情で顔を背ける。

元の世界でも笑われたことは数知れず。わたしは説明ができない。言葉で説明が難しいと擬音語に頼る癖がある。後輩に『ノンブル以外全部つかんで、天地いっぱいまでバビョーンってやっちゃえば大丈夫』と簡略の仕方を教えていた時も、バビョーンって、わかる気がするけどと大爆笑された。引っ張るという言葉が出てこなかったのだ。気をつけてはいるのだが、言葉が滞ると擬音でごまかそうとする。

「ソウショウ、馬車やるよ。俺、行き先変更だ。ホリデで降りて、こいつと一緒にダンジョンに行くことにする」

「え?」

「本当にいるかどうかもわからない聖女より、お前の武器がどんなふうなのかを見る方が面白そうだ。ふたりならソロじゃないから入れるだろ?」

「いいの?」

切実にありがたいから遠慮したりしないよ。それに強そうだし。

「奇遇ですね。私も同じことを考えていました。ダンジョンというのも興味深い」

「本当? 嬉しい! よろしかったでしょうか!」

覆させないように勢い込んでお礼を言うと、ふたりはなぜか苦笑する。

「それより、さっき、御者違う、なぜ、わたし信じる?」

そう尋ねると、アークは顔をくしゃっとさせた。信じられないことに、山のようにあったアークの皿の上の食べ物はもう何もなくなっていた。

「お前が最初に示したんだ。仲間じゃない、と」

最初に?

「馬車の中で、追っ手がいることにあなたは気づいてなかった」

あ。

確かにアークに尋ねられた、後ろのはお前の仲間か?と。

そのまま野宿することになった。それぞれのテントを張る。見張りの順番の話になったので、結界石を見せると、頭を撫でられた。

「でもな、リィヤ。これ、結構高価だろ? 持って逃げられたらどうするんだ?」

「わたし、人、見る。大丈夫」

3人のテントを囲むように結界石を置く。中の空気がキィンとする。

アークとソウショウはそれからもふたりで話をしていたようだけど、わたしは早々に眠らせてもらうことにした。体力ないからね。テントの中では作っておいた防音装置の魔具を発動させる。夜泣きしていた場合外に音が漏れないようにだ。おばあさんの家の外や中で寝ていたときバレなかったので、もう夜泣きは治っていると思うのだけど、一応念のため。

なんだかんだといろいろあった1日だったので、わたしはすーっと眠りについた。

わたしにとって好都合な流れなので、深く考えなかった。賞金稼ぎというのがどういうものなのか。賞金稼ぎであるふたりが、なんで聖女の顔を見にいくつもりだったのか。わたしは何の疑問も持っていなかった。ふたりはほんの気まぐれに、わたしを助けてくれただけだったことは後からわかるけれど、ふたりの今まで生きてきた背景を思い浮かべもしなかった。この大陸で起きようとしていたことに、わたしは少しも思いを馳せないでいた。

次の日、顔を合わせご飯や御者の順番の話となったときに、わたしは挙手をする。

「わたし、馬できるいない、ご飯する、いい?」

ふたりはそれでいいと言ってくれた。よっしゃ。

朝ごはんは昨日のノッシーのお肉を味をつけて焼いたものと、野草のサラダ、簡易ブレッドを焼いたものにした。

「お前、うめーもん作るな」

「ええ、美味しいです。このサラダのタレは何が入っているのですか?」

「ソイジー。オーデリア大陸、島、イースター調味料。うまい!」

他大陸にもすかさずソイジーを推しておいた。