軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64話 君に伝えたいこと⑩17番目

アジトへ帰り簡単に夕食を済ませた。大事をとってケイとエバンスはすぐに眠らせる。アルスとチャーリーにも寝るように言ったみたいだけど、ふたりは起きていた。ちびちゃんたちはもちろん眠っている。ベルンは興奮してなかなか寝付けなかったけど。

「暗いってだけで思ったより危険があるんだな」

トーマスが口を開く。そこは反省点として心に留めることにして、塔の方の首尾を尋ねる。結果は上々なことはわかっているけれどね。

泉についたちびちゃんたちだったが、蛍をうまくとることができず、割とすぐに、川原に合流しようと泉をたったらしい。

その途中の塔で、水魔法と風魔法を使って、甘い水を動かした。それを夜光虫が追いかけて、怪しい光の乱舞になったという。ただ女の子たちは強かった。夜光虫かなんかよと言って、正体を確かめに塔に登ろうとしたらしい。いくら何でも小さな子供をこんな暗い中塔に入らせるのは危険だと思い、塔のいたるところに甘い水を這わせた。塔のあちこちで光が舞い、そして何が起こったのか、3階ぐらいで、何かが倒れたような音がした。

その音で女の子たちが声をあげ、一目散に走り出した。感心なことにベルンは走るのが一番遅い子を励ましながらしんがりを務めたようだ。

うちの子、えらい。そして川原で合流。

マッケンに促され、こちらの出来事を話すと、一瞬シーンとする。

「怖かった」

ホセの言葉にみんな頷く。

「おれも。何かが起こってるって思ったのに、体が動かなかった」

ルシーラが絞り出すように声を出す。

「ランディ」

マッケンに呼びかけられる。

「ん?」

「光も使えるのか?」

「……ランクは低いけどね」

「秘密だったんだろ?」

なんて言えばいいんだろう。ためらっていると。

「そうだよな、属性多いと国とかに囲われるんだろ? だから秘密にしてるのか?」

「どれもランクは低いから役に立たないんだけどね。これは普段、使わないようにしてる」

正直に話す。

一人旅をしているときに、眠る前とかあまりに暇だったので、一通りの生活魔法は試していたから使えたんだけど。

「役に立たなくないよ。明るくて見えたから何が起こったのかわかったし、ふたりを見つけられた。ランディが魔法を使ったから、僕思いついたんだ。風魔法でふたりをすくいあげられないかって。お風呂を作るとき、いろんなことするのを見ていたからってこともある。じゃなかったらきっと何もできなかった」

「おれも。ランディが魔法使ったから、水魔法でふたりを持ち上げること思いついたんだ」

アルスとチャーリーに労われる。

「生活魔法の水や風で、人を助けられたりするんだな。ふたりとも凄かった」

「魔法が合わさるって凄いね。竜巻みたいだった」

「よくあんな時に魔法を使えたよ。ほんと凄い!」

「うん、ふたりともスゴイ!」

みんながアルスとチャーリーを褒め称える。

「アルス、チャーリー、ランディ、感謝する。ありがとう」

ボスに頭を下げられる。みんなからも口々に感謝される。

「や、やめてよ。わたしはただ明るくしただけだから。動けなかったし」

「そっか。お前、属性が多いから能力が偏って、敏捷性とかHPとか生まれたてみたいなんだな、ステータス」

感慨深く、マッケンが頷く。

「生まれたて、言うな」

そう言い返しながら。そういえばこの体になってから、まだ1年経っていない。ある意味、生まれたてというのは合っているかもしれないとこっそり思う。

「ねぇ、本当にそんな、低いの?」

ルシーラに首を傾げられる。

「低くない」

そう思いたくて否定しておく。

「おれはすっごく低いんだ。そんなステータスが低いのは穀潰しだ、恥だから出て行けって言われたんだ」

……………………。あっけらかんと言えるようになるまで、どれくらいの 傷(いた) みを乗り越えたんだろう。

「確かにそうだなって思ったから家を出たんだけど。ランディおれより体力ないし、走るのもおれより遅いし。すっごい気になってたんだ。おれは、138しかないんだ」

「138 し(・) か(・) ? ルシーラ、殴っていい?」

「ウソ、本当におれより低いの?」

ここで言わなかったらひどいのだろうか?

ああ、もう、いいや。

「40!」

「え?」

「だから、HP は40。回避や敏捷性、防御は4。攻撃は8。わたしはこれで生きてる!」

みんな顔がこわばっている。

「ただトロいだけじゃなくて、ぼ、防御も4なのか?」

「攻撃も8? 8なのになんで森に行ってるの?」

「40って100以下って、5歳でもなくない?」

「回避、敏捷性、防御が4?」

「ひと桁ってありなの?」

「ええっ」

「本当に軒並み低いんだね」

真面目な顔で言われると、ちょっと傷つくんだけど、ソレイユ。

「お前、よく生きてきた。えらいぞ!」

マッケンが涙ぐんでいる。

「こりゃまた、奇跡だね」

カルランは薄く感動している。

「ランディ、それでめげてないなんて根性が偉いよ」

ブラウンめ。

「ランディは王族か教会か貴族に囚われていたの? それで逃げてるの?」

「……リック」

アルスが小さい声で名を呼んだ。

「みんなが言ってたから。ランディはなんか力があって、それで囲われていて逃げてきたんじゃないかって。4つも属性があって、それで囲われてて逃げてきたの?」

「……違うけど、行きたくないところはある」

「話せない?」

「リック、アジトで話したがってないヤツに過去を聞くのは厳禁だろ」

ボスに諭されてリックはわかっているというように頷いた。

「ごめんね、ランディ。過去なんてどうでもいいと思っているんだけど、逃げてるなら隠すんじゃなくて話してみんなで考える方が、きっといい案が浮かぶんじゃないかと思ってさ。みんな言いにくいみたいだから」

「どういう意味?」

誰かがため息をついた。

「お前さ、設定が雑なんだよ」

カルランが苦虫を噛み潰したような顔だ。

「なんでもばーちゃんの形見ってことにすれば済むって思ってるだろ」

うっ。

「おれたち子供でも、聞いていておかしいと思う。大人が聞いたら一発だ」

ううっ。

「けどさ、お前が聞かれたくないことだからそう言ってるんだろうなと思って聞かないでいれば、なんかお前、誤魔化せてるって思ってるんじゃないかと思えて不安になってたんだよ」

「それで、属性4つ目でてきて、逃げてきたに信憑性出てきてさ」

カルランの後をソングクが続けた。

誤魔化せてなかったのか……。いい案だと思っていたのに。

「大人にもバレてる?」

否定して欲しくて聞いてみたが、みんなに頷かれた。

ってことはモードさんも、やっぱりわかっていたのか。

まぁ、モードさんにはわたしが作ったものもバレていたし。

みんなわかっていたのに、聞かないでいてくれたのか。きっと今まで会って親しくなった人みんな……。

「知識があるのに、おれらでも知っているような常識知らないし、ズレてるし」

マッケンに指摘される。

「森に行ったときさ、お前魔物の情報とか教えてくれるけど、見るのは初めてっぽいし」

ソングクが鋭い。なんで初めて見たってわかったんだろう。

「一番変なのはさ、お前ばーちゃんとふたりで暮らしてて、ばーちゃんとふたりで鬼ごっことかしてたのかよって一度突っ込みたかった」

間抜けさに目を瞑る。確かに。カルランの言うことはもっともだ。鬼ごっこはまだしも、だるまさんが転んだやドロケーは無理だ。

一瞬だけどうしようかと思ったけれど、すぐに心は決まる。

「そっか。簡単にいうとさ。ごめん、言えないことがある。そのこととは別で、ただ変な人に気に入られて、自由がなくなりそうだから逃げ出したんだ。そこには戻りたくない。でも何も知らなかったから、ほんとすぐ死んでもおかしくない状況で。そんなときに、ある人に拾ってもらったんだ。いろいろ教えてもらって。その人がどうしても行かなくちゃいけないところがあって、別れて。わたしは観光しながら、その人の故郷に、その人が戻る故郷にいくところで、この街に流れ着いたんだ」

場がシーンとした。

「言えないこともあるし、なんて言っていいのか難しいこともあるから、それは全部おばーちゃんの形見ってことにしていた。誤魔化せてると思ってた。教えてくれて、ありがとう。なんか別の言い訳考える」

「お前、おれたちに嘘つく前提なのに、清々しいな」

確かにと思いながら強がっておく。

「長所なんだ」

言わないのはただのわがままだ。みんなはわたしのどんな過去でも受け入れてくれるとは思うけど。同年代でいたい。対等でいたい。それと、知らなければ嘘をつかなくていいからだ。鑑定の他にも嘘を見破るスキルがあるのだろう。わたしが異世界から来たこと、未だ探されていること。これらを併せ持つと、彼らは知らない方がいいと思うのだ。

「言わないのは、信用してないとかじゃないからね。ただのわたしの都合で……」

どう言ってみても言い訳にしかならないけれど。

「言う、言わないは別にいいんだ。たださ、お前がみんなを大切にして守ろうとしてくれるみたいに、俺たちもお前を守りたい。足が遅くて、体力なくて、ステータスが低くて、属性が多くても。なんか力があるんだとしても。何にもなくて、ただ情けない奴だとしても。どこにいても、お前は俺たちの17番目の家族だ」

トーマスの言葉に、また泣きたくなった。

わたしは全く未知だったこの世界で、16人もの家族ができた。すべてを告げないって言い切ったのに、そのままのわたしを受け入れてくれる家族が。