軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65話 君を想う①噂の真相

蛍火送りの当日。夕方、わたしたちは塔に向かうことになっている。キャストはチャーリーとトーマス。わたしは声担当だ。

ホセが影の苦労人で、ここ数日、毎日大工のサルベさんのところに通って、飾り細工を教えてもらっている。蛍火送りに行こうとホセがサルベさんを誘い出し、塔の方に来てもらう。ホセはひったくりにあった女性の悲鳴を聞き駆けつけ、ひったくり犯を追いかけて、物を取り返す。サルベさんにはチャーリーのツケぼくろを見させて、戻ってきたホセがチャーリーにローブを被せる。そしてお礼を言って立ち去る。と言うのが筋書きだ。体格は小柄な女性で騙せたとしても、喋ったら少年ってバレる、とチャーリーが譲らず。彼でもわたしでもあんまり変わりないと思うんだけど、わたしの方が女声と言うことで、声担当になった。

チャーリーの衣装ではひと騒動あった。なんと女性に見えるように、詰め物をして女性の下着をつけるというのだ。わたしは無理だと意見した。

「みんな女性用の下着、見たことないでしょ?」

彼らの頬にシュッと赤みが差す。

「着ろって用意されてたんだけどさ」

「なんで女用の下着、着ろって言われるんだよ」

エバンスに突っ込まれて、慌てる。

「わたしじゃないよ。一緒にいた女性が渡されたヤツだよ」

あぶない、あぶない。

「それがさー、下なんてスルスルのヒモだよ、ヒモ! ところどころは広がってるけどさ、あれじゃ何も覆えないよ。それにあのスルスルさだと、ぎゅっと結んでも緩むだろうし、結べたとしても、少しでも触っただけで、落ちるよ、あれ」

アルバーレンで身ぎれいにしろと言われた時、用意してあった下着に驚愕した。手触り自体はいいんだよ、多分高級な素材を使っている。でもさ、これが下着って不安定さしかない。触感もいいはずなのに落ちたりしそうな不安定さから心地悪さしか感じなかった。紐パンどころじゃない。マジでヒモだった。っていうか、あれで本当に何ができるのかわからない。ふんどしだって布の部分がもうちょっと幅のあるものがないと無理だろう。紐だけで何をしようというのか。

わたしは力説した。だって本当に驚いたのだ。そして絶望したのだ。この世界の下着に。幸い子供になったから、関わらずに済んでいるけどさ。

「あんな不安定なもの穿いていたって、心配事が増えるだけだよ。歩いて擦れて落ちたらどうするんだろう? 途中で脱げて恥かくぐらいなら、最初から穿かないほうがましだよ。上だってさ、何がしたいのかわからない。押さえるのにも覆うにも意味がないんだよ。あ、カーテンあるじゃん。タッセルで止めてある、あの形なわけ。フリルはバカみたいについているけど、どう布が頑張っても頂点も覆えなくて、真正面から見て胸がコンニチハしちゃうよ、あれじゃあ。あんな意味のないっ」

後ろから手が伸びてきて口を塞がれる。トーマスの手だ。

「あんなー。青少年の想像力を煽るな。みんなランディはガキなんだ。ガキだからなんも考えてないんだ」

何するんだと、顔を上げれば、みんな顔が赤い。

想像力を煽る? そっか、想像しちゃったのか。多感な時期だもんね。それは悪いことをしたかもしれない。

「でも丸見えだよ。詰め物なんかしたら見えちゃうよ」

トーマスの手をどかして言いたいことは言う。

ソレイユが冷静に言った。

「ランディ、どこで着ろって言われたのか、しかも子供にって、心から言及したいけど。それは特殊な下着だから大丈夫だよ」

「特殊な下着?」

「うん、わざと見せるんだよ、それは」

わざと、見せる?

「なんのために?」

「知りたい?」

ソレイユが首を傾げる。美少年は何をやってもサマになるな。

そして思い当たる。

「あ、伽だからか」

そうだ、王子は伽の服を用意させたと言っていた。あれはセクシーランジェリーだったわけか。

「なんでそこで伽って言葉が出てくるかな? ランディ、ちょっとちゃんと話をしようか」

ソレイユの声が恐い。

「伽…伽にしたってエロさと言えばチラリズムの方がグッとくるだろうに、なんで丸見えにいっちゃうかなぁ」

「えろ? ちらりずむ?」

「見えそうで見えないってヤツだよ。その方がいやらしいだろ?」

わたしは丸見えより、チラリズムの方がよっぽどエロいと思う。

「ソレイユもガキに合わせて話を進めるな」

「へー、ボスもそういう下着知ってたんだ」

カルランが呟く。そしてビクッとして、こっちから目を逸らす。ん?と振り返っても、トーマスがいるだけだ。カルランは軽く咳払いをし、仕切り直しまとめる。

「あー、ランディの心配は気にしなくていいから、チャーリー」

チャーリーは胸には詰め物を詰め、スカートを履くそうだ。気の毒に。

そしてカルランの演技指導には震えた。最初はお礼を言うだけでいいという話だったんだけど、いつしかひったくりにあった際に、悲鳴をあげることになった。だが、演技などしたことがない上、才能がないため、これが全然OKが出ない。チャーリーとトーマスの演技は一発OKだ。ずるい。でも確かにチャーリーの転び方は本当に転ばされたように見えた。

「危機感を感じられないんだよな」

って言われても。

「しゃぁないな」

カルランが立ち上がる。わたしを見てニコッと笑う。

「演技指導だからな」

と、押し倒される。あまりの早業に声も出せないでいると。

カルランと目が合う。

「これじゃダメか。そんじゃぁ」

さらに近づいてきて首のあたりに息がかかり、本能的に声を上げていた。

「きゃーーっ」

「やりすぎ」

トーマスがカルランの首根っこをつかみ引き上げる。

うっ。

「今の、よかった。忘れないで」

トーマスはわたしの腕も引き上げて立たせてくれる。

「悔しい! 何、今の。敏捷性が高いアピール?」

「敏捷性? アピールって何?」

「アピールって訴えるっていうか、見せつけるっていうか」

「違うし。焦って、どう声出せばいいかわかっただろ?」

やられた! 恥ずかしいっていうか、悔しいっていうか! あんなことで焦って声をあげてしまう自分がすっごく恥ずかしい。

「大丈夫か?」

「大丈夫じゃない!」

怒りが収まらず、トーマスに苛立ちをぶつけてしまう。

「ごめん、トーマス悪くないのに。もともと、わたしがうまくできなかったからなんだけど」

うーーーーーーーーーー。なんでこんな腹立たしいんだ。

「ごめん、ごめん。でもどこも痛くないだろ? ちゃんとぶつからないように抱え込んだし」

カルランに頭を撫でられる。ううっ。

「でも悲鳴出せないなら、チャーリーと交代でトーマスに突き飛ばしてもらうから」

カルラン、本気だ。

カルランには後で謝られたけどね。何人かからやりすぎと怒られたらしい。ちっとも堪えてなかったが、メイに「ランディいじめるにーちゃは嫌い」と言われて、初めて悪いことをしたのかもと思ったらしい。反省したと謝られた。お芝居っていうか、うまくいくように一生懸命になっちゃうのはいいところでもある。ただ、あれはやり方がよくない。

っていうか。なんであんな焦らせ方を思いつくんだ! あの焦らせ方が有効と思われたのはバレてるってことだ。いつなんでわかったのか聞いたところ。「割と上手く化けてると思うけど、見ていればわかる」とのこと。それと、ボスがメイと一緒に眠らせるところで、そう思ったらしい。最初からじゃん!

あんな焦らせ方をなぜ思いついたのか聞いてみると、巣立っていったアジトの兄貴たちから聞いた、女の子に自分を意識させるためのドキッとさせる方法らしい。わたしもドキッとすれば臨場感ある悲鳴をあげられると思ったそうだ。

「スピードが大事だって言ってた。考える隙がないほど、焦ってびっくりして、すっげー可愛いいって言ってた」

兄貴たち、ロクでもないな。それにカルラン、悪びれてる様子がない。

1年前にアジトを出て行ったのは先代のボスを含めて13人、その前の年は7人と大所帯だったそうだ。思春期の男の子たちが盛り沢山でいれば、まぁそういう話に花も咲くことだろう。この街だとアジト出身とバレるのでやはりお給金に影響があるらしい。ここを出ていくと、皆街も出ていくのがセオリーとなっているようだ。

ふむ、働き手が13人か、半分も減ったんだ。先代ボスが森に行っていたというから、他にも森に行ける子はいて、そこからの収入はあっただろうし、やはり人手が多いのは何かの助けになる。半分の稼ぎになり、人数も減っているけれど、その状態で1年近くも回してたのか。そりゃ厳しい。

兄貴情報でしんみりした気持ちを頭を降ってふるい落とす。

「で、わたしは可愛かったかね?」

「目がまんまるになってて、それなりに……」

と言いかけて、やっとわたしが怒っていることに気づいたみたいだ。

そして、やはり、カルランは悪いと思っていないのは目に見えたので、教えることにした。力が及ばない相手に身動きが取れないようにされるのは、どんだけ怖いかを。

「カルランさ、解体場の班長さん知ってる?」

「ああ、もちろん。手でかいんだよな。あれで何回小突かれたことか」

カルランは軽口が多いからね、小突かれたりもするだろう。

「カルランにすると、班長さんに急に身動き取れなくされて、首をしめられそうになった感じ、なわけだよ」

カルランは急に腕をさすった。

「……ごめん」

想像したんだろう。班長さんが本気で怖いみたいだ。

「そ。そういうことだから。ああいうのはやめてよね。それに兄貴たちがどう言ってたのか知らないけど、ああいうのは、女の子に最低って言われてモテないよ」

カルランが表情をなくした。ここでも『モテない』は万能呪文なようだ。何よりそれが一番効くなんて、わたしは腹立たしかった気持ちも忘れて、笑い出しそうになった。

そもそも押し倒す系なんて、大きくなってお互いの気持ちが通じ合ってからだろ。反省するようなら、意識させるための女の子をドキッとさせる方法として『壁ドン』でも教えてあげるか。あれはドキッとする。あれこそがドキッに相応しい手段だろう。ただし相手からの好意がまるっきりない場合、怒りや不快さで二乗に嫌われる可能性があることもセットで言わなければ。あと、ここぞという時にやるんじゃないと軽薄君と思われることもね。

ちなみにわたしは混雑していた電車で、ドアにもたれていた若いお兄ちゃんに、急な揺れにより図らずも壁ドンをしたことがある。めちゃくちゃビビってた。でも、わざとじゃないんだよ。あの時、ドアに手をつかなかったら、無様に倒れたからね。とにかく、あれはまさに種類はどうあれ『ドキッ』とさせるものだ。

そんな演技指導を受けて、今日の運びとなりました。

「緊張してるのか? 顔が強張ってるぞ」

出動前にカルランに話しかけられて、わたしはほっぺたの辺りの筋肉をほぐした。

「おれの言う通りにやれば大丈夫だって」

そりゃそうなんだろうけど。できるかどうかが不安なのだ。

「もう一回、押し倒されとくか?」

「あのねー」

「だけど、お前だってメイやらクリスやベルンをぎゅーってしてんじゃん」

急にカルランが調子づく。押し倒すのとぎゅーっはレベルが違うと思うのだが、カルランの中では同等らしい。

「それとこれでは全然違うだろ」

「どこが違うんだよ。似たようなもんじゃん」

「わたしは可愛いと思って、気づくとぎゅーってしちゃってるんだよ」

「だから、おれもそうなら、問題ないだろ?」

「わたしを可愛いと思って、思わずぎゅーってしちゃうわけ?」

「そう。可愛いと思って、思わずぎゅーっとしちゃうんだ」

と、カルランにいきなりぎゅーっとされた。

「ちょっと!」

腕の中でもがくが、体が大きいからそれぐらいじゃびくともしない。

「失敗してもいい。やるだけ、やってこい」

カルランなりの励ましだったのか。わっかりにくい奴。わたしはわかったと言う合図に、背中に回した手でポンポンと彼の背中を叩いた。

いつもと違う様子だったのは、カルランは責任者として、少し緊張していたのかもしれない。

みんなに見送られて、トーマスとチャーリーと歩き出す。

わたしたちも、少し緊張している。3人で会話もせず、てくてく歩いた。

悲鳴をあげる練習をしていた時だったと思う。なんの話から転がったのかは忘れたけれど、カルランの言葉にわたしは驚いた。

「おれたち警戒心強いから」

警戒心強い?

「初日からメイたちとだけにされたけど?」

「ま、そりゃ転んで気を失うようなヤツの何を警戒しろと?」

じとっと見ると、カルランはわたしの頭を撫でた。

「悪い、悪い。けど、事実だろ。ギルドで金に換えて、ホクホク呑気に歩いててさ。金奪ってくれって言ってるようなもんだ。案の定、ゴロツキがお前をマークしてさ。ヤツらが目配せしてたからな。おれは自業自得だからほっとけばいいのにって思ったんだ。マッケンがさ、あいつ正義感が強いから、アルスに進言して。って流れだったんだ。おれ、ひどいだろ?」

そうだったのか。

「普通だよ。よくみんな助けてくれたって思うもん」

「助けてもさ、すぐ出て行くと思った。スラムだし、汚いしな。おれたちと関わりたくないのが普通だし。それがランディ、ボスたちに居てもいいのかって言ったんだって? 聞いて驚いた」

ああ、あの時の 間(ま) はそういうことだったのか。居ていいぞと言ってはいたけど、すぐ出て行くと思ってたんだ。それでもよく、よくわからない子供にメイたちの面倒を見させたもんだ。

「まぁ、メイはともかく、クリスとベルンはしっかりしてるしな。帰ってきたら、チビたち、ランディに懐きまくってるし」

カルランはわたしから視線を外す。

「おれは甘えたヤツ大嫌いだけど。まぁ、妬みだけどな。呑気そうなどんな甘ったれだよって思ったけど。お前さ、最初の日、夜泣いててさ」

ひとりだったからわからなかったけど、夜泣きは治ってなかったか。

「怖い夢でも見たのかと声かけたんだけど、起きなくてさ。泣くのも声噛み殺して泣いてて。ホセとケイとナッシュがそれ見て釣られ泣きして。エバンスが泣くなってお前をぎゅっとしたら泣き止んだからさ、みんなでもう泣かないようにぎゅっと固まって寝たんだ」

あの団子状態は、わたしのためだったのか。

「呑気そうにしてても、お前も辛いことあったんだよな。あんな泣くぐらいさ」

そういうわけでもないと思うのだが。わたしにも夜泣きは不可解でなんとも言いようがない。

「わたし、今も泣いてる?」

「いや、メイと眠るようになってからは泣いてないぞ」

少しホッとする。

「おれさ、お前が呑気そうにしてるのは、嫌いじゃない。呑気に食いもんのこと考えてヘラっと笑ってて、それに釣られてチビたちもなんか幸せそうで、楽しそうでさ。そんな今のアジトをおれは守りたい」

だからさ、そんなおれたちの暮らしを邪魔する、聖水なんか弾き飛ばしてやろうぜとカルランは笑った。もちろんアジトの一員として、協力は惜しまない。聖水売りやギルドには頭にきているし。ただ噂に翻弄された身としては、自分たちが噂を作ることには近寄りがたいところがあったのだが……、そんなカルランの顔を見たら、頑張ろうという気になった。

舞台には灯りを用意する。チャーリーの近くに甘い水を漂わせ、夜光虫を群がらせる。これで髪の色、瞳の色、つけボクロは見えるのだろうか?

どこで用意したのか、チャーリーは女性用のワンピースを着ている。胸、盛りすぎじゃない? 長い髪をおろして、ローブはすぐ横に置く。パッと見、小柄な女性に見える。スカートの裾を膝上までめくり上げ、ホクロが見える体勢をしてみる。

「ランディ、そっちから見て。ホクロ見える?」

わたしはホセとサルベさんが来る方向からチャーリーを見る。いい具合に夜光虫が飛び交い、ホクロもバッチリだ。

「よく、見えるよ」

チャーリーがはぁ、と大きなため息をついた。トーマスが髪の色を隠すのに帽子をかぶる。

ホセの声が聞こえて、ふたりはスタンバイだ。わたしは急いで移動して、ふたりのすぐ横の木の根元にしゃがみ込む。ホセたちが来るのがよく見えた。

心臓がドキドキしてくる。

「この辺りで送りますか?」

ホセがのんびりした口調で言った。

合図だ。わたしはチャーリーとトーマスと目を合わせて頷いた。

胸のところで祈るように手を組んで叫び声を上げる。

「きゃーーーーーーーーーーーーーーっ」

弾かれたようにホセが走ってきて。そのすぐ後を酔っ払いと思えないスピードでサルベさんが走ってくる。

「何してる!」

ホセの怒鳴り声に、一瞬動きを止めたトーマスが、チャーリーの手提げを持って逃げていく。

演技といっても転ぶのはやはり怪我が怖いので、最初から転んだ体勢でいて、そこからひったくり犯が逃げるところを見てもらうことにしたのだ。

ホセはトーマスを追いかけ、手提げ袋を取り返す。チャーリーは演技指導が入ったのか、驚くくらい色っぽい仕草で足を閉じ、顔を伏せたまま立ち上がろうとする。戻ってきたホセがそんなチャーリーのそばに落ちている、彼女のローブをかけてあげる。

恐らく、目のところだけ見えるようにローブを被っていると思う。

ああ、ぼんやりしている場合じゃない。

「怪我はありませんか?」

「はい、大丈夫です」

「取られたのはこちらだけですか?」

ホセが手提げ袋をチャーリーに手渡す。

チャーリーが包み込むように、手提げ袋ごとホセの手をとる。

わたしは仕草に合わせて声を出す。

「これだけです。助かりました。ありがとう存じます」

カルランから指示されたのは、いいところの淑女風にゆっくり話すこと。なるべくチャーリーの真後ろから声を出しているようにするということだ。サルベさんに向かってね。それだけでは絶対口パクとわかりそうな気がして、わたしは風でチャーリーの口元に声を届けている。

あとはチャーリーが立ち去るだけ。

「あんた、見かけん人やね。どこのお人だい?」

ええっ。難題きたーーーーーっ。ど、どうしよう。街人じゃなく、聖女っぽく。聖女は隠れているんだから。

「……旅のものでございます。お祭りと伺いましたので、夜の街をそぞろ歩いておりましたら、いつの間にか暗い方に来てしまっていて……」

「こっちは暗いからな。そりゃ災難だったな。自警団に届け出に行こう」

ええっ。酔っ払いがまともなことを言った!

「いえ、大ごとにはしたくないのです」

だって自作自演だから。

「いや、そりゃ良くないよ。ひったくりなんて! 祭りの関係で変なのが紛れ込んだのかもしれん。自警団に行こう」

えーーー、どうすればいいの、カルラン!

わからないから逃げよう。

「申し訳ございません。ワタクシが姿を現すことは禁じられているのです。ここで失礼させていただきます。感謝いたします。ありがとう存じます」

ふわっとローブを翻し、チャーリーが歩き出す。

「お待ちなさい」

そんなサルベさんをやんわりホセが引き止める。サルベさんはホセを振り切って走り出した。が、チャーリーは脱兎のごとく逃げおおせ、姿は見えなくなっていた。チャーリー素早い。やはりチャーリーでよかった。わたしじゃ絶対追いつかれた。

サルベさんをなだめながらホセが、街に向かって歩き出す。ホセたちが小さくなって。わたしはやっと息を大きくついた。ぺたんと座り込んでしまう。

ああ、緊張した。うまくいったよね?

肩を叩かれて飛び上がってしまう。声を上げそうになって、口を押さえられた。

トーマスとチャーリーだ。チャーリーはもう髪を結び、ワンピースからいつもの服装に着替えていた。胸もない。

3人で大きく息をつく。夜光虫をランタンに戻して、帰ることにする。

アジトに帰ろう!