軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

135話 回復

わたし的にはもう元気なのだが、寝込んだあとはみんな過保護になる。何かしていると休むよう勧められ、人だけじゃなく、魔物たちにも家の方に押しやられた。今日はとことん休むことにする。クーとミミは黄虎とお散歩に行った。ずっとわたしにつきっきりだったみたいだから、是非ともそうして欲しい。

「モードさんも寝てないんじゃない?」

と尋ねると、昼はルークさん、夜はモードさんとわたしについていてくれたようなので、睡眠はとっているとのことだ。どうせなら少しでも眠れとベッドに押しやられてしまった。

「モードさんは夜の当番なら、今眠いんじゃない?」

モードさんはわたしのおでこを指で弾いて、わたしの隣に横になる。

「これでいいか?」

うん、とわたしは頷く。でも、横になっているのは上掛けの上だ。本当に眠る気ではないってことだね。肘をついて頭を高くしている。

「眠れるように背中を叩いてやろうか?」

モードさんはニヤリと笑う。それも魅力的だが。

「ちょっとおしゃべりしようよ」

わたしも横向きとなり、モードさんと向かい合う。

良かった、モードさんが無事で。モードさんが強いのを知っているけれど、離れていると危険な目にあってやしないかと不安になる。何でかいつも怪我するのは安全なところにいるはずのわたしな気もするけど。でも、まあ、モードさんやわたしの知っている誰かが怪我するよりはずっといい。

モードさんに試験のことを聞いた。上級試験の内容については人には話していけないそうだ。ただ、モードさんが27個も上級ポーションを飲むことになったようだから、ものすごく熾烈なものだったんだと思う。SSランクの冒険者はオーデリア大陸にはモードさん1人、Sは5人いるそうだ。カノープス大陸にはSSが2人、Sは3人。何かあった時は協力体制をとることがあるらしい。

「申請しないとだから、先に聞いとくが、結婚したら、お前すぐに子供欲しいか? 子作り休暇すぐ取った方がいいか?」

わたしは耳がおかしくなったんだろうか? 今、なんか変なふうに聞こえた。

「ごめん、変なふうに聞こえた。もう一度言ってくれる?」

「ん? すぐに子供が欲しいか聞いた。欲しいんだったら、ギルドに子作り休暇の申請をとらないとだから」

耳が変になったんじゃなかった。

「な、何? その子作り休暇って」

そんなあからさまな。

「お前の世界ではなかったのか? 子供を作るための休暇だ」

いや、それはそうなんだろうけど。

「こっちはそんな宣言をして、子供を作るの?」

「子供ができにくいからな。子供が欲しかったら仕事を休んで本格的に取り組まないと」

本格的に取り組むって何さ。

質問攻めにして分かったのだが。これは少子化を危惧しての対策らしい。

結婚をしたら、子供をつくる目的で休暇を申請できる。何度でも。期間は3ヶ月から半年が一般的らしい。元から成功報酬のようなギルドでは支払われないが、お給料制のところでは基本給の2分の1まで休暇中も払われるそうだ。ギルドでは休暇中は強制依頼などに行かずにすむ。

出生率が下がったのは平民と貴族だと貴族が圧倒的に多かったらしい。そこで導き出された結論がまたわけわからんが、平民のように時と場所を特に選ばないことが出生率を高めるとされたらしいのだ。それまでは貴族は占いだとか、方位だとか、そういうのを大切にしていたらしい。

数撃ちゃ当たるじゃないけど、回数がものをいうような風潮になっているようだ。そんなばかな! でもそもそも致してなければというところではあるので、あながち間違いではないのだろうが。

とりあえず、わたしは言った。

「し、しばらくは、わたしだけがモードさんを独占したいな」

ガキは苦手と言ったけど、絶対そうは思えない。モードさんが子供にかかりきりになったら、嬉しい反面、ずるいとか思ってしまいそうだ。

「そうか」

モードさんが目を逸らして言う。

「俺もしばらくふたりの時間を楽しみたいから、それは追々でいいな?」

言われてわたしは頷いた。

それにしてもと、わたしは向こうの世界では一般的に知られている排卵日と受精の話をした。

「お前はそんな知識があるのに、どうして子供のつくり方を聞いたんだ?」

真面目な顔だ。

「だって何もしてないのに子を宿しただのいうから、向こうとこっちじゃ仕組みが違うのかと思って」

「で、ペリカーンを信じたのか?」

と驚かれる。それはここがファンタジーの世界だからだよとわたしは力説した。

魔法はなかったし魔物はいなかったけれど、魔法があり、魔物と戦う物語はいくつもあり、それをファンタジーと呼んでいたことを話す。

「じゃぁ、神獣はいないのに、神獣のいる物語があったということか?」

わたしは頷く。

「そういえばお前、ステータスを見たことがないのに、ステータスを理解していたな」

そう、そうなんだよ。

「そんな物語があって、実際そういう世界に来て。この世界を知っている人が物語を書いたり、伝えたりだとかしたんじゃないかと思えた。

それでね、向こうの世界でも小さい子に赤ちゃんはどこからきたって聞かれたときに、向こうではコウノトリっていう鳥が赤ちゃんを運んでくるって言われていてね。

だからこっちでは鳥が運んでくるのが本当のことだから、それを知っている人がわたしのいた元の世界に行ってしまって、赤ちゃんは鳥が運んでくるって言ってそれが広まったのかってうっかり思っちゃったんだよ」

モードさんは苦笑いだ。

「だからさ、排卵日を認識してさ、その休暇に予算をとるんじゃなくて、子供が生まれたら助成金を出すとかにすればいいのにね。助成金ではそれだけ欲しさに悪いこと考える人がいるかもしれないから慎重に考えるべきだけどさ」

それに、仲良くなる休暇なわけだから、平和な感じでいいのかもしれないし。できにくくはあるのだろうから、却ってストレスになってなければ、いいんだろうけどね。

「俺の嫁さんはいろんなこと知ってるな」

とわたしのまぶたに口付けを落とす。

こそばゆいけど、ちょっと嬉しい。多分、わたしはにまにましている。

モードさんに尋ねられて、こちらであったことを話す。

ハーバンデルクの王都に行ったことはもう知っていた。お父様から聞いたみたいだ。

異世界人と明かすかどうかはモードさんと相談してからにしたかったので、王子の貸してくれた知恵を借り篭り花と話したことを告げる。王族にはまだ迷うところはあるけれど、ご家族には話したいと思っていることも伝えておく。

モードさんも国にはとりあえず篭り花のままでいようと言った。ご家族には危険区域への浄化の旅の後にでも話すかということになった。

補足として、第二王子が仲良しだと思っていたのに婚約者も紹介してくれないって拗ねてたよと伝えておく。

「あのバカ」とモードさんは舌打ちしていた。

市場を案内してもらって、ご飯を奢ってもらったことも伝える。

蒸し返したいわけではないのだが、ロディアーヌお嬢様には、わたしたちが婚約したことは伝えたのかを聞いてしまった。実はかなり気になっていたからだ。

「直接は言ってないが、貴族だから耳に入ったんじゃねーか?」

軽い調子だ。

「モードさん、パーティを組む話は?」

尋ねると驚いた顔をする。

「そんなことまでロディアーヌと話したのか? なら、あいつから聞いてるだろ? 危険区域で確かに打診があったが、その場で俺は弟子の面倒をみるので手一杯だと断った」

え? 危険区域で? あんのお嬢様〜!

モードさんその場で断ったんだ。わたしの面倒をみる方をとってくれてたんだ。

そっか。嬉しかった。すっごく嬉しくなる。

恨みっこなしだから。

うん、わたしがモードさんをいっぱい幸せにするから! 心の中で密かに決意する。

王宮のドレスのあれこれ。ドレス代については侯爵家の予算に組まれている中から出てるので大丈夫とのことだ。ほえー、すげー。ドレスだけじゃないからね。装飾品やら何もかもだけど、美容用品もすごいんじゃないかと思う。あの産毛とるガムみたいの凄かった。根こそぎとれるんだよ。痛みはね、マッサージの方が強くてそっちに気がいってるから技術あってなんだと思うんだけど。元の世界で欲しかったね、あれは。あのエステ丸ごともとんでもない金額だと思う。それも予算で組まれるのか、女性にかかるお金半端ない。キレイは買う物でもあるんだね。それだけの財力が要求されるってことなんだ。そんな世界と関わらずにいられて良かった。恐ろしい!

あとは孤児院の子たちと仲良くなって、仕事にきてもらっていること。ベーコン作ったり、メイメイの毛仕事もやってもらえたらどうかなと思っていること。

セグウェイを作っていること。

テイムの数がすごくなっているので、テイマーを増やした方がいいと思っていることや、みんなのお給金をアップしたいことなど。

話しているうちに思い出した。

山葵。山葵といったら、お魚食べたい。ホリデのダンジョン。

「ねー、モードさん。SSランクの冒険者は、例えば黄虎に乗って、ちゃんと入国しないで他大陸のダンジョンとか入ったら、問題あるの?」

「問題起こさなければ大丈夫だと思うが、どうしてだ?」

わたしはニンマリする。

「モードさん、ホリデのダンジョンに行こう!」

問題ないなら、ホリデのダンジョンだ! 7階だ、魚だ!

わたしが興奮しだすと、モードさんは「今日は寝とけ」と言って髪を撫でてくれる。それでも興奮冷めやらずにいると、上掛けごとギュッとして、背中をポンポンとゆっくり叩いてくれた。

子供じゃないんだからとあやしてもらっても……と思っていたのに、モードさんの高い技術によって、わたしはいつの間にか眠り込んでいた。