軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

111話 モード氏の受難⑧贖えない罪

ルークさんは相当めんどくさかったのだろう。馬車ではなく、魔力の鳥でバビューンと飛んだ。わたしがちまちま歩いていたら、まだハーバンデルクさえ出ていられないだろう時間で、セイラまでやってくることができた。

セイラ王国のチトアニマという街は、童話から出てきたみたいなお家が並んだ、カラフルで、景色を見ているだけで楽しくなってくるような街だった。

そこで一際大きなお屋敷に入る。王子の隠れ家のひとつだそうだ。隠れ家だからか、警備の人はあんまりいない。こんなところに王子がいていいのか?

ルークさんに案内してもらって部屋に入ると、王子が険しい顔をした。

「……ごきげんよう、ハナ。招待した覚えはないが。ルーク、なぜ、ハナを連れてきた」

「私だって嫌なのですが、奴隷狩りに合うわ、捕らえられた人を解放させたいと言うわで、私も困っております。ハナ様が王子に会いたいとおっしゃるので」

しれっとルークさんは告げる。

「私に会いたい?」

訝しむように王子はわたしを見る。

「ごきげんよう。モードさんに何を伝えるのか目的を聞くためと、あとひとつ話があってきました」

不快を隠そうとしない王子にビビりそうになるが、引きずり込まないとなので、ビビっている場合ではない。

「ティア!」

「モードさん……」

モードさんが部屋に入ってきた。

「お前がここにいて、第一王子と話をしているってことは、王子の言うことは本当なんだな」

わたしはキッと王子を見る。

「モードさんに何を言ったんですか?」

王子はわたしに答えず、モードさんに声を荒げる。

「これでわかっただろう。わかったら、私は今からハナと話があるから、出ていってくれ」

「その前に、俺が話がある」

「いいから出ていけ」

王子がモードさん追い出そうとしている。これはイヤな流れだな。

「聞くよ。モードさん、話して」

モードさんは静かに息を吸って、通る声でわたしに尋ねた。

「お前は、異世界から来た、事実か?」

「やめろ!」

わたしは王子を手で制した。

「うん、わたしはこことは違う世界から来た。聖女召喚に巻き込まれて。わたしには何の力もないけどね」

モードさんの顔が苦しそうに歪む。

「……依頼を受けた。アルバーレンが聖女召喚を目論んでいるようだと。今まで何百年も聖女を召喚せずとも世界は均衡を保ちやってきた。それを崩すことになる、と。だから聖女召喚を失敗に導く依頼を請け負った。俺もこちらの世界の都合のためだけに異世界から人を頼るなんてことはするべきでないと思ったからだ。

アルバーレンの王城に忍び込んだ。召喚の要は魔法陣だと聞いた。儀式の核になる魔法陣を描くための魔具を破壊しに行ったんだ。俺のスキルで魔具はみつけた」

モードさんのスキルは看破だ。鑑定と似通った何かだろう。

「スキルで調べれば、その魔具はすでに一部が壊れていた。そこを神官にみつかり追われて逃げた。完全な破壊をするべきだったが、もう壊れていたから召喚できないだろうと思ったんだ。一部壊れていたそれがどう影響したのかはわからないが、召喚は成功し、ティア、お前まで連れてきてしまった」

「モードさんがやったんじゃないじゃん」

思わず言っていた。

「俺が破壊していれば、お前が毎日泣き暮らすことにはならなかったんだ」

手を打ったのはルークさんだ。

「感情論はそこまでにしましょう。そういうこと、だったんですね。あなたたち、めんどくさいですよ、本当に。揃いも揃って、強引で強気なくせに、変なところで弱気になって。当のハナ様はとっくにご存知だったようですし、それで納得されているんだからいいじゃないですか」

「……知ってたのか?」

「詳細は今知ったよ。でも、モードさんが召喚に何かしら関係していたのかもとは思った」

王子がわたしをモードさんから遠ざけたい理由。それは知れば多分わたしが傷つくこと。どういう可能性があるか、何度も考えた。どんな事実がやってきても気持ちは変わらないのは確かだけど、知った時、衝撃は受けるだろうと思って、衝撃を和らげたくて、対策をとりたくて、考えてしまった。どんなことがわたしが傷つくか、考えてみたけれど、やはり一番衝撃が強いのは召喚に関することだろうと思った。だから、王子とのことは 方(かた) がついて、何もかも曝け出して問題なかったのに、 躊躇(ためら) う理由のひとつになった。

「そのあたりは、後でふたりでゆっくり語られては? 今はそれより、壊れていた魔具についてです。召喚に王子は神経質でした。召喚前に魔具を置く部屋に侵入者があったとすれば、召喚自体を中止にしていたでしょう。でも、人が忍び込んだという報告はなかった。どんな神官だったか覚えていますか?」

「青い髪だった気はするが、違ったかもしれない。すぐに逃げたからな。でも、そうか、あの時外まで追っ手がかからなかったのは、あの神官は侵入者のことを報告しなかったのか」

「誰かが召喚を防ごうとしていたってこと?」

思わず、王子に尋ねてしまう。

「私が失敗するのを望んだ、内部のものの犯行だろう」

王子の顔が青くなる。その顔色を見て、王子は犯人を知っているんじゃないかと思えた。

「魔具が壊れていたなんて……」

そうか、本当に召喚におまけが付いてきたのは王子のせいじゃなかったんだ。

それなのに、わたしは憎んでいた。怒りをぶつけまくった。

感情的になっているから、と、ルークさんがその場を収めて、みんなひとりになる時間を与えられた。

用意してもらった部屋で、クーとミミとお茶とクッキーみたいなお菓子をいただいていたら、落ち着いてきた。自分ではわからなかったが気持ちが昂っていたみたいだ。

『ティアはイシェカイというところから来たにょか?』

「うん、そうだよ。こことは違う世界から来たの」

『巻き込まれたって言った。しょれは本当は来たくにゃかったってこと?』

賢いなぁ。

「そうだね、来るつもりは全くなかったのに、ある時、唐突にこっちにいたの。でもね、クーとミミや、今まで出会った人たちと会えたのはよかったことになったよ」

『いつか帰っちゃうにょか?』

「それが、帰れないんだ」

嬉しそうにして、そしてすぐに引き込まれそうなブルーの瞳が曇る。

『かえりゅたい?』

「家族とか友達に会えなくなっちゃったことが哀しいかな」

『わたし母しゃまとまた会えると思うから離れていても寂しくにゃいけど、会えにゃくにゃったら哀しい』

『俺しゃまも、会えにゃいのはいやだ。ティア、かわいしょうだ』

とても素直に同情されて、涙腺にうるっとくる。

「ありがとう。でもクーやミミや黄虎やモードさん。みんなといられるから、可哀想じゃないよ」

そういうとふたりはわたしの腕を足がかりにして、顔にすりすりと頬を寄せてくれた。

次の日、クーとミミはルークさんに預け、王子を訪ねた。

「あなたのせいじゃないのに、怒りをぶつけてごめんなさい」

「いや、私が始めたことに変わりはないから、やはり元凶は私だ」

「あなたもバカね。全部自分で背負い込んで。モードさんが関わっていたかもしれないって、わたしに知らせないようにしていたのは何で?」

モードさんが貴族だとか、王位継承者だとか言ってきたくせに。

わたしがモードさんと一緒にいられないと思うようなことを聞かせたくせに。

でも、肝心な、わたしが一番嫌がるだろうこと=わたしがこの世界に来た原因がモードさんかもって、それが一番わたしがモードさんと一緒にいられないと思うようなことなのに、それは決して言わなかった。

「ハナはあの者が好きなのだろう? 好きになった者が召喚に関わっていたかもしれないと知ったら、君が傷つくと思ったからだ」

元凶のくせに、何でそんなところで優しさを見せるんだ。

「モードさんが召喚に関わっていたかもってことはどうやって知ったの?」

「ハナが頼る人が誰かを調べた。ハーバンデルクの竜侯爵の秘蔵っ子だとあたりをつけた。彼の動きを追って怪しいことに気づいた。彼はいつだって公明正大なのにあの召喚の儀の前後だけ、どこにも記録がなかった」

「……森かなんかで野宿していたのかもしれないでしょ?」

「そうだね、彼は飛行して移動もできるし、兄弟に転移できるものもいるしね。でも変なんだよ。実家のあるハーバンデルクにいる記録があっても何の問題もないのに、王城に彼がいたのを目撃されているのに、どこを探してもその記録がないんだ。全くの偶然だがね、知り合いの話にでたんだ。他国でも竜侯爵の末子は有名だからね、見かけたって。それなのに、その頃、ハーバンデルクに入国した記録も出国した記録もない。西のツリーライフ王国のニカオブのギルドで仕事をしたのを最後にその3ヶ月後、唐突にメリストのルベラミで大きな魔物を討伐している」

知っている名前が出て来たのでちょっとピクッとしてしまう。

「この間にハナと会っている。異世界人の君とね」

「わたしからモードさんに頼んだんだよ、連れて行ってって」

「ハーバンデルクの王との謁見、有能なAランク冒険者、一目置かれる竜侯爵の秘蔵っ子。白紙の時間。完璧なる聖女召喚のひとつの手違い。異世界人との邂逅。彼には何かあると思った」

「それ、ただの勘でしょ?」

わたしは呆れる。

「ハナ、私の勘は外れない」

確かに、モードさんはある意味関係者だった。

王子は哀しそうに言った。

「勇者の私の勘が外れるのは、想定外に迷い込んできた君のことだけだ」

「勘でモードさんが召喚に関わってると思って、どうするつもりでモードさんをここに呼んだの?」

王子は視線を逸らした。

「一緒にいるということは、異世界人であることを君は明かしていない。だから伝えようと思った」

「どうして?」

彼は顔を上げる。

「一緒にいるということは君に好意を持っているんだろう。自分のしたことで君を巻き込んだと知ったら、どんな風に関わっているかは知らないが、罪悪感で君といられなくなると思った。彼が召喚の関係者なら、君が異世界人であると知ったら君から離れていくと思った。君が知らずに済むのが一番だと思った。君を傷つける前に君の目の前から退場していくと思った。そう願った。けれど真っ向からしたことを打ち明けてくるとは思わなかった」

なんとなく事情はわかった。

モードさんに辛そうな顔をさせてしまった。一瞬、なんで言ったんだと思ってしまったけど、わたしも少し先には召喚に巻き込まれてきたことを言う気だった。それに言う、言わないに関わらず、事実は変わらないのだ。過去は変えようがない。

「なぜ私に先に話しにきた? 君が先に行くのはあの者のところだと思ったよ」

王子は口の端だけで微笑う。

「ハナも怖いのだな」

その通りだ。モードさんに会うのはちょっと怖い。昨日はあの後ルークさんの計らいでみんなそれぞれの部屋で食事をとり、王子ともモードさんとも会わなかった。

「せめて魔具を壊したのがあの者でなくてよかったよ。それにハナが彼をそれでも好きで、気持ちが変わらないなら、私が口を出すことではないね」

わたしはモードさんは召喚に関係しているとは言えないと思う。そりゃ失敗させようとは思っていたんだろうけれど。でも実際、王城に忍び込んだくらいで、魔具が壊れているのを知ったくらいで、それだけだ。

でも、モードさんが自分を責めるだろう気持ちは、その心の動きはわかる気がして。罪悪感で、今までと同じようには接してもらえなくなるんじゃないかと、それが怖い。

「だけど、お節介をしてあげるよ。モード氏をここに呼んだから。そのまま一緒に出て、話をするといい。素直に、思ったままに、話してごらん。真っ直ぐに伝えにくいことを君に伝えた彼は、受け止める度量のある男だと思うよ」

そう微笑んだ王子は今までで一番優しい顔をしていた。

ノック音がしてモードさんが入ってくる。

わたしを見て、少し表情が硬くなる。

「聞きたいことがあり、呼んだ。私は以前、ここにくる前にお前と会ったことがあるか?」

モードさんはわたしにチラリと視線を走らせてから答える。

「12歳の時にハーバンデルクにいらしたでしょう? あの時宮殿でお見かけしました。話などはしていませんが」

「そうか」

王子は頷く。

「結構。ハナも行っていいぞ」

それだけ? バレバレじゃん、わたしと話をさせるためにモードさんを呼んだって。でも、多分そうやってもうふたりで話していいぞの許可を出しているのをモードさんに知らせる意味もあるのだろう。わたしもありがたいから、この機会を逃さない。

促され、わたしはモードさんと一緒に王子の部屋を出た。

「ハナっていうのがお前の本当の名前なのか?」

わたしは首を横に振る。

「話がしたい。モードさんの部屋に行っていい?」

勇気を出して言ってみると、モードさんは頷いてくれた。

熱めのお茶を用意して、テーブルに向き合いで座る。

「名前を聞かれて、咄嗟に出た偽名なの。山田花子、そう名乗った」

そう言ってからわたしは不思議に思ったことを尋ねた。

「モードさんはレティシアでの側室騒動のとき、あの騎士が王子って気づいてたの?」

「最初はわからなかったけどな。切れ者だし、キレイな顔してたから、繋がった」

「髪と瞳の色は違ったけど、王子の方はレティシアで話しているのにモードさんだとわかってないみたいだね」

「ああ、あん時は、お前以外にはさらに幻術がかかるようにしていたからな」

わたしがまだ小さかったから、姿まで変えたらわたしがパニックになり泣くかと思って、わたしにはかからないようにしていてくれたようだ。怪しまれた小さなわたしには鑑定などの魔法で確かめられたようだが、保護者のモードさんには誰も魔法で確かめなかったという。

そうだったんだ。

「わたし、オーデリア大陸にいたはずの手続きができたら、モードさんに話したいと思っていたんだ。召喚された時のこと、聞いてくれる?」

モードさんは頷いてくれた。

わたしはモードさんに、召喚された時のことを話しだした。

真っ白な部屋で管理者さんと話したこと。力をもらい、姿は時間差で変えられるようにしてもらったこと。国からすぐに逃げ出して、森に入ってしまったこと。追っ手に捕まらないように姿を変えたら、神様の計らいで若返り、幼児になってしまったこと。途方に暮れていたところに黄虎に咥えられたこと。

そして、最初に謝ってから、本当の年齢を話した。

「お前、人族じゃないのか?」

「え? 人族だよ」

「寿命が長い人族なのか?」

「いや、普通? 80前後じゃないかな」

「じゃぁ、普通だな」

じーっと見られる。

生理的に受け付けられない感じではない? 勢いとはいえキスまでしちゃったし。

「何?」

「お前の世界の成人はいくつだ?」

「20歳」

モードさんが眉を寄せる。

「なんで?」

「お前の世界の大人は幼いのか?」

「それはわたしが幼いって言ってる?」

「ああ、すまんがそんな歳の女性とは思えない。子供にしては賢いとは思っていたが、疑いがなさすぎだろ」

「失礼な。まぁ、こちらほど危険はないから、平和ボケしているとは思うけど。……それより気持ち悪くない? 大丈夫?」

「何がだ?」

「だから、ちっちゃかったけど、中身は年増だったから」

自分で言っておいて微妙にへこむ。

モードさんは表情をなくした顔でわたしを見る。

「なるほどな」

な、何がなるほどなんだろう?

「お前の話しにくいことはソコなのか? 異世界から来たことでもなく。召喚に巻き込まれたことでもなく」

「だって、モードさんよりずいぶん上だもん」

「例の成長でいずれは戻るのか?」

「ううん、26ぐらいで普通の成長になると思う。20ほど若くしておいたって書かれていたから」

「神様、か」

「あ、神様の話はモードさんにしか言ってないから、王子たちには言わないでね」

聖女ちゃんも言ってないみたいだから、バラしてしまってそっちもバレたら悪いからな。

「お前の世界にはいなかったからかもしれないが、種族で寿命が違うからな。年齢は、あんまりそこはなんとも思わない」

おー、セーフ。モードさんのトラウマにはならずに済んだみたいだ。

「あ、あと、王子はわたしが小さくなったのは知らないと思う。逃げてこの姿になってると思ってるみたい。ルークさんは9歳の姿から知っていて。アジトを出てからルークさんにはバレて。でもどう逃げたとか詳しいことは何も言ってない」

「……俺はお前が教会に囲われていたんだと思った」

「教会に?」

「神様に憐まれているとか言うから」

いや、わたしが言ったわけじゃなくて、ステータスにそう出てるんだもん。

「昔から教会には嫌な噂があってな。特にアルバーレンの教会は力を持っていて嫌な感じなんだ。お前はアルバーレンの王子を怖がっていたから、何かしらアルバーレンと関わりがあると思った。お前の魔力やスキルが規格外だから、教会に囲われていて、何にも知らない世間知らずに育ったのかと思っていたんだ」

そっか。

「お前は俺が召喚に関係しているといつ知った?」

「モードさん、街で身元を隠していたでしょ? わたしにとって都合が良かったから考えなかったんだけど、あの時期にあの辺りにいたことにしたくない何かがあるのかなと思ってはいた。帝国から戻ってきてエオドラントに行くのに、王子たちのお世話になったんだけど、その時、王子がわたしがモードさんと会うのをなぜか止めようとして。それで推測した」

モードさんがお茶に手を伸ばして、わたしも手を伸ばす。お茶はすっかり冷え切っていた。

「で、結局、噂の、身篭った側室聖女ってのはお前のことだったのか?」

お茶が変なところに入って咳き込む。モードさんが背中をさすってくれた。

「身篭ってないし!」

アルバーレンを逃げ出した理由をすっ飛ばしていたか。

「召喚のおまけでついてきちゃって。おまけだったから理由説明とかなくてさ、その上呼び出しておいて還す方法はないって言うから頭にきて貴族に憤っちゃったんだよね。そしたら殺されそうになって。王子が貴族からわたしを守る方法として側室になることを提案されて、そんな未来まで縛られるのが恐ろしくて逃げ出した。神様にもらった力で姿が見えなくなる服を作ってそれを着て、城から逃げ出したの。そしたら追手がかかって。王子が側室だの、子供を身篭っただのって設定にしたから、あんな噂に」

「……ホクロは?」

うっ。なぜそこに気づく。

「お前、足にホクロないよな?」

「……神様の姿替えでホクロはなくなった」

「足のホクロをなんで王子が知ってる?」

「…………」

ガタッと立ち上がる。

「モードさん?」

「あいつに聞いてくる」

目がマジだ。

「何もなかったから。嫌がらせで襲うポーズを取られて」

手を掴む。

「モードさん!」

「殴ってくる」

「何もなかったから」

モードさんが振り返り、ぎゅっとしてくれる。

「何もないことはないだろ。嫌な思いしただろ。怖かっただろ?」

ぎゅーっとモードさんにしがみつく。

「お前は、竜人の長にあれだけ突っかかれるのに、自分のことでは黙るのか?」

「蹴って気絶させたから! ケリは自分でつけた」

そう言って顔を埋めていると、少ししてから迷ったような手が頭を撫でてくれた。

「……でも、俺にはそんな資格もないか」

モードさんが呟く。

「そんな思いをしたのも全部、この世界に来ちゃったからだもんな」

モードさんを仰ぎ見ると、痛みに耐えるような顔をしていた。