軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

969 聖なる夜空へ

俺の誕生日と勘違いされたクリスマスパーティは宴もたけなわに続いていく。

まずは俺へのプレゼント攻勢。

誕生日といえばプレゼントだと、多くの人々が俺への贈り物を携えてくれた。

「聖者殿へ、我が魔国の領地を一部お贈りいたしましょう! いかようでも好きにお使いくだされ!」

「聖者殿に、我が人魚国の正式な爵位を用意しました! いえいえ臣下となるわけでもない栄誉称号ですので遠慮なく受け取っていただきたい!」

「我ら新人間共和国からは、建国記念に二百個限定で作ったマグカップを受け取ってください!!」

「このガイザードラゴンのアードヘッグからは我がウロコで組み上げた1/60スケールおれの写し身像を……!」

『余からは冥界神として、冥界に下っても七度まで地上に戻れる権利を与えようと思うが』

『ずるいぞハデス! だったら私からは地上と海を自由に行き来できる権利を……!』

誰も彼も貰ったら困る大それたものプレゼントに選ぶのどうして?

いつもであればやんわり遠慮するところだが、皆さん俺のために純然たる好意で持ち寄ってくれたために断ることはできなかった。

例外として神々の贈り物は『さらなるものを与えてはならない』という神々の法に抵触するために取りやめとなったが……。

対する俺は、柄にもなく感涙してしまった。

こんなにも皆から誕生日を祝ってもらうなんて、いつぶりのことでだろうか?

正確には誕生日じゃないけれど。

少なくとも成人してからは一度もないことで押し寄せる人の善意に溺れそうであった……!

あったけえ……!

人ってこんなに暖かかったんだな……!

極めつけには、息子ジュニアとノリトが連名で贈ってくれた俺の似顔絵。

クレヨンで描いたヤツ。

「ぱぱー、これあげるー」

「あうあー」

すべての父親が求めてやまぬ宝物がついに俺の手にも……!!

これが結局一番嬉しかった。

涙で絵を汚さぬように必死に耐えるので大変であったわ!

何があっても汚れたり破れたりしないようにラミネート加工して飾っておこう。

神棚の隣に飾っておこう。

それはそれとして、クリスマスパーティ自体も大盛況だった。

パーティに参加してくれた皆は聳え立つクリスマスツリーの輝かしさに目を奪われ、脇で見苦しく騒ぎ立てる桜や梅やヤシの木たちに生暖かい視線を送っていた。

料理もまた好評で、甘くとろけるクリスマスケーキは主に女性たちに好評。ジューシーなローストターキー(?)は男性陣に好評だった。

「うひょぉおおおおおおッッ!? いつもながらご主人様の作るケーキは甘くて頬っぺたがとろけるのだぁああああッッ!! しかもこんなにデカいケーキ結婚式以来だ! やっぱり誕生日は特別な日なのだぁあああッッ!!」

ヴィールも熱狂、ケーキの味に。

『おおおッ! このかぼちゃの煮つけのホロホロ具合よ! 出しがシッカリしみ込んでいながらかぼちゃ独特の甘さも残しておる! ハデスよポセイドスよ! これは私がリクエストして聖者に作ってもらったんだ! 遠慮せず味わうがよいぞ!!』

『いえ父上……! 余らはどっちかっていうとケーキか焼き鳥の方が……!!』

『おいハデス! パパ上にかまってる場合じゃないぞ! 料理が凄いスピードでなくなっていく! このままじゃ我らの食べる分がなくなる!!』

クロノス神もリクエストのかぼちゃが気に入ってくれたようでよかった。

ちなみにかぼちゃの煮つけは先生にも好評で、思った以上に速いペースで消費された。

『この程よい甘みが、ワシのような年寄りにはちょうどいいですのう。食が進みますわい』

そうして大盛り上がりでクリスマスパーティは完了し、大成功の下に幕を閉じた。

俺も発起人として、そして準備にも大変力を入れたので、この結果には大満足だ。

しかし。

俺のクリスマスはまだ終わらない。

そうこのクリスマスパーティが、クリスマスイブに当たるのだとすれば、これからこそがクリスマスの本番だ。

夜も更け、これから眠るよい子たちにプレゼントが贈られるというメインイベントが。

むしろ子どもたちにとってはそれこそがクリスマスの意義。

だからこれから子どもたちの下にサンタさんが訪れなくてはならない。

よい子へのプレゼントを携えて。

ならばサンタは、今宵現れるのか?

『サンタなんていないよ』などという野暮な言葉は必要ない。

重要なのは『誰がサンタか?』ということだ。

そう。

俺が……。

俺こそがサンタクロースだ!!

「はあ? 何言ってんだご主人様?」

ヴィールに真顔で突っ込まれてしまった。

そんなマジ対応するなよ

「いいかヴィールよ。クリスマスはまだ終わっていない。むしろこれからが本番だ。クリスマスには、クリスマスの晩だけに現れる特殊な存在がいなければ完成とは言えない!!」

それがサンタ!

そしてそのサンタには俺がなる!

今宵、すべてのお父さんはサンタクロースにならなければいかんのだ!

「俺が! 俺たちが、サンタクロースだ!!」

「ふーん、そうなのか」

ヴィールの反応が薄かった。

しかしヴィールよ、今の俺のセリフをよくよく脳内リピートしてみるがいい。

さすれば重大な事実が見えてくるはずだ!

「はあ……、おれが? おれたちが?……えッ、待て?“おれたち”?」

そういいところに気づいたな。

「まさかッ、そのサンタクロースとか言うのにおれも含まれているのか!? おれもサンタにならなければいけないのか!? そのためにパーティ解散したってのに改めておれをここへ呼んだのか!?」

その通り、よくぞ気づいたヴィール。

しかし、その推測は正解であれども完璧ではない。

「いいかヴィール、サンタには相棒がいる。けっして欠くことのできない究極の相棒が」

「相棒……それは一体……!?」

その相棒の名こそ、トナカイ。

「それって種族名じゃないのか!?」

「トナカイは、サンタの乗るソリを引く役目を持っている。サンタだけでなくプレゼントを満載にしたソリを引き、世界中の子どもたちの下へ飛び回るのがトナカイの役目だ」

まあ現実のトナカイは空なんか飛べやしないんで、ソリを引いて世界中の子どもたちの下を回ることなんて不可能なんですがね。

あと念のため記しておくがトナカイ自体は実在する。

「そこで白羽の矢が立ったのがヴィールお前だ! お前には是非ともトナカイの代役としてソリを引いてほしい!!」

「断固嫌だが!?」

お前が、お前こそがトナカイだ!!

「なあ、ご主人様。最近とみに忘れがちじゃないか? おれ様はこれでもドラゴンで誇り高い存在なのだ。怒ればニンゲンぐらい種族ごと焼き尽くしてしまう、強大にて恐ろしい怪物なのだぞ!」

「一応トナカイコスプレセットは用意しておいたけど、着る?」

「聞けよ話を!」

ちなみに俺はしっかりサンタコスを装着済みだぞ。

全身返り血に染まったかのような真紅の装束に、白く豊かなヒゲ。

これで誰がどう見ても俺はサンタの中のサンタだ!

俺はこの姿となって子どもらにプレゼントを届けに行く!

「でもなあご主人様、プレゼントを届けに行くってジュニアとノリトのとこだろ? 自分ちのことじゃないか?」

あくまで面倒事に巻き込まれたくないヴィールは、何とかして厄介から逃れようと言葉を連ねる。

「そこへ立った二つのプレゼントを持ち込むのに、わざわざソリで引かなくてもいんじゃね? 手も地で充分なのだー……」

「たしかに二つだけならソリは不要だろう。しかしな、二つだけではないのだよ」

「は?」

プレゼントは、この世界にいる子どもの数だけ存在する!

今宵世界中の子どもたちにプレゼントを配り歩くのだ!!

「なんでッ!? なんで自分の息子らに飽き足らずよそ様の子どもにまで贈るのだ!? いよいよご主人様乱心したか!?」

いや、聞いてくれヴィールよ。

俺も父親になってわかったことがある。

自分が子どもを持ってしまったら、自分とはかかわりない他人の子どもであろうと誰であろうと可愛く見えてしまうものだって。

クリスマスの準備を進めていくうちに俺は、世界中すべての子どもたちにクリスマスの喜びを届けたくなった!

そのためにはヴィール、お前の協力が必要だ!

是非とも俺のトナカイになってくれ!!

「ご主人様……!」

うッ、ヴィールからの視線がキツい……!?

やはり『何言ってんだ、この人?』と呆れ失望されるパターンか!?

「ご主人様……! なんと素晴らしいお考えなのだ……!!」

「え?」

意外なことにヴィールは感涙しておられた。

「自分だけに留まらず皆にも幸せを分けてやろうという考え。まさに大物! そんな考え方のできるご主人様を誇りに思うのだ!!」

「おお、それでは!?」

『謹んでおれ様がソリを引かせてもらうぞ! ドラゴンウイングで世界一周なのだ!!』

そうしてドラゴン化したヴィールに引っ張られて俺は、聖なる夜空へと飛び立ったのであった。

さあ待っていてくれ世界の子どもたち。

これから俺サンタが夢を届けに行くからな!!