軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

970 トナカイ襲来

ボクはジテオ。

人間国に住む八歳の男の子。

ボクは冬が嫌いです。

何故かって言うと、特に何もないから。

春は暖かくてたくさんの花が咲いていて楽しい。

夏は暑くて川遊びや山登りが楽しい。

秋は作物が実って、色々なものをいっぱい食べられて楽しい。

冬は特にない。

ただただ寒くて、花も咲かないし外で遊ぶのも辛い。

食べ物も春が来るまで溜めておいたものを大切に食べていかなきゃいけないのでお腹いっぱいにもなれない。

楽しいものが何もない。

それが冬。

『そんな時こそ家にこもって勉強しなさい』とお母さんは言うが、勉強こそ楽しくないものナンバーワン。

家の中でずっと机に向かっているばかりだったら、それこそ腐っちゃうよ。

でも外は寒いので、出かける気にもなれない。

ああ、早く春が来ないかな。

冬なんてとっとと過ぎ去ってしまえばいいのに。むしろなくなれば。

そんなことを思ってやまない、ある夜のことだった。

* * *

ボクは、自分の部屋の窓から夜空を見上げていた。

冬は空気が澄んでいて、夜空の星も綺麗に見える。

数少ない冬のいいところだけれど、別に多少澄んでいなくとも星空は春夏秋もみられるし。

何より、冬は寒くて窓も長時間開けてらんないから星空眺めもすぐに終わってしまう。

つまらない。

やっぱり冬よりは春がいい。もしくは夏か秋。

冬でさえなければどれでもいい。

冬は退屈。

早く終わんないかな、冬。

ならさっさと寝てしまおう。寝て起きたら朝になっているし、それを何十回も繰り返せば春になる。

春になるためにはたくさん寝たらいいんだ!

そう思ってベッドに入ろうとした……その前に窓を閉めないと寒くて寝れない。と窓の桟に手をかけようとしたその時……。

……何? この音?

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……って。

空気が揺れ動くような音が?

冬の夜は静かで有名なはずなんだけれど、一体何があって……?

ん? あっちのお山の向こうから飛んでくる……何?

今日は月が明るいので、辛うじて影が見えるけど……鳥か?

いや、鳥じゃないよね?

鳥って、暗いと目がまったく見えなくなるから夜は飛ばないんだってお父さんが言ってたよ?

じゃあ、あの夜空を飛行する物体は鳥ではなく……何?

鳥ではなく、鳥よりもさらに巨大で、むしろ超絶に巨大すぎる……!?

ドラゴンだぁああああああああああああッッ!?

『ドラゴンではない! 今日のおれ様は、トナカイなのだ!!』

ドラゴンが喋った!?

ドラゴンって喋るモノなの? というよりトナカイって何!?

『トナカイとは! サンタクロースの相棒! 呂布と赤兎馬、オーディンとスレイプニルのような間柄なのだ!!』

どういうこと!?

ドラゴンがトナカイ!? トナカイの一種がドラゴンってこと!?

そもそもサンタクロースって何!?

『いやいや、それを言うならむしろトナカイがドラゴンの一種というか……。ご主人様、結局トナカイって何だ?』

「うーん、シカの仲間?」

あ。

よく見たらドラゴンの後ろに人がいる?

真っ赤な衣装を全身にまとって一部の隙もない赤!

まるで返り血に塗れているようだ!?

そして、なんであの人はドラゴンの背後にいるの!?

それがどういうことかと言うと、今あのドラゴンは空中に浮遊しているんです!

そのドラゴンの後ろにいるってことは、人間も一緒に浮遊しているということ!

いや、人間そのものが浮いてるんじゃなくて……?

なんか小さな舟みたいなのに乗って、あの小舟が浮いているってこと……?

「これは舟ではありませんソリです。街中ではお目にかからないかもしれませんが、動物に引かせて進む豪雪地帯の乗り物です」

ソリはソリは。

知らなくてソーリー。

……え?

って言うことはあの人間さん、ドラゴンにソリを引かせて、ここまで飛んできたって言うの!?

しかも空を飛んでるってことは雪の上を滑ってないじゃない!?

それはいい豪雪地帯の乗り物として!?

『うーん、いいのかこれはご主人様? ガキが起きちゃってるぞ?』

「眠っている子どもの枕元にプレゼントを置くのがサンタクロース・プロの流儀だからなあ。本来であれば、夜更かしする悪い子にプレゼントはナシだが、今日に限っては特別な夜。無礼講と行こうじゃないか」

プレゼント!?

なんだろうこのときめくような響きの単語は!?

なにかボクに、とってもハッピーなことが訪れる予感!

「キミは、夜空を見上げていたのかな? 眩い星空に憧れを持つのは少年らしくていいじゃないか。そんなキミには、これをプレゼントフォーユーだ!」

おおおおおおおおおおおおおおおッッ!?

ただで貰えるなら何でも嬉しい!

これは何!? 木か紙でできた筒のような!?

「これは望遠鏡というものです。遠くのものも近くにあるかのように見える眼鏡です。これでたくさん天体観測するといいでしょう」

『おう、ずっと前にジュニアのために作ったヤツだな』

「アレの簡易的な複製だけれどね。クオリティは土産物売り場のオモチャ並」

うおおおおおおッッ!

この筒を通して、お星さまがより克明に見えるよ!

あッ、なんか裸のお姉さんが水浴びしている!

「こっちの世界じゃ天体観測すると、天界の神々の生活まで覗き見してしまうんだけど、まあいいか」

『アイツらこそが地上のニンゲンたちのプライバシー侵害しているからな。処女神アルテミスの入浴ぐらい覗いてもバチは当たらないのだー』

凄い! 凄いよこの遠見の筒!

こんなの貰っていいの!?

「いいとも、今夜は世界中すべての子どもたちにプレゼントが贈られる日なのだから」

何なのこの真紅のおじさん!?

神様!

お陰で、この何でもない冬の日が特別になったよ!

「もちろんだ、だって今日は特別な日なんだからね」

特別!?

「そう、クリスマスという特別な日だ」

クリスマス!

何もないはずの冬の季節にこんな素敵な催しがあったなんて!!

「年に一度、クリスマスは冬の日に必ずやって来る! 来年もサンタの到来を楽しみに待っているといい!!」

俄然これからの冬が楽しみになってきた!!

真夜中に窓から空を見ていたら、こんなに凄いものがやってくるなんて!

物語じゃない! 本当のことなんだ!!

「喜んでくれたかい? では俺たちは、さらに多くの子どもたちへプレゼントを私に行かねばならないので失礼するよ! アデュー、よいお年を!」

『ご主人様、去り際の挨拶それでいいのか?』

「もちろん! クリスマスが終わったあとは『よいお年を』で相場が決まっているんだ!!」

『ところでご主人様』

「なんだ?」

『地上が騒がしいぞ、どうやらおれたちの存在が気づかれたようだ』

「なんで!? サンタは隠密潜行がモットーだというのに!?」

『ドラゴン引き連れて隠密もクソもないのだー』

街中では、空に浮かぶドラゴンに人々が恐慌し、非常事態の鐘が鳴り、家から大人たちが飛び出してくる!?

「ドラゴンだ! ドラゴンが来たぞぉおおおッ!?」

「男たちは武器をとれ! 街を守れ、妻や子どもを守れぇえええッッ!!」

「冒険者ギルドに緊急通達! 街の警備兵にも! それでも守り切れるのかぁあああッ!!」

「相手はドラゴン! この街始まって以来の大ピンチじゃあああああ!!」

わあ! こんな真夜中だって言うのにお父さんもオジサンたちもこんなに騒いで!

冬なのにこんな賑やかな夜って初めてだよ!

クリスマスって、冬をこんなにも楽しくするんだねサンタさん!