軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

92 沐浴

とにかく、こうなっては陶芸どころの話ではない。

被った泥を洗い流さないと。

汚れたままであちこち歩き回っていたらプラティに怒られてしまう。

泥で汚れた服を脱ぎ、裸になったあと水を被ろうとするものの……。

「聖者様、こっち見ないでくださいね! 絶対こっち見ないでくださいね!!」

それは俺と同様、飛散した泥をかぶったベレナも同じだった。

一応マナーで背を向けているが、背後には泥まみれの服を脱いであられもない格好の彼女が……。

っていうかなんで同じ場所で体を洗ってるんだろう?

「あの聖者様。……私今、パンツも脱いで素っ裸なんで、絶対こっち向かないでくださいね!」

ここまで念を押されると何かのフリかと思ってしまう。

しかしやっぱり今日のベレナはなんか変だな?

気負いすぎて空回りしているというか……?

「……あの、ところで質問なんですが」

「はい?」

ザバッと水を被って、泥が落ちたのを確認してから体を拭く。

「聖者様は、私たちに伽を命じたりはしないんですか?」

「おふぅ……!?」

このタイミングで、そんな質問をしますか!?

「伽って……! 何と言うか……! 夜のお相手をするってことだよね?」

「そんな確認をしないでください!」

自分から振っといて照れて怒った。

「私もバティも、ここにご厄介になる時から、その覚悟はしています。居候になるからには家主の指示には絶対服従です」

それがこの世界の価値観なんだろうか?

「あと……、聖者様からお情けを頂けたら私の存在意義も……!」

「ん?」

どういうこと?

「それはともかく、俺にはもうプラティやヴィールがいるからなあ。ベレナたちは気にせず伸び伸びと暮らしてくれればいいよ」

「ですよねえ……」

ベレナは半ばがっかりしたような口調で言った。

何故?

「事のついでに聞きたいんだけど、この世界では、一人の男が二人以上妻を持つって普通なの?」

「それはある程度の地位と実力を持つ者なら、ごく自然なことです。聖者様ぐらいなら百人妻をもっても大丈夫だと思います!」

「物置かッ!?」

「?」

このツッコミは異世界人には通じなかったようだ。

とにかく、この問題は、この土地に女性の住人が増えれば増えるほど如実な問題になっていく気がする。

そう俺の本能が告げている。

いつかきっちり向き合わねばならなくなりそうだ。

* * *

体を洗って着替えを済ませたあと、気を取り直して陶器作りを再開する。

今度はちゃんと速度を調節したベレナの轆轤回しに、俺も段々手馴れて粘土をこね回していく。

その辺りは『至高の担い手』フル活用だ。

そしてなんとか器の形が出来上がった。

「うわあ……! 本当にこんな綺麗な形に出来上がるんですねえ……!」

ほぼ真円状となったお椀の仕上がりにベレナも感嘆した。

しかし本番はここからだ。

出来たお椀を窯に入れて、焼く。

割れた。

水分の蒸発とか、物質の膨張収縮とかの関係で、急激に熱するのはよくないようだ。

何度か失敗を繰り返して、ついにヒビ一つない完成品が焼き上がった。

「おお! 凄いですよ! 本当に土からお皿が出来上がりましたよ!!」

ベレナは達成感に打ち震えているが、俺自身この試作品に持った感想は、以下のようなものだった。

「……弥生土器?」

まんま土の色だった。

陶器と言えばならではのガラスみたいな光沢もなく、指で弾いてもチンと金属的な音もしない。

あえて言うなら本当に、古代の遺跡から出土した土器みたいな原始的な造りだった。

「試作品としてはまずまずだが、目標にはまだ遠いな」

「えッ!? そうなんですか!?」

「俺の求める一品になるためには、まだまだ色々と研究が必要だ」

時間を掛けて進んでいくこととしよう。

「そ、それでしたら聖者様!」

ベレナがまた詰め寄ってきた。

「その研究、私に任せてくださいませんか!?」

え?

何ですいきなり?

「私、ここに来て焦り始めていたんです! 相棒のバティは被服係という立派な仕事を見つけたのに、私はいまだ明確なポストを得ていません! 人員が補充されるごとに居場所がなくなってきていますし! 是非ともこのプロジェクトを私めに!!」

そんなこと思っていたのかこの子!?

それでこんなに焦っていたと?

「よしわかった。陶器完成プロジェクトをベレナの主要任務に……!」

と言おうとして、ベレナの顔が晴れやかになりかけたその時だった。

「我が君! ご報告!」

とゴブリンの一人が飛び込んできた。

いいところで流れをぶった切るねキミ。

「お楽しみのところ申し訳ありません! ですが一大事でしたので!!」

お楽しみ中じゃねーよ!!

……えッ?

物作り工作で楽しそうだったってこと?

ああ、なんだ。

で、一大事って何?

「侵入者です! 我らが農場に、エルフの盗賊団が!!」

エルフの盗賊団?

なんだそれ?

って言うかこの世界にもエルフっていたのか!?

「それで、そのエルフの盗賊団はどうしたんだ?」

「一人残らず捕えてございます!」

早っ。