軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

91 異世界陶芸

陶芸をね。

やろうと思う。

ご飯を食べるためには食器全般は必要で、食器といえば陶器。

今までは木を削って皿状にしたり、くり抜いてお椀状にしたり、それでも間に合わない時は葉っぱを皿の代わりにしたりとあまり文化的でないサバイバルな即興品であった。

もっと本格的な食器を用いることで、より文化的な暮らしを享受したい。

と思って陶芸作りを夢見つつ幾年月。

陶芸に絶対必要な陶芸用の窯がなかなかできなくて今まで踏み出せずにいた。

しかしその問題の窯もオーク組やゴブリン組の人員補充に際して無事完成。

ついに俺も陶芸人間ライフに出発可能。

出来栄えの気に入らなかった皿を片っ端から割りまくるのだ!

陶芸人間! 皿割る皿割る!!

……。

はい、趣旨が違いますね。

ちゃんと皿を作ることを目指します。

「聖者様ッッッッ!!!!」

「うわあッ、ビックリ!?」

魔族娘コンビの一人ベレナが、なんかいきなり詰め寄ってきた!?

何なのその思い詰めた表情!?

「もしよろしかったら、その作業私にも手伝わせてくれませんか!?」

「え!? なんで!?」

「なんでもかんでもありません!! 聖者様にご奉仕し、身を捧げることこそアスタレス様から授かった私の使命ですからには!!」

「なんか誤解を呼ぶ表現だよ!?」

たしかにバティとベレナの魔族娘コンビは、上司で今は魔王妃である魔王四天王アスタレスさんの命令でここに残った。

ウチの農場と、魔王さんたちとの友好の証なんだそうだ。

さればこそ、実際に我が農場に寄与していることを常に示したいところだろうなあ。

「よかろう。一緒に陶芸に勤しもうではないか」

「やったあ!」

ベレナは本当に嬉しいのか、その場でピョンと跳ねた。

その振動で、彼女の可愛い胸部がプルンと震える。

……。

誰だよ? 彼女が貧乳とか言ったヤツ?

「どうかなさいましたか聖者様?」

「何でもナッシング! では陶器作りを具体的に進めて行こう!!」

具体的な工程は、俺が前の世界にいた時分の聞きかじりの知識がすべてだ。

粘土をこねて、皿やお椀らしい形にしてから窯で焼く。

改めてみると雑すぎる。

こんな雑な知識で本当にいっぱしの陶芸品ができるのか? 陶芸舐めんなと言った感じだが、特に制限時間が設けられてるわけじゃないし、要はトライ&エラーを繰り返して地道にやっていけばいいのだ。

細かい部分は『至高の担い手』でどうにでもなると楽観的な側面もある。

そんなわけで上田宗箇もビックリな器の作成を、具体的に始めて行こうではないか。

* * *

まずは陶器の材料、粘土の確保だ。

その辺の土を適当に取ってきた。

この間の水路作りでも随分土を掘ったので、用途の定まってない土はたくさんある。

もちろんどの土も陶芸に適した粘土質であるわけないが、そこは大丈夫。

この『至高の担い手』ギフトが宿る手で触れると、はい、この通り。

「うわあ、水に混ぜてこねたら、滅茶苦茶ねっとりしてきましたよ!?」

土の粘り具合に驚くベレナ。

どこのどんな土だろうと、『至高の担い手』に触れることで最上質の粘土に早変わりだ。

そしてこれを台に乗せて器の形にしていく。

陶器を作る台だから、もちろん 轆轤(ろくろ) を用意させてもらった。

あの台自体が回転して、粘土に手を添えるだけで器の形にするあれだ。

昔テレビで見て、水っぽい粘土が轆轤の回転と陶芸家の手で見る間に形を変えていく様を美しいと思ったものだ。

建材の余りでテキトーに作ったもので、異世界産だから当然電動式ではない。回すには当然人力で。

左手で轆轤を回しながら、右手で粘土を成型する、って感じかな?

やってみたが意外と難しい。

手で回すのは、テレビで見た電動式より遥かにリズム感がなくて綺麗にいかないのだ。

粘土の成型に両手が使えないのも厄介だし。

「それでは聖者様!」

ここぞとばかりにベレナが挙手。

「魔法の力で、そのろくろ? っていうのを回してみたらどうでしょう!?」

と提案。

そんなことできるのか、さすが魔法。

「念動魔術を使えば可能ではないかと! ……どんなものでも動かせるというわけではないんですが。動かせるのはこの魔動石だけです」

と何やらベレナは懐から取り出す。

それはいくつかの小石であったが、これが宝石みたいに輝いていて、何やら飴玉のようでもある。

「この魔動石に魔力を込めて……、魔力を込めた分だけ念動させることができるんです! これに魔力を込めて……!」

にんににににににに……! てな感じにベレナ、握りしめた石に念を込める。

「それをこの轆轤の縁に埋め込んで……、呪文を唱えて……、『ムーヴ』」

おお!

轆轤が独りでに動き出したぞ!!

縁に埋め込まれた魔動石が動かしているのか!?

「凄いぞベレナ! これより快適な陶芸ライフが!!」

「本当ですか!? 私役に立ってます!? ここに必要な存在ですか!? 無職じゃないですか!?」

何を言っているんだこの子は?

とにかくも全自動に回る轆轤で早速陶芸を再開しようとしたが……。

「…………?」

ここで、魔法によって回る轆轤の勢いを、あえて擬音で表現してみよう。

ギュイン、ギュイン、ギュイン、ギュイン!

ギュイイイイイイイイイン……!

こんな感じ。

「ちょっと回転速すぎじゃないですかね?」

高トルクモーターもかくやって感じ。

「すみません。初めてだから慣れてないもので……! すぐに魔力を調節して……!」

ベレナが手を加えるより前に、破たんは即座に訪れた。

あまりに高回転する轆轤の上には、器となる前の粘土がそのまま置いてあった。

水気たっぷりの粘土が。

その粘土が高回転によって起こる遠心力に抗いきれず、そしてなんか別の力も作用したのか、一気に爆ぜて周囲に飛び散った。

バシャン、ってな感じに。

回転による遠心力というか振動は、粘土を瞬時に液状化でもしてしまったのか、ただの泥水となって四散。

俺とベレナに直撃した。

「ぎゃあッ!?」

「うひぃッ!?」

結果、頭から着ている服も関わらず泥まみれとなる俺たち。

「あひいいいッ!? すみませんすみませんすみませええええんッッ!?」

その惨状に平謝りするベレナだった。