軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

93 エルフの盗賊団

私の名はエルロン。

誇り高きエルフの盗賊団『雷雨の石削り団』頭目だ。

私が率いる盗賊団の名は、魔族の勢力圏でも人族の勢力圏でもけっこう知られていて、恐れられている。

有体に言って『悪名高い』ってヤツだね。

ただ派手に盗みすぎて人族魔族両方から指名手配を受けてしまった。

なので命からがらの逃亡生活。

人の目があるところじゃ落ち着けやしないと、誰も寄り付かない未踏の区域に踏み込んで、数週間が経った。

ここまで奥深くに逃げ込めば、追捕使もやって来まい。

元々森林山間での野営はエルフがもっとも得意とするところ。

やわな魔族や人族が三日で野垂れ死にするような厳しい環境でだって、何年と快適に暮らすことができる。

ここでキャンプ生活でもしてじっくりほとぼりを冷まそう、というのが現在の私たちの方針だ。

まあ、半年もしないうちに娑婆に戻って盗賊稼業を再開するんだろうけどさ。

などと考えていると、見回りに行かせた部下の一人が、息せき切って戻ってきた。

「お頭! 大変ですお頭!」

森の中では盗賊仕事の時と同様、無駄に音をたてるなと言っているのに。

なんだその無様な慌てぶりは。

「村を見つけました!」

村?

バカを言うんじゃない。

私たちは人族魔族の両方から指名手配を受け、追手から逃れるためにわざわざ人のいない奥地へと分け入ったんだぞ。

そんなところに村どころか、人っ子一人住んでるはずないじゃないか。

「しかしながらお頭」

おう、副頭目のマエルガか。

お前の冷静な意見にはいつも助かっている。遠慮なく物申せ。

「我々エルフの方向感覚は人族魔族などより遥かに優れていますが、それでも万に一つの間違いがあるかもしれません」

そうだな。

もし知らないうちに人里近くまで戻っていたのだとしたら、ここも追捕使に発見される危険性が出てくる。

「ここは物見の報告が真実であるか否か、私とお頭の目でしっかり確認すべきかと。そして、ここが本当に人里とそう離れていない地点だったなら、即座に場所を変えるべきかと」

さすが副頭目。

冷静かつ正確な意見だ。

おい物見、その村のあったという場所まで私たちを案内しろ。

お前の目がガラス玉程度のガラクタかどうか、お頭である私が直々にたしかめてやる。

* * *

と、意気揚々出掛けたのはいいが……。

なんで盗賊団全員で来ている?

「えへへ……!」

「いいじゃないですかお頭」

いいじゃないですか、じゃねえよ。

たかが偵察に、こんな大所帯。動きにくい上に目立って仕方ない。

「仕方ありませんよお頭。私たち、森の民エルフと言えども都会馴れした盗賊団ですからね。しばらく離れた人里の匂いが恋しくもなりますよ」

副頭目まで!?

……まあ、私もワクワクしてないって言っちゃウソになるけど。

でも見間違いってこともあるんだからな?

あまり期待しすぎるなよ?

とか思いつつ、問題の地点に到着してみたら、本当にあった。

畑。

綺麗に耕されて人の手が入っていることは確実。

しかも実っている作物が、これまた見事というか豪勢というか……!

「人の気配はありませんね。別の場所を耕作中……、と言ったところでしょうか?」

おうッ!?

そうだな副頭目!

まだ畑が現れただけで、人そのものが出てきたわけじゃない。

ここがまだ人族の勢力圏なのか魔族の勢力圏なのかもわからない。皆細心の注意を払って動け!

「お頭ー! 来てくださいよ! この畑に実った野菜ー!」

「超美味しいっすよー!! できてるのをもぎって食っただけで頬っぺた落ちそうっすよー!!」

お前らああああああッ!!

注意して動けって言った傍から何野菜ドロボーしてるんだあああッ!?

まあ、私らは盗賊団なんだから野菜ぐらい盗み食いして当然なんだけどな。

「お頭、本当に美味しいですよ」

冷静な副頭目、お前まで!?

「色や形、今まで見たこともない作物ですが、どれも今まで食ってきた何より美味しいです! なんですかこれ! 神の果実ってヤツですか!?」

冷静な副頭目が興奮している!?

いやいや、たかが野菜一つでそこまで大袈裟な。

じゃあ食ってみろって?

わかったよ、どうせ私も腹減ってたから勧められるまでもなく食うよ。

何やら赤くて目の覚めるような色だが。

いただきまーす……。

がぷり。

うまあああああああああああッッ!?

何!?

何これ何なのこれ!?

クッソ美味すぎるんですけど瑞々しくて甘しょっぱくて!

これに比べたら、今まで私らが食ってきた野草なんか、ただ苦いだけじゃないか!

「頭目、周囲を窺っていた連中が情報集めて戻ってきました」

あ、おう、いつの間に? 用意いいな?

「この周辺は、同じような畑が広がるばかりで居住区らしいものが見当たらないそうです。唯一あるのが、ちょうど畑の中央に大きな屋敷」

するとつまり、ここに広がる畑は全部その一軒のお屋敷に住む誰かの持ちモノってことか。

「村というよりは、農場といった風ですね。どこぞのお貴族様が隠棲するかのような」

なるほど。

それだったら人里離れた辺鄙な場所に、こんなに畑が広がっているのも頷ける。

お貴族様か……。

私たち盗賊団の格好の獲物じゃないか!!

「どうなさいますお頭? 私たち、一応今は逃亡に徹して盗賊稼業は休養中と定めていますが?」

休養中だろうとなんだろうと。こんなに美味しい獲物を目の前にして何もしないでいたら盗賊の名が廃ろう……!

「ではやっちゃいますか?」

冷静な副頭目と、私の視線が絡まり合う。

こんな美味しい野菜を育てて独占するような貴族だ。屋敷にはたんまりと金目のお宝を蓄えているに違いない!

『雷雨の石削り団』ただ今より臨時的に休業解除だ! 屋敷を強襲し、あるだけ奪っていくぞ!!

「「「「「おおーーーッ!!」」」」」

決まったからには一瞬も留まらない。

この田園地帯はたった今から私たち『雷雨の石削り団』のシマだあああーーーッ!

と盛り上がっていたら。

犬と遭遇した。