軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82 丼中にカツあり

ご飯が手に入ったことで、挑戦したくて踏み出せなかったことを、また一つ解禁してみようと思う。

マナメタルで打った底の深い揚げ物用鍋に油を引いて、火で熱します。

その間に、食糧庫から出してきた角イノシシ(正式名称スクエアボア)の肉を適度な大きさにスライスし、小麦粉、溶き卵、パン粉の順にまぶしていく。

さて。

何を作っているんでしょーか?

答えはトンカツでした!!

ついに!

ついについに!

我が開拓地はトンカツを作れる文明水準まで達したのだ!!

調理可能!

だから今、これを実行した!

「これがスクエアボアのお肉を一番美味しく食べる方法なのね!?」

「兼ねてから聞いていた! 散々もったいぶって待たせおって! おれの我慢は限界寸前だったぞ!!」

プラティとヴィールもトンカツがよほど楽しみなのかフライパンのすぐ横に陣取って離れない。

でも離れようね。

油が跳ねたら危険だからね。

二人とも、トンカツの存在は角イノシシで料理を始めた頃から知っていたが、材料や器具の不足から今日まで実物を拝めずにいた。

そのため今日まで期待が膨らみ続けていたようだ。

想像の中で期待値MAXとなったトンカツの味をちゃんと現実で乗り越えられるのか、ちょっと不安になってきた。

とか言ったら揚がりました。

トンカツ一丁。

「「おおッ!?」」

まな板の上でザックザックと一口大に切り分ける。

これで千切りにしたキャベツでも添えれば完成なのだろうが、一つ問題があった。

ソースがない。

トンカツにかけるトンカツソースだ。

欠かせないものではあるが、あれがまだできてない。

醤油や砂糖と違って、ハッキリした製法がよくわからないんだよな。

何を材料にしていいかもよくわからないで、結局手つかずのまま今日まで来てしまった。

では、ソースなしでトンカツを食うのか?

否。

ここでもう一手間かける。

もう一度卵を用意!

溶き卵とトンカツを合わせて、煮だしたものを、大きめお椀によそったご飯に乗せる!

じゃん!

カツ丼である!

これが豚肉調理を追求した先にできた究極系の一つと言えよう。

田んぼを拓いて稲を育てて、お米を取ってついにできるようになった料理。

食え。

「うめええええええええええッッッ!?」

「何これ何これ!? スクエアボアのお肉がこんな食感になるの!? 煮汁が絡んだ白ごはんも美味しくて、んまああああああああああッッ!?」

プラティやヴィールも大喜びでカツ丼を掻き込む。

喜んでくれて何よりだった。

「だが……!」

カツ丼まで作れるようになったか、我が開拓地は。

長い道のりだった気がする。

色んな材料が必要だからな。

主食材のご飯と豚肉は元より、トンカツを作り出すための卵、小麦粉、パン粉。

トンカツが完成しても卵とじに知るためにだし汁、醤油、みりん、タマネギも必要だった。

……みりんは、ガラ・ルファに頼んで即興で作ってもらった『みりんっぽい』調味料だけれども。

本物を作り出せるかどうかは、これからの研究にかかっている。

しかし、ここまでの成果を上げられた以上、もはや我が開拓地は、開拓地と呼ぶ段階を卒業したのかもしれない。

これからは、そうだな。

「農場とでも呼ぶか……!」

生活に必要なものを一通り自給自足できる農場と。

「聖者の農場ね!」

「ご主人様が支配する農場だからな! 他と区別する名としては最適だ!」

独り言に割り込むなお前ら。

しかも頬中にご飯粒つけて。どれだけカツ丼が美味しかったんだ?

聖者の農場。

……か。

聖者なんて仰々しい呼ばれ方は嫌なんだが、それを受け入れる段階にも来たんじゃないか。

受け入れるしかないか。

受け入れよう。

いや、やっぱり。

その日は、カツ丼の存在が知れ渡って詰めかけるバティたちやパッファたち全員に料理してやるだけですぎ去っていった。

* * *

さて。

これまで、ここ聖者の農場で作り上げてきたもの。

畑はだいぶ広がって、色々な農作物を育てている。

トマト、キャベツ、ジャガイモ、ナス、ニンジン、ダイコン、キュウリ、ネギ、トウモロコシ、大豆、小豆、小麦、大麦、他色々。

最近では水田を作って稲を育て、それらの農作業には主に五十人からなるゴブリンチームが当たっている。

ブレイブゴブリンへと変異化したゴブ吉たちが率いる頼れる仲間だ。

畑の作物は、魚モンスター、バ・ニシンGを材料に作ったハイパー魚肥で凄まじい成長速度で育っていくから年に何度も収穫できる。

そうして得た作物は食べる時まで貯蔵されるが、一部は別部署に回されて加工されることになる。

プラティが指揮している醸造蔵と酒蔵だ。

それぞれの蔵は人魚族のパッファとガラ・ルファが管理していて、パッファが預かる醸造蔵では味噌、醤油などの調味料を始め、たくわんのような漬け物も製造している。

たくわんは先生とアロワナ王子、両方の好物なので重要だ。

酒蔵は最近指導し始めたばかりの施設で、モチベーションの高いガラ・ルファに管理を一任したものの色々試験段階。

今は大麦or小麦からビールを作る研究が進められている。

農場の中心には俺たちが寝起きする屋敷があり、プラティやヴィール、パッファたち人魚娘やバティたち魔族娘もここで生活をしている。

住民は増えるたび建て増ししていて、多分これからも大きくなる。

共に暮らすモンスターたちは別棟のモンスター長屋で起居しており、なかなかの大所帯だ。

屋敷の一角には、モンスターの一種ながら上質な糸を吐く、蚕に極めて似た性質をもった虫を飼っているお蚕部屋がある。

そのモンスター蚕の吐く糸で作った上質の金剛絹、さらに畑で育った綿花より作る木綿で衣服を制作するのは魔族娘バティの仕事。

彼女にそっち方面の才能があって本当によかったと思う。

俺の『至高の担い手』でも、俺自身に美的センスがない以上ロクな服が作れないからな……!

ゴブリンチームと並ぶ、もう一つのモンスター軍。五十人からなるオークチームの仕事は主に建築。

屋敷を建てたり、水路を開くのも彼らの助けなしにはできなかった。

最近は大型の窯も作って、陶器作りにも挑戦できるようになった。

建築作業がなくて手が空いた時にはダンジョンに狩りに入ってもらうし、頼りがいのあるヤツらだな。

でもまあ、すぐにまた新しく何かを作りたくなって、彼らにはまたカナヅチを振るってもらうことになるんだろうけど。

さて。

次は何を作るとしようか?