軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81 おむすび捧

ハデス神とデメテルセポネ女神が去ったあと、約束なのでグラシャラさんの剣を鍛え直して折れた状態から復活させた。

魔王さんたちは今回のことに改めて何度も礼を言い、魔都へと帰って行った。

ハデス神との約束通り、人族へ最終決戦を仕掛けるんだそうだ。

「おそらく過去に類のない大戦争になることと思うが、聖者殿に迷惑を掛けぬよう最大限配慮するつもりだ。戦勝の暁には報告に訪ねさせてもらう」

「そんなこと言わずに時々遊びに来てください」

戦争だって一日二日で終わるようなものでもないだろうし。

俺がそう言うと、魔王さんは苦笑するだけで何も言わず、深々と礼をして帰って行った。

姦しく言い争う二人の妻を引き連れて。

……奥さん二人もいると大変だろうなあ。

俺も気を付けよう。

ちなみに余談だが、今回の魔王さん来訪と神召喚の流れで、パッファ、ランプアイ、ガラ・ルファたちニューフェイスから抗議というか困惑された。

「なんで魔族の王がサラッと訪問してるんだよ!? なんで魔族の神がサラッと召喚されてるんだよ!?」

「ここが常識外れの地であることは飲み込んだつもりでしたけど、あっさりと受け入れられる限度を超えて行かないでくださいよ!!」

「もうダメですぅ! 頭が破裂して胞子を撒き散らしそうですぅ!?」

そ、そんなに衝撃的だったのか?

魔王さんもハデス神も話してみると案外いい人で親しみやすいんだけど?

……ハイ、すみません。

彼女らの心の安定のために、今度常識外れなことをするときには段階を差し挟むことにしよう。

* * *

そんなこんなで稲の刈り入れの時期がやって来た。

「……早くない?」

プラティたちの作ったハイパー魚肥で成長を速めたとしても、まだ田植えから一ヶ月と経っていないんですが?

「どうなのかしら? ハデスの神様がこの土地に祝福を与えていたようだから、それも少し関係しているのかも……!?」

そういうものか?

まあ実ってしまったものは仕方ない。

さっさと収穫して脱穀、精米して、ついに異世界にやって来て拝むことができた真っ白なお米だ!

大地の実りじゃあああああ……。

「……ご主人様は、こんな白い粒に何をはしゃいでいるんだ?」

「旦那様の考えがわからないなんていつものことでしょう? あれだけ大掛かりなことをやって大騒ぎして、どんな凄い作物ができるのかと思ったら、何これ。食べても全然美味しくないし、トマトやジャガイモの方が全然マシじゃない?」

生米を食べるな。

仕方ない。お米の真価をプラティやヴィールに見せつけてやろうではないか。

家建ての時に米炊き釜は用意しておいたからな、これを使って炊飯に挑戦するのみ。

はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子泣いたら泣きやませろ。

完成。

真珠のように艶々と光る白ごはんを二人に振る舞ってみる。

「あっつあっつ……!」

「もしゃもしゃもしゃもしゃ……!」

二人とも一心不乱に白飯を掻き込んでいたが、一粒残らず平らげて一言。

「味が薄い」

「歯ごたえとかはよかったが、味がまったくしなかったぞ? 味噌とか塩とか付けた方がいいんじゃないか?」

そこまで好評ではなかったが、まあこんなものだろう。

彼女たちからの評価は置いておいて、俺はもう一方の、出来たお米を捧げたい相手へお米を捧げる準備をする。

濡らした手に塩を馴染ませて、ごはんを握る。

おむすびだ。

そう俺は、この開拓地で開拓を始めるようになって誓ったのだ。

『いつか、この土地でお米を作り。それでおむすびを拵えてヘパイストス神に捧げよう』と。

ヘパイストス神は、俺がもっともお世話になった『至高の担い手』の能力を贈ってくれた神様。

だからこそ何かの形でお礼がしたい。

そしてあの神様は、きっと絶対おむすびが大好きと見た!

そこで俺は最初に収穫したお米でおむすびを握り、海苔で包んで、即席作りの神棚に捧げてみた。

「ヘパイストス様、アナタのギフトのおかげで、俺はこの世界でなんとか暮らしていけています」

開拓地をここまで大きく広げられたのも、アナタの贈ってくれた能力のお陰です。

大分遅れましたが、そのお礼を捧げたいと思います。

どうかおむすびを、心行くまで頬張ってくださいませ。

「……うむ」

何か一区切りつけた感じがする。

俺の異世界開拓記。一章終了! これより第二章スタート! みたいな。

それくらいの達成感。

『……聖者殿は、ヘパイストス神を崇めておいでなのですか?』

「ひぃッ!?」

いつの間にか先生がすぐ背後まで迫っていた。

……やめてくださいよ先生。

先生は見た目にも間違いなく不死の王でホラーなんですから、知らないうちに背後に立たれたら誰だって「ひぃッ!?」って言うよ!?

『聖者殿、ワシ、久々に新しい趣味に目覚めましてな』

「趣味?」

『召神術です。冥神ハデスを呼び出してから、なんか色々できそうな気がしましての。お望みであればヘパイストス神を召喚することも……!』

「ダメダメダメダメダメ!!」

向こうだってお忙しいでしょうから無理して呼ばなくてもいいです!

っていうか変なものを趣味にしないでください! よく知らんけど神を召喚するって普通の術者が一生かけて実現させるものじゃないんですか!?

俺が全力を掛けて押し留めると、先生も渋々納得してダンジョンに帰って行った。

あの人もさすがに何の用事もないのに神を現世に呼び出す度胸もなくて、何か口実を探しているようだな。

ノーライフキングにも神相手の分別は残っているようでよかった。

* * *

ちなみに白飯の味を覚えたプラティとヴィールだが……。

「……何か物足りない」

「あれから何を食べても『ご飯があればなあ』と思うようになったぞ! どうしてくれる!?」

すっかり白飯なしでは生きられない体になってしまったようだ。

* * *

俺も個人的に試してみたいことをやってみた。

炊きたてのホッカホカご飯に、さっき回収してきたニワトリ型モンスター、ヨッシャモの卵。

これを割って、中の黄身と白身をたっぷり掻き混ぜたあと、ごはんに「どばあ」と掛ける。

醤油を垂らして、さらに掻き混ぜて……。

「たまごかけごはん!!」

美味い!!

「あぁ~ッ!! 旦那様が一人で美味しいもの食べてる!?」

「ずるいぞ! おれにも食わせろ!! たまごとご飯と醤油を混ぜるなんて……! 美味いものと美味いものと美味いものを掛け合わせたら……! 滅茶苦茶美味いに決まってるじゃないか~~!!」

いかん、プラティとヴィールに見つかった。