軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

746 キューピッドドラゴン(強制)

引き続き魔族のバティでお送りしています。

「ぶ、ブラッディマリー様……!?」

グラウグリンツェルドラゴンのブラッディマリー様が何故ここに?

農場に出入りするモノたちの中でも強さ的にかなり上位へ食い込む御方、マリー様。

地上最強の種族ドラゴンにおいてもさらに最強クラスに属するこの女性は、一介の魔族などとは天地よりも差のある、いわゆる雲上人……いや雲上竜。

今までなんて話をしたことなんて一回もないのに何故、今突然襲来を受けた!?

「違うわ」

「え? 何が?」

「今の私はグラウグリンツェルドラゴンではなくグィーンドラゴン……。皇太女竜は進化を果たし皇妃竜へとランクアップを果たしたのよ! その辺り間違えないようにしなさい!」

「はあ……ッ!?」

今は人化して、見るも麗しい貴婦人の姿となられているマリー様。

さすが高ランク竜というべきか、その人となった姿は理想的な均整美。

プロポーションは主張しつつも下品にならないギリギリのラインを保ち、顔だちも美しいのは当然のことで、それに加えて少女の華憐と熟女の魅惑の両方を兼ね備えている。

子どもとも大人ともつかない不可思議な美貌は、竜が超魔力をもって想像しなければ実現するものではあるまい。

そして肌のきめ細やかさは遠慮容赦もなしに最高で『こんなん人類に再現できるか!』と言うほど。

この人類が備えうるあらゆる種類の美貌を兼ね備えた女性を着飾らせるには、どんなドレスがいいかと仕立て師の血が騒ぐ!

マリー様は常に黒い服しか着ないからなあ! もったいない!

これだけ上等な肌なら、かなり派手な柄でも見劣りしないだろうし、これまでできなかったようなデザインにも挑戦したいものだわ!

「ちょっと話を聞いているの?」

「はぇ!?」

い、いかん……、あまりの対象の華やかさに、どんなデザインの服を着せるかのシミュレーションに没頭してしまった……!

これも一種の職業病ね……!

「今日はアナタのために、このグィーンドラゴンたる私がわざわざ駆けつけてきてあげたのよ! 恋をしながらなかなか第一歩を出せない弱々しいニンゲン。そんなアナタを我がブレスではるか向こう岸に吹き飛ばしてあげるわ!!」

死にます。

「何しに来たのかと思ったら……、そんなおせっかいオバサンみたいなマネを……!?」

「何? 迷惑だったかしら?」

「いえいえいえいえいえいえいえいえッ!?」

地上最強たるドラゴン様に向かって、まさか『迷惑なんじゃ放っとけボケェ』とは言えない。

しかしそんなドラゴンがなんで魔族ごときの私の恋路に介入しようとするの?

その程度の案件なら世の中に掃いて捨てるほどあると思うんですが?

「フン……、私は生まれ変わったのよ!」

と言いますと?

「かつての私は、自分の強さに酔いしれ、自分以外のことなどどうでもいいドラゴンだった。何故か? 他者などいくらでも力でねじ伏せられるから。そんな連中のことなどいちいち思い煩う必要などないでしょう?」

「は、はい……!?」

これ同意していいものかな?

「しかし私の力や地位を上回る多くの者たちと遭遇して、私は思い改めたのよ。生き物はすべて寄り添い、協力し合って生きねばならない。ドラゴンとて例外ではないとね」

「ただアードヘッグ様に惚れて心境変化したんでしょ?」

「煩いわね燃やすわよ?」

「すいません」

そう、この最強雌竜には意中の相手というべき皇帝竜アードヘッグ様がおる。

いつもは二人ワンセットというぐらい一緒にいるのだが、今日はその片割れがいないのは珍しい?

「だから私は、超絶強者として弱い者のを憐れみ救ってやらねばと思うようになったのよ! その第一号に選ばれたのはアナタ! 光栄に思いなさい!」

「え? 私の他にまだ誰も救ってないんですか?」

アナタがアードヘッグ様と一緒になってからもうけっこう経つじゃないですか。

それなのに私が最初とか、今まで何やっとったんだって感じになりますよ?

「う、煩いわね! 私の助けを得られるのが嬉しくはないの!?」

そりゃードラゴンに助けてもらった百万人力ですけれども……。

でもこれ戦争じゃなくて恋路ですよ?

どんなふうにしてお助け下さるのですか?

「アナタのつがいの男に『娶らなきゃ燃やすぞ』と脅しをかけてやるわ」

「このスットコドッコイ」

脅迫やめれ。

二人の愛を育むべきところに脅しをかけてどうするか!?

百年の恋も興覚めするわい!!

「え? ダメなの? ドラゴンの超絶能力を持ってすればどんなニンゲンだって従うでしょう?」

「心まで従わせられると思うなよ!」

やはり人と竜はわかりあえない生物同士なのか?

しかしなんで農場でもそんなに重要人物じゃない私が、ドラゴンのお相手を務めんばきゃいけないの?

荷が勝ちすぎてしんどいんですけれど?

「うーん、ニンゲンどもの恋は難しいのね? 参考になるかと思ったのに全然ならないわ」

「は?」

参考?

一体どういう意味ですマリー様?

純粋な善意から出た行為ではまさかないと思っていましたが、こうして私の恋路を応援しているかに見える行為にも裏があった?

「それは、その……!?」

ほーら私の推察によって一気に挙動不審となるマリー様。

やっぱりなんか魂胆があったんだな?

どういう腹積もりだ吐け!

「アードヘッグは、私と一緒になることを受け入れてくれたわ……!」

はい。

いつだったかそんな事件がありましたよねえ。

私も、農場在住の野次馬の一人として見届けておりました。

「でもそれ以降、何の進展もないのよ!! つがいとして何か新しいことがあるわけでもなく、今までとまったく同じ生活! これが、ニンゲンどもが浮かれまくる夢の新婚生活だとでも言うの!? 絶対違う! それだけは断言できる!!」

そっかー。

有史以前から強者として何者にも頼ることなく、単独で生き続けることのできるドラゴン。

そんなドラゴンにとって雌雄でつがいあう夫婦という関係は、ハッキリ言って異質のものであり、未知の部分ばっかり。

結婚したからと言って何をすればいいのかもわからない……。

アードヘッグ様もマリー様もそんな感じなんではあるまいか。

「なんで何もしてこないのよ!? 結婚したらチュッチュしたりイチャイチャしたりするのがスタンダードじゃないの!?」

マリー様に関しては、んなこたーなかった。

我ら人類の文化をよくご存じで……?

「わかるわよ! この農場に訪ねてきたら嫌ってーほどにね! 大体アードヘッグこそ、親友の結婚式とかにもじかに出席しているくせに、どうしてその真似事ぐらいできないのよぉおおおおおッッ!!」

苛だちに喚き散らすマリー様だった。

なるほど。

遅々として進まぬ自分たちの結婚生活に業を煮やしたマリー様。

だから他人の恋路に首を突っ込んで……なんでそんなことするの?

「そんなこと! 恩を売って、私とアードヘッグとの結婚生活を進めるのに協力させるためよ!! いいこと、私の助力によって見事結婚が果たせた暁には、次に私の結婚を助けるのよ! いいわね!」

「結局は自分の利益のためだった!?」

「当然でしょう最強種族ドラゴンである私が、なんでわけもなくニンゲンなんぞをに救いを与えなきゃいけないのよ!? 逆に最強種族であるドラゴンが救われるなんてこともプライド的にあり得ないからまず、アナタに恩を売ってやることから始めているのよ! 感謝なさい!」

面倒くせえ!

最強種族のプライド面倒くせえ!!

「それに、アナタって結婚式の時に女性が着る素敵なドレスを創造できるんでしょう? 恩を売るなら能力のある相手にしたいじゃない!」

ここで生業が関係してくるとはッ!?

それで数多くいる関係者の中から私を大抜擢!?

「いいこと、この件が上手くいって見事アナタを結婚させてあげられたなら、アナタには私用の結婚ドレスを作ってもらうわ!」

「ウェディングドレスって言うんです!」

「そうね、色は黒がいいわ! 総漆黒よ! 長く黒をまとい続けてきたこの暗黒竜ブラッディマリーには輿入れの時も黒が相応しいわ!」

黒いウェディングドレスなんてあるかぁ!?

どこの若気の至りですか!?

真っ黒ドレスなんか着てきたら葬式と間違えられるから、素直に純白にしておきなさい!

それこそ黒歴史となりますよ!!

「話はがまとまったところで早速実行に移す時ね! アナタの恋人は、ニンゲンどもの都にいるんでしょう!? 肌が黒い方の種族の都に!」

「ええッ!?」

「では、その都に急行ね! ドラゴンの姿で……音の速さを越えて一っ飛びよぉ!』

ぐげええええッ!?

ドラゴンの姿に戻ったマリー様! 私のことを鷲掴みにされて運ぶのはやめてください!

超高速で飛ぶと、それと同じだけの速度で叩きつけてくる空気が顔の肉を削ぎ落すほどにいいいいッ!?

一体マリー様はどこへ向かおうというのか?

さっきの話しぶりからしたら魔族たちの中心地、魔都?

そんなところにドラゴンがそのまま飛来したら大パニックになるではないですかッ!?

そうまでして一体どうするつもり……?

まさかさっき言ったことをそのまま実行なさるおつもり……?

脅迫!?