軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

733 同志の顔触れ

結局ジュニアも決勝進出した。

「パパー、やったー」

「おお凄いなジュニアー、さすが我が息子ー」

実際ジュニアの操る阿修羅フィギュアはクソ強い。

腕がたくさんあるというのが単純に強みになっている。

組み合いとかになれば手数の多さで簡単に相手を上回れるし、またどう動かせば手数の多さを最大限に生かして相手を制せられるか、ちゃんと弁えている。

ジュニア操る阿修羅くんの最大の得意技はサブミッションだった。

六本の腕で相手を絡めとる動きはさながら蜘蛛を髣髴とさせる。

予選最終戦の決め技に阿修羅バスターを使ってきた時には『コイツ、マジか』と思った。

六本もある腕を完全に思う通りに動かしているジュニアの技術もさるものだ。

普通操作系が多ければ多いほど混乱しやすくなるものなのだが、それらを完璧に制御下に置いているあたりさすが我が息子、と言わざるをえない。

そもそも父親の俺が魔力を扱えず、操作そのものができていないのに!

息子のジュニアができるもんなの? 遺伝はどうなってるの?

「アタシの血が上手いこと働いているんでしょう? アタシに似たのよジュニアは」

プラティが、こういう時だけ自分の遺伝子を強く主張してくる。

「だがしかし……、これはマズくないか? ムムム……!?」

何がマズいかって言うと、俺も決勝進出してしまったし、ジュニアも決勝進出してしまったということ。

そうなったらどこかで俺とジュニアの対戦する可能性がマックスということじゃないか。

俺としては父親の威厳を見せるためにも負けるわけにはいかないが、それと同時に子どものジュニアにまだまだ勝負の厳しさを知ってほしくはない。

きっと精魂込めて作り上げた阿修羅フィギュアを無残に破壊されたりしたら悲しくて泣いてしまうかもしれないじゃないか!!

そんなことをするのが赤の他人ならともかく、青の身内である俺がしたら嫌われてしまうかもしれない!

息子のできたばかりの友だちを全力粉砕し、『最低』呼ばわりされた魔王さんの悲劇が記憶に新しいところだし!

息子に嫌われたくないし、かといって父親の威厳は保ちたい!

一体俺はどうしたら!?

「実際戦うのは私なんですけどね……」

とベレナがボソリと言っていた。

「つまり実際戦闘した際のジュニアからのヘイトはすべて自分が引き受けると?」

「そんな殊勝な心掛けは持ちません。ヒトを勝手に防波堤代わりにしないでください」

ベレナも図太くなったものよ。

ええい、こうなったらなるようになれだ。

何とかジュニアに当たらずに終わってくれることを祈って、『ゴッド・ファイト・オリュンピア』決勝トーナメントついに開幕だ。

* * *

そんで始まった決勝トーナメント。

それでもまだ百人以上の選手が残っている、分母がメタクソ多かったしな。

これだけいれば、なんとかジュニアと当たらないで済むかもしれない!

「ぼく、頑張ってパパたおすー」

しかしジュニアはなんでそう打倒パパに本気なの?

何か気に障ることでもした?

「すべての息子は、父親と対立する権利を持っているのよ。父親にはそれに応える義務があるのよ」

まーたプラティがグラップラー思想をしておるよ。

いいの、俺は息子たちと生涯平和に過ごしたいの!!

いや、こうなったら本当に決勝進出した百何人のいずれかに俺かジュニアを敗退させてもらうしかない!

さすがにこれだけの参加者、完璧には把握しておらず今またどんな強豪が息を潜めているやもわからない。

その中から目ぼしいものが……。

……おや?

そのまだ見ぬ強豪たちの中に、もう見たことがある顔があった。

「聖者殿! このようなところで会うとは奇遇ですな!」

「アロワナさん?」

本当になんでアナタがここにいるのか?

アナタ人魚王でしょう?

ただでさえここ陸地なのに、人魚族のアロワナさんが現れることこそ空飛ぶサメと遭遇するレベルの理不尽。

しかもアロワナさんは王族だぞ?

レア度もうなぎ上りよ!

「魔王様からお誘いを受けてな! 友として参加しないわけにもいくまい!!」

そういや魔王さんとアロワナさんはマヴのダチだった。

王様同士の親交もあるし、そりゃ魔王さんが出場しているならアロワナさんも出場するか。

そうか?

「見てくだされ聖者殿! 我が人魚国の粋を集めて作り出した『ゴッド・フィギュア』を!!」

と言ってアロワナさんが見せてくれたのは、やはりと言うかポセイドス神のフィギュアだった。

大体ハデスフィギュアが主流となっているところへ、あえてのポセイドスとなればチョイスもシブいし、人魚族であるアロワナさんの『らしさ』もでる。

「私もただ遊びで参加しているわけではない! 人魚国の最高技術をアピールするために最先端を取り入れた改造ポセイドス神フィギュアである!!」

おお、アロワナさん。

さすが人魚王だけあって背負ったものが違うな。

「我が妻パッファや、ゾス・サイラ宰相が改造を手掛けたポセイドスフィギュアの最大の特徴は、変形機構にある!!」

「へんけいきこう!?」

それは男の子のハートを鷲掴みな!?

「トランスフォーム!!」

そんなアロワナさんの掛け声で、ポセイドスフィギュアの脚部分が折りたたまれ、同時に出てくる魚の尾びれのようなもの。

「マーメイド形態となったポセイドスフィギュアは、水中を自由自在に遊泳可能! これぞ我が人魚国が誇る水陸両用『ゴッド・フィギュア』なのだ!」

「この大会、水中ステージありませんけど?」

水中フォームがあったとしても無用の長物じゃん。

「それだぁあああああああッッ!?」

アロワナさんが崩れ落ちた。

「何故だッ!? 普通だったら水中での戦いは想定するだろう!? 我が国だったらそうする!」

「そりゃあ海の中の国ですからねえ」

「不満だ! 断固として主催者側に主張し、次の大会では水中ステージを用意してもらう! いやいっそ我が国でも大会を主催してそこでは総水中戦で!!」

アロワナさんが王としての権力を変な方向に使おうとしていた。

まあその辺のブレーキ役はゾス・サイラに任せればいいか。こないだ大願成就させてやったから、その代償としてしっかり働いてほしい。

さらにもう一人、見知った顔がいた。

S級冒険者のブラウン・カトウさんだ!?

「カトウさんまで何故ここに!?」

「そりゃあ現代日本からやって来た男なら、このイベントに興味を示さないわけがない! 聖者くんだってそのクチでしょう!?」

まったくカトウさんの指摘通りで、かのプラモブームを知っている異世界人がこのイベントをスルーできるはずがなかった。

「知り合いの元勇者の子も誘ったんだけどさー。『ロボットには興味ないので……』って断られちゃったよ!」

まあ全員でもなかった。

たしかに女の子はロボットには惹かれないよな……!? パイロットがイケメン美少年なら話は別なんだろうけれど……!?

「しかし聖者くんの作品……! 中々通なところを抑えてきたね……!? アレス素体でスサノオを作ったというこの拘り……、僕にはわかるよ?」

ほう、わかりますか?

「「『スサノオは僕らのことを道具だなんて思ってない!!』」」

HAHAHAHAHAHAHAHAッ!!

さすがカトウさん!

友と語り合えることのなんと楽しきことか。

それと同時に、自分の知らないことで大盛り上がりされるウザさも相当なもので、周囲のドン引きな視線が痛い!

「そういうカトウさんも参加されているんでしょう? 一体どんなフィギュアを!?」

「そりゃあね! せっかく異世界に来たんだから僕も前々からやってみたかったんだよ。……現代知識無双というヤツをね!」

何……!?

それでは……!?

「そのコンセプトを元に完成させた……! これが僕の愛機『フルアーマー・ハデス・ヘビーアムズヘルカスタム』だッ!!」

体中をライフルやガトリングやバズーカで固められたハデス像!?

この人、異世界に重火器の概念を持ち込んだ!?

「フハハハハハハッ!! いまだ『ゴッド・フィギュア・ファイト』といえば格闘戦しか発想にない中で、一定距離から一方的に撃ちまくれる銃火武装に敵はない!」

大人げない人がここにもいたッ!?

カトウさん……、俺でも恐ろしくてできなかった火器の異世界輸入をやってのけるなんて……。

なんて恐ろしい。そこに痺れる憧れる。

「大人げない僕に手抜かりはない! 火器概念における最高究極の破壊力を持つった装置を、既にこの機体には組み込んである!」

「最高究極の破壊力!?」

それは一体なんだ!?

「自爆」

カトウさんがスイッチを押した瞬間、重火器の塊だったハデス像はみずから爆ぜて消し飛んだ。

跡形もない。

「……カトウ選手のフィギュアが破損消滅しましたので失格になります」

危ういところで、異世界への重火器発想の輸入は阻止された。

ところでカトウさんは、俺と同じ異世界人なのにどうして魔力でフィギュアを操れるの?

「練習したらなんかできるようになった」

マジかよ……!?