軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

732 聖者新世代

はい俺です。

『ゴッド・フィギュア』格闘大会はまだまだ大盛り上がりで継続中。

これだけ大きなイベントだと語ることが多くあっていいね。

その一エピソードとして……。

……たった今魔王さんが、父親の威厳を失いました。

「……父上、最低です……」

「いや、違うのだゴティアよ……! そこの少年の心意気を非常に立派と思えたからこそ、下手な手加減は失礼と思い、全力をもって受けて立つことこそ……!」

魔王さんが息子さんに対してめっちゃ言いわけしておる。

何があったかをありのままに話すと……。

『ゴッド・フィギュア』による格闘大会『ゴッド・ファイト・オリュンピア』に出場する俺たち。

魔王ゼダンさんも出場者の一人で予選最終戦に当たった十歳ぐらいの子どもに圧勝した。

客観的に見て非常に大人げないと言わざるをえない。

しかも対戦相手の子どもが魔王子ゴティアくんとついさっきお友だちになったばかりのようで、ゆえにこそパパさんに注がれる視線の冷ややかさ……。

「いやゴティアよぉおおお……!? お前に友だちができたことは嬉しいがぁあああああ……!?」

息子の友だちにガチるパパって普通に嫌だよな。

俺も気をつけんと。

「……ふッ、ゴティアに年頃らしい遊びと友だちができただけでも、この大会に参加した意義はあったものよ。多少嫌われたとしても許容できるわ……!」

「多少どころじゃないかも……?」

そもそもあの子ら、前の試合で随分物騒なことを話していませんでしたか?

世界征服を企む秘密組織とか。

どうしてこうホビー話は進むごとにワールドスケールに広がっていくのだろうか?

気軽に世界の命運を懸けおる。

「話の展開的には、あの子が決勝トーナメントに上がって悪のファイターと戦う方が盛り上がるんでは?」

少年誌的に。

「その悪の何とかいう連中だが、たった今警備兵に命じて捕えさせているから問題ない」

「あらまあ」

言われてみれば会場のそこかしこで騒ぎが起きているような。

元々魔法は魔族の得意分野だから、おかしな魔力で精神に悪影響を及ぼされているものを見分けるのは簡単だ。

命令を受けた兵士さんたちが……。

「貴様! 怪しい魔力をまとっているな!? 取り調べに応じろ!」

「フッ、面白い。ならば『ゴッド・フィギュア・ファイト』で決めようではないか」

「取り押さえろ確保ぉおおおおおッッ!!」

「ぎゃああああああッッ!?」

……。

酷いテンプレ潰しを見た。

ホビーの世界でホビーに頼らず暴力で解決してきた。

まあ、それが自然ではあるんだが。

「と、いうわけで世の中の面倒ごとは大人に任せて、お前たち子どもは純粋に趣味を楽しんでほしい。それが親の願いというものだ」

「「「はぁ……?」」」

魔王さんが実に大らかな気持ちのこもったいたわりを懸けているが、それなら別に子ども相手にガチになって捻り潰さんでもよかったのでは?

何やかんや言って、魔王さんもこのイベントを心底から楽しんでいるのではないか?

「言うても、あの大魔王の息子さんだからなあ……魔王さんも」

血は水よりも濃し。

オークボ城でも必要以上に楽しんでいるところもある魔王さんが思い出された。

……このイベント、年齢で分けて開催した方がよかったんでは?

そもそも子どものイベントに大人が乱入すること自体とても褒められた展開ではないしな。

「いや案外そうでもないかもしれぬぞ。あちらの予選ブロックでは、一際幼い子どもが快進撃を続けているそうだぞ。大人相手にな」

ほうほう。

それは興味深い。

「こちらの予選も終了したことだから、見物に行ってみようではないか。ゴティアもそれで機嫌を治すといい」

「そうですね……」

なおもぶんむくれていた魔王子くんだったが、これ以上ヘソを曲げても益なしと察したのだろう。

大人しく魔王さんの肩に担がれて、さらなる予選ブロックへ見物に行くことにした。

そこで目撃したのがなんと……!?

* * *

「あら旦那様?」

「プラティ! なんで!?」

ウチの奥さんが会場にいた!?

次男ノリトを胸に抱えて。

「まさかプラティも出場していたとか!?」

「んなわけないでしょー。アタシこんなのよくわかんないもん」

女性ならではのロボットアニメへの無理解!

その何気ない言葉自体が俺の胸に突き刺さるが、ではなおさらプラティがここに?

「そんなの、息子の付き添いに決まっているでしょー。旦那様もいつ気づくかって思っていたんだけど、こんなに時間かかるなんてよっぽど遊びに夢中だったのね」

なんと?

そこでやっと試合場の盛り上がりが気になって目を向けた途端ビックリした。

「ジュニアーッ!?」

ウチの長男が試合に参加しているーッ!?

「一体何故!?」

「旦那様が変なの作りに夢中になっているのを見て、自分でも何かやりたくなったみたい」

マジかよ?

「パパをビックリさせたいみたいで、今日まで内緒にしてきたのよ。むしろそのパパはサプライズになかなか気づかなくてガッカリだけど」

「すみません……!」

その横でヴィールが『おれもいるのだー』と呻いていた。

しかしジュニアまで大会に参加するとは。

子ども向けイベントとはいえ、あの子はまだ三歳だぞ? さすがに早すぎるのでは?

魔王さんみたいな大人げない大人に叩き潰されて泣きてしまいはしないかと心配でならない!

そもそもうちのジュニアは、どんな『ゴッド・フィギュア』を拵えたんだろうか?

素体は何だ?

ハデスか? アレスか? ポセイドスか?

と確認してみたが、そのどれでもなかった。

「何アレ?」

その『ゴッド・フィギュア』は、実に異形の姿をしていた。

顔が三つあって、腕が六本あった。

阿修羅?

ここは興福寺か?

「あんな『ゴッド・フィギュア』あったっけ?」

「金型から拵えたのよ」

まさかの!?

完全オリジナル製造!?

その相手や観戦者も、まったく見覚えもないタイプのフィギュアに困惑し、その上に目を見張るほどの異形なので圧倒される。

俺の対戦したカンブリア爆発ハデス群もなかなかにインパクトであったが、阿修羅像は異形でありながらも完成されたデザインのせいか益々威圧感がある。

……ので迂闊に攻めることもできないようだ。

しかもジュニアの制作した阿修羅フィギュア、実際に戦っても物凄く強い!?

単純に腕の数が多いというのが強みのようだ。

組み合いさえしたら相手より多い腕であっという間に絡み取り、そのまま関節技に持ち込む。

現状『ゴッド・フィギュア』の関節可動が各ユーザーによる改造で、つまりは素人仕事。

だから余計に強度などあるわけもなく簡単に折れて砕けてしまう。

現在試合中のものもジュニアが操る阿修羅像によってバックブリーカーによってあっさりと背筋を折られてしまっていた。

強い。

「ぶぃくとりー」

勝利宣言と共に両腕を上げるうちの長男。

既存にないオリジナルのフィギュアを、しかもまったく関係ない体系からもってきて出場し、相手のもっとも脆い部分を研究の末に割り出し、そこを容赦なく突いていくなんて……。

なんて大人げない三歳児だ!?

魔王さん以上の大人げなさを見た!

「ああいうところ本当プラティに似たよな……!?」

目的のために手段を選ばないというか、必要以上に全力を挙げていくところ。

ホント傍から見てドン引きされるくらいに容赦ないからな。

「興が乗って突拍子もないことをするのは旦那様似でしょう?」

「……」

プラティから手痛い反論を貰った。

最近ジュニアを巡って夫婦による責任のなすり合いが起こる。

結局のところは、父母それぞれの遺伝子を一番ヤベー形で受け継いでエグいシナジー効果が生まれているってことなんだろうが……。

我が子の将来が楽しみなようで不安な瞬間だった。