軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

731 魔国新世代・庶民編

やあ皆のさびしんボーイ、ディアブロくんだよ!

ボクも『ゴッド・フィギュア』の古参ファンとして、この『ゴッド・ファイト・オリュンピア』に出場しないわけにはいかないね!

フィギュアの魔法操作が可能になってから、それに対応した新たな改造を加えてボクの『ゼット・ハデス』は『スターライト・ゼット・ハデス』へと生まれ変わり、よりパワーアップしたんだよ!

まずは魔力に反応して開閉する翼を搭載。

さらに内蔵した魔力リアクターから大出力を放出し、その推進力とスピードで相手を轢き逃げする『ハデス・シューティングスター・アタック』がボクたちの必殺技だよ!

その技で、予選一回戦を無事突破できたものの、その時の対戦相手が何故か後ろからついてきて不気味なんだよ……。

「あの、なんで付きまとうの……?」

「次の大会でのリベンジのためにも、優れた選手の戦いを見て研究するためにだ! まずはボクに勝ったお前に張り付き、学ばせてもらう!」

「はあああ……!?」

これは世に言うストーカーってヤツじゃないのかな?

魔王軍の兵士さんに通報したらしょっぴいてくれるかな? でも相手は魔王子とか抜かしていたし……?

ここは泣き寝入りするしかない状況かもしれないよ。

まあ、まだ戦いが続いている以上は、ボクもファイターとして戦いをまっとうするだけさ!

目指すは優勝! ボクの『スターライト・ゼット・ハデス』ならそれもできると信じている!

「フフン……、それはどうかな?」

「キミはベルゼブくん!?」

我がライバルと書いて友と読む、ベルゼブくんも出場していたんだね!?

もちろん『ゴッド・ファイト』のブームが巻き起こってからずっと一緒に競い合ってきたベルゼブくんだから、出場するに違いないと思っていたけれど……!

でも、一体どうしたんだいベルゼブくん?

なんか今までの雰囲気が違うよ?

「ミーは目覚めたのさ。今までの馴れ合いのようなぬるま湯『ゴッド・フィギュア・ファイト』から脱却し、真のファイターとして覚醒したのだ!」

「なんだって!?」

馴れ合い? ぬるま湯?

どういう意味だベルゼブくん!? ボクとキミが競い合ったあの日々は宝石のように煌めいているはずだよ!?

「ある御方が諭してくださったのさ。このミーを。今やミーは、魔都の片隅で流行を追い求めるヤングボーイではない。『ゴッド・フィギュア』でもって世界征服を成さんとする秘密組織『ヤングメン』幹部……『漆黒』のベルゼブなのさ!」

な、なんだって~!?

「ヤングメン総帥様から頂いた力でパワーアップした、この『ダークネス・ビクトリー・ハデス』でキミの柔な改造フィギュアなど粉微塵にしてくれよう! 我ら『ヤングメン』が大会上位を総舐めし、それをもって世界支配の宣言と変えるのだ!」

はーっはっはっはっは……と高笑いしながらベルゼブくんが去っていった。

知らないうちにベルゼブくんが闇落ちしていたなんて……!?

そういやここ数日会っていなかったな、とは思っていたが、それでこんなに変わるものなのか!?

たまたま一緒にいたゴティアくんも、ただならぬ事態に慌ててしまっているよ……!

「せ、世界征服とは穏やかじゃない! ここは父上に報告して判断を仰がなければ……!」

「待つんだ!」

心配な気持ちはわかるが、そんなことをしてはダメだ!

何故ならヤツらは『ゴッド・フィギュア・ファイト』で正々堂々と侵略しようとしてきている。

ならばこっちだって堂々と受けて立たなければ! 何故ならこっちが正義だからだ!

「正義は、常に堂々と、卑怯なマネなどしてはいけない! 相手がルールを示すなら、それに則って完全勝利してこそ正義の潔白が示されるんだよ!!」

「なるほど!!」

ゴティアくんが目をキラキラさせているよ。

ボクの正義の心得に感銘してくれているんだ嬉しいよ。

「悪の組織とやらは、この大会に出場して真正面から優勝を奪い取るつもりのようだね。だったら野望を阻止するためにボク自身が優勝するしかないね!」

「さすがディアブロ兄貴! アニキは常に正しいかどうかを考えて行動しているんですね!」

なんかゴティアくんの口調に尊敬の念が交じり出したよ!?

大丈夫かなあコレ?

それはともかく、皆が楽しむ『ゴッド・フィギュア』を、野望の道具にするなんて許せないよ!

ベルゼブくんの闇に蝕まれた心を救うためにも、ボクは必ずや戦いに勝利し、この大会で優勝する!!

* * *

「『ハデス・シューティングスター・アタック』ッ!!」

「ぐはあああああッ!? ミーの『ダークネス・ビクトリー・ハデス』がぁああああッ!!」

超高速体当たりで轢かれたベルゼブくんのフィギュア。

その真っ黒な塗装が浮き上がり、空気に溶けていく。

まるで呪いが解けたようにベルゼブくんのフィギュアが黒っけが抜けていった。

「あれは……暗黒フィギュア気が打ち晴らされたというのか!?」

暗黒フィギュア気!?

なんか外野で、いかにも解説役っぽいおじいちゃんが語り始めたけどどういうこと?

詳しいお話を聞かせてよ!?

「数百年前、『ゴッド・フィギュア』に暗黒の気を宿らせることで超絶な力を操り、やがてはその気を生きた人々にまで憑依させて自由に操ろうとした者がいたという……!」

え? ちょっと待って?

『ゴッド・フィギュア』ってここ最近売り出されたものじゃないの? 数百年前とか計算が合わなくない?

「『ゴッド・フィギュア』の起源は、魔国南西にある古代遺跡の壁画にあると言われておる。その遺跡が『ゴッド・フィギュア』と、それを巡る光と闇の争いを後世に伝えるためのものだったとしたら、その争いが現代によみがえることがあっても何ら不思議ではあるまい……!」

なるほどー。

そう言われるとなんだか、そんな気がしてくるね。

しかしながら今は、たった今ぶっ飛ばしたばかりの我が友ベルゼブくんの容体が心配だ!

ベルゼブくん、大丈夫か!?

「ディアブロくん……! どうやらミーは暗黒フィギュア気に精神を乗っ取られていたようだ……!」

ベルゼブくぅんッ!?

「ミーはキミに嫉妬していたのさ……! キミのフィギュアコスモは、ボクを完全に凌駕していた。今は経験や技量の差でなんとか互角を保てたとしてもいずれ必ず追い抜かれ、そして一度明けられた差は永遠に埋めることができないと……!」

そんなベルゼブくぉん!?

「そんなミーの焦りに『ゴッド・フィギュア』の暗黒面が引き寄せられてしまった。ヤツらはミーの心の隙間に入り込み、気づいた時にはヤツらの従順なしもべに……!」

ベールゼーブーくぅううんッッ!?

「ディアブロくん……キミが戦わなければいけない。秘密組織『ヤングメン』の野望を打ち砕き、この大会に優勝できるのはキミだけだ!」

わかったよベルゼブくん!!

キミとの友情に懸けて、ボクはこの戦いに優勝し、悪を打ち砕いてみせる。

「ディアブロくん……! こんな闇に落ちたミーにまだ友情を感じてくれるのか……!?」

「当然だよ! 間違った方向に進みそうになったら引き戻してあげることこそ友だちの役目じゃないか! ベルゼブくんボクたちこそ永遠のフォーエバーフレンドだよ!!」

そんなボクたちの和解を見てゴティアくんが泣いた。

「素晴らしい……! これが友情……! 人と人が思い合う心こそ国家運営の礎になるということなんですね父上……!」

うん。

なんか感じ入るものがあったなら、よかったね。

とにかくボクは、マイフレンドであるベルゼブくんを惑わし、皆が楽しむこの大会に影を落とす謎の組織を許せない!

秘密組織の傀儡にされて、この大会に潜り込んでいる刺客はまだまだいるはず。

ソイツらを全部倒し、悪の野望を完全に頓挫させるにはボクが優勝するしかないね!

見ていてくれベルゼブくん、ゴティア!

我がフレンドたちよ!

ボクは必ずや優勝し、正義の所在を示して見せよう!

* * *

そして次の試合。

あんなに盛り上がってたけれどもボクとベルゼブくんの対戦は予選準決勝だった。

そして栄えある予選最終試合でボクが当たったのは、魔王ゼダン様だった。

魔王ゼダン?

魔国の王様として潤沢な財力でもって改造し尽くされた機体。それに大人の圧倒的な技術体力でもってボクは瞬殺された。

「勝者、魔王ゼダン様……!?」

うわぁあああああーーーーッ!? ボクの友情が!

マイフレンズとの誓いがぁああああッ!?

「父上……最低です……!」

その試合内容を見てゴティアくんがぽつりと漏らしていた。