軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

730 魔国新世代・王子編

ボクの名はゴティア。

魔国第一王子、通称魔王子ゴティアである。

現魔王の長男として生まれたボクには、そのあとを受け継いで次なる魔王となる義務がある。

ボクが物心ついた時から、父上の家臣たちから何度も言われたものだ。

――『お父上のごとき立派な魔王になりなされよ』

――『強く英邁な魔王におなりあそばせ』

――『間違ってもあのクッソみてーな大魔王みたいになってはなりませんぞ?』

と。

皆がボクに期待しているからには、それに答えなくてはならぬ。

母である第一魔王妃アスタレスからも『ヒトに役立つよう心掛けなさい』と言われているし。

だからボクは日々の勉強を頑張り、武芸や魔法の稽古にも打ち込んでいる。

いずれ立派な魔王となるために強さも賢さも必要だからだ。

従者の中には言う者もいる。『殿下もまだ子どもであらせられるのですから、時には野を駆け回って遊ぶこともされた方がいいのでは?』と。

しかしボクにそんなことをしている暇はない。

ボクは一日も早く、父上に認められるほどの才覚を身につけ、いつでも安心して魔王の座を引き継げるようになりたい。

そのためにも今は一日とて無駄にせず、自分を鍛え上げる日々なのだ。

というわけで母上、ボクは勉強が忙しいので農場には遊びに行けません。

新しい家庭教師の品定めをしなければ。前回のヤツは結局ボクの知っていることしか知らなかったので即日クビにしてやった。

そんなある日。

ボクは父上……魔王陛下に呼び出された。

一体何事だろうか?

ボクが後継者として順調に成長しているかチェックされるのかな?

「……また家庭教師をクビにしたそうだな」

「彼から学べることはありませんでした。そんな者の授業を受けることは時間の無駄でしかありません」

父上とはいつも猛烈なプレッシャーをまとい、謁見するたびに圧倒されてしまう。

将来ボクもこれぐらいの威圧感を常にまとえるようにならなければ。

「……書物に記されたことだけを彼らは教えるのではない。真に優れた教師は、生きざまと思いやりによって生徒を教え導くものだ。それがわからぬようでは我が跡目を任せるなどまだまだ叶わぬ」

「……はい……!」

ち、父上に叱られてしまった。

ボクにはまだ後継者として足りないものだらけなのか。

「お前がよく頑張っているというのは家臣の皆から聞いている。しかし頑張るだけでは真の王者には届かぬ。勤勉と怠惰、厳格と柔和、清濁併せ呑んでこそ真の王者は完成する」

「怠惰……つまり四天王ベルフェガミリア卿を見習えと?」

「それはダメ」

また父上の思惑を外してしまった?

一体どう頑張れば父上のお考えに近づくことができるのであろう?

「ゴティアよ、お前の次期魔王としての才覚を伸ばすために特別な機会を設けた。近日魔都において民主催のイベントが開かれる」

「イベント……ですか?」

「お前もそれに参加するのだ。その日は魔王子など関係なく、お前も一人の子どもとして過ごすがいい。どう過ごし、その中で何を感じたかによって、我はお前の後継者としての資質を検分するであろう」

かしこまりました。

要するに父上は、現時点でのボクの成長ぶりを見極めたいというのだな。

であればボクも全力で、そのイベントとやらに向き合い、好成績を出して父上の期待に応えましょうぞ!

……というわけで早速特訓が始まった。

そのイベントとやらに向けた。

詳しい内容を聞くと、そのイベントとやらは神を象った小さな像を魔法で操作し、戦い合う競技らしい。

神の似姿を遊びに使うとは何たる不敬。

むしろこんな催し、取り締まった方がいいのでは? と進言したが家臣の一人から『細かいことはいいんだよ』と言われた。

そうなのか。

ではボクは、この大会で見事優勝をかっさらい、父上の期待に応えるまでのことだ。

そのための方法論は既に解析している。

この『ゴッド・フィギュア・ファイト』なるものの要点は、人形に埋め込まれた魔法石の操作だ。

魔動船に使われる同じものより遥かに小さくて要する魔力も微弱だが、その分精密性が求められる。

要するに操縦者の魔法操作の上手さが勝敗に直結すると分析した。

となればボクの優勝する可能性は極めて高い。

ボクのことを子どもと侮るのは勝手だが、それでも次期魔王として英才教育を施された子ども。

知識も剣の腕も、魔法の扱いだって大人にも引けを取らない。

所詮、市井の民なら最低限の生活魔法は使えても精密性など少しも伴うまい。

であれば魔王子たるボクの魔法操作をもってすればまず大抵は敵ではなくなるだろう。

そうなればフィギュアの改造とかは、一撃必殺がなせるように強力な剣を一振り用意するだけで充分だな。

それでもって、下手な操縦でモタモタする相手の懐に入り、一撃を決めてやればいい。

これが勝利の方程式。

このやり方で優勝まで突き進み、父上に認めてもらうのだ!

* * *

それで大会当日。

思った通り『あッ』という間に優勝できたと思いきや……!?

「おおおおおッ!?」

ボクは苦戦していた。

バカなッ!? このボクが、魔王子ゴティアが……ッ!?

何故こんなに手こずる!? こんなに攻めても相手を突き崩せない!?

いや、むしろ相手の猛攻に耐え凌ぐのに精いっぱいだッ!?

こんな……ただの予選第一回戦で……!?

魔王子のボクが倒されるなんてあっていいのか!?

しかも対戦相手はボクとそんなに変わらない子ども!

大人相手にも渡り合えると自負していたボクなのに!? これではボクのプライドがぁあああッ!?

「フッ、頑張ってはいるけどまだまだだね。そんなんじゃあこのボク、ディアブロくんとその愛機『スターライト・ゼット・ハデス』の敵にはなりえない!」

バカなッ!?

あんな見るからに庶民の子どもに、魔王子のボクが後れを取るなんてありえるのか!?

実際ヤツの魔力操作は全然拙く、物心ついた時から英才教育を受けているボクの足元にも及ばない!

立ち回りも反応速度も、断然ボクの方が上だ!

『魔力操作で圧倒する』というボクの方程式はまったく崩れ去っていない。

それなのに何故ヤツに追いつけない!?

何故ヤツの方が先手を打つ!?

「計算だけで勝ち上がれるほど、この大会は甘くないということさ」

「何ッ!?」

「たしかにキミの操縦技術はボクよりも上だ。ハッキリ言って太刀打ちできない。しかし『ゴッド・フィギュア・ファイト』の勝敗はそれだけでは決まらない!」

何ぃ!?

ヤツの使う『ゴッド・フィギュア』の背中から……翼が広がった!?

「ボクたちは一人で戦うんじゃない! 相棒たる『ゴッド・フィギュア』と一緒に戦うんだ! フィギュアを信じ、フィギュアを愛する気持ちのないキミには、ボクとボクの『スターライト・ゼット・ハデス』には絶対勝てない! ……行くぞ必殺!」

ああッ!? ヤツのハデスが、翼の光を走らせながら突進してきて。

「『ハデス・シューティングスター・アタック』ッ!!」

「ぐわああああああッッ!?」

ボクの……!? ボクの『ゴッド・フィギュア』が直撃を受けてバラバラに……!?

「試合終了。勝者ディアブロくん」

「ガッチャ!!」

そんな……、魔王子たるボクが……こんな庶民に後れを取ったというのか……!?

ボクの今までの努力は一体何だったんだ……!?

そんな中、勝者となった庶民の少年がこっちに歩いてきて……!?

「いい勝負だった、楽しいファイトだったね」

と言って手を差し出してきた。

握手しようと? 敗者となったボクにそんな屈辱的な……!?

「いやだなあ、いくら悔しいからって泣くことはないじゃないか」

「な、泣いてなんかいないッ!?」

「今日負けても、次の勝負に活かせばいいだけさ。キミが再挑戦したければ、ボクはいつでも受けて立つよ」

という対戦者。

「ただ再戦では、キミ一人の力だけで勝とうとするんではなく、もっと相棒の力に頼るべきだ。キミが信じれば『ゴッド・フィギュア』は無限の力を発揮してくれる。フィギュアを信じてこその『ゴッド・フィギュア・ファイター』だよ!」

フィギュアを……信じる……!?

そうか……それがこの大会を通して、父上が言いたかったことなのか?

自分自身を鍛え上げるだけでなく、他者を信じ、一緒に進んでいかなければ理想の王者になることはできない。

一人でできることなどたかが知れていると父上は教えたかったのか!?

「……お前の名を聞いておこう」

「ディアブロくんだよ!」

「そうか……ではディアブロよ。お前に感謝しよう。お前との戦いを糧にボクは、魔王子としてさらなる成長を遂げられると思う」

「えッ? 魔王子?」

これでいいのですよね父上……!

来年の大会では『ゴッド・フィギュア』にも改造を加えて、全幅の信頼を寄せられるようにして再チャレンジします!