軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

734 フィギュアで世界を支配する方法

そんなこんなで決勝進出者が出揃ったり自滅したりしていく中……。

俺の不安は一向に解消されない。

「もしもジュニアと戦うことになったらああああッッ!?」

可愛い息子を叩き潰すことなんて俺にはできない!

せめて俺たちが当たる前に、どちらかまったく関係ない第三者と争って脱落してくんないかな!?

しかし、他の誰であろうとジュニアが叩き潰されるのなんて嫌だ!

まったくどうして参加してしまったんだこんなサバイバルイベントに。

そうこうしているうちに決勝の対戦組み合わせが発表された。

第一試合。

俺vsジュニア。

「最初の一手でぶち当たったあああああッ!?」

なんて残酷なめぐりあわせ!?

神も仏もないのかこの世界はッ!?

いや……神や仏を使って争い合ってるのが当イベントなんだけどさ……。

罰当たり甚だしい。

それよりもこの思わぬピンチをどうしのげばいい!?

雨でも降って急遽中止にならないかな、このイベント……!?

と思っていたら本当に天に暗雲立ち込める。

そしてそこからなんか異形めいた巨大な何かが……!?

『グフフフフフフフ、グフォフォフォフォフォフォ……!』

なんだ?

この手により降り注ぐ不気味な笑い声は?

『我こそは、フィギュア邪神なり……!』

フィギュア邪神とな!?

「フィギュアの力で破滅をもたらす、太古に忘れ去られた神こそ我。本来ならば永遠に忘却の彼方へと忘れ去られるはずであったが、この凄まじいエネルギーに引かれて招来することができたわ……!」

この世界に、こんな意味のわからない古代神が存在していたなんて……!?

フィギュア祭りの盛り上がりが偶然にもヤツの供物となり、現世に甦るパワーを与えてしまったのか!?

『我が現世に甦った以上、この世界は我がものである。この世の生きとし生けるものすべてを我がフィギュアとしてくれよう! それが嫌なら、我にフィギュア勝負を挑むがいい!!』

だからどうしてそうホビーで世界の命運を決めようとする?

結局これパターンだよ。

ついさっきフィギュアで世界征服しようとする悪の組織を壊滅できたので、今度は超常的存在が出てきた。

順調にイベントが進んでいる。

そして超常的存在のくせに何故か律義に人類へ抵抗の余地を残す。

わざわざ人間側に有利なルールでホビーの勝負をしようなんて……神様はなんでそんなに優しいんだ!?

しかし人類側だって、そんなに甘いわけではなかった。

「魔法銃士隊、前へ!」

『え?』

「一斉掃射!!」

魔王さんの指揮で出てきた魔族の魔導士さんたちが、一斉にフィギュア邪神目掛けて魔法を乱射!

『ぎゃへええええええッ!? 待て待て待て待てッ!? フィギュアバトルで勝負をすると言っただろうが!?』

「我が魔国の平和を脅かす者に対して、交渉など不要! 全力を挙げて一気に叩き潰す!!」

為政者としての責任感が厚い魔王さん。

そんな人の前で支配宣告しちゃったんだから、全面対決になるしかない。

『だ、だからフィギュア勝負で……!?』

「戦いの鉄則は相手のペースに乗らぬこと! 敵から提示されたルールに従うなどみずからの勝ちを捨てるも同じ! いくさの勝者は常に自分で主導権を握り続けるのだ!!」

さすが魔王さん。

かつては人間族と何十年も争い続けた経験が生きている。

さらに攻撃魔法が暴風雨のごとく吹き荒れる!

『ぐおおおおおッ!? この無粋なヤツらめ! こういう時に神から勝負方法を指定されたら、それに従うのは当然だろう!?』

たしかにホビーマンガだったらそうなるだろうけれど……!?

しかし、この世界にはさらなるそんな約束事を気にもしない大変な輩がいるのだった。

それは誰か?

ウチのジュニアだ。

「ヴィールちゃん、やってー」

「お、ジュニアの頼みとなれば何だって叶えてやるのだー』

即刻ドラゴンの姿に戻ったヴィールが、フィギュア邪神目掛けてブレスを放射!

『ぐげええええええッッ!! フィギュアバトルでしかダメージを与えられないはずの我にぃいいいいいッ!? 炎があっついいいいいいいいッ!?』

『グハハハハ! そりゃードラゴンブレスともなれば並大抵の神のルールを無視して焼き尽くすなど容易いことなのだー! 何せドラゴンだからなーッ!!』

ホビーの世界ではひたすら鬱陶しいルールブレイカー。

そしてそんな狂気の存在をけしかける我が息子ジュニアの破天荒さよ。

見たか。

これが大人げない三歳児が本気を出した結果だ!!

『食らえ必殺!「ジュニアにいいとこ見せたいがために繰り出される、どんな神でも防御不可能ドラゴンパンチ」!!』

『ぐげぇええええええッッ!?』

可愛そうに、ホビーで世界を支配せんとした邪神は、完全なる力づくによってねじ伏せられたのだった。

これがごく自然な形であるのは間違いないんだが、何やら哀愁が漂う。

『ぐおぉおおおお……!? 何故だ、何故こんな……!? フィギュア神である我にはフィギュア勝負するのが当然ではないか……!?』

まあ、それはそうかもしれんのですが……。

こっちにもやり方というものがあってね。相手のルールに従って戦うという可愛げのあるヤツなんてまったくいないんだよな、この世界。

『世界の狭間を彷徨い……、数千年ぶりにフィギュアを楽しむ気配に誘われてやってきたというのに……! 人類と共にフィギュアを楽しめると思ったのにぃいいい……ッ!?』

何だこの邪神?

実は寂しかった系か?

そういうことなら仕方がない、この俺が大人としての対応を見せてやらなければ。

何しろ俺はこの場で唯一と言っていい大人げのある大人だからな!!

「だったらみんなで楽しく遊べばいいのさ」

『おお、人の子よ……!?』

「フィギュアを楽しむのに神も人もない……大人も子どももない。皆で楽しめばいいんだよ! 共に楽しみを分かち合おう!」

『うんッ!!』

そこからは招来した神を歓待する形で、フィギュアバトルが大いに盛り上がったのだった。

『我が能力でこのターンは我のフィギュアだけで一方的に攻撃できるようになる!』

「くっそ、いかにもラスボスらしい理不尽系特殊ルールを使いやがって……!?」

こうして神様にご満足いただいて帰っていただいた頃には日もすっかり暮れて、大会も決勝どころではなくなってしまっていた。

俺とジュニアの対戦もうやむやになったし、何とか助かったぜ!!

* * *

そんな感じで『ゴッド・フィギュア』は大盛り上がり。

特にジュニアがゼロから作成した阿修羅フィギュアは物珍しさもあって問い合わせが殺到し、一大ブームを巻き起こした兆し。

シャクスさんも、ここが商機とばかりに神フィギュア第二弾の発売を早速企画し始めていた。

「これは儲けの大チャンスです! 波に乗ってガンガン新商品を展開していきましょう!!」

こないだまで『祟られるかも』と怯え切っていたのはどこへやら。

結局商人は儲けというか、お金こそがもっとも崇拝すべき絶対神だった。

そんな彼らの計画する『ゴッド・フィギュア』第二段は、最初から関節構造を組み込むなど改善要素も加わるらしい。

さらには改造することを前提とした商品なので多数買いが想定されることから、中身を隠したランダム売りは取りやめとなった。

そして気になる第二段のラインナップが……。

阿修羅。

スサノオ。

フィギュア邪神。

ドラゴン(ヴィール)。

この宗教観のちゃんぽんよ。

この世界の神を出せや、と思ったがこないだの大会で活躍した者どもの印象が強く残りすぎたらしい。

てなことでこれからも『ゴッド・フィギュア・ファイト』は度重なって執り行われることだろうし、よりカオスになっていくこと請け合いのジャンルだった。

せめてなんか女神のフィギュアも発売してくれよ。

え?

違うジャンルになっちゃうからダメ?

そうか?