軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

722 素麺始めました

暑い。

春が訪れてしばらく経ってから、ここ数日なんか異様に暑くなってきた。

夏か?

っていうくらい暑い。

「この世界……夏はそんなに暑くないはずだったんだが……?」

大体通年かけて常春あるいは常秋で、冬に入った時だけ急激に寒くなる。

そんな感じだったのにな?

ついに地球温暖化現象が異世界にまで!?

……んなわけないか。

ただの異常気象だ。

とりあえずジュニアやノリトの熱中症には気を付けて。

若い農場学生の諸君にもこまめな水分補給&帽子を被るように呼びかけよう。

それでもまあ暑いものは暑いから……。

……何かしらの対応は必要だな。

「冷たいものを食べよう!!」

冷たいものを食べようッ!!

特に意味もなく二回言った。

食べ物による暑気払いは基本中の基本。

体の内側から冷やして暑い季節を乗り切ろうぜ!

と俺が発想するまでもなく……。

「暑い~、アイス食べたい~!」

「アイス食べようぜアイス~!」

「ご主人様ぁ~アイスを作ってくれぇ~!!」

農場の皆は冷たいアイスクリームを所望してばかりいる。

随分前にサテュロスたちのミルクを主原料にシンプルなバニラアイスクリームを作ったことがあるが、それが今の気候にドンピシャだからなあ。

皆それぞれにこの熱帯気候へ対処をしているのだった。

聞けば農場の冷凍保管庫へ侵入する者もいるんだとか。

無論涼むためだが、現管理者のディスカスに即発見叩き出されている。

しかしながら、アイスクリームも冷蔵庫も納涼とするにはいささか低温すぎる。

皆の健康に配慮して、もっと適温で体を冷やす料理を作ってみよう。

というわけで素麺を作ります。

『すめん』?

ではないソーメンだ。

何故ソーメンかというと、アイスほど低温ではなく冷たい料理というと、まあ俺の中でソーメンか冷やし中華かの二択になった。

その二択の中でソーメンの方が手間かからなそうだったから。

あとなんか漠然と、冷やし中華だと海○雄山とか芹○さんが怒りそう。

というわけですべてを至高の担い手に頼ってソーメンを作ってみた。

できた。

「うああああ……こんなに暑いと食欲が出ないわぁ……!」

「アイスクリームしか食う気がしねーのだぁ……!」

などと夏バテアピールするプラティやヴィールに、ソーメンを出してみると……。

「うままままままままままッ!!」

「うめえうめえ! スルスル喉に滑り込んでくるのだああああッ!! ご主人様もう一杯くれええッ!! お代わりじゃんじゃんよこせなのだぁあああああッッ!!」

食欲減衰とは何だったのか?

もちろん農場中の皆に楽しんでもらうためにソーメンは大量に用意してじゃんじゃんに茹でておる。

まさしくソーメンパーティの様相を呈してきた。

そうすると何か一ネタかましたくなってくるのが俺という人間だ。

ソーメンでイベント性といえばやることは一つ。

「タケノッコーンよ」

『御意』

現れたのはタケノコ。

竹の樹霊タケノッコーンであった。

農場の一角にあるお山では、数多くの益ある樹木を育てていて、いつからかそれらに精霊というか、雑霊めいたモノたちが憑りつくようになっていった。

タケノッコーンもその一種だ。

竹に憑りついている。

『憑りつく』といっても悪さをするわけでなく、樹木の成長を手助けしてくれたり、自然災害や獣虫害から守ってくれたりとむしろ頼りになる連中であった。

このタケノッコーンだって、いつも新鮮で美味しいタケノコを提供してくれている。

「しかし今日欲しいのはタケノコではない。もっと成長したものだ」

『こちらに』

差し出されたのは、充分に成長した竹。

ここまで伸びたら身も堅くなって、とても食用などできない。

しかし竹という植物は太古より人から愛されてきた。

ただ食用というだけでなく、様々な用途で利用できるからだ。

短冊を飾れば願い事も叶うし、竹やりにすれば一揆だってできる。

その中で、俺が今回やりたいのは……。

「脳天唐竹割りッ!!」

手刀を打ち込むと、割けるチーズみたいに縦に等分される竹。

中身の節をくりぬき、雨どいみたいな半円形の管を作る。

それを斜め45に傾けて……もっと傾けるか。

そろそろ何をするか予想できてきただろう。

そう、この割った竹の上部にソーメンの一塊を置いて……。

水と共に流していく。

「流しソーメンだ!!」

ソーメンが持つ、唯一にして究極のムーブメント。

竹の管を走っていくソーメンの動き、スピード感。それがソーメンを食す人に味だけではない楽しさを提供してくれる。

さあ皆! 走っていくソーメンを箸でキャッチし、召し上がるんだ!

「はいぃいいいッ? おぉおおお……!?」

「何コレ何コレ何コレ……!?」

「食おうと思ったら通り過ぎていくぅ……!?」

まあ、予告なしで流していったら誰も咄嗟に対応できんか。

誰にも受け止めてもらえず、竹の管から飛び出していきそうになったソーメンだが、その寸前でゴブ吉がキャッチして事なきを得た。

『未来予知』+『高速移動』+『時間停止』を同時併用できるゴブ吉には、さすがの流しソーメンといえども逃げ切れなかった。

だが今の実演で、趣旨は理解してくれたはずだ。

さらにガンガンにソーメンを流していくぜ!

「だから予告なしで流すなあああああッ!?」

「キャッチキャッチ! 食べ物を無駄にするなあああッ!!」

「竹竿が短すぎるんだよ! 余裕がなさすぎるうううううッ!?」

「せめてもっと傾きを緩くしてえええええッ!!」

ふむ? 傾斜35度でもまだ急すぎたか?

様々なユーザーの意見も取り入れて、傾きを緩くしたりさらなる竹竿の追加でもと流しソーメン然とした設備が出来上がった。

「よし! これならなんとかユーザーフレンドリー!!」

お墨付きが出た。

ではこうして完成形に達した流しソーメン台で……、存分に楽しんでもらうのはやっぱりジュニアだな。

こういう遊び心はまず子どもに楽しんでもらわねば!

「ジュニア―、ソーメン流すぞー?」

「どんとこいー」

次男のノリトは、まだまだこういうのを理解できる歳でもないからなあ。

兄弟でワイワイ楽しむ日が楽しみだ……と思いつつ、今日はまずジュニアに存分に堪能してもらおう!

「ってことでソーメン投下」

「きゃっちー」

早い。

出がかりを抑えてきやがったよ、この子。

攻略法としてはもっとも正しいが、それだと流しソーメンの情緒というか風情がですね……。

ガチ勢?

「フッ、さすがアタシの息子。攻略ポイントを的確に押さえるのに容赦がないわね」

そうだった、ジュニアにはプラティの血も流れているんだった。

チート上等、むしろ使えるんなら何故使わないの? と言いそうなプラティの遺伝子が、ジュニアの中で息づいている!?

「ふーむ……!? これは奥が深そうなのだー?」

そんな光景を眺めて何ぞやか呟いているのがドラゴンのヴィール。

コイツはジュニアガチ勢。

そんなヤツが流しソーメンに興じるジュニアを見て何を思うぞ?

「ジュニアが楽しいのならおれ様だって挑戦するのだ! その流しソーメンとやらにな!!」

「な、何ぃいいいいいいッッ!?」

「見ているがいい! ドラゴンのおれ様による究極最高の流しソーメン台を作製してやる!! 無敵要塞なのだーッ!!」

聞くからに物騒なことを言いおるヴィール。

果たして彼女はどんな流しソーメン台を作り出すのだろうか!?

続く!