軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

723 ドラゴンソーメンロード

ヴィールが流しソーメンをやるってよ。

どんなのができるか想像できない。

元からドラゴンのすることってスケールが突拍子もないし、さらにヴィールは農場で暮らすようになってからやたらと凝り性になっているからな。

一体誰の影響だよ?

俺か?

というわけで一両日ほどの準備期間を経て、流しソーメン・セカンドステージ~ヴィールの聖戦~、が完成した。

それでヴィールが支配している山ダンジョンに招待された。

「山ダンジョンを丸々使って流しソーメンのステージにしているだって!?」

ヴィールはドラゴンなので、ダンジョンを一つ根城にしている。

俺もそこで果樹園を開いたりモンスターを狩ったりと有効利用させてもらっているんだが……。

「グハハハハハハハ。元から、この山はおれ様のもので、おれこそが主なのだー。だから、どうこうする権利はある!」

「うん、まあそれでいいけれど……!?」

俺たちとしても地主に敬意は払うよ?

「おれは考えたのだ……! どんな流しソーメンを作ればジュニアが喜んで大ジャンプと小ジャンプを交互にしてくれるか!? この企画に、おれのドラゴンとしての矜持を懸けたのだ!!」

「そこまで全身全霊を懸けなくても……!?」

「そうして出た結論は! とにかく大スケールで! おれ様のダンジョンをフル活用した広大さはそれだけでもジュニアのハートに響くはずだ!!」

バブル期の興行主みたいなこと言いだした。

今や、ヴィールのダンジョンには所狭しと半分に割られた竹竿が並べられて、一種竹竿要塞と化している。

ヴィールの自信作は、もはや完成の域に達していた。

「いや、また豪快に組んだなあ……!?」

「しっかりと機能を果たさなければ見てくれなど何の意味もないのだ。というわけで実際にソーメンを流してみねばな」

本当に言うことがそれなりになりやがって……!?

「ソーメンの流し始めは、山の頂上に用意したのだ」

「ほいほい」

「そして麓まで流れていく作りになっているのだ」

「ほえぇええ……!?」

山一つを丸々利用した流しソーメンってこと?

どんだけ大スケールだ? 全米を震撼させる気か!?

とはいえ、ドラゴンであるヴィールを持ってすれば麓から頂上まで移動するなんて一瞬。

彼女の支配しているダンジョンだから、テキトーな『近道』を作ることだってできるし、空を飛んでも行ける。

というわけでここは頂上。

登山の達成感は当然ゼロ。

「おお、本当にスタート地点がある……?」

割った竹竿の端があった。

そこになんか虚空から、水がチョロチョロ流れ竹竿を流れていく。

虚空?

「空間を捻じ曲げて、水が循環するようにしてあるのだ。麓のゴール地点まで落ちたら、まだここに還ってくるのだー」

「相変わらず無駄に凄まじい技術を使用してある……!?」

というかマジで頂上から麓までコースが続いているのか?

「麓のゴール地点には既にジュニアがスタンバっているのだ! ジュニアの下まで必ずやこのソーメンを届かせる!」

そう言ってヴィールが足り出したお椀には、たしかにソーメンひと固まりが……!?

「行くぞジュニアー! すぐにお前のところへソーメンが飛んでいくからなー!」

「ばっちこいー、こいー、こいー」

麓にいるはずのジュニアから返事が!?

さすが空間を超越した山ダンジョン! しかも何やら山びこがかかっているのも芸が細かい。

「さあ行けジュニアの下へ!!」

そしてヴィールが傾けたお椀からソーメンが滑り落ち、竹竿へ。

ついにヴィール製、大スケール流しソーメンマウンテンがスタートを切った!

ただでさえ山一つをフィールドとしたことで、とんでもなく大きく長い道のりであることが予想される。

果たしてソーメンは、このマラソンコースを走破して無事ジュニアの元まで辿りつけるのか!?

「それでは、コースで待ち受ける各難所を紹介していくのだー」

作り手側のヴィールが親切設定で解説する。

難所その一、急転直下フリーフォール流しソーメン。

難所その二、大回転宙返り流しソーメン。

難所その三、絶壁飛び越えスカイスクレイパー流しソーメン。

最終難所、超光速アクセルシンクロ流しソーメン。

「字面からしてヤバそうなのが目白押し!?」

「早速最初の難所が見えてきたのだー」

流れるソーメンを追って俺たちも駆けていくぞ!

ソーメンの流れるスピードがけっこう速い!? 割と全力気味に走らなきゃならなくなって、横腹痛いんですが!?

「最初の難所『急転直下フリーフォール流しソーメン』とは、驚異の傾斜角90度の超急勾配コースなのだ!」

「それ滑っていくんじゃなくて落ちてくんじゃね!?」

もはや直角。

そんなの重力に従って落下するのみで容易にコースから外れてクラッシュしてしまうんでは!?

ホラもう、90度傾斜へ飛び出した水の流れが、もはや滝じゃないか!?

明らかな設計ミス!

ヴィール製ソーメン流しサーキット、序盤で早くもリタイヤ確定か!?

「そうはいかないのだ! 流しソーメンの力は伊達じゃないのだ!」

ああああッ!?

ついに90度傾斜に踊り出たソーメンが……、コースに張り付くように滑り降りていく!?

これはまさかダウンフォース!?

空気抵抗が車体を地面に押さえつけようとする力!?

それによってソーメンはコースアウトすることなく直角斜面を渡り切った!?

「おおおおおおッ!? すげえええええええッ!?」

そして少しずつ斜角を戻して言って水平コースに復帰!?

ソーメンは第一難所を無事クリアした!?

「安心するのはまだ早い! すぐに次の難所へ突入なのだ!」

第二の難所『大回転宙返り流しソーメン』。

流しソーメンのコースがせり上がり、輪を作っている!?

ジェットコースターかよ!?

「中途半端なスピードで突っ込めばリングを突破できずに止まってしまうのだ! 恐れず躊躇せず、アクセルを踏み込んで突っ走るのが正解!」

ヴィールの解説の下、さらにアクセルを踏み込み加速するソーメン。

「行くのだ! 超スピードで大回転を走り抜け!」

ソーメンは超加速の下、真っ逆さまに裏返るループコースを一瞬のうちに駆け抜けていった!?

「やったあああああッ!! 第二難所もクリアだぁ!!」

その偉業達成に俺まで興奮してしまうぜ!?

さらには三番目の難所『絶壁飛び越えスカイスクレイパー流しソーメン』

なんと断崖絶壁にコースが途切れていて、崖の向こうのコースに飛び移れってことか!?

これもジャンプ台で加速を得て、見事向こう岸に着地!

素晴らしい跳躍を見せてくれました!!

「あれ? これ流しソーメンだったよね?」

「何を当たり前のことを確認しているのだご主人様? さあついに最後の難所に突入だ!!」

最後の難所とは?

山ダンジョンを駆け下りて、もはや麓は目の前。何の変哲もない直線コースに見えるが……!?

「もちろん何の仕掛けもないわけがない……!? なんだ途中から……流れる水の量が加速度的に増していく!?」

それに比例して流水の速度も!?

もはや激流!

その流れに乗ったソーメンもどんどん速度を上げていき……!

「ソーメンはもはや光の速度をも超えるのだ! これが流しソーメン究極の進化! 光差す道を駆け抜けるのだああああああッ!!」

何だってぇえええええッ!!

加速して、加速して……!? 極限まで加速したソーメンが……!?

もはや俺たちの視界を振り切って……俺たちの背後から現れた!?

これはもしや……!?

地球一周……!?

「光の速さを超えたソーメン!」

「やったのだソーメン! 光速に達し最終難所をも切り抜けた! 流しソーメン山ダンジョンエクストラコースを制覇なのだぁああああッ!!」

狂喜乱舞するヴィール。

様々な困難を乗り越え、もはや風格すら漂い始めたソーメン。

そのソーメンがついにゴール地点へたどり着き……そこで待っているジュニアの箸に触れた。

「いただきまーす」

麺つゆにつけてから一口でツルリ。

「ぐっとていすと」

高評価をいただきました。

やったああああああああああああッ!!

「成功なのだ! おれの流しソーメンオリジナルコースは完成を見たのだあああああッ!!」

「おめでとうヴィール!!」

抱き合って喜ぶ俺たち。

翌日、流しソーメンのコースは『日常生活に邪魔だから』という理由で撤去された。