軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

539 新・龍帝城の戦い 総括

そんなわけで大成功裏に幕を閉じたダンジョン攻略競争。

……え?

グラシャラさんとピンクトントンさん因縁の対決シングルマッチ無制限一本勝負がメインイベントじゃなかったかって?

はてさて誰がそんなこと言いましたかね?

今日は最初から最後まで新・龍帝城のお披露目と攻略競争がメインのお話だったぞ!

途中、本筋を消し飛ばすような大盛り上がりの突発イベントなどなかった。

今回一番苦労したあの三人の精神安定を図るためにそういうことになってるの。

いいね?

とにかく無事閉会宣言がなされたあと、観客たちを転移魔法で帰還させて然るのち、関係者だけでささやかな打ち上げが行われることとなった。

勝負の場となった新・龍帝城で。

選手として参加した四天王、S級冒険者、六魔女に加えて、彼らを迎え討つ側となったダンジョン制作者のドラゴン&ノーライフキングの面々。

来賓としてやってこられた魔王さんやアロワナさんも参加し、和気藹々と立食パーティとしゃれこんでいた。

「戦い抜いた者たちに労いなのだー。おれ手製のゴンこつラーメン(無希釈)を食らうがいいのだ!」

ここぞとばかりにヴィールがゴンこつラーメンの消費に精魂傾けていた。

こうして試合が終われば、互いの立場も忘れて交流し、讃え合う。

それがこれからの三大種族のスタンダードになっていけばいいなあ。

「アードヘッグさん」

「うぬ?」

とりあえず俺は、新・龍帝城の主であるアードヘッグさんへ改めて挨拶。

「今回は場所を提供してくださり本当にありがとうございました」

「いやいや、人類の和解に一役買えたというならおれも望むところだ」

この人自身、新しく皇帝竜になったばかりで大変なことも多いだろうに、そんなさなか人類に思いやりを懸けてくださるとは。

本当にアードヘッグさんが新生ガイザードラゴンになってくれてよかった。

これが他の……大多数の無責任野放図なドラゴンが皇帝になっていたらと思うとゾッとする。

「おいシードゥル! お前もこの機会にゴンこつラーメン四、五十杯食っていくがいいのだ!」

「嫌ですわ! そもそもそのエキスわたしから染み出たものじゃないですか! 何が悲しくて自分から出たものを自分で摂取しなきゃならないんですの!?」

本当になあ……!?

ドラゴンたちの酷い言い争いはこの際聞かなかったことにして、俺は別の話の輪へ混ざることにした。

魔王さんが、S級冒険者のシルバーウルフさんと何やら話し込んでいる。

「なんだか珍しい組み合わせですね? 何の悪巧みです?」

「いや、別に悪巧みというわけでは……!?」

密談の雰囲気が明らかにそれだったから。

悪いことじゃないにしても、何か難しい政治向きの話であることは察せられた。

「今回のイベントが狙い通りに収まったのでな。その勢いを駆って本来の事業を進めようということになったのだ」

「本来の事業?」

なんだっけ?

「聖者殿……?」

「いえいえいえ、ちゃんとわかってますよ! 忘れてませんよ!」

ええと、あれだ。

魔国にあるダンジョンを冒険者たちに開放しようという話でしょう?

冒険者ギルドという、民間がダンジョンの管理を行うシステムは旧人間国の側にのみある。

対する魔国は今までずっと魔王軍がダンジョン管理を行ってきたのだが、軍縮で手が追い付かなくなってきた。

そこで人間国の冒険者に業務委託し、足りない手を補ってもらおうという案が生まれる!!

「今回のイベントで人族魔族の蟠りもますます解けたことだろうし、魔国側に冒険者を迎え入れても反発は少ないものと思われる。これから業務委託を本格化していく所存だ」

「そのための打ち合わせを魔王様としていたところだ」

とシルバーウルフさん。

「実のところ冒険者ギルド側も、戦争終結に伴って問題を抱えいる。食い扶持を失った傭兵やら騎士やらが新たな職を求めて一斉に冒険者へジョブチェンジしやがった」

「前職の経験を生かせそうですしね」

「とはいえ急激に職業人口が上がって、既存のダンジョンから溢れ出す始末だったのだ。このままでは未発見ダンジョンを求めて一斉に野に放つぐらいしかないと思っていたところの魔国側の要請なので非常に助かっている」

需要と供給が一致したってわけか。

「かつて魔王軍と激闘を繰り広げた張本人どもともなれば、益々冒険者として魔国本土へ送ることが躊躇われたがな。それも今回の催しで光明が見えてきた……」

あっちの席で、もっとも熾烈な激闘を繰り広げてきた戦士が、今は和解の祝杯を挙げている。

『この世に完璧なものが一つだけある、それはオレたちの友情だ!』と言わんばかり。

そう本日のメインイベンター、グラシャラさんとピンクトントンさんだった。

「いやー、冒険者になって益々突進力が上がったんじゃねえのお前!? 戦闘訓練サボってばっかのアタシじゃもう敵わないなー!」

「何言ってるんですか今日の勝者が~! 最後の逆襲には本当してやられましたよ。アレが母の強さってヤツですか~!?」

「応よ! ウチの子可愛いだろう! ホント可愛いだろう!? お前もとっとと結婚して子ども作れよマジで可愛くて人生変わるぜ!?」

「出たよ既婚者の幸せお裾分け攻撃~!?」

めっちゃ和気藹々としていなさる。

「まあ、あれだけ打ち解けられたんなら、他の魔王軍兵士や前職傭兵現冒険者にも伝播していくだろう。……本当にやってよかったな、このイベント」

ああッ!? シルバーウルフさんが遠い目つきになっている。

結局最後まで懸命にダンジョン攻略してアードヘッグさんの下へ辿りついた三人のうちの一人。

『クローニンズ』の称号を奉られるほどに悪戦苦闘した成果が全部もってかれた衝撃が彼の心の中でまだ燻っている!?

「だ、大丈夫ですよ! シルバーウルフさんたちの苦労も、きっと世界平和に貢献していますよ!」

「だといいがな……!?」

大丈夫です。

だって『クローニンズ』はシルバーウルフさんとゾス・サイラさん、そして四天王のマモルさん? だっけの三人一組でしょう?

人族魔族だけでなく、人魚族まで加わって三大種族の融和に繋がっているわけじゃないですか!

グラシャラさんとピンクトントンさんの勝負はあくまで人族と魔族が効果範囲内。

人魚族までカバーしている『クローニンズ』には敵わない!

「その証拠に……アレを見てくれ!」

シルバーウルフさんを除く『クローニンズ』の二人。

ゾス・サイラさんとマモルさんが、ある一人を取り囲んで懇々と説教していた。

「何故お前は一人で生きてるような気分になっとるんじゃ? 本当に完全な意味で一人で生きていける者などいないのじゃぞ?」

「キミだって、ギルドあっての冒険者だろう? ギルドから報酬を貰って、その金銭でご飯を食べたり寝床を借りたりしている。そしてギルドというのは全員の相互扶助で成り立っている」

「助け合いとは思いやりの精神なのじゃ。それを意識しないと意味のないことなんじゃぞ?」

「キミのように思いやりを無視する人間が組織の中に一人でもいると、皆の思いやりが無駄になって組織が崩壊するんだ。それがいいわけないだろう? どうなんだ? ちゃんと言ってみろ?」

情け容赦ない説教の集中砲火を食らっているのは、たしかS級冒険者の一人でゴールデンバットとかいう人。

なんかダンジョンの中でやらかしたらしく、出てきてからずっと説教されている。

一流冒険者、俯いて相手の目を見ようとしない。

「あれはアイツの自業自得だから何の同情も湧かないが……」

「同僚のアナタがあそこまでマジ説教したら絶対しこりが残るでしょう? そこを代わって部外者という立場から本音をぶつける! これこそアナタたちの絆の力なんですよ!」

これぞ『クローニンズ』必殺の代打説教術!

互いの陣営の問題児を諫めることで、仲間たちの苦労を減殺し合う!

「そうか、では私も仲間たちの苦労を代行して……」

シルバーウルフさん、ツカツカと歩いてどこへ行くかと思ったら。

「……ベルフェガミリア殿。アナタが面倒くさがりなのは別に悪いことではありません。しかし、面倒くさいことを他人に押し付けることは違うでしょう?」

四天王のベルフェガミリアさんに説教し始めた!?

四天王筆頭の席にありながら面倒くさがりで、その分同じ四天王のマモルさんに苦労をかけまくるベルフェガミリアさんに!?

代打説教術が上手く機能している!?

ああ、とかやっているうちにゴールデンバッドさんを説教していた二人のうちの一人、四天王マモルさんが離れて……。

「あのね、思い付きは実行するのに根回しが必要なんですよ? 唐突に始めたら絶対どこかに皺寄せがいくでしょう? アナタも王族なら自分の言動が下々に大きな影響を与えることを慎重に考えてですね……」

プラティを説教し始めたああああああッ!?

S級冒険者のゴールデンバット。

四天王ベルフェガミリア。

六魔女プラティ。

それぞれの陣営の問題児たちに、それぞれの苦労人たちが説教おっかぶせるこの状況!

「ウチの奥さん、問題児にカテゴライズされてた……!?」

まあ仕方ない一面もありますが、今少しご容赦いただけませんか。

新たに宿った二人目の胎教に説教は何かと不都合が!?

まあ、こうして三大種族が一致団結している様を見るだけでも、平和がよりたしかなものになっている実感ができて嬉しいものだった。

やっぱり今回のイベントは大成功だな。

そして、説教される側の問題児たち。

どいつも全員、顔を俯かせて説教する相手の目を頑なに見ようとしない。

ビックリするほど同じ動作をしているのが別の意味での一致団結を印象付けるのだった。