軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

537 続々・三人が気苦労

「アレキサンダー様ありがとう!」

「アレキサンダー様のおかげで元気が湧きました!」

「アレキサンダー様のおかげで宰相を続けられそうなのじゃ!」

何とかアレキサンダー様の元気を取り戻して、次のエリアに向かう私たち。

ゴールデンバットのヤツはボコボコにしたあとその辺に置き捨ててきた。

これでついに残りのメンバーは我々三人だけになった。

「もうこれが最終メンバーになりそうだな?」

「この三人で最後まで行くんだろうし、行けなかったらこのまま全滅だな」

そうだな。

アレキサンダー様のエリアを突破して、我々の結束はより固まったように思える。

初対面の連中ばっかりなのに、まるで他人の気がしない!!

「最後まで一緒なのはいいとして……、このダンジョンは一体どこまで続くのじゃ? そこが肝心なところじゃ。さすがにわらわもこれ以上は付き合いきれなくなってきたしのう」

たしかに。

ダンジョン攻略においてもっとも苦しいのは、ゴールが見えないことだ。

最終地点までの距離が明らかになっていて、そこまでのペース配分がしっかりできていれば、それは本当に恵まれていて楽なことだ。

しかしながらそんなイージーな状況は滅多にない。

私たちもいつ終わるとも知れない暗闇の中、精神を削りながら這い上がっていくしかないのだ。

「心配ご無用なのだ! ここが最終局面なのだー!!」

私たちの会話に割って入るように現れた……、今度は誰!?

女の子だ!?

なんでこんなダンジョン奥地に女の子が!? と驚くのもくたびれてきたが、あの少女には見覚えがあったので、すぐ腑に落ちた。

「あれは……! 聖者様のところにいたドラゴン!?」

「その通りだー! お前ら、よくぞここまで辿りついたのだ! 新・龍帝城も大詰め! これが最後の試練なのだー!!」

と言うことは……!?

「そう、このグリンツェルドラゴンのヴィール様が拵えた、このエリアこそが最後の試練!! ここを抜ければあとはもうアードヘッグが待っている玉座の間オンリーなのだ!」

それは朗報……!

終わりが見えたことで図らずも、体に力が戻ってくる!

「皆頑張ろうあと一息だ! 終わりが、終わりが見えてきたぞ!!」

「そうわかると、あともう一踏ん張りできるというものじゃ」

仲間たちも奮い立ち、疲労を一時忘れ去る。

今こそ最後の力を振り絞る時だ!

行ける! 私たちが一致団結したら、どんな険しいダンジョンでも!

「ぐっふっふ! 威勢がいいが、このヴィール様が考え出した罠満載のエリアは手強いのだぞー? 泣きべそかいても知らないのだ!」

「いいや! 我々は試練を通じ、堅い絆で結ばれた! 人族、魔族、人魚族と言った種族の垣根などもうない! それがこれから全世界の基本スタイルとなっていくのだ!」

「よくぞ言った! では踏み入るがいいのだ、このおれの設計したエリアへ! おれが仕掛けた罠は……!」

行くぞ皆!

私たちが力を併せたら、突破できない障害などない。

「数百の筋肉マッチョたちにもみくちゃにされる罠なのだ」

あ、やっぱ無理そう。

* * *

そうして我々は必死になって進んだ。

部屋いっぱいに押し込められた無数のマッチョの中を分け入りながら。

どこからこんなに連れてきたのだろうという大量の筋肉マッチョたち。

それらが密閉空間の中で押し合いへし合い。

温度を上げ、湿度を上げ、圧力を上げる。

そんな質量地獄の中を進む。

顔に大胸筋が押し付けられる。

今手が触れたのは誰かのマッチョの尻か!?

ぐおおおおおおッッ!?

辛い!?

どうして私たちはこんな辛い思いをしてまで進もうとしているんだ!?

いかん、動機を問う段階にまでなってきた。

マモル殿! ゾス・サイラ殿!

無事か!?

いいや無事じゃない! マッチョどもの肉のが作る波に流されていく!?

アレがマッチョの離岸流か!?

あの流れに乗ったら城の外へ流し出されてしまうぞ!

気をしっかり持つのだ!

負けてはならない!

このマッチョの圧力に敗けてはならないいいいいいいいッ!!

* * *

「やっと突破できた……!」

「突破できるとはよもや思わなかった……!?」

「突破できなくてもよかったわ……! 吐きそう……!」

とんでもなく苦しい目に遭いながら、我々はついにすべての難関を突破して、ここまでやってきた!

皇帝竜ガイザードラゴンの玉座の間!

そこには見上げるほどの巨大なドラゴンが鎮座しているではないか!

『よくぞ……、ここまで来た……!!』

ヤツこそこのダンジョンの主、すべての竜の頂点に立つ竜の皇帝ガイザードラゴン!?

入り口で一回見たからわかる!

『このガイザードラゴンのアードヘッグ。お前たちの奮戦はつぶさに見届けたぞ。仲間を失い、生き残った者たちで協力し、助け合って、マッチョにもみくちゃにされながらここまで来るのをな』

「やめて! 言及しないで!」

一刻も早く忘れたいので!

『……今回の勝負は、我が下にたどり着く順番を競い合うものであった。その規定からすれば途中で協力し、一つのパーティとなって進む時点で勝負の意義は消え去ったといえる』

うッ……!

たしかに……!

『しかし、今となってはそれすらどうでもいいことなのかもしれん。素晴らしいのはお前たち三人が、種族の別なく互いを信頼し合ってここまで来たということ! その信頼と協力の心こそが素晴らしい!!』

ああ、はい……!?

もしやこの竜も、アレキサンダー様と同じ類!?

『もはやこの戦いに勝ち負けはない! 全員が勝者だ! 見事ここまで辿りついたお前たちに、おれから皇帝竜として賛辞を贈ろう! お前たちはやり遂げた! おめでとう!!』

そうやって手放しに賞賛されると、なんだか段々実感が湧いてきた。

私たちはやり遂げたのか?

この困難な、竜の皇帝が支配するダンジョンを見事乗り越えた!

しかも勝ち負けなどという小さな拘りを超え、もっと重要な、協力して取り組むことを獲得した。

「ありがとう皆! キミたちのおかげで私は大事なものを手に入れることができた!」

「それは私も同じだ! なんと有意義な戦いだったのだろう!」

「気苦労を重ねている者が他にもおった! わらわは孤独ではなかったのじゃ!!」

それぞれが喜びを噛みしめていた。

日頃からけったいな同僚たちに振り回されて、しわ寄せが全部こっちに来て、余計に突かれること多々ある毎日だけど……!

同じような苦労を重ねているのは私だけじゃなかったのだな!

同じような苦労人が他にもいたのだ!

そう思うだけで私たちは頑張れる。同じ苦労を背負い込んだ仲間がいると思うだけで!!

『この世界は、お前たちを起点に革新されていくだろう。種族を超えて協力していくものに。そんなお前たちを讃えるために。このおれから称号を贈りたい』

称号!?

『そう、お前たちを未来永劫讃えていくための、お前たち三人だけが名乗ることを許される称号を。ガイザードラゴンたるおれから贈られたものだ。地上の全存在に対して誇る理由となろう』

凄い……!

ドラゴンから称号を贈られるなんて、どんな領主や国王から賞賛されるより誇らしいことじゃないのか!?

しかも竜の頂点、皇帝竜から!!

散々苦労してきた我が人生だが、こんな風に報われる時が来るなんて!

「苦労してきてよかった!」

「頑張ればいつか結果の出る日が来るんじゃな!!」

マモル殿やゾス・サイラ殿も嬉しそうだ!

『それでは……、そうだな。お前たち三人をまとめて呼ぶ呼び名は、今日より……!』

私たちに与えられる称号が決まった。

『「クローニンズ」で』

「「「それはやめてくれませんかッ!?」」」

こうして私たち三人は……。

どこに行っても苦労している人ということが世界中に知れ渡るようになったという。