軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

530 新・龍帝城の戦い 四天王編

魔王軍四天王の一人『貪』のマモル。

ただ今絶賛勝負の真っ最中!!

いやあ、勝負を申し込んだのはたしかにこっちだけどさ!

魔王軍内の不満を抑えつつ、上手いこと人族の冒険者に仕事を任せるには、これしかないと思った!

しかし!

しかしですな!

まさかこんな大それた場所で勝負が行われるなんて!?

ダンジョン管理を委託することを巡るトラブルだから、ダンジョン攻略で競う勝負にしよう。

わかる。

勝負が公平になるように、どちらも初めて入るダンジョンで競おう。

わかる。

だから竜の皇帝が支配するダンジョンで勝負することにしました。

これがわからない!

竜の皇帝って!?

どこからそんなツテをもってこられたんだ!?

ただのドラゴンですら人類からから見たら意思疎通もできない高次の相手だというのに!

その竜の頂点と、どうやったら話をつけて居城を使わせてもらえるなんて離れ業が可能なの!?

「気にしすぎだよぉマモルくん。世の中にはね、どんな面倒くさいことも即座に片付けてしまう、そんな輩がいるものだよ」

「ベルフェガミリア様、アナタが!?」

「僕じゃないよ?」

ウソだ!!

ドラゴンと交渉できるなんて、そんな度を過ぎた人がアナタ以外にいてたまるか!?

実際この御方が参加しているだけで我がチームは勝ったも同然。

それぐらい凄い御方なのだから。

「しかし面倒くさいなあ。ねえ、本当に勝負なんかしなきゃいけなかったの?」

「始まった傍から!?」

さすが面倒くさがりのベルフェガミリア様!

始まった途端、勝負を面倒くさがり始めた!?

「ダメですよ! この勝負の必要性は先の会議で散々主張されたではありませんか!!」

「主にマモル君が主張したんだよね?」

現状として魔王軍の独力で国内ダンジョンすべてを管理することはできない。

その改善のために冒険者という民間の手に頼る。

しかし魔王軍としては、今まで自分たちの手で担ってきたものを他人に譲らなければならないというのはプライドを傷つけられる。

そこで勝負の形をとり、そこで一様に勝つなり好勝負なりできれば『自分たちだってまだできるんだぞ』『あくまで優れているのはオレたちの方なんだぞ』という主張を充分にできる。

その上から冒険者を参画させればいいのだ。

あくまでアシストとして!

「そうすることで魔王軍も、地上の覇者としての体面を保てる! 方法はこれしかありません!」

「面倒くさいプロセスだよねえ」

ベルフェガミリア様、いつもの口癖の『面倒くさい』も、ここではクリティカルなんでやめて!

「面倒くさがってはいけませんベルフェガミリア様! 人族どもに我ら魔族の精強さを見せつけてやらねば!!」

そう主張するのは私と同じ四天王の一人エーシュマ。

生真面目だが、その分融通の利かない女性だ。

「人族どもなど、改めて立場をわからせてやればいいのです!『お前らは敗者であり、服従する側なのだ』と。今日の勝負はそのための場! ヤツらに戦争で負けた時と同様の屈服を再度味あわせましょう!!」

……。

魔王軍には彼女のような主張をする子が何人もいて、そのような気分を慰留するための勝負でものある。

「でもマモルさんが期待しているのは、それだけじゃないんでしょう?」

最後にもう一人、四天王レヴィアーサくんが言う。

物静かだが、的確なものを見る目を持っていて、なかなか侮りがたい女性だ。

「自分たちの実力を見せつけたいのが半面。もう反面は相手の実力も見たい」

「うん、まあそうだな……!?」

本当的確にこっちの意図を見抜くわあ……!?

冒険者とやらが、人族側でダンジョン管理のプロであることは伝え聞いている。

しかし私も魔王軍の責任ある立場として、彼らの仕事ぶりを直に見たわけじゃないし。

決定を下すためにも、一度キッチリ見ておきたい。

そして、どうせ見るなら私一人ではなく、多くの魔王軍兵士にも見届けてもらった方が理解も深まり、仕事を任せることにも抵抗が鈍るのではないかと……!?

そこまで考えた上で勝負を企画したんだがね?

「気が回りすぎなところが、本当マモルさんらしくてキモい」

「最後の感想で台無しすぎる!?」

しかしそこまで見抜く辺りがレヴィアーサくんの『らしい』ところ。

さすがに『有能』が二つ名なんて言われているだけはある。

面倒くさがりのベルフェガミリア様。

生真面目すぎて軋轢を生むエーシュマ。

有能だが貢献する気のないレヴィアーサくん。

この三人に取り囲まれて仕事する四天王のマモルです!!

そうしたことを話しながらダンジョン内の通路を進んでいくと……。

「お、なんか出てきた」

扉だ。

厳重に閉じられている門扉はまさに『ここから先は別領域だぞ』という主張が窺える。

「どうやら、ここから本格的にダンジョンになってくるようですね。侵入者は容赦なく排除的な……!?」

『よくわかっているではないか、見どころのある若僧よ』

「ぎゃあああああああッ!?」

気づいたら!?

気づいたら隣に誰かいたッ!?

死体!?

としか思えない干からびた人間が、しかし動いてるうううッ!?

「ノーライフキングの先生、ご無沙汰しています」

「先生、こんにちは!」

「こんにちはー」

えッ!?

私以外の四天王なんで挨拶してるの!?

全員この不死者と顔見知り!?

私だけ疎外感!?

「こんなところでお会いするとは意外ですね。一体何故ここに?」

『ここから先の区画はワシが設計したのでの』

はあ!?

どういうことですか、このダンジョンは竜の皇帝の居城でしょう!?

それを何故不死王が設計!?

『このダンジョンは急ピッチで作ったので、多くの者の手が入っての。最初は竜どもだけでやっていたが、バラエティに富んだ造りにしたいというのでワシらにも声がかかったのじゃ』

「それで快く引き受けたところが先生っぽいですねえ」

『まあそれで、各自の担当区画の前にそれぞれ立って意気込みや説明を語っていこうとなっての。こうして待ち受けておった』

マジでこのダンジョン、アトラクションめいてない?

「先生の設計したダンジョンですかあ。さぞや面倒くさい造りになっているんでしょうね?」

『今回はテーマを絞ってみての。この勝負の一番の問題と思われるものを解決することを狙ってみた』

なんかけっこうまともなことを言っている、このノーライフキング!?

果たして、彼がダンジョンに込めたテーマとは?

『ズバリ、ベルフェガミリア対策じゃ』

「えー? 僕ー?」

『そうじゃろう、おぬしが競技者に名を連ねる限り何があっても勝つのはおぬしだ。結果が決まりきっていては勝負は面白くない。そこでワシが、その対策を講じたのよ』

真面目な不死者さんだなあ……!?

でも自陣営として勝利確定させてくれるベルフェガミリア様の存在は得難いんですが。

『幸い顔見知りゆえ、おぬしのことはよく知っておる。悪いがおぬしの弱点を徹底的に突いた造りになっておるゆえ恨むでないぞ?』

「えー、僕に弱点ー? そんなのあったかなー?」

こういうことガチで言うベルフェガミリア様。

何やかんや言って強者の威厳はちゃんとある。

『前口上はこれくらいとしておくかの、ではこのノーライフキングの先生が作り上げた対ベルフェガミリア専用ダンジョン、とくとご賞味あれ』

ノーライフキングの先生が脇によけ、我々の目の前に迫る扉。

「ここから先に、先生が拵えた罠が満載に用意されてるってわけだな!!」

「先生に教えを受けた者として受けて立たねば……!」

エーシュマとレヴィアーサくんもやる気たっぷり。

しかし……、この先にはベルフェガミリア様を狙い撃ちにした罠が待ち構えているという。

一体どんなものなのだろう?

そうして開けようとした扉に、こんな言葉が書きつけてあった。

『この部屋の中で「面倒くさい」と言ってはいけない』

* * *

「ベルフェガミリア様あああああああッ!?」

ベルフェガミリア様が、あっという間に魔法拘束されて連れていかれたあああああッ!?

エリア内でタブーを言ってしまうと、ああいう目に合うのか!?

「どうして言っちゃうんですか!?『言っちゃダメ』って書いてあったじゃないですか! なのに何で言っちゃうんですかあああああッ!?」

「いやあ、『ゴメン』『どう?』『草いいよね』を続けて言うと『面倒くさい』と認識されるとは思わなくてさあ」

「どうしてその三語連続で言った!?」

どういう状況ならその単語たちが連続で出てくる!?

とりわけ『草いいよね』ってどういう意図の言葉!? 何に対する感想なの!?

「そんなわけで先生の策にまんまとハマった僕は脱落します。あとはよろしく~」

「あああああああッ!?」

こうしてベルフェガミリア様、タブーを言ってしまったせいで罰則呪詛を掛けられ、あえなく部屋から叩き出されてしまった。

我がチームの最初の脱落者だった。