軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

529 実況中継

さあ、面白くなってまいりました!

肉弾魔王妃グラシャラさんvs養豚を装った暴走猪ピンクトントン。

世紀の一戦となりました。

実況は私、俺にてお送りさせていただきます。

「そして実況には魔王ゼダンさんをお迎えしております。さあ、どうでしょう?」

「どうッ!? ……ん、まあそうだなぁ」

唐突に解説役に任じられても動じないさすがの魔王さん。

グラシャラさんから任されたマリネちゃん(愛娘)に顔をペタペタ触られまくっている。

「グラシャラが我が妃に迎えられる前、四天王の一人として最高の武闘派であったことは以前どこかで話したと思う」

はい。

それはもうけっこう前に。

「あやつは元々兵卒上がりだから、なおさら率先して前に出ることを意識していてな。戦闘中はほぼいつも最前線にいた。ヤツが出れば敵戦線はたちまち崩壊し、にもかかわらずヤツ自身は必ず生還する。その無双の破壊力をもって四天王であることを周囲に認めさせてきた女だ」

「なるほど」

「わぶッ!? こらマリネ、パパの口の中に手を入れてはいけない!? 喋ってる途中なんだから噛んだりするかもだろ!?」

そして解説中も魔王さんが娘さんに手こずっている。

天下無双のグラシャラさんから生まれただけに活発そうな娘さんだ。

対して俺が抱き上げているジュニアは大人しいもんです。

「そのグラシャラが現役時代の印象深い話を思い出した。敵である人族軍に唯一、彼女に対抗しうる猛者がいたとか」

「もっさー?」

「相手は勇者でも将軍でもなく、名もない傭兵であったという。そして獣人でもあった。かの国では獣人は差別の対象だと聞いていたから、それゆえ高い地位には就けなんだのだろう」

だから傭兵に甘んじるしかなかった?

「グラシャラと互角に戦えるというのに、実力に相応しい地位を与えられないというのは、かの国の病巣の一つであろうな。戦場で二人がぶつかり合えば地は揺れ天は鳴き、他の兵は誰も手出しできなかったという」

その戦いが、今目の前で展開されております。

ボディスラムで相手を叩きつけて、その衝撃で地が揺れています。

戦いの興奮で雄たけびが上がり、天に響き渡っております。

つまり魔王さんの解説誇張じゃない。

「そのような精鋭が冒険者になっていたとは……。おそらく戦争終結で傭兵として食い詰め、職業替えしたのであろうが……。むしろ魔王軍にスカウトしたい逸材だな」

魔王さんのコメントに、周囲の観客席から感嘆のため息が漏れた。

『敵だった人族側の兵を登用するなんて……!?』的な。

そう、我々の実況解説はダンジョン競争のために集った人魔両族の観客にも聞こえていた。

ああ、そういや急遽始まった世紀の激戦ですっかりかすんじゃったけど……。

この戦い四天王とS級冒険者のプライドをかけた集団戦だった!

「人族の……、なんだっけ? ピンクトンカツさんはあの調子ではダンジョン探索無理そうですねえ?」

「揚げてはいかんぞ聖者殿」

魔王さんからの的確なツッコミ。

その間もグラシャラさんとピンクトントンさんは互いにラリアットをぶつけあって互いに吹っ飛ばされ合っていた。

「しかし数的にはちょうどいいんじゃないですかね? 元々参加者の人数がけっこう不均等でしたし」

四天王は四人。

S級冒険者は五人。

そして六魔女は六人と、この分じゃ一番人数の少ない四天王が不利になる。

「しかしピンクトントンさんが抜けてS級冒険者も四人となり、四天王と数の上で互角になりました。六魔女は三人になって却って少なくなったけど……!」

『数のハンデぐらい押しのけてやるわー!!』とプラティが勇ましい。

いい加減スタートしてくれないと今日中に終わらないのでマキで進めていこう。

城主アードヘッグさんももう新・龍帝城の奥でスタンバっててくれてることだろうし、長く待たせてはいけない。

「では残ったメンバーで突入していただきまーす。時間が押してるからサクサク進んでくださいねー」

「そっちでゴタゴタしていたくせに!?」

はーい、抗議は受け付けませーん。

ホラ正門が開いた。

さっさと入れ入れ! 城内に突入しろ!

釈然としない表情の競争参加者たちだったが、それでも自分から望んでいた戦いなので次々と門をくぐり……。

全員が侵入したことを確認したように門はひとりでに閉った。

「さあ、こうしてなんかグダグダ感とともに始まりました人魔対抗、新・龍帝城攻略競争合戦~ポロリもあるよ~ですが、どのような展開を予想しますか魔王さん?」

「このノリまだ続くのかッ?」

いや別に続けなくていいですけど。

何か前からの流れって引きずっちゃいますよね。

「まあ、魔王としての立場からでは我が配下たちを応援しなければなるまい。……が、我が陣営にベルフェガミリアがいる時点で勝ったも同じなのではないか?」

「そうですねえ」

現四天王の頂点にいて、地上最強の人類の呼び名をほしいままにする怠け魔ベルフェガミリアさん。

その戦闘力は世界二大災厄に匹敵し、今回参加する面子の中でも頭三千は飛びぬけている。

チョロQの競争にF1カーで参加するような暴虐ぶり。

これで負けろと言う方が無理だろう。

「しかしベルフェガミリアには怠け癖という大変なネックがあるからな」

「あの人のやる気の変動が完全に勝敗を左右するわけですか……?」

そんな言い方をするとつまんない戦いになりそうだなあ。

「それはそうと聖者殿?」

「何です?」

「参加者たちはダンジョンに入ってしまったが、ここで我々はどうしていたらいいのだ? 参加者たちが出てくるのをただ待つだけか?」

魔王さんいいところに気が付きました。

新・龍帝城の正門前には大きな観客スタンドが組まれ、ありがたいことに満員御礼。

しかし外からダンジョンの中を窺い知ることはできない。

このままでは外部の観客は、ただダンジョン内の勝負が終わるのを漫然と待つことしかできないだろう。

まあ、それでも正門前ではグラシャラさんとピンクトントンさんのガチンコデスマッチ六十時間一本勝負が行われているから、そこに熱狂しさえすれば間延びすることなんて絶対にありえないけれど。

「しかしご安心ください! 観客の皆さんも一緒に勝負を楽しめるよう工夫は既にできています!!」

「おお」

一度侵入者を迎え入れて閉じたからには、もう開く必要のない正門。

その前に、大きな白い板のようなモノが現れる。

半端な大きさじゃない。

テニスコートもかくやと言えるほどに面積の広い四角い板。

「なんだ、あの白い壁は!?」

魔王さんもビックリするほど巨大な壁面。

しかし驚くのはこれからだ!

俺の合図と共に白板はすぐさま色を変えて……。

カラフルになった。

というより映像を映し出した!

「これはッ!?」

「この日の観戦のために、急ピッチで作り上げた魔法映像装置です! 城内の魔法カメラから伝達される映像をリアルタイムで映し出します!」

これを使用することで、城内を参加者たちがどのように右往左往していくかをつぶさに観察可能というわけだ!

どうだい! このファンタジー異世界においては画期的すぎるシロモノは!?

新・龍帝城の建設中に、俺のアイデアと先生やヴィールの魔法で融合完成したオーバーテクノロジーだ!

驚いてくれたかね!?

観客たちは『おおおおおおおッ!?』と期待通りの歓声を上げるが……。

……タイミング的に、グラシャラさんのココナッツクラッシュが決まったことに対する歓声じゃないよね?

「さあ、映し出されているのは城内を走る四天王、S級冒険者、そしてプラティたちの面々だ!」

「スタート直後だけあって、まだ混然としているな」

まさにマラソンのスタート時と同じ感じ。

ここから各自の能力と判断によって、どういった差がつくかわからない。

そして差が現れるタイミングは案外と早く来た。

「分かれ道だ!?」

ダンジョン内を進む彼ら。

その通路は最初こそ真っ直ぐな一本道であったが、早くも道が分かれて、どっちに進むか勘に頼らなければならない。

「十字路か……!?」

ということは、来た道を除いた三方向が選択肢になるわけだ。

まっすぐ前へ進むか。

右か左か。

そして三つの選択肢は、ちょうどダンジョンに挑戦する三勢力と一致。

まず、S級冒険者チームが右の道に入った。

続いて四天王チームが対決するかのように左側の道へ。

そして最後にプラティ率いる六魔女チームが我が道を進むとばかりの真ん中の通路へ入っていった。

こうしてダンジョン内で、綺麗に分かれた三チーム。

果たして無事ゴールへとたどり着けるのは、どいつらだ!?