軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

423 悩むパッファ

プラティの作戦は惜しくも状況突破にまでは至らなかった。

「ぐぬぬぬぬ……!? アタシの考えた作戦が……!!」

プラティはたいそう悔しそうだったが、しかし最後の一歩まで踏み込めただけでもヨシとしようじゃないか。

何しろ最後の試練さえクリアすれば挙式を許してくれると宣言があったからな。

シーラさんだって現王妃。

一度口に出したことを翻す卑劣な真似はしないだろうし、娘息子に嫌われたくもないだろう。

だから今度こそこれが最終ステージ。

この問題をクリアして、今度こそ結婚するのだアロワナ王子とパッファ!

と思ったが……!

* * *

「ぐごごごごごごご……!」

パッファが女性にあるまじき凄まじい唸り声をあげていた。

原因は、シーラ王妃から与えられた最終試練のため。

それさえクリアできれば結婚できるというのだから勇んで取り組みはしたものの、行き詰ったらしい。

思うように過程が進まず、苛立ちで唸りもしようということだった。

「何だよ王妃のぬか漬けって……!? 一体何なんだよ!?」

王妃のぬか漬け。

それこそがシーラ王妃がパッファに出題した最後の試練であった。

美味しいぬか漬けが、良妻の証明であるならば。

パッファがアロワナ王子と結婚して王妃となるにふさわしいことを、ぬか漬けで証明して見せろと。

パッファが王妃になるにふさわしいと思わせるぬか漬けを作製して来いという試練だった。

…………無茶苦茶言ってない?

王妃のぬか漬けってなんだよ、そもそもが。

そもそもお姫様王女様はみずから漬け物なんてお作り遊ばさないだろう。

いわば王侯貴族からもっとも遠くにあり、それでどうやって王妃を表現すんだよと。

そんな感じでパッファは行き詰っていた。

「ぬののののの! わからない……! どうすればぬか漬けを王妃らしくできるんだよおおおッ!?」

という感じで何のアイデアも浮かばないらしい。

ただ苛立ちを振りまくかのように身悶えしている。

もう一方の当事者であるアロワナ王子も、そんなフィアンセの痴態を一歩引いたところから眺めつつ……。

「すまぬパッファ……! 私と結婚するためにこんな苦労を掛けてしまって……!」

と自責しつつ感涙していた。

この人、シーラ王妃と直接対決してた時どこにいたんだろうな?

まあ嫁と姑が対立した場合、どっちの敵にもなりたくないのはわかるが……。

「安心しろパッファ! 私も一緒に試練に挑もう! いずれ夫婦になる私たちが協力すれば、かつてガイザードラゴンを倒した時のようにきっと乗り越えられるはずだ!」

なんか凄いものと同列に置かれた試練。

「ありがとう旦那様! じゃあ教えて、どんなぬか漬けが王妃のぬか漬けにふさわしいの!?」

「まったくわからん!」

「引っ込んでて!」

結婚する前から使えない旦那扱いされているアロワナ王子。

実際頼りにならないからしょうがない。

悲しい。

「王妃……、ぬか漬け……、まったく繋がらねえ。どうしたらぬか漬けが王妃っぽくなるんだよ? 漬けるものを高級にするか?」

それがもっとも率直な方法といえよう。

高級品というだけでロイヤル感は出てくるからな。

なんか間違っている気がしないでもないけど。

「いやダメだ! 単に高級感を出したところで、それでいえるのはせいぜい『金持ちのぬか漬け』だッ! 王妃どころか王族らしさすら表現できない!」

他にも問題ある気がするけどなあ。

とにかくただ高級品にしただけでは『王妃のぬか漬け』にはならない。

シーラさんを満足させることはできないだろう。

「わかっている、わかっているんだ……! お義母さんは、この試練を通じて『王妃の何たるか』をアタイに伝えようとしている……!」

既に『お義母さん』呼びになっておる?

「結婚後、アタイが王妃として旦那様を支えられるよう、その心構えを叩き込もうとしているんだ! アタイならきっと旦那様を足元から支えるいい王妃になれると期待して!」

そうかなあ?

ただ息子を奪っていく若い女にできる限りの嫌がらせをしようという意図しか感じられぬのだが?

しかしそれで思い悩まされるパッファも堪ったものではなかろう。

俺からも助け船を出してやるか。

「安心しろパッファ! キミのために助っ人を呼んであるぞ!」

「何!? 助っ人!?」

俺の要請に応じて駆けつけてくれた……!

魔王妃のアスタレスさん&グラシャラさんだ!

「おおッ!? 魔王妃!?」

パッファの目に光が宿る。

「魔王妃といえば魔王の嫁! 魔国の王妃! なるほどそうか!?」

悟ったなパッファ?

そう、現役で王妃を務める二人なら、王の妃の何たるかを実感していることだろう。

彼女らから話を聞けば王妃の極意を感得し、ぬか漬けに取り入れられるのではないか!?

「すげぇぜ聖者! こんな短期間によくこんな打開策を思いついたな! さすが聖者!」

「はっはっは、そう俺は凄いのだよ」

こんな短期間に呼んですぐ来てくれたアスタレスさんたちも凄いがな。

大丈夫? 魔王妃って暇じゃないよね?

「聖者様に呼ばれたなら、どんな予定もキャンセルして駆けつけるべきでしょう」

「聖者には世話になりっぱなしだからな! こうしてたまにある恩返しの機会をしっかり掴まないとよ!」

筋骨隆々の第二王妃グラシャラさん。

握り拳を作って意気込みを語る。

……二人共元は魔王軍四天王のメンバーだったのだから、王妃というよりは軍人オーラが迸る。

彼女らに頼ってよかったのかなと若干不安になってきた。

「それに、パッファ殿もゆくゆく人魚王妃となられれば、私たちと同格。隣国の妃同士、今から助け合わねばな」

「王妃の何たるかを聞きたいんだろう!? 任せな! 先輩の私たちが、しっかりと伝授してやるぜ!」

「王妃とは……。それは一つの言葉に集約することができる」

「奇遇だな! 私にもあるぜ、王妃として欠くことのできない真理の一言が!」

「ではその一言を同時に発表することにしよう。それがパッファ殿の参考になれば幸いだ」

「心得たぜ! 言うぜ! せーの……!」

王妃に必要な資質とは……?

「冷酷!」

「筋肉!!」

……。

「「あぁ?」」

そしてバトルが始まった。

「筋肉? なんだ筋肉って!? 発想が完全にパワータイプのそれじゃないか! 四天王の肉弾戦担当だった時から変わってないだろ、お前!」

「そういうお前だって一緒じゃねえか! 冷酷って! 王妃が持っちゃ一番ダメだろ! 慈愛とおおらかさで接していけよ王妃は!!」

何故だろう魔国の将来がとても心配になってきた。

王妃の参考とするために現役二人を呼んだのに、まったく参考にならない。

これではパッファの悩みが解決できない!

「筋肉……!? そうか肉をぬか漬けにする方法もあるな? そして冷酷。急速瞬間冷凍で違った味わいのぬか漬けもできるかもしれない。そもそも冷却は『凍寒の魔女』であるアタイの十八番じゃないかッ!」

参考にしとるッ!?

ダメだパッファは頭が煮詰まりすぎて正常な判断ができなくなっている!?

これでは益々迷走してしまう!

肝心の現役魔王妃共は内紛して役に立たないし! 誰か他にパッファの助けになれるキャラはいないのか!?

「そこで私が参りました」

天使ホルコスフォンが来た。

「『王妃のぬか漬け』にふさわしい食材を提供します。検討を請願いたします」

「納豆でしょどうせ?」

登場するだけでオチが読めてしまう稀有なキャラクターになったな、ホルコスフォンは。

「納豆です」

「だからわかってるよ!」

納豆をぬか漬けにするの!?

ありえないよ! と思ってありえるのが納豆の真の恐ろしさ!

絶対ないと思わせておいて、やってみたら美味かったというケースが多すぎる!

「でもダメ! 何でも納豆でオチつけようとする思考ルーチンはそろそろ改めた方がいいよ!」

そもそも今回のお題『王妃のぬか漬け』に納豆何もかからない!?

「ですがパッファ様は前向きに検討中のご様子」

「えッ?」

振り向くとパッファが納豆と睨めっこしながらブツブツ呟いていた。

「納豆かぁ……、直接ぬか床にぶち込むのはリスキーだなあ。そうだ布にでも包むか? バティのところから金剛絹を貰ってきて……」

「突き進まないでええええッ!」

パッファの迷走がますます酷くなっていた。

このままで本当に、シーラさんが出した試練をクリアできるのか!?