軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

384 出会い触れあい

ボクはディアブロっていうんだい。

十歳だよ。

少年の初々しい感性と多感さをもって日々を煌めく宝石のように感じ取っているんだい。

毎日が冒険。

常に新しい場所に初めて訪れる。

いつかこの日々が流れ去って遠い思い出になるとしても、その思い出を肥やしに心の豊かな大人になれるよう今を精一杯生きるんだい。

そんなボクは、魔都に住む都会っ子だよ。流行に敏感なんだ。

魔都生まれヒップホップ育ちだよ。

だからホットなトレンド情報はすぐボクの耳に入ってくるんだ。

そんなボクを震撼させる今日のトピックスは……!?

博覧会……だと……!?

先代のバアル様がたくさんやってたという無駄な遊びだよね?

だから無理やり魔王を辞めさせられたって、ボク大人たちから聞いて知ってるよ!

ゼダン様が魔王になってからは一切やってないんだよね無駄だから!

それが今になって開催されるという。

界隈のティーンな友だちの間では噂で持ちきりさ。

ボクだって興味ある。すっごく興味あるよ?

何せゼダン様が魔王に即位されたのってボクの物心つく前だからね。

要するにそれ以前に開催されていた博覧会にも訪れたことがないわけだ。

つまり、これから開催される博覧会がボクの人生初の博覧会。

これは是非とも押さえておかないといけないよね!?

だからボクはパパとママにお願いしてみたよ。

今度の休みに博覧会に連れてってってさ!

え!? ダメ!?

遠くて危ないから!?

疲れるしお金がもったいない!?

そんな消極的な姿勢でどうするんだよパパママ!? それが十歳児を擁する夫婦の有り様ですか!?

人生守りに入っちゃダメだよ!? 退けば老いるよ臆せば死ぬよ!?

行こうよ行こうよ行こうよッ!!

ねーねーねーねーッ!

やだやだやだやだやだやだやだやだ!!

行くのッ!! いーくーのおおおおおおおおおおおおおッッ!!

おごおおおおおおおおッ!?

あばばばばばばばばばばばばばばばあッ!?

あへえええええあああああああああッ!?

くひいいいいんッ! っほおおおおおおおおおッ!!

え!?

行くの!? 行っていいの!?

やったああッ!!

見たか、これがボクの交渉術さ!!

次のパパのお休みの日には、家族みんなで博覧会へレッツらゴーだ!

* * *

そして当日!

博覧会へ行くよ!

お弁当よし! 水筒よし! 日よけの帽子も被ったよ!!

パパとママも左右に控え、あとは進むのみ会場へ!?

……へ!?

会場へ行けない!?

博覧会の会場は、魔都の外にあって行くのはなかなか大変なんだって!

運営協力者であるパンデモニウム商会が会場直通の馬車を無料で出してくれてるんだけど、利用者があまりにも多くて順番が来るのを待ってると日が暮れちゃうんだってさ!

シット! なんてこった!

じゃあボクたちは博覧会に行けないの!?

「……いや、大丈夫だ」

その時パパが言ったさ。

「馬車で行けないなら歩いていけばいいのさ。御者に聞いたんだが、会場は歩いても充分たどり着ける距離にあるらしい。馬車を出しているのはあくまで安全のためだそうだ」

そうなのパパ!?

じゃあ時間かけて馬車を待つよりも徒歩の方が断然早いってことだね!

「でもアナタ。街の外にはモンスターが出るんでしょう? 私怖いわ」

とママが言う。

そうだよね。外にはモンスターがウヨウヨしてるんだって近所のお姉ちゃんも言ってたよ。

遭遇したら命はないんだよね!?

商会が馬車を出しているのもモンスターを警戒してのことだろうし、ボクもちょっと怖いな……!

「安心なさい! パパはもう退役したけど魔王軍にいたことがあるんだ! 多少のモンスターなら出てきてもママとマイサンを守ってあげるさ!」

本当!?

パパ凄いや! そんなの初めて聞いたよ!

じゃあモンスターが現れたとして全部パパが指先一つでダウンさせるから、安心して野を越え山を行けるね!

気分はピクニックだ!

* * *

そして辿り着いたよ博覧会に!

ホントに歩くとすぐだったなあ!

でも凄いよパパママ!

見て!

博覧会場ってまるで一つの街のようだよ!

タウンだよ!

建物がたくさん並んでいるし、床も舗装されて真っ平らだよ!

ボクらの住んでいる界隈より整ってるんじゃないかなあ!?

ボク博覧会生まれて初めてだけど、こんなに凄いお祭りなんだね!?

「いや……、博覧会ってこんなに凄かったか……?」

「バアル様のご治世に何度も開催されたけど。どれもこれよりこじんまりしていたような……?」

あれえッ!?

じゃあ今やっている博覧会の方が、前のよりずっと凄いんだ!?

ゼダン様の時代に移ったからかなあ!?

やっぱりバアル様よりゼダン様の方が凄い魔王なんだね!? パパもそう言ってたし!

「しいいいいいいいッ!?」

「それは表で言っちゃダメなのよ!?」

パパとママから叱られちゃったよ!

メンゴメンゴ!

それはさておき、到着したんだから早速見て回ろうよ!

色んな展示品を置いてある建物……、パビリオンって言うんだって!

ボクあのパビリオンに行ってみたいな!

『豆館』ってヤツ!!

「え? パパあっちの特設リングで開催されるっていう『オークボvsゴブ吉エキシビションマッチ』っていうの見てみたいんだけど……?」

えー!? 『豆館』の方が絶対楽しいよ!

間違いないってボクのゴーストがそう囁いてるんだから!

「仕方ないなあ、じゃあまずは『豆館』とやらに行ってみるか……?」

やったあ! さすがパパ大好きさ!

ママも一緒に家族一緒に『豆館』に行ってみると……!

* * *

「おーっほっほっほッ!! ようこそ私の支配する『豆館』へ! ここはいわば私の王国! 私こそがここの支配者レタスレートなのよ!!」

わあッ!? ママ!

変なおねーさんがいるよ!

『豆館』にいるお姉さんは、ちょっと近づきがたいアレなおねーさんだよ!!

ママから『シッ、見ちゃいけません!』って言われるよ!

「この館に来たからには、アナタたちは豆の素晴らしさを思い知って帰宅することになるわ。大豆に小豆にエンドウ豆! すべてをたらふく食っていくがいいわ!!」

わあ!

館内では色んな種類の豆が山積みにされてるよ!

あれを好きなだけ掬って食べていいってさ!!

「よーし! じゃあパパ山盛り食べちゃおうかなー!」

凄いやパパ!

ボクはまだ成長期で胃が小さいから一粒ずつ食べるよ!

そしてあの頭のイカれたおねーさんはまだ熱弁しているよ!!

「豆の奥深さはそれだけじゃないわ! 豆を加工することで生まれる素晴らしい食品もあるのよ! たとえば、この豆乳!」

豆乳?

まるでミルクみたいに白いよ! これは一体どんな飲み物なの!?

「豆乳をただの飲み物と侮るべからず……! これにはね、ある特別な効能があるのよ!」

特別な効能?

「おっぱいが大きくなる!」

ママあああああーーーーッ!?

ママがいきなり豆乳を一気飲みしだしたよ!?

まだなの!? 一児の母になって今なおまだボリュームが欲しいの!?

いくつになっても女を捨てない素敵だよママ!!

そしてママが三杯目の豆乳を飲み干したあと……!

パパは納豆とかいうものまで食べだしたよ!

* * *

『豆館』だけでも充分すぎるほど満喫して、ボクらは他のパビリオンも回ったよ。

『革館』ではド迫力のモンスターの剥製に驚いたし、『ガラス館』は総ガラス製の透明な建物があったよ。

そして何よりエルフのお姉さんたちが綺麗だったよ!

人魚さんたちのいる『魔法薬館』ではママがまた美容にいいお薬に興味津々だったし。

パパも結局『オークボvsゴブ吉エキシビションマッチ』を観戦して熱狂してたよ。

結局大人の方が楽しみましたってパターンだね!

でも一日じゃとても全部は見て回れないから、また行こうねってなったよ!

楽しい博覧会!

魔都の今年のトレンドはこれで決まりだね!