軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

385 列車を作ろう

俺です。

農場博覧会がついに開催されたが……。

評判は上々のようだ。

何より今回の開催意図である魔都の職人さんたちにはきっちり届いたらしい。

パンデモニウム商会からの招待を受け、初日から来場してくれた彼らだが、何故か連日通ってくるようになった。

しかも日を増すたびに人数が増えていっている気がする。

当人たちに聞くところ、ギルドに所属する職人全員が見学希望を出してきたのだがさすがにいっぺんには迎えられない。

だから交代制で、極められた数だけ見学する。

という決まりにしたはずだった。

しかし一度見学した職人が『まだ学ぶことがある!』と退場していかないため結局人が減ることなく、各パビリオンはパンク状態なんだそうな。

職人さんだけでなく一般の方々も噂を聞きつけご来場。

それも予想を遥かに上回るペースで、博覧会場は日を追うごとにギュウギュウ詰めのパンク状態となっていた。

「我々の予想をも上回ってきました……!!」

博覧会五日目を終えて、パンデモニウム商会のシャクスさんが汗を拭き拭き報告に来た。

「かなり強気な来場予想で対応準備していたはずなんですが……、それすら超えて各所に軋みが出始めています。スタッフを大幅に増やした方がよさそうですね」

俺は対応のところあまりチェックしてないのでわからないが……。

「時に聖者様、博覧会の開催期間ですが……!?」

「最初の約束では一ヶ月程度ということになっていましたね」

俺自身、博覧会というのをどれくらいやるのかよく知らんが。なのでシャクスさんの提案丸飲みで一ヶ月と決めたのであった。

「延長できませんかッ!? このペースではどう考えてもすべての来場者を満足させられません! できれば三ヶ月……! いや半年ぐらい!?」

すっごい爆延長の提案来た。

しかし我々も農場での暮らしがあるし、あまり長いこと博覧会に縛られるのもなあ。

ちなみに俺たち農場の住人たちが博覧会場と行き来する手段は当然ながら転移魔法。

既に会場内の秘密のスペースに転移ポイントを作製し、そこへ瞬間移動するようになっていた。

だから閉会時間になったらまた転移魔法で農場へ戻って寝るという通勤生活をしていられるのだが、それを一ヶ月どころか半年も続けろと言うのは……!

「冬の終わりにはオークボ城もあるし、春になったら農業も再開しますからね。やっぱり冬の間だけしかできませんよ」

「わ……、わかりました! それではせめて二ヶ月への延長を……! どうかお願いいたします……!」

シャクスさんが土下座で頼んでくるため俺も断りづらく『はい』と答えるしかなかった。

「まことに勝手ながら……、もう一つ相談したいことがあるのですが……!」

シャクスさん、さらにくる。

「交通手段のことなのです」

博覧会の開催場は、ご存知の通り魔都からちょっと離れた平地にある。

充分な設営スペースを取るための苦肉の策であったが、それが今になって問題になってきているようだ。

「当初は、来場者を馬車で送り迎えすることで問題を解決するつもりでした。しかし予想を遥かに超える来場者数のためにままならなくなってきました……!」

シャクスさんは、魔都と博覧会場を往復する馬車を無料で走らせたというのだから相当な太っ腹だが、それでも間に合わないということか。

「こうなっては、またしても聖者様の知恵にお縋りするしかないと思い……。どうかお願いいたします……!!」

「ふーむ……」

魔都~博覧会場の間を結ぶ交通問題ってことか?

こんなことならやっぱり魔都の中に設営しておけばよかったなあとも思うが、来場者数超過が問題であれば、確実に狭くなる魔都内での設営は余計問題になっていたか……。

「方法なあ……!?」

つまり、魔都からちょっと離れた博覧会場に多くの来場者を、スピーディかつ安全に運べってことだろう?

そんな方法に心当たりがあるとしたら……。

「……電車?」

久々に前の世界の光景を思い出した。

最強の公共交通機関、列車。

あれを異世界に再現させたら交通事情など一気に解決だろう。

「再現させられたらの話だが……!?」

無理かなあ。

完成までにクリアしなきゃいけない問題が多すぎる。

でも、列車みたいに大きな箱にたくさん人を乗せる形式は採用できないだろうか?

あとはそれをどうにか動かしさえすれば問題ないしな。

試しでオークボたちに作ってもらうか……。

* * *

そして言いつけてより数時間後。

早速完成した。

異世界客車(未完成)(試作品)(車輪なし)(動力なし)。

これどっちかって言うとただのコンテナじゃねーの?

本当に人を乗せるための箱で、他に何の仕掛けもない。

これをどういう方式で動かしていこうかという実験のための道具だが……。

……。

本当最近オークボたちの建設技術が神がかってきたな!?

よくこんなの数時間で組み立てられたもんだ。

材質は木製ながら、大きさは前の世界の客車一両に完全に匹敵する。

内部は椅子とかなく、その辺も造りは簡素だが、だからってこれを数時間で作れるか……。

「まあ出来てしまったものはしょうがない……!」

現実を受け入れよう。

「これに人を乗せて動かすいいアイデアはあります?」

「ええッ!? そうですなあ、やはり魔法ですか?」

魔法を得意とする魔族らしい回答だった。

「しかし……、ここまでのものを動かすとなる念動魔法? でも相当な魔力量が必要でしょうし、それこそ四天王クラスでなければ不可能でしょう。まさか人運びのために四天王に動員をかけるわけにも……!」

俺が頼めばやってくれそうだけど……。

でも四天王の人たちも立場があるだろうしな。無茶振りはやめとくか。

「我が君」

そこでオークボが急に手を挙げた。

この即席車両を作ってくれた子だから、この場に居合わせているのは当然だが、どうした?

「私に案があるのですが……、こやつに引かせてみてはどうでしょう」

こやつ?

オークボが示したのは、岩石そのものが四本足で歩いているのかと思うような獣。

それは岩石のように見えるがれっきとした馬だった。

オークボの愛馬ギガントロック号。

ホムンクルス馬としてなんか凄いパワー型のモンスターと馬の遺伝子とを掛け合わされて作られたこの馬は、オークボの巨体を背に乗せてもさっそうと駆け回ることができる。

その姿はまさに重戦車。

ウチに住むホムンクルス馬の中でもパワー自慢。

だからと言って……?

「本当に車両一両動かせるの? 大丈夫、無理させてない!?」

「ものは試し、やらせてみましょう」

とその辺のロープで客車とギガントロック号を結び付けた。

まだ客車には車輪すらついていないが。力自慢の巨馬は軽々と……。

「おおー! 行ったーッ!?」

引っ張りおった。

地面に大きく引きずった跡がついたが……。

「あとで車輪を取り付ければ充分行けるな! 凄いなギガントロック号まさかkぉこまで力持ちだったとは!?」

有能で働き者で、飼い主によく似る。

「じゃあ、早速この客車に車輪を取り付けよう! マナメタルを用意して……!」

「お待ちください」

それを止めたのはシャクスさんだった。

「たってのお願いでございます。マナメタルの使用はお控えください」

「はい?」

「替わりとなる最高級の鉄鋼をこちらで用意させていただきます。ですから何卒マナメタルの使用はお控えください。市場が大混乱に陥りかねませんので!!」

「は、はあ……!?」

シャクスさんのあまりの迫力に押し切られる形で頷いてしまった俺。

しかしまあ車両を馬に引かせるとなれば、これ列車じゃなくて馬車じゃないか。

いわゆる馬列車?

異世界電車実現への道のりは、まだまだ長くなりそうだった。