軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

253 真・船完成

俺ですが。

ウチの農場にドワーフが出入りするようになって数週間。

作業は、最初に来てくれたドワーフさん一人だけではどうしようもないので、彼が棟梁となって何十人もの応援を指揮して行われる。

作業期間中の彼らの食事宿泊はこっち持ち。

わざわざドワーフの国から通勤してもらうのも大変なので作業中はこちらに住み込んでもらうことにした。

オークボたちが簡易的に宿泊所を建設し、日々の食事を運んで働いてもらう。

ドワーフたちは農場での出来事に驚き通しだった。

まず、オークやゴブリンたちが持っている斧や鎌などの農具。

すべてマナメタル製であることに驚いていた。

次に俺が作る料理は、……その美味さに驚いてくださってたのは光栄であるが、それ以上に台所を見て驚かれた。

フライパンやなべなどの調理器具が全部マナメタル製であるかららしい。

「なんでこんなふんだんにマナメタルがあああああああああッッ!?」

「溢れかえってるううううッッ!? 溢れかえりすぎて日常使いされてるうううううううううッッ!?」

「なんで農具や調理器具にいいいいッッ!? もっとあるでしょう他に用途が!?」

「武器とか、防具とかああああッッ!?」

親方だけでなく、他のドワーフまで衝撃で昇天しかけていた。

あんまり一度に死なないでください、さすがの先生でも手が回らなくなりますから。

その他、金剛カイコから作られた金剛絹でも驚き、オークボたちがダンジョンから持ち帰ってくるモンスター素材で驚き、ポーエルが作るガラス細工の透明さに驚いていた。

その度に先生が救急出動して大変だった。

そうしてピンチと苦難の果てに(船造り自体には全然関わらないピンチや苦難だった気がするが)、ついにドワーフたちの工事が完成。

俺の船は、一体どのように生まれ変わったのか!?

* * *

ドワーフたちが口々に

「見てください! これが!!」

「我らドワーフの技術力を結集して仕上げました!」

「究極の機能美と造形美を併せ持った神の船!」

「名付けてヘルキルケ号です!!」

勝手に名前つけられてるぅ~……。

まあ、たしかに俺は名前つけなかったけど。

やっぱいるもんなんですかねえ船名。

「まずは外観をご覧ください!」

「クライアントからのご注文通り、我らの全力をもって先鋭的なデザインに仕上げさせていただきました」

「流行におもねることもなかったので、時間が経ってズレた印象が出ることもありません! ケバケバしすぎず地味すぎず、重厚な印象となることを心がけました!」

「まさに王者が乗るに相応しい船!」

いや、俺は王者じゃないけれど。

改装された船は、なるほどドワーフたちの腕を振るった跡がありありと見受けられて、まるで別物のようだった。

どのように例えればいいだろう?

俺が完成させたばかりの船を仮面ラ○ダーとしたら。

ドワーフたちが改造した現在の船は話が進んで強化フォームになった状態?

わかりづらいか。

とにかく地味なのが派手になったと考えて貰えればいい。

しかもただ派手になったのではなく、上品で趣のある派手さだ。

これはドワーフ当人らの主張通り、飾りつけにも細心の注意が払われているゆえだろう。

ドワーフによる解説が続く。

「まず船首を御覧じろ! そこにはお馴染み船首像を取りつけてみましたぞ!」

おお。

船の一番真ん前に着いてる彫像か。

俺が思い浮かべた通りの美しい女神像が取りつけてある。

まるで船の運航を導くかのように。

「ん? でもあの像、どこか見覚えがあるような……?」

「さすがよく気付かれたな! 何を隠そうあの船首像、奥方をモデルに作らせていただいた!」

奥方?

つまりプラティか!?

プラティをモデルにした女神像か!?

「ええぇ~? なんかモデルになってくれって言われてぇ、引き受けはしたけどぉ、まさかあんな目立つところに飾られるなんてぇ」

プラティもまんざらじゃなさそうで体をクネクネさせていた。

まあ、プラティは人魚の王女だし、海難除けの呪いとしても普通に効果がありそうだな。

「船首船尾には特に重厚な彫刻を施し、一級品であることをアピールしたぞ! さらに船体側面には、この農場の紋章を刻ませてもらった!!」

「農場の紋章?」

そんなのあったっけ?

「我々でデザインした!!」

「ああ……」

なんかこう、色々なことが俺の知らない間に決まっていく。

「本当はマストに描くのが通例なんだけどな紋章! でもこの船にはマストがないから!!」

「凄いですよねーッ!! マストがないのに進む船! みずから動力を発生させる船なんてサイコーです!」

「オレらドワーフには魔法の素養がないから、こういう技術にはどうしても魔族に負けるぜ! でも今回、魔法動力船に直に触れて幸せっすわー!!」

「これから先、こんないい仕事はもうないッスよ!!」

「神です! この船を作った人は造形神ヘパイストスか何かです!!」

いやぁー。

この船造ったの俺なんですけど。

そこまで高く評価してくださると照れますなあ。

「次は、内装の出来栄えを説明させていただこう。ささ、遠慮せず中に」

だからこの船、俺が作ったんだけど?

なんでドワーフさんたちの方が、客を招く家主みたいになってるの?

「まず、用途の定まらない船内空きスペースを有効活用したいという要望を取り入れ、我らドワーフのノウハウをフル活用して理想の船旅計画を提案させてもらった」

「はいはい」

「まず、船底では駆動機関の騒音や熱で快適性が損なわれるので、快適な居住区画として船楼を築かせてもらった」

は?

「ははははは! 安心せい安心せい! 加重量でバランスを失うなんてヘマを我らドワーフがするわけなかろう! この船の魔法動力炉は相当な余力を持っておるからな、今の船重量の倍加重しても大丈夫じゃ!!」

いや、そういうことを心配しているんじゃなく……。

「まず船長室! 我がドワーフ地下帝国が誇る最高の調度品を持ち込み、貴賓室としての機能も備えておるぞ! ここで重大な条約の調印式だって執り行えよう!」

「調印式?」

そんなんする予定ないんですけど?

「客室は、全二十室を完備! いずれも魔都の一等旅館を意識した内装にしてみたぞ!」

「船底部の空きスペースには、調理場、浴室、トイレ、遊戯室など、あらゆるものを追加!」

「おかげで地上におるのと変わりない快適性を実現できるぞ! これこそ、聖者の神業に我らドワーフの技術力が組み合わさった結晶じゃあ!」

「これ以上に最高の豪華客船は、世界中どこを探しても見つかるはずがありません!!」

………………。

んん。

彼らドワーフが最高の仕事をしてくれたことはわかった。

なるほど豪勢だし、綺麗だし、機能的だし、快適だ。

しかし、ただ今のドワーフの言葉が引っ掛かった。

今なんつった?

豪華客船っつった?

「あの……」

「いやー、これ以上の仕事はやれって言われても多分できない。生涯最高の仕事をさせてもらった! ……ん? 何かな?」

「この船、客船じゃなくて漁船なんですけど」

「ん!?」

言ってなかったっけ?

遠海に出て、たくさんの魚を獲るための船だって。

どうも途中からちぐはぐな感じがしていたんだが、ドワーフがこの船を、要人でも乗せて世界各国に威容を見せつける豪華客船だと勘違いしていたらしい。

「だからこその仕上がりなのか……?」

どうしたものか。

漁船としての機能性はミリも上がっていないじゃないか。

「いいんじゃない? この船でも釣りしたり網引いたりするのは普通にできそうだし」

とプラティ。

「獲った魚の扱いは魔法のサポートで充分だって前回の漁で証明されたし、漁に出てる間も快適な部屋に寝泊まりできて悪いことじゃないでしょう?」

そうだな、プラティの言う通りだ。

我が農場の漁船、ヘルキルケ号(命名ドワーフたち)……。

ここに完成!!

「待ってえええええええええッッ!?」

「こんな素晴らしい船が! 世界に二つとない機能と優美さを兼ね備えた船がただの漁船なんてええッ!!」

「ご無体すぎますうううう! せめて! せめてこの船で世界一周でもおおおおおおッ!!」

「世界の果てまで行けるんですよコイツならああああああッッ!!」

なんかドワーフらから一斉に縋りつかれたけれど、漁船だって立派な船でしょう?

大丈夫大丈夫。

皆さんはいい仕事をなさいましたよ。